Outlook 2010 の法令遵守とアーカイブを計画する

 

適用先: Office 2010

トピックの最終更新日: 2016-11-29

Microsoft Outlook 2010 と Exchange Server 2010 のアイテム保持ポリシー機能および個人用アーカイブ機能を使用すると、ユーザーがメールのアイテム保持ポリシーに準拠するのに役立ち、業務上重要な情報を格納する十分な領域を確保できます。この記事は、2 つの機能の展開を計画する際に役立ちます。

組織で法令遵守が徹底されていない場合でも、個人用アーカイブは、個人用の Microsoft Outlook データ ファイル (.pst) やサードパーティのアーカイブ ソリューションから移行するのに適したソリューションです。個人用アーカイブを使用することで、ユーザーは自分の電子メール メッセージを管理された場所にアーカイブして、バックアップ、データの回復、および法令遵守のニーズに対応できます。

アーカイブ ポリシーを使用できるのは、Exchange Server 2010 アカウントで Microsoft Office Professional Plus 2010 の一部として Outlook 2013 を使用し、Exchange 管理者が個人用アーカイブを有効にしている場合だけです。詳細については、「License requirements for Personal Archive and retention policies (英語)」(https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=213850\&clcid=0x411) (英語) を参照してください。

この記事の内容

  • アイテム保持ポリシーの展開の計画

  • 個人用アーカイブの展開の計画

アイテム保持ポリシーの展開の計画

アイテム保持ポリシーは、Exchange Server 2010 を実行しているサーバーに格納されているメッセージに電子メールのアイテム保持ポリシーを適用するのに効果的な手段です。また、アイテム保持ポリシーは、ユーザーがメールボックス クォータを上回らないようにするのにも役立ちます。アイテム保持ポリシーは、メールボックス、フォルダー、および個々の電子メール レベルに適用でき、電子メール メッセージでのみサポートされます。予定表、タスク アイテムなど、他のメッセージの種類は Outlook 2013 および Exchange Server 2010 でサポートされません。アイテム保持ポリシーを適用するには、Exchange Server コンピューター上のメールボックスまたは個人用アーカイブに電子メール メッセージが格納されている必要があります。

アイテム保持ポリシーの展開の計画では、次の主要な手順を検討します。

  • 企業の法務部門または法令遵守部門と連携してポリシーを定義します。

  • 適切なメールボックス、フォルダー、およびユーザー ポリシーの組み合わせを決定します。

  • ユーザーをアイテム保持ポリシーにアップグレードします。

  • ユーザーにアイテム保持ポリシーについて知らせます。

  • 調査対象のユーザーの場合は、保存機能または法的情報保留を有効にします。

アイテム保持ポリシーの定義

組織、部門、およびユーザーが使用できる必要があるアイテム保持ポリシーの決定は、法務部門または法令遵守部門との話し合いを通じて行います。企業によっては政府規制や追加の規制の対象となる可能性がありますが、それらはアイテム保持ポリシーを使用して適用できます。部門ごとに規制はそれぞれ異なるため、ポリシーを論理的で管理しやすいグループに編成する必要があります。企業で従う必要があるポリシーを理解すれば、それを最適に実装する方法を決定できます。

個人用タグはユーザーに提供するポリシーであり、ユーザーは自分が作成した個々のメッセージおよびフォルダーにこれを適用します。ユーザーが従うポリシーを定義する場合、個人用タグは 10 個を超えないようにしてください。10 個を超えると、ユーザーが混乱する可能性があります。さらに、リボン上のポリシーの割り当てギャラリーに Outlook が表示するのは一度に 10 個の個人用タグのみです。ユーザーが 10 個を超える個人用タグにアクセスする必要がある場合は、ポリシーの割り当てギャラリーの [その他のアイテム保持ポリシー] を選択します。

作成するポリシーの種類の決定

どのユーザー グループにどのアイテム保持ポリシーが必要であるかを把握したら、そのポリシーの実装方法を決定します。

アイテム保持ポリシーには、主要な 3 つの種類があります。

  1. 既定のポリシー タグ。Exchange 管理者によって展開されるポリシーで、ユーザーが作成したすべてのフォルダーと、ユーザーのメールボックス内のすべての電子メール メッセージに適用されます。このポリシーをユーザーが変更することはできません。これは、すべての電子メール メッセージに少なくとも 1 つのポリシーが適用されることを保証する唯一のポリシーの種類です。

  2. アイテム保持ポリシー タグ。ユーザーのメールボックス内の以下の特別なフォルダーに適用されるポリシーの種類です。

    • 受信トレイ

    • 下書き

    • 送信済みアイテム

    • 削除済みアイテム

    • 迷惑メール

    • 送信トレイ

    • RSS フィード

    • 同期の失敗

    • 会話履歴

    注意

    これらの特別なフォルダーのポリシーは、フォルダーにアイテム保持ポリシー タグが適用されていない場合でも、ユーザーが変更することはできません。

  3. 個人用タグ。ユーザーのアイテム保持ポリシー ユーザー インターフェイス (UI) に表示されるポリシーの種類で、ユーザーが作成するフォルダーと個々の電子メール メッセージに適用されます。

    1. ユーザーは、上記の「アイテム保持ポリシー タグ」に示されている特別なフォルダーに、このポリシーを適用することはできません。

    2. ユーザーは、特別なフォルダー自体ではなく、特別なフォルダー内の電子メール メッセージにこのポリシーを適用できます。

    3. ユーザーは、自分で作成したフォルダーにこのポリシーを適用できます。

    注意

    検索フォルダーには実際の電子メール メッセージが含まれていないため、検索フォルダーはアイテム保持ポリシーはサポートされません。

個人用タグ

ユーザーがフォルダーまたは電子メール メッセージにアイテム保持ポリシーを設定するためには、ユーザーに 1 つ以上の個人用タグを提供する必要があります。既定では、リボンのポリシーの割り当てギャラリーに、最初の 10 個のポリシー (個人用タグ) がアルファベット順で表示されます。このメニュー リストは、最も最近使用されたポリシーを示します。ただし、追加のポリシーが使用されるときには、それらがリボン上にアルファベット順で表示されます。フォルダーのプロパティのダイアログ ボックスを使用してフォルダーにポリシーを適用する場合、使用可能な個人用タグの完全なリストが表示されます。

ユーザー用に作成される個人用タグには、ポリシーを必要とするコンテンツの種類を明確に表す名前を付ける必要があります。たとえば、特許に関係する電子メール メッセージを 7 年間保持する必要がある場合は、"特許情報" というタイトルのポリシーを作成し、これを 2,555 日間と設定します。Outlook では日数を人間が理解しやすい形式に自動的に変換し、その長さをタイトルの末尾に追加します。したがって、Outlook では、ポリシーが [特許情報 (7 年)] と表示されます。

どの電子メール メッセージがその個人用タグの対象となるのか、ユーザーが明確に理解できるように、ポリシーの説明を追加する必要があります。この説明では、そのポリシーに該当するコンテンツの種類について詳しく説明します。以下に例を示します。
ポリシー: 特許情報 (7 年)
説明: 特許に関係するすべての電子メール メッセージ。

電子メール メッセージに対するポリシーの優先順位は、以下のとおりです。

  1. 電子メールに関するポリシー (個人用タグ)

  2. 電子メールが含まれるフォルダーに関するポリシー

  3. そのフォルダーの親、および上位の親フォルダーに関するポリシー

  4. メールボックスに関するポリシー (既定のポリシー タグ)

例: Financial Documents という名前のフォルダーがあり、"財務 (- 3 年)" というアイテム保持ポリシーが適用されるものとします。フォルダー内の電子メール メッセージの 1 つが財務部門ポリシーに関するものであり、参照しやすいように Financial Documents フォルダーに置きます。その電子メール メッセージに "参照 (- 削除しない)" というアイテム保持ポリシーをマークすると、フォルダーのポリシーが "財務 (- 3 年)" であっても、その電子メール メッセージは削除されません。

配布リスト

組織で配布リストを使用している場合、1 ~ 4 週間後に電子メール メッセージを削除する個人用タグにより、ユーザーのメールボックス クォータを簡単に管理できます。ユーザーは Outlook ルールを作成して、電子メール メッセージにポリシーを自動的に適用したり、ポリシーが適用されているフォルダーにメッセージを配信できます。

アイテム保持ポリシーのウォームアップ期間とトレーニング

アイテム保持ポリシーについてユーザーのトレーニングを行うことは、システムの正しい使用方法を把握し、電子メール メッセージが削除されるタイミングと理由を理解するうえで重要です。データが保持または破棄される理由をユーザーが理解することで、個人用タグを正しく適用できるようになり、一定期間経過後に破棄されるコンテンツを認識できます。

推奨手順

  1. ユーザーのメールボックスにポリシーを割り当て、そのメールボックスの保存機能を有効にします。こうすることで、ポリシーによる電子メール メッセージの削除が回避されます。詳細については、「メールボックスの保存機能を有効にする」(https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=195158\&clcid=0x411) を参照してください。

  2. アイテム保持ポリシーの使用方法についてユーザーに説明します。ウォームアップ期間中は、フォルダーおよびメッセージにポリシーを適用する必要があり、そうでなければ古いメッセージが削除されることを説明します。詳細については、「電子メール メッセージにアイテム保持ポリシーを割り当てる」(https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=195157\&clcid=0x411) を参照してください。

  3. ウォームアップ期間が終了する数日前に、ウォームアップの期限をユーザーに通知します。

  4. 期限当日に、ユーザーを保存機能対象者から除きます。

ユーザーが新しいシステムに適応するには時間がかかるため、アイテム保持ポリシーの操作にユーザーが慣れるようにウォームアップ期間を設けることは非常に重要です。ユーザーは正しい個人用タグを正しいフォルダーに適用できるようになる必要があり、情報が自動的に削除されるという考え方に慣れる必要があります。メールボックスから保存機能を削除するまでに、少なくとも 3 か月は電子メールでアイテム保持ポリシーを使用する期間を設けることをお勧めします。こうすることで、ユーザーの情報が破棄される前に、ユーザーはアイテム保持ポリシー機能を理解し、アクセスできるようになります。また、アイテム保持ポリシーをワークフローに統合し、電子メール メッセージに起きることを簡単に理解できるようになります。

警告

ウォームアップ期間がない場合、ユーザーが長いポリシーを適用できるようになる前に、電子メール メッセージが削除される可能性があります。

同様に、長期休暇や育児休暇で不在の場合など、ユーザーが電子メール メッセージを確認できない期間は、メールボックスの保存機能を有効にしておく必要があります。これは、情報が間違って削除されないようにするためです。仕事に復帰し、電子メール メッセージを確認する十分な時間ができたら、保存機能を無効にします。

重要

ユーザーのメールボックスまたは特別なフォルダーで既定のポリシー タグまたはアイテム保持ポリシー タグを使用しており、ユーザーがキャッシュ モードを使用して Exchange に接続している場合、Outlook プロファイルをポリシー情報で更新するときに Outlook のパフォーマンスで初期劣化が生じます。データ ファイルを処理するのに必要な時間は、ファイルのサイズとコンピューターの速度に依存します。メールボックスの更新時に、ユーザーはパフォーマンスの影響について通知を受けます。
または、ユーザーの Outlook プロファイルを削除し、そのアカウントのプロファイルを新しく作成することもできます。ユーザーが Outlook を開始すると、Outlook は既に追加されているポリシー情報を使用して電子メール メッセージをダウンロードします。アカウントのメールボックスのサイズによっては、既存のアカウントを更新するよりこの方が高速です。ただし、そのアカウントで新しいプロファイルを作成した場合、Outlook で検索できるように、すべてのメッセージのインデックス付けを再び行う必要があります。

アイテム保持ポリシーに関するユーザー教育

ユーザーの操作性と企業のアイテム保持ポリシーの根本的な効果に影響するため、アイテム保持ポリシーの以下の点についてユーザーに伝える必要があります。詳細については、「電子メール メッセージにアイテム保持ポリシーを割り当てる」(https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=195157\&clcid=0x411) を参照してください。

  • ウォームアップ期間の終了時にメッセージが間違って削除されないように、ユーザーはフォルダーのアイテム保持ポリシーを確認し、必要に応じて変更する必要があります。

  • ウォームアップ期間中は、アイテム保持ポリシーによってメッセージが自動的に削除されることはありません。

  • ユーザーが自分のフォルダーや個々の電子メール メッセージについてアイテム保持ポリシーを変更していない限り、既定のポリシー タグによって、ポリシー期間より古い電子メール メッセージはすべて削除されます。既定のポリシー タグの保持期間は、明確に示す必要があります。

  • 受信トレイ、送信済みアイテム、削除済みアイテムなど、特別なフォルダーのフォルダー ポリシーをユーザーが変更することはできません。特別なフォルダーにポリシーがある場合は、そのポリシーを明確に示す必要があります。

  • 特別なフォルダー内のメッセージに異なるポリシーを適用するには、そのメッセージに個人用タグを手動で適用します。

  • ユーザーが電子メール メッセージに個人用タグを追加すると、その個人用タグは、フォルダー ポリシーや既定のポリシー タグより優先されます。

  • アイテム保持ポリシーは電子メール メッセージにのみ適用されます。したがって、予定表のすべての会議と予定は削除されません。

  • サブフォルダーは親フォルダーのアイテム保持ポリシーを継承します。

  • アイテム保持ポリシーによって Outlook データ ファイル (.pst) 内のメッセージは削除されません。

  • リボン内のポリシーの割り当てギャラリーを使用して、メッセージにアイテム保持ポリシーを適用できます。

  • ポリシーの割り当てギャラリーの [フォルダー ポリシーの設定] を使用して、自分で作成したフォルダーにアイテム保持ポリシーを適用できます。

  • ポリシーの割り当てギャラリーの [期限切れが近いアイテムを表示] を選択することによって、30 日以内に期限が切れるすべてのメッセージのリストを作成できます。

  • 閲覧ウィンドウの CC 行の下または閲覧の詳細情報の下部を見ることによって、メッセージに適用されているアイテム保持ポリシーを判断できます。

法的情報保留または調査対象のユーザー

Outlook 2013 および Exchange Server 2010 の法的情報保留には、保存機能と訴訟保全の 2 種類があります。保存機能の場合、メールボックスの保存が有効であることがユーザーに明確に示されます。訴訟保全の場合、メッセージは表示されず、メールボックスが調査の対象であることはユーザーに通知されません。

次の表は、保存機能および訴訟保全で有効な機能の概要です。回復可能なアイテム機能と書き込み時コピー機能については、以下で説明します。

機能 保存機能 訴訟保全

アイテム保持ポリシーがサーバーで適用される

なし

可。削除されたアイテムが破棄されないように、ユーザーのメールボックス内の隠しフォルダーに格納されます。

アーカイブ ポリシーがサーバーで適用される

なし

あり

回復可能なアイテムのコンテナーは自身を空にできる

あり

なし

書き込み時コピーが有効

なし

あり

削除済みアイテムを復元

これまで削除済みアイテム収集機能と呼ばれていた Exchange の [削除済みアイテムを復元] フォルダーは、Outlook、Microsoft Outlook Web Access (OWA)、および他の電子メール クライアントでユーザーが削除したアイテムを保持する領域を提供するものです。Outlook および OWA で削除したアイテムは、[削除済みアイテムを復元] フォルダーにアクセスすることによって復元できます。詳細については、「削除済みアイテムを復元する」(https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=195172\&clcid=0x411) を参照してください。

既定では、[削除済みアイテムを復元] フォルダーには、削除済みアイテムが 14 日間、またはフォルダーの記憶域のクォータに達するまで保持されます。[削除済みアイテムを復元] フォルダーがフォルダーの記憶域のクォータに達すると、先入れ先出し法 (FIFO) でアイテムが削除されます。ユーザーのメールボックスの訴訟保全が有効の場合、このどちらの方法でも、[削除済みアイテムを復元] フォルダーを削除することはできません。このため、削除されたデータを検索し、復元できます。詳細については、「法的情報保留について」(https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=195174\&clcid=0x411) を参照してください。

書き込み時コピー

Exchange Server 2010 では、すべてのバージョンの電子メール メッセージを書き込み時コピー機能で保存できます。この機能は、変更された電子メール メッセージの元のバージョンをコピーし、それを Versions という名前の隠しフォルダーに格納します。コピーをトリガーする電子メール メッセージのプロパティについては、「法的情報保留について」(https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=195174\&clcid=0x411) を参照してください。この機能は、訴訟保全を使用すると自動的に有効になります。

保存機能の使用

電子メール メッセージが調査の対象で削除してはならないユーザーがいる場合は、そのユーザーのメールボックスの保存機能を有効にします。保存機能を使用すると Backstage ビューにコメントを表示でき、ユーザーに保存機能の状態が通知されます。ユーザーが個人用アーカイブを持っている場合は、メッセージをアーカイブに手動で移動する必要があります。保存機能により、サーバーがアイテム保持ポリシーとアーカイブポリシーに基づいてメッセージを削除または移動することが回避されます。

ユーザーのメールボックスの保存機能を有効にする場合は、調査関連の電子メール メッセージを保持できるように、そのユーザーのメールボックス クォータを増加する必要があります。

ユーザーの保存機能を有効にした場合は、以下を通知する必要があります。

  • アイテム保持ポリシーとアーカイブ ポリシーによるメッセージの削除または移動は行われなくなります。

  • ユーザーはメッセージを個人用アーカイブ (ある場合) に手動で移動できます。

訴訟保全の使用

法的な調査を頻繁に受けるユーザーや、同時に複数の調査を受けるユーザーがいる場合、訴訟保全は、電子メールのユーザー操作に影響せずにユーザーの電子メール メッセージをすべて保持できる手段です。訴訟保全を使用する場合、Outlook はユーザーにユーザーのメールボックスが保存されることを通知しません。これは、内部調査の際に役立ちます。

アイテム保持ポリシーとアーカイブ ポリシーではメッセージの削除と移動が行われますが、訴訟保全により、調査対象ではないかのようにユーザーは操作できます。[削除済みアイテムを復元] フォルダーはすべての削除済みアイテムを取得し、書き込み時にコピー機能はすべてのバージョンの電子メール メッセージを取得します。これらの機能の組み合わせは、法的調査に関する情報の維持の負担を軽減します。詳細については、「法的情報保留について」(https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=195174\&clcid=0x411) を参照してください。

個人用アーカイブの展開の計画

個人用アーカイブは、Outlook データ ファイル (.pst) の代わりに使用して、電子メール メッセージを組織内でアーカイブできます。また、個人用アーカイブにより、法令遵守上の理由で保持する必要がある電子メール メッセージ用の追加の領域を提供できます。

個人用アーカイブの展開の計画では、次の主要な手順を検討します。

  • 組織のアーカイブ ポリシーを決定します。

  • ユーザーに個人用アーカイブを理解させます。

  • 組織内の Outlook データ ファイル (.pst) を管理します。

アーカイブ ポリシーの決定

ユーザーに個人用アーカイブが与えられると、既定では、次のアーカイブ ポリシーが作成されます。

  • 既定のポリシー (– 2 年)。既定のアーカイブ ポリシーはユーザーのメールボックス全体に適用されます。受信日が 2 年より前のすべての電子メール メッセージがアーカイブされます。

  • 個人用タグ。既定では以下の個人用タグがユーザーに与えられて、ユーザーのフォルダーと電子メール メッセージに適用されます。

    • 6 か月

    • 1 年

    • 2 年

    • 5 年

    • アーカイブしない

アーカイブ ポリシーを、Exchange を通じて、受信トレイ、送信済みアイテム フォルダーなど、ユーザーのメールボックス内の特別なフォルダーに適用することはできません。既定では、ユーザーのメールボックス内のすべてのフォルダーは既定のポリシーを継承します。しかし、個人用タグを使用することで、任意のフォルダーや電子メール メッセージのポリシーを変更できます。

個人用アーカイブに関するユーザー教育

ユーザーの操作性と機能の使用方法に影響するため、個人用アーカイブの以下の点についてユーザーに伝える必要があります。ユーザーのメールボックス フォルダーにアーカイブ ポリシーを設定するウォームアップ期間を設けることをお勧めします。これにより、電子メール メッセージが突然アーカイブに移動してもユーザーが驚かなくて済みます。

  • ユーザーがオフラインの場合、または、ユーザーの Exchange Server コンピューターへの接続が確立できない場合、個人用アーカイブは使用できません。

  • Exchange Server は、24 時間の単位で、アーカイブの準備が整った電子メール メッセージを自動的に移動します。したがって、フォルダーにアーカイブ ポリシーを設定したユーザーが、この処理の結果を即時に目にするわけではありません。

  • Exchange Server を使用してメッセージを即時にアーカイブする方法はありません。即時にアーカイブする必要があるメッセージは、ユーザーがアーカイブに移動する必要があります。

  • ユーザーは古いアイテムの整理機能を使用できず、これでメッセージをアーカイブすることはできません。ユーザーがメッセージを削除または Outlook データ ファイル (.pst) に移動するように古いアイテムの整理機能を設定した場合は、適切なアイテム保持ポリシーおよびアーカイブ ポリシーを適用して同じ効果を実現する必要があります。

  • アーカイブ内に作成されるフォルダーは、メールボックス内で持っていたのと同じアイテム保持ポリシーを持ちます。同様に、アーカイブ内のメッセージは、メールボックス内で持っていたのと同じ保持ポリシー (適用されていた場合) を持ちます。アイテム保持ポリシーを持つメッセージは、個人用アーカイブ内で期限切れが発生します。

組織内の Outlook データ ファイル (.pst) の管理

組織の電子メールがユーザーのメールボックスや組織の法令遵守インフラストラクチャから移動しないように、DisableCrossAccountCopy レジストリ キーを展開できます。これにより、ユーザーが情報を Outlook データ ファイル (.pst) に保存したり、Outlook の別の電子メール アカウントにコピーしたりできなくなります。このレジストリ キーは、ユーザーのレジストリに手動で追加することによって、または、グループ ポリシーの [アカウント間でアイテムをコピーまたは移動できないようにする] 設定を使用することによって展開できます。

このレジストリ キーは、通常、Outlook 2013 の DisablePST および PSTDisableGrow という 2 つのレジストリ キーより制御性に優れています。このレジストリ キーは, .pst の使用を制限することなくユーザーが制限付きアカウントからデータを移動できないようにするため、ユーザーは電子メール メッセージを .pst ファイルに配信する可能性がある Outlook の個人用の電子メール アカウントを使用できます。また、既存の .pst ファイルからメッセージを開いたり、コピーしたりすることもできます。DisableCrossAccountCopy レジストリ キーは、これらの理由で DisablePST および PSTDisableGrow のニーズを完全に置き換えることが推奨されています。必要に応じて、Microsoft SharePoint 2010 製品の同期リストのデータをユーザーがコピーできないようにすることもできます。

DisableCrossAccountCopy レジストリ キーは、HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Office\14.0\Outlook\ にあります。

レジストリ エントリ 種類 説明 展開

DisableCrossAccountCopy

REG_MULTI_SZ

このレジストリ キーには以下の 3 種類の文字列値を定義できます。

  1. アスタリスク (*)。すべてのアカウントまたは Outlook データ ファイル (.pst) からのメッセージのコピーまたは移動を制限します。

  2. 制限される電子メール アカウントのドメイン名。制限するアカウントのドメインを指定できます。たとえば、「contoso.com」と指定します。

  3. SharePoint。すべての SharePoint リストからのデータのコピーまたは移動を制限します。

その場所からのデータの移動またはコピーを許可しないアカウントまたは Outlook データ ファイル (.pst) を定義します。

このレジストリ キーは、ユーザーのレジストリに手動で追加することによって、または、グループ ポリシーの [アカウント間でアイテムをコピーまたは移動できないようにする] 設定を使用することによって展開できます。

または、[ユーザー構成]\[管理用テンプレート]\[Microsoft Outlook 2010]\[アカウント設定]\[Exchange] で [アカウント間でアイテムをコピーまたは移動できないようにする] 設定を有効にすることによって、グループ ポリシー内で DisableCrossAccountCopy を設定できます。

組織で DisablePST レジストリ キーまたは PSTDisableGrow レジストリ キーが既に展開されていても、DisableCrossAccountCopy キーの動作には影響しません。DisableCrossAccountCopy レジストリ値が Outlook 2010 で構成されている場合、Outlook は DisablePST レジストリ キーと PSTDisableGrow レジストリ キーを無視します。このシナリオでは、Outlook データ ファイル (.pst) を完全に除去することができません。ただし、DisableCrossAccountCopy キーが設定されている場合は、企業データは Outlook データ ファイル (.pst) に移動できません。

Outlook 2013 を使用しないユーザーがいる場合、3 つのキーをすべて同時に展開できます。ただし大部分の企業では、DisablePST レジストリ キーと PSTDisableGrow レジストリ キーは不要です。

以下に、アカウントまたは Outlook データ ファイル (.pst) からの電子メール メッセージのコピーまたは移動がどのように制限されるかを示しています。

  • ユーザーは、制限付きアカウントから別のアカウントまたは Outlook データ ファイル (.pst) にメッセージをドラッグアンドドロップできません。

  • ユーザーは [移動] メニューを使用して制限付きアカウントから別のアカウントまたは Outlook データ ファイル (.pst) にメッセージを移動またはコピーできません。

  • 古いアイテムの整理機能を使用している場合、制限されているすべてのアカウントはデータをアーカイブできません。

  • Backstage ビューの [メールボックスの整理] メニューで、[アーカイブ] オプションにアーカイブのオプションとして制限付きアカウントが表示されません。

  • ルールで制限付きアカウントからメッセージは削除されません。

  • ユーザーは制限付きアカウントからメッセージをエクスポートできません。

  • クリーンアップ機能によって制限付きアカウント内の電子メール スレッドの冗長部分は削除されません。

ユーザーが制限付きアカウントから各自のコンピューターにメッセージを移動またはコピーできないようにするには、DisableCopyToFileSystem レジストリ キーを展開します。

DisableCopyToFileSystem レジストリ キーは HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Office\14.0\Outlook\ にあります。

レジストリ エントリ 種類 説明 展開

DisableCopyToFileSystem

REG_MULTI_SZ

このレジストリ キーには以下の 3 種類の文字列値を定義できます。

  1. アスタリスク (*)。アカウントまたは Outlook データ ファイル (.pst) からコンピューターへのメッセージのドラッグを制限します。

  2. 制限される電子メール アカウントのドメイン名。制限するアカウントのドメインを指定できます。たとえば、「contoso.com」と指定します。

  3. SharePoint。すべての SharePoint リストからコンピューターへのデータのドラッグを制限します。

コンピューターへのメッセージのドラッグを許可しないアカウントまたは Outlook データ ファイル (.pst) を定義します。

このレジストリ キーは、ユーザーのレジストリに手動で追加することによって展開できます。