Exchange 2013 のバックアップと復元アプリケーションの作成

Exchange 2013 のバックアップと復元アプリケーションの、コンポーネントとアーキテクチャに関する情報と、バックアップと復元アプリケーションを作成するためのシステム要件に関する情報を確認できます。

製品: Exchange Server 2013

Windows Server 2008 以降のバージョンの Windows Server では、ボリューム シャドウ コピー サービス (VSS) を使用して、Exchange Server 2013 データをバックアップおよび復元するアプリケーションを作成できます。 VSS は、サードパーティ製のストレージ管理システム、ビジネス アプリケーション、ハードウェアの間でシャドウ コピーを作成して管理できるようにするインフラストラクチャを提供します。 シャドウ コピーを使用して 1 つ以上の Exchange 2013 データベースをバックアップおよび復元する VSS インフラストラクチャに基づいてソリューションを作成できます。

バックアップと復元アプリケーションの前提条件

カスタムバックアップと復元アプリケーションと VSS が Exchange 2013 データベースをバックアップおよび復元するには、環境に次のものが含まれている必要があります。

  • Windows Server 2008 以降の Windows Server のバージョン

  • Exchange 2013

さらに、バックアップと復元アプリケーションを作成している場合、開発環境における次の制限に注意してください。

  • VSS は、COM 相互運用アセンブリを経由して .NET Framework のマネージ コードからアクセスできる、アンマネージ COM API です。

  • Exchange 管理シェルは、.NET Framework のマネージ コードを使ってアクセスするマネージ アプリケーションです。

  • Exchange 2013 で提供される CHKSGFILES API は、ネイティブ コードの 64 ビット DLL です。 Exchange 2013 データベースでの Exchange 2007 32 ビット CHKSGFILES DLL の使用はサポートされていません。

バックアップと復元アプリケーションの概要

VSS は次のコンポーネント間の通信を調整します。

  • VSS リクエスターはバックアップ アプリケーションです

  • VSS ライター

  • VSS プロバイダーは、シャドウ コピーを作成するシステム、ソフトウェア、ハードウェア コンポーネントです

VSS を使用して Exchange 2013 データをバックアップするには、バックアップ アプリケーションが Exchange 2013 対応 VSS リクエスターである必要があります。 Exchange 2013 には、Windows Server バックアップ プログラム用に、Microsoft Exchange ライターと呼ばれる VSS ライターが含まれています。ただし、Exchange ライターはボリューム全体のみをバックアップします。 個々の Exchange 2013 データベースはバックアップされません。 さらに柔軟性が必要な場合、個々の Exchange データベースを操作できる Exchange 対応の VSS ライターを備えたサード パーティ製バックアップ アプリケーションを使うか、カスタムの VSS リクエスターを作成できます。

アプリケーションが VSS を呼び出してバックアップを開始する前に、バックアップする Exchange 2013 システムのストレージ構成に関する情報を取得する必要があります。 その情報は Actice Directory ドメイン サービス (AD DS) に格納されています。 バックアップ アプリケーションは、Exchange 管理シェル コマンドを使って Exchange のストレージ構成データを取得できます。 詳細については、「Exchange Server PowerShell (Exchange 管理シェル)」を参照してください。

Exchange 2013 バックアップ アプリケーションは、VSS COM API を呼び出して、Exchange データベースの完全バックアップ、コピー バックアップ、差分バックアップ、増分バックアップを作成します。VSS ライターと直接対話することはありません。 Exchange のデータベース可用性グループ (DAG) の機能により、初回の完全バックアップと以降の増分バックアップが DAG の異なるサーバーからのものでも、アプリケーションで完全整合バックアップを作成できます。 VSS が Exchange データのコピーを作成した後、バックアップ アプリケーションはデータを目的のメディアに格納します。

Exchange 2013 データベースを復元するために、復元アプリケーションはバックアップ メディアからデータベースとログ ファイルを取得し、それらを Exchange サーバーのアクティブなディスク ストレージに格納します。 個々のデータベースは特定の Exchange サーバーに関連付けられていません。

バックアップと復元のアプリケーションでは、EXCHANGE 2013 データベースに対して VSS によって実行される操作を正しく制御および管理するために、Exchange 2013 固有のパラメーターを多数指定する必要があります。 たとえば、Exchange 2013 では最大 100 個の同時アクティブ データベースがサポートされるため、バックアップ アプリケーションでは、データベース ファイル、トランザクション ログ ファイル、チェックポイント ファイル データベース コンポーネントを正しく指定して処理する必要があります。

最後の完全バックアップ以降に変更されたデータベースを再構築するには、リストア アプリケーションで別のバックアップからのデータベースとログ ファイルが必要です。 たとえば、毎週の完全バックアップと、毎日の 1 回以上の増分バックアップが必要になることがあります。 DAG を使用する Exchange 2013 システムでは、復元アプリケーションは、同じ DAG 内の異なるサーバー上の異なるデータベース コピーからのバックアップを使用してデータベースを再構築できます。 ただし、DAG データベースをバックアップから復元する方法として唯一サポートされているのは、同じデータを使ってデータベースのすべてのアクティブ コピーとパッシブ コピーを復元することです。

すべてのデータが設定されると、復元アプリケーションは、データベースとログ ファイルの整合性を確認するよう Exchange に通知します。 データベースとログ ファイルが適切に復元されると、Exchange サーバーは、ログ ファイルを再生してデータベースを最新の状態にしてマウントできます。 既にマウントされているデータベースのアクティブなコピーを持つサーバーにデータベースが復元された場合、データベースは回復データベースとして扱われます。 別のサーバーにデータベースが復元された場合、データベースは個別にマウントされるか、そのレプリカを DAG に追加することができます。

バックアップと復元のシステム アーキテクチャ

VSS は、サードパーティ (またはカスタム) プロバイダーを通して、Windows Server ファイル システムと大容量記憶装置ドライバーと通信します。 ハードウェア プロバイダーは、シャドウ コピーが作成される場所を決定します。 VSS は、ハードウェア実装に関する詳しい情報がない場合、バックアップと復元アプリケーションがシャドウ コピーにアクセスできるように、ハードウェア固有のシャドウ コピーを抽象化します。 バックアップと復元アプリケーションが Exchange 2013 と Windows Server と通信する方法を次の図に示します。

図 1. バックアップと復元のシステム アーキテクチャ

バックアップおよび復元アプリケーションがやり取りする方法を示す図。Exchange、Windows Server とクライアント アプリケーションの間に双方向通信が存在します。Windows Server は大容量記憶装置またはバックアップ メディアともやり取りします。

バックアップと復元アプリケーションは VSS リクエスターとして機能します。 要求元は VSS と通信して、Exchange 2013 に関する情報を取得し、シャドウ コピーの作成を開始し、バックアップ用のデータにアクセスします。

Exchange ストアは Exchange 2013 のコンポーネントであり、Windows Server ファイル システムを介して Exchange 2013 データベースにアクセスします。 ファイル システム内で、各 Exchange サーバーは、最大 100 個のデータベースと、それに付属のデータベース (.edb) ファイル、トランザクション ログ ファイル、チェックポイント ファイルを同時にマウントできます。

VSS をサポートするために、Exchange 2013 には Exchange ストアに組み込まれている Exchange ライターが含まれています。 Exchange ライターは、バックアップの前にデータベースを固定およびマウント解除し、バックアップが完了した後にデータベースの固定を解除してマウントするために、Exchange ストア (要求元の代わりに動作) と調整します。 復元中、バックアップおよび復元アプリケーションは、Exchange ライターに対して、データベースのマウントを解除し、データベース ファイルを置き換え、データベースをマウントし、必要に応じてトランザクション ログを再生するように Exchange ストアと調整するように指示します。

またリクエスターは、復元時にも VSS と通信し、復元に対応するためにシステムの準備を整えてから、大容量記憶装置にデータを戻します。 バックアップと復元アプリケーションも Windows Server と連携し、バックアップ記憶領域メディア (テープ アーカイブ、記憶域ネットワーク、その他のバックアップ メディア) からのデータの読み取りとデータの書き込みを行います。

復元されたデータベースは、通常のアクティブなデータベースとして、または Exchange 2013 回復データベースとしてマウントできます。 各 Exchange サーバー上の回復用データベースとして指定できるのは、1 つのマウントされたデータベースのみです。

Exchange 2013、VSS、およびバックアップおよび復元アプリケーション間のバックアップおよび復元操作を正常に完了するために必要な情報は、Exchange ライター メタデータの一部として転送されます。

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