得意先マスタ(Tr:VD01,Tr:XD01)
取引を開始するためには、まず得意先を登録する必要がある。
継続的な取引を行わないワンタイム取引先というものもあるが、基本的には企業間で一定額以上の取引を行うので、相手の信用力や継続的な関係維持のためにマスタ化して情報管理するのは必須となる。
品目マスタ(Tr:MM01)
品目の属性情報をあらかじめシステム上に登録しておくのが品目マスタ。マスタ登録をしておくことで、受注伝票に品目コードを入力するだけで、品目の属性や名称が伝票上に呼び出される。
SDでは販売管理タブを登録しておくことで受注伝票上で入力が可能となる。
販売価格マスタ(Tr:VK11)
本体価格や運賃、値引、消費税といった価格要素は、「条件タイプ」というカスタマイズで管理される。
条件タイプごとに条件マスタを設定し、販売組織・販売グループ・品目といった種々のキーごとに価格を設定することが出来る。
これがSDにおける価格のマスタとなる。
SDのカスタマイズ
受注伝票タイプ(Tr:VOV8)
販売プロセスの種類によって、伝票タイプを予め切り分けておく。
こうすることで取引別に画面の挙動や必要設定を切り分けたり、権限設定の切り分け、後々の集計などにも活用できる。
明細カテゴリ
取引の種類をさらに細分化するパラメータ。
例えば明細カテゴリには、標準明細(通常の取引で使用)、無償明細(譲渡などの取引で使用)、サービス明細、テキスト明細などがある。
明細カテゴリの中身は様々なパラメータがあり、特殊在庫からの引き当て(特殊在庫フラグ)とするか、請求の対象となるか(請求関連フラグ)、出荷処理を行う対象であるかどうか(出荷関連明細フラグ)、価格設定を行うかどうか(無償明細なら価格設定なし、など)、自動ロット決定を行うか、受注数量を常に1とするか、といった明細の挙動を決定するパラメータで構成されている。
出荷タイプ(Tr:0VLK)
出荷プロセスの種類によって、伝票タイプを予め切り分けておく。
受注伝票タイプと同様の切り分けとしても良いし、別体系としても良い。
取引別に画面の挙動や必要設定を切り分けたりするのは、受注伝票タイプと同様。
出荷明細カテゴリ(Tr:0VLP)
出荷数量に関わる設定(警告出力するかどうか)、利用可能在庫確認をするかどうか、ピッキング関連とするかどうかや、保管場所入力を必須とするかどうか、といったパラメータで構成される。
明細ごとの挙動に関わる設定を行う。
割当:保管場所(ピッキング)
出荷ポイント・プラント・保管条件をキーに、どの保管場所から在庫を取得するかを決定するためのカスタマイズ。
定義:請求伝票タイプ(Tr:VOFA)
「伝票タイプ」とある項目では、請求処理を行う際にバックグラウンドで起票される会計伝票を指定することが出来る。
価格決定表や出力決定表の設定を行う。
設定:請求伝票のコピー管理(Tr:VTFA)
受注伝票から引き継いで請求伝票を作成する際に、どの項目をどのように引き継ぐのかを設定する。
コピー管理は受注⇔請求、請求⇔請求、出荷⇔請求など、複数伝票間でのコピー管理が存在する。
定義/割当:価格決定表
価格決定において加味される諸条件をテーブルとして定義したもの。
各行が「条件タイプ」によって構成され、正味額、運賃、値引、消費税、総額、といった形で価格を決定するための要素が設定されている。
これらの明細行を加算あるいは減算するなどの計算式も設定することができ、そうした価格要素の総和として価格が決定される。
各行は「STEP」という項目により価格決定表上の明細の順位を指定し、例えば値引項目など総額算出をした後に適用される行は価格決定表の下方に配置する。
また、価格要素を手動で更新するかどうか、条件タイプを必須とするかどうか、表示用(統計)のみに使用する行か、といった設定も可能。
こうした制御を駆使して、複雑な価格決定要素をうまく並べて価格計算を行うのが価格決定表だ。
(条件テクニックという。上手く組める人は良いSDコンサルと言える)
更に勘定キーという項目もあり、FIに対してどのように連携するか(価格要素をどの勘定に転記するか)を制御できる。
割当:勘定コード
会計への連携の際に計上する勘定を制御できる。
どの項目を制御キーとするか、テーブルを定義できるが、たとえば条件タイプ・販売組織・勘定キーの組み合わせにてG/L勘定を割り当てることで、その条件の請求が転記された場合、当該のG/L勘定にてFI伝票を起票する。
SDのトランザクション
受注伝票(Tr:VA01)
受注を受けた場合は受注伝票を登録する。
受注伝票登録は、在庫の引き当て、あるいは生産や購買への所要量伝達、出荷や請求への処理につなげる起点となる。
受注伝票の登録・変更・照会は以下のトランザクションから行う。
・受注伝票登録 Tr:VA01
・受注伝票変更 Tr:VA02
・受注伝票参照 Tr:VA03
受注伝票は以下のトランザクションで一覧照会できる。
・受注一覧 Tr:VA05
次に受注伝票上の主要項目について解説する。
受注先
得意先コードを設定する。
どの得意先から受注したかを表す。
出荷先
得意先コードを設定する。
納品場所は、受注先の住所であるとは限らない。
得意先は通常、多くの拠点を持っており、どこに納入するかはオーダーによって異なる。
得意先発注番号
発注をしてきた得意先で使っている番号体系と、自社で使っている受注の番号体系は、当然異なる。
しかし、相手先のオーダー番号を控えておかないと、相手先からのどの注文に対して納品するのかが分からなくなってしまう。
よって得意先の方で使用している発注番号を、自社の受注伝票上も記録しておく。
品目・数量
言わずもがなではあるが、得意先が何をいくらオーダーしてきたかを入力する。
予め登録された品目マスタから諸情報を引っ張ってくるために、明細上に品目コードを指定する。
また、その品目コードについてどれくらいの量を得意先がオーダーしているのかを指定する。
明細カテゴリ
明細カテゴリには、標準明細(通常の取引で使用)、無償明細(譲渡などの取引で使用)、サービス明細、テキスト明細などがあり、その明細の目的に応じて適切な明細カテゴリを選ぶ。
実務運用上は、ユーザが困らないようにある程度、選ぶべき明細カテゴリは限定されている。
所要量タイプ(調達タブ)
所要量をどのように伝達するかを決定するパラメータ。
例えば通常の所要としてMRPに伝達する、あるいは所要自体を発生させない(MRPの自動計算対象などにならない)、独立所要量から受注所要量を削減する、特殊在庫として通常在庫の所要とはわける、などと言ったことが出来る。
出荷ブロック・請求ブロック
何らかの理由で、販売や出荷、請求をブロックしなければならない理由が生じた時に、ブロックを指定する。
このブロックを設定しておくことで後続処理に流れないようにする。
自動的に出荷を行う設定などにしている場合、ブロック設定によって自動処理が流れるのを防いだりする。
拒否理由
得意先からオーダーはあったものの、何らかの理由で失注するというのは、あまりいい話ではないが想定しておくべき事態でもある。
品質不良やキャンセル、競合他社に引き合いを取られるなど、そういった事態が発生した場合には販売伝票の明細に「拒否理由」を設定し、なぜ得意先から拒否されたのかを記録しておく。
与信管理
販売管理において重要なのが与信管理だ。
つどつど現金精算をしているのであれば「与信」という概念は不要だが、通常、企業間の取引は掛け売りとなる。
つまり相手が将来的に支払いをするという信用に基づいて取引しているわけだが、様々な理由からこの債権を回収できなくなる場合がある。
こうした時に備え、相手の信用力(企業規模であったりキャッシュフローや経営状況)に応じて、与信の上限を予め設定しておく。
(得意先マスタを登録するときに審査部門の通過プロセスを入れている企業もあるだろう)
受注伝票上でオーダーを入力した際、得意先に対して持っている債権の総額が与信の上限を超えた場合、警告やブロックをすることが出来る機能が、与信管理機能だ。
バリアント選定タブ・特性照会
明細に対して特性入力が可能となる。
その品目のスペック(色や形といったオプション)など、受注時の要件を入力する。
この特性の設定を活用することで、バリエーションごとに品目マスタを登録するといったことが不要になり、品目マスタレコード数が膨大になることを防ぐことが出来る。
伝票フロー照会
画面上部の伝票フロー照会を押すことで、受注伝票の後続として登録されている出荷や請求の伝票の紐づきを確認することができる。
出荷伝票(Tr:VL01N)
受注した物品を十分な数量確保できたのであれば、得意先に向けて出荷する。
出荷は受注伝票で指定した出荷先の住所に対して行われる。
受注伝票のメニューから「出荷伝票」を選ぶことでも登録画面に遷移できる。
諸情報は受注伝票から引き継ぐので、調整を頻繁に行う業務要件がなければ、ほとんどの主要項目は改めて入力する必要が無い。
参考:出荷伝票は以下トランザクションから一覧化可能。
・Tr:VL06F 出荷伝票一覧
明細ステータス
利用可能在庫確認や梱包、出荷や請求など、それぞれのステータスがどこまで進んでいるのか(未処理なのか、完了なのか)が表示される。
ロット分割
出荷ロットを出荷明細上で分割したい場合に使用する。
貿易管理/税関タブ
税関を通すために必要な書類や条件が揃っているかを管理できるタブ。
原産国や仕向国、輸出手続きや取引のタイプを設定できる。
システムステータスが表示されており、条件をクリアすると緑信号になる。
出庫確認ボタン
出荷伝票は保存しただけでは在庫の払出は起きず、出庫確認ボタンを押すことで初めて出荷される。
(参考)出庫取消(Tr:VL09)
取消を行いたい出庫があるときは、このトランザクションから出荷伝票番号などを指定して取り消しを行う。
請求伝票(Tr:VF01)
受注伝票をベースとして、債権が立てられる状態となった場合は請求伝票を登録する。
受注伝票のメニューから「請求伝票」を選ぶことでも登録画面に遷移できる。
諸情報は受注伝票から引き継ぐので、ほとんどの主要項目は改めて入力する必要が無い。
なお、請求伝票の一覧は以下トランザクションから確認できる。
・請求一覧 Tr:VF05
条件タブ
請求する金額およびその内訳が確認できる価格決定表が表示されている。
請求すべき金額に誤りが無いかをここで確認する。
請求伝票のリリース
請求伝票は登録しただけでは会計伝票の起票(FIへの連携)は起こらない。
リリース処理を行うことで、会計伝票がバックグラウンドで起票される。
リリース権限を部門責任者に持たせることで、これを請求の承認行為とすることもある。
バックオーダー(Tr:V_RA, Tr:V_V2)
受注伝票の在庫引き当てを行う、または調整する必要がある場合にバックオーダー処理を実行する。
バックオーダー処理には手動と自動(一括処理)が存在する。
・Tr:V_RA バックオーダー(手動)
・Tr:V_V2 バックオーダー(一括)
手動による在庫引当調整では、主に引き当て済みの在庫を別の受注伝票に付け替えるケースで使用する。自動(一括)の場合は在庫未引当の受注伝票が複数ある場合に一括で在庫引当をしたいケースで使用する。自動の場合は受注伝票の登録順に引当処理が走る。
販売管理に関わる知識
FIとの連携
出荷(出庫転記)や請求(リリース)を転記した際、バックグラウンドでFIに会計データが連携されている。この際の仕訳について解説する。
出荷の仕訳
出荷する際は会社の資産(棚卸資産)を売り先への移転させるので、即ち資産が減少する。
したがって、在庫の減少と、その減少分のコスト(損失)を仕訳する必要がある。
売り上げに伴い発生したコストであるから、相手勘定は売上原価となる。
売上原価 / 在庫
請求の仕訳
財やサービスを売ったことに伴い、得意先への請求という行為が発生する。
したがって、収益として売上を計上する必要がある。
また、得意先から売上分の金銭を貰う権利が発生するので、相手勘定として債権が増加する。
債権 / 売上
売上原価と売上の差額が利益になっている、というわけだ。
入金の仕訳
SDのプロセスではなく会計のプロセスになるが、得意先から入金があった場合の仕訳についても確認する。
債権が立った場合、支払いサイト(Xヶ月後支払)に応じて得意先が指定口座に入金をする。
入金が完了できた場合、債権を消し込んで、取引完了となる。
預金勘定 / 債権
預金残高が増え、債権勘定が減るため、上記のような仕訳となる。
ちなみに、大方の場合は入金されたデータをシステム連携して電子銀行報告書として計上する。
この場合、以下のように間に銀仮勘定を噛ませることになる。
・入金(電子銀行報告書)
預金勘定 / 銀行仮勘定
・債権と入金の消込
銀行仮勘定 / 債権
銀行仮勘定同士で相殺しあうので、最初に書いた仕訳と同じこととなる。
諸掛とは
取引を行う上で、本体の代金以外にも様々な費用が掛かる。
輸送コストであったり、海外との取引であれば通関に関わる費用であったり、各種保険であったりする。
そういった諸々の費用を諸掛と呼ぶ。
諸掛には大きく分けて、仕入諸掛と販売諸掛がある。
仕入諸掛とは仕入に際してかかった費用のことで、たとえば輸入取引であれば通関手数料や関税などがそれにあたる。
販売諸掛とは販売に際してかかって費用のことで、出荷時の梱包費や発送費用などを指す。
ピッキングについて
ピッキングにはいくつかの方式がある。
代表的なものがオーダー別ピッキングと品種別ピッキングだ。
・オーダー別ピッキング方式
摘取り方式あるいはシングルピッキングとも呼ばれ、オーダー(受注単位)ごとに作業者が保管場所を回り、必要な品目をピッキングする。
品種が多く、受注量が少ない場合はこの方式を採用する。
・品種別ピッキング方式
種まき方式あるいはトータルピッキングとも呼ばれ、オーダーを集約して品目ごとにまとめてピッキングし、あとからオーダー別に仕分ける。
品種が少なく、受注量が多い場合はこの方式を採用する。
さらに、この二つの利点を取り入れたのが、ウエーブピッキングと呼ばれるもので、WMS(倉庫管理システム)を導入している倉庫などで見られる方式。
SAP SDのカスタマイズでも「ピッキングウエーブ」というものがあるが、これに該当するカスタマイズだ。
(原語ではWave picksとなっているはずだが、なぜか単語が前後逆になっている)