Windows 秘話: [スタート] メニュー項目について

[スタート] メニューに配置されていた固定された項目は、どこへ行ったのでしょうか。これらの項目は他のプログラムと同じように非表示になりました。今月のコラムでは、このメニュー項目について説明します。

Raymond Chen

[スタート] メニューが導入されたときには、ショートカットを追加して、手早く簡単にお気に入りのプログラムのショートカットにアクセスできるようにする領域がありました。この領域は、"固定された項目" と呼ばれていました。この領域は [スタート] メニューの上部に表示され、溝付きの区切り線で通常の [スタート] メニュー項目と分けられていました。

[スタート] メニューの固定された項目のセクションには、[スタート] ボタンにオブジェクトをドロップして項目を追加できました。その項目のショートカットは自動的に作成され、固定された項目のセクションにショートカットが追加されました。私たちは、深く考えずに、このような特別お気に入りのショートカットを配置する場所をプログラムで特定する方法も用意しました。というのも、当時、プログラマは善良だと信じられていたからです。

ご想像のとおり、プログラマは、この特権を乱用し、ユーザーが自由に使用できる領域に、勝手にショートカットを追加し始めました。おそらく、自分たちの能力を誇示したり、上司の機嫌を取って、報酬を得ようとする目的で、このような行為に走ったのではないかと思います。

あるプログラマが、この機能を本来の目的とは違う目的で使用し始めたことで、他のプログラマも「他のプログラムでやっているなら、うちのプログラムでもやろう」と同じ行為を行うようになりました。固定された項目のセクションが、すぐにアクセスする必要がないプログラムで埋め尽くされて、本当に必要な操作の邪魔をするようになるまで、それほど時間はかかりませんでした。

仕切り直し

Windows XP で [スタート] メニューのデザインを見直す際に、固定された項目は、すべてのプログラムの一覧の先頭に移動することになりました。このセクションと通常のプログラムのセクションの間には、薄い区切り線があります。固定された項目の一覧にあるプログラムは、Windows XP でも、特別な位置を確保しましたが、以前ほどの特別さはなくなりました。

あるユーザーから「Windows Vista では、当社が開発したプログラムが表示されなくなったので、ユーザーがプログラムにアクセスできません。これは、Windows Vista のバグではありませんか」という問い合わせがありました。この際、Windows Vista 以前の Windows (Windows XP) の状態と Windows Vista の状態のスクリーン ショットが添付されていました。Windows XP のスクリーンショットでは、この企業が開発したプログラムのショートカットが、日常的に使用する、興味の沸かない、それほどすばらしくないプログラムと 1 本の線で分けられた固定された項目の一覧の先頭に配置されていました。Windows Vista のスクリーンショットでは、このような区切り線はなく、ショートカットは、プログラムの一覧の先頭に配置されていませんでした。

Windows Vista では、固定された項目の特別な地位が徐々に風化されるようにしました。固定された項目は、[すべてのプログラム] をクリックしたときに表示されるプログラムの一覧で、特別扱いされなくなり、他のプログラムと同列にアルファベット順で表示されるようになりました。特別な固定された項目の一覧に格納されていますが、通常のすべてのプログラムの一覧に代わり映えのしない標準的で平凡なプログラムと一緒くたに表示されます。

詳しく調べてみると、このプログラムのショートカットは、Windows Vista のすべてのプログラムの一覧に含まれており、仕様どおり、[スタート] メニューで他のプログラムと同列にアルファベット順で表示されていました。このユーザーは、[スタート] メニューの上部にプログラムが表示されていなかったので、すぐに探すのをあきらめてしまったようです。皮肉なことに、このユーザーは、スクリーンショットが、プログラムのインストール直後にキャプチャされたことにも気付いていませんでした。インストール直後だったので、アルファベット順で表示されたショートカットは [スタート] メニューで強調表示されていました。

この説明に対して、ユーザーからは、「区切り線を復活させて、当社のアプリケーションが、単独で表示されるようにしてもらいたいのですが、あの線を復活させる秘密の設定はありませんか」という反応が返ってきました。

区切り線を復活させる秘密の設定はありません。区切り線を描画するコードはプロジェクトから削除されました。秘密の設定を駆使しても、存在しないコードを記述することはできません。皆さんは、ご自分が開発したプログラムが地球上で最も重要なプログラムだと考えるかもしれませんが、ユーザーの意見が同じであるとは限りません。

 

Raymond Chen は自分の Web サイト「The Old New Thing」および同じタイトルの書籍 (Addison-Wesley、2007 年) で、Windows の歴史、Win32 プログラミング、そして黒い粘着テープの幻の修復力について触れています。

 

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