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Microsoft Azure が実現するエッジ コンピューティングのニュー ウェーブとは ?

執筆者: Julia White (Corporate Vice President, Microsoft Azure)

このポストは、2018 年 9 月 24 日に投稿された Microsoft Azure enables a new wave of edge computing.Here’s how. の翻訳です。

 

近年のテクノロジ変革により、以前なら絶対に考えられなかったシナリオが、にわかに可能になりつつあります。スマート センサーやコネクテッド デバイスが産業機器の世界に新たな生命を吹き込み、その影響は工場から酪農場、スマート シティからスマート ホームにまで及んでいます。しかも、新たに開発される機械や装置は、車や冷蔵庫に至るまで、クラウドに接続されていることが当たり前になってきました。

同時に、ハイブリッド クラウドも進化しています。従来はデータセンターとパブリック クラウドの連携を意味していましたが、今では世界最果ての地でも利用可能な、パブリック クラウドと連動するコンピューティング ユニットのような存在となっています。

前述の 2 つの現状と、あらゆるシステムに AI が取り入れられつつあることを考え合わせると、私たちは既に、インテリジェント クラウドとインテリジェント エッジの時代に足を踏み入れていると言えるでしょう。

インテリジェント クラウドとは、パブリック クラウドを利用し、AI によって強化された、どこででも利用可能なコンピューティング リソースです。この考え方に基づいて、当社では Azure のことを、お客様が思い描くあらゆるタイプのアプリケーションとシステムに活用可能な世界のコンピューターと呼んでいます。

一方、インテリジェント エッジは、絶えず拡大を続けるコネクテッド システムとコネクテッド デバイスの集合体です。インテリジェント エッジを通じて物理的なデータの置き場所と近い場所で情報の収集と分析を実行することにより、リアルタイムでインサイトを入手でき、コンテキストに応じてすばやく応答するイマーシブなエクスペリエンスが実現されます。

インテリジェント クラウドとインテリジェント エッジによるソリューションを実現するには、従来とは異なる種類の分散型コネクテッド アプリケーションが必要です。このソリューションの実現がかなえば、最終的にはビジネスに画期的な成果がもたらされることになるでしょう。こうしたクラウド/エッジ アプリケーションは単一のソリューションとして構築される一方、実行は分散型で行います。これは、クラウドの強固な機能とエッジのローカル性という両方の利点を活かすためです。エッジで実行されるアプリケーションはコンテキストを認識し、クラウドに接続された状態でも接続されていない状態でも利用できます。

インテリジェント クラウドとインテリジェント エッジの時代が始まったのは最近ですが、こうしたアーキテクチャを活用したソリューションの構築と運用に対するアプローチは、従来の不朽の原則に基づいています。クラウド/エッジ アプリケーションは基本的に、アプリケーション サービスから AI、セキュリティ、管理まですべての面で単一の環境として開発、実行しなければなりません。

Azure のクラウド/エッジ機能は前述の不朽の原則に基づきながら、クラウドとエッジ全体に一貫性をもたらすという特長を備えています。次に、こうした Azure の機能の概要をご紹介したいと思います。

  • クラウドとエッジをまたぐ一貫したアプリケーション プラットフォーム:   Azure のサービスは、プログラミング モデル、データ サービス、AI、DevOps 機能の一貫性を重視して構築されているため、クラウド/エッジ アプリケーションの開発が容易なだけでなく、アプリケーションの継続的な管理も効率的に行えます。たとえば、Azure Functions を使用してイベント ベースのアプリケーションを開発すれば、Azure や Azure Stack のほか、Azure IoT Edge を使用する任意のデバイス上で実行できます。
  • 総合的なセキュリティ: クラウド/エッジ アプリケーションの全体的なセキュリティ対策には、Azure Security Center が便利です。このサービスを使用すると、クラウド内とエッジ環境で実行されるシステムのセキュリティ管理を一元化し、脅威への高度な保護が可能になります。一方、クラウド環境とエッジ環境ではセキュリティ リスクが異なることもわかっているため、Azure には追加の保護対策も用意されています。たとえば Azure Sphere は、MCU (マイクロコントローラー ユニット) ベースのエッジ デバイスのセキュリティ保護に絶大な効果を発揮します。
  • ID 管理の一元化: 実行場所にかかわらず、すべてのアプリケーションをセキュアに管理するには、クラウド/エッジ アプリケーション全体の ID 管理の一元化が欠かせません。Azure Active Directory は、クラウドとエッジをまたいだ ID の統合管理と条件付きアクセスをサポートし、あらゆる場所のアプリケーションとデータに対する不正なアクセスを防止します。
  • クラウドとエッジの一貫した管理: さまざまなエッジ ソリューションにアプリケーションが分散されている場合、デバイスおよびそこで実行されるコードの管理をいかに容易にするかが重要な問題となります。Azure は、監視、更新プログラムの実行、バックアップ、障害復旧のための各種管理ツールを備えています。こうしたツールでは、Azure 内のクラウド リソースだけでなく、エッジ環境で運用されるアプリケーションとデバイスの管理もサポートされます。
  • 人工知能: エッジ環境から得られるコンテキスト対応のインサイトをうまく活用すれば、より厳密なデータを機械学習モデルに提供し、学習成果を高められます。Azure では、クラウド内とエッジ環境の両方のデータを組み合わせて機械学習モデルを構築できます。Azure 内で構築およびテストされた機械学習モデルは共有可能で、Azure IoT Edge を使用して運用される数多くの認定デバイスに配布し、同じモデルを実行できます。
  • あらゆるニーズに応えるインテリジェント エッジの包括的なポートフォリオ: Azure はクラウド サービスとエッジ デバイスを多岐にわたってサポートしていますが、エッジ環境の多様化が今後さらに進行することは想像に難くありません。そのためマイクロソフトでは、ISV、SI、ソリューション プロバイダーから成るエコシステムに対しても資金を投じ、お客様それぞれのビジネスに応じた適切なエッジ ソリューションの確保に努めています。Azure Stack でクラウドとエッジの両方をサポートし、Azure Sphere を通じて MCU ベースのデバイスに卓越したセキュリティを提供するのと同様に、Azure では引き続きサービスのサポート範囲を拡大していく予定です。

Consistency across intelligent cloud and intelligent edge_v02

他のクラウド ベンダーはクラウド/エッジ コンピューティングを、VM またはコンテナーを実行するサーバーによってサポートしているとうたっています。ただしこのアプローチでは、多種多様なエッジ デバイスやユース ケースを区別することもできなければ、アプリケーション モデルや管理、エンタープライズ ソリューションで必要となるセキュリティの面で、一貫したアプローチを提供することもできません。

 

インテリジェント クラウドとインテリジェント エッジのアプローチをさらに後押しするために、マイクロソフトは本日、Azure の複数の新機能を発表します。

  • Azure Digital Twins: これは、あらゆる物理環境の包括的なデジタル モデルを作成できる Azure の最新サービスです。このサービスでは、人物、場所、モノに関するモデルを作成するほか、それらを結び付ける関係性やプロセスのモデル化にも対応します。さらに、作成できるのは単なる静的なデジタル モデルではありません。Azure Digital Twins のデジタル モデルは、対象の物理環境内のデバイスおよびセンサーと直接接続されるため、常に最新の状態でモデルが維持されます。こうした特長により、新たに 2 つの画期的な機能が実現されます。
    • イベント駆動型のワークフロー アプローチを通じ、デジタル モデルの変更をトリガーとして、対応する物理環境に対してビジネス ロジックやワークフローを実行できます。簡単な例で言えば、会議室からすべての人が退出したら、すぐに照明をオフにして空調を弱めにするといった使い方が考えられるでしょう。
    • Azure Digital Twins は、Azure のデータや分析サービスとシームレスに連携できます。そのため、過去のすべてのアクティビティを追跡したり、シミュレーションを実行したりするほか、デジタル モデルと物理環境が今後どうなるかを予測することが可能です。
  • Azure IoT Edge のオフライン運用時間の延長: 新たにパブリック プレビューとして提供される Azure IoT Edge のオフライン運用時間の延長機能では、エッジ環境でのユース ケースがさらに広がることを見込んで、インターネットに接続しないままより長い時間 IoT デバイスを運用できるようにします。
  • Azure IoT Central: 本日より、Azure IoT Central が正式リリースになります。Azure IoT Central はフル管理されたグローバルな IoT SaaS (サービスとしてのソフトウェア) ソリューションで、多数の IoT 資産を簡単に接続して監視し、管理する機能を提供します。このサービスを活用すれば、自社のコネクテッド製品を迅速に市場に投入すると共に、自社の接続ソリューションに対して新たな付加価値サービスを提供できます。
  • Azure Sphere のプレビュー: Azure Sphere は 2018 年 2 月にマイクロソフトが発表した新しいソリューションで、エッジ環境で実行される、インターネット接続されたきわめてセキュアな MCU (マイクロコントローラー) デバイスを作成するための製品です。当社はこのたび、Azure Sphere の初めての開発キットを一般公開すると共に、Azure Sphere OS、Azure Sphere Security Service、各種開発者ツールのパブリック プレビューを開始することになりました。
  • Azure Data Box Edge: マイクロソフトは本日、Azure Data Box Edge のプレビュー リリースを発表します。Azure Data Box Edge を使用すると、エッジ環境でデータを前処理した後で Azure 環境へと効率的にデータを移動させることができます。Azure Data Box Edge アプライアンスは、自身にネイティブ統合された高度な FPGA ハードウェアを使用することにより、エッジ環境で機械学習の推論アルゴリズムを効率的に実行します。持ち運びが容易なサイズなので、必要に応じてユーザーやアプリケーション、データの近くで運用することが可能です。
  • Azure Stack: 初の試みである Azure Stack システムの提供を始めたのは 1 年前のことですが、それ以来多くのお客様がこのシステムですばらしいソリューションを構築し、コンプライアンス要件を満たす外部から切り離された環境を実現されています。当社は Azure Stack 上で実行する新たなサービスを定期的にリリースしています。今回は、Azure Event Hubs が Azure Stack でサポートされることになりました。Azure Stack 上で Azure Event Hubs を使用すると、クラウドと同様に、Web サイトやアプリケーションのほか、任意のデータ ストリームから利用統計情報を取り込めるようになります。また、Azure Stack システムのキャパシティが拡張されるため、Azure Stack を利用できるシナリオがさらに増加します。

 

Azure を使用したインテリジェント クラウドおよびインテリジェント エッジによるソリューションは、既にマイクロソフトのお客様やパートナー様にも使用されています。次に、実際の問題解決の事例をいくつかご紹介しましょう。

Schneider Electric 社 (英語) はエッジ環境で予測分析を実行し、オイル ポンプの問題の予兆をリアルタイムで特定することにより、はるかに多くのビジネス インサイトを得られるようになりました。今では、損傷が起こる前にポンプの運用を止められるため、機械や自然環境にまで被害が及ぶのを防ぐことができます。同社でデータ分析アプリケーションのアーキテクトを務める Matt Boujonnier 氏は次のように言います。「対象がオイル ポンプにしろ、製造プラントにしろ、重要なシステムの中には意思決定を下すのに一刻を争うものがあります。当社はアプリケーションに機械学習アルゴリズムを組み込み、エッジ環境にデータ分析機能を導入することで、クラウドおよびセントラル システムへのあらゆる通信遅延を軽減するつもりです。この重要な決定が下されるのは、もうまもなくでしょう」

Cree 社 (英語) はパワー半導体および高周波半導体の発明企業で、製造工程で撮影される数百万枚の品質管理用の写真を Azure Data Box Edge を使用して Azure にアーカイブしています。また、写真をアップロードする際、エッジ コンピューティング機能を活用して画像を単一のファイルにまとめているため、アーカイブ データの後々の取得や管理も容易です。Cree はこのアプローチによって、増え続けるストレージをやり繰りし、ビジネスに悪影響が出るのを防いでいます。同社は今後、Azure Machine Learning を使用してクラウド内でモデルのトレーニングを行う予定です。作成されたモデルは Data Box Edge 上で実行し、劣化して生産ラインから外れてしまった部品を検知することで、工程の拡張を促進したいと考えています。

iMOKO (英語) はデジタル医療の提供に取り組む慈善団体です。同団体では、インターネット設備がないことも多い遠隔地に住む子供たちやコミュニテイの人々が確実に医療サービスを受けられるようにしたいと考えていました。「Microsoft Azure Stack を使用することで、私たちの iMOKO アプリケーションのパフォーマンスは格段に向上しました。中心地から離れた農村部でも、まったく問題なく快適に使用できます。Azure Stack とクラウド サービス プロバイダーの Revera を選択した一番の理由は、医療シナリオでの信頼性と安心感でした」と iMOKO の CEO である Jodi Mitchell 氏は話します。iMOKO はエッジ環境でテクノロジを活用することにより、ニュージーランド国内なら住んでいる場所に関係なく、必要な人がだれでも医療サービスを受けられるしくみを実現することができました。

 

インテリジェント クラウドとインテリジェント エッジの可能性は無限大です。たとえば、病院や学校といった重要な機関に対する一貫した電力供給を可能にするほか、エネルギーや食料、水などの貴重な資源の管理に役立てることもできるでしょう。また、身体が不自由な人や病気の人のためのデバイスを作成して、だれもが大切な相手とつながりながら、より快適に生活できる社会を作れるかもしれません。

現在開催中のマイクロソフトの Ignite 2018 では、コンピューティングの新たな形であるインテリジェント クラウドとインテリジェント エッジを通じて、さまざまな Azure ソリューションを活用しているお客様やパートナー様の例を詳しくご紹介します。皆様のご来場をお待ちしています。