Windows Media 8 エンコード ユーティリティの紹介
Tricia Gill
Digital Media Division
Microsoft Corporation
March 2001
日本語版最終更新日 2002 年 3 月 20 日
要約: この記事では、Windows Media 8 エンコード ユーティリティを紹介します。このユーティリティは、圧縮されていないオーディオ/ビデオ ファイルを Windows Media 形式に変換するコマンドライン ツールです。 ここでは、ユーティリティの使用法について、ワンステップごとの説明は行ないません。 代わりにエンコード ユーティリティを使い始めるにあたってのヒントを提供したり、一般的な方法で使用するシナリオをチェックしたり、オーディオ/ビデオ コンテンツをエンコードするツールとして Windows Media エンコーダ 7.1 を利用した方がよいケースを取り上げます。
目次
はじめに
使用開始にあたって
ヒント
覚えておきたい事
詳細情報
はじめに
読者は既に、Windows Media(TM) エンコーダ 7.1 を使いなれていると思います。Windows Media エンコーダ 7.1 はライブ配信やオンデマンド配信用に、ライブや記録済みのオーディオ、ビデオやコンピュータ画面イメージを Windows Media 形式に変換する強力な制作ツールです。 ところで Windows Media 8 エンコード ユーティリティも一部それと同じ機能を備えていて、その機能を最新のオーディオ/ビデオ圧縮テクノロジと組合せてコマンド ライン ツールとして提供していることをご存知でしょうか。 このコマンド ライン ツールを使用すると、圧縮されていないオーディオ/ビデオ ファイルを Windows Media 形式に変換できるので、変換したファイルをオンデマンドでダウンロードしたり、ストリームすることができます。
Windows Media(TM) 8 エンコード ユーティリティは、フル機能の Windows Media エンコーダ 7.1 の後継として設計されたわけではありません。 Windows Media 8 は、プロファイルをエンコードしたりフィルタを前処理するなどの機能を持った Windows Media エンコーダ 7.1 のサブセットですが、エンコードされたビデオの品質を制御する次のような新しい諸機能も導入されています:
- 可変ビットレートのエンコーディング
- 固定/可変ビットレートでの 2 パス エンコーディング
- 簡略化されたバッチ エンコーディング
- オーディオ/ビデオの向上した品質を利用する新しいプロファイル
この記事ではこれらすべての特徴を、以下の構成で説明します:
使用開始にあたって。エンコード ユーティリティを使用するための基本的なナビゲーションおよび、コマンド ラインの構文を説明します。
ヒント。エンコーディングの基礎、2 パス可変ビットレート エンコーディング、およびバッチ エンコーディングを説明します。
覚えておきたい事。 Windows Media エンコーダ 7.1 に対して Windows Media 8 エンコード ユーティリティを利用するにあたっての推奨事項を説明します。
メモ 現在 Windows Media 8 エンコード ユーティリティで利用可能な全機能は、今後リリースされる Windows Media エンコーダでも利用できます。
詳細情報.
使用開始にあたって
Windows Media 8 エンコード ユーティリティは、Microsoft Web サイトの Windows Media テクノロジ ページからダウンロードできます。 既定ではファイルは、drive letter:\program files\windows media components\tools ディレクトリにインストールされますが、インストール中に別のディレクトリを指定できます。
ユーティリティがインストールされたら、[コマンド プロンプト] ウィンドウを開いて \program files\windows media components\tools ディレクトリに移動します。 これは実行時のディレクトリとなります。
[コマンド プロンプト] を開いて実行時のディレクトリに移動するには
- [スタート] ボタンをクリックします。
- カーソルで [プログラム] をポイントします。
- [アクセサリ] をポイントします。
- [コマンド プロンプト] をクリックします。 別に [コマンド プロンプト] ウィンドウが開きます。
cd \program files\windows media components\tools
と入力してから、Enter キーを押します。dir
と入力して、ディレクトリの内容を表示させます。 Windows Media 8 エンコード ユーティリティの実行可能ファイルである wm8eutil.exe という項目がリストアップされているはずです。
Windows Media 8 エンコード ユーティリティはコマンド ライン ツールですから、エンコードするすべての作業はこの [コマンド プロンプト] ウィンドウおよび、ユーティリティがインストールされたディレクトリで実行します。 入力するコマンドはすべて、アプリケーション名を先頭に付けます。 コマンド ラインのオプションは、パラメータ名の前にダッシュ (-) を付けて指定します。 正式な構文の例を示します:
wm8eutil -input input_file_name -output output_file_name [-option]
このコマンド ラインには次の文字が含まれています:
- アプリケーション名: wm8eutil または wm8eutil.exe
- ?input オプションおよび入力ファイル名: ?input input_file_name
- ?output オプションおよび出力ファイル名: ?output output_file_name
- 追加オプション: ?option
ユーティリティと共にインストールされたヘルプ ファイルまたはコマンド ラインヘルプには、Windows Media 8 エンコード ユーティリティの使い方についてより詳しい情報があります。
ヘルプ ファイルを表示させるには
[スタート] ボタンをクリックします。
カーソルで [プログラム] をポイントします。
[Windows Media] をポイントします。
[Windows Media 8 エンコード ユーティリティ] をクリックします。
あるいは
コマンド ライン プロンプトで次のように入力します:
wm8eutil –help?
コマンド ライン ヘルプを表示するには
- コマンド ライン プロンプトで次のように入力します:
wm8eutil –all?
ヒント
Windows Media 8 エンコード ユーティリティは、さまざまな数多くの作業を実行できる柔軟なツールです。 ここでは一般的な作業のいくつかを、ユーティリティを最大限に利用するヒントと共に説明します。 つぎの機能が含まれています:
- エンコーディングの基礎
- 可変ビットレートのエンコーディング
- バッチ エンコーディング
- プロファイルの使用
- 統計情報の監視
エンコーディングの基礎
Windows Media 8 エンコード ユーティリティによるエンコード作業は、とても簡単です。 必要なのは、入力ファイル名および出力ファイル名という 2 つの情報だけです。 適用する圧縮量や求めるビットレートなどそれ以外の全設定は、自らほかの設定を指定しない限り、既定値が適用されます。 基本的なエンコーディング コマンドの例を示します:
wm8eutil –input myfile.avi –output myfile.wmv
このコマンドではソース ファイルとして myfile.avi を使い、myfile.wmv ファイルに変換します。 ファイル名の拡張子を指定しないと、拡張子がファイル名に追加されます。 変換されたファイルは、ソース ファイルと同じディレクトリに保存されます。
エンコードするにあたって、次の事項に留意してください:
- ソース ファイルは、圧縮されていない必要があります。 圧縮された .avi ファイルは、Image Compression Manager (ICM) 展開プログラムが利用可能な場合にサポートされます。
- 現在のディレクトリにないファイルをエンコードする場合は、ファイルのフルパスを指定します。
- 1 つのファイルを複数のビットレートでエンコードする場合は、別のコマンド ラインでそれぞれのビットレートを指定します。
可変ビットレートのエンコーディング
Windows Media 8 エンコード ユーティリティの非常に強力な機能の 1 つに、コンテンツを可変ビットレートでエンコードする機能があります。可変ビットレートでエンコードすると、フレームをエンコードするのに使用するビットレートはシーン構成の複雑さと共に変動するため、オリジナルのビデオ画質を維持できます。
2 種類の可変ビットレート エンコーディングがあります:
- 品質ベースの可変ビットレート エンコーディング。 画質レベルを設定する場合に使用します。 コンテンツはエンコーダに 1 回だけ渡され、圧縮されます。 この方法は、画質を保証するケースに使用します。
- ビットレート ベースの可変ビットレート エンコーディング。 ビットレートを設定する場合に使用します。 エンコーダは始めに、コンテンツの複雑さを分析するためコンテンツを読み通します。 2 回目のパスでエンコーダは、収集された情報に基いてコンテンツをエンコードします。 この方法は、出力ファイルのサイズを制御するケースに使用します。
品質ベースの方法を使用する場合、必ず達成すべき平均品質レベルを 0 から 100 の尺度で指定します。 エンコーディング セッション中に使用されるビットレートは設定された品質レベルの範囲内で変動しますが、省略されるフレームはありません。 品質レベルを設定するには、-v_quality オプションを使用します。
他方、ビットレート ベースの方法を使用する時には、ビットレートを指定します。 エンコードされたビデオの品質は指定されたビットレートの範囲内で変動し、ビットレートが高くなると実現される品質は高くなります。 ビットレートを設定するには、-v_bitrate オプションを使用します。
ビットレート ベースの可変ビットレート エンコーディングに要する時間は、コンテンツがエンコーダを 2 回通過するため長くなります。
コンテンツがダウンロードして再生されるケースでは、必ず可変ビットレート エンコーディングを使用します。 Windows Media サービスは、現在可変ビットレート ファイルのストリーム配信をサポートしていません。
バッチ エンコーディング
エンコードするファイルが多数ある場合、バッチ エンコーディングが不可欠です。 バッチ エンコーディング セッションの設定は少し時間がかかりますが、特に同じコマンド ライン オプションをくり返して使用する場合、次回以降の時間と労力の節約になります。
Windows Media 8 エンコード ユーティリティは、バッチ エンコーディング用にテキスト ファイルを使用します。 通常 .bat という拡張子が付くテキスト ファイルには、エンコードするファイル名にコマンドオプションを付けたリストを入力します。 バッチ ファイルは Microsoft [メモ帳] などのテキスト エディタで作成でき、エンコードする準備ができたら、コマンドラインでそのファイルを呼び出します。 エンコーディング コマンドを実行する前に、Windows Media 8 エンコード ユーティリティがインストールされたディレクトリに移動している必要があります。 バッチ ファイル コマンドの例を示します:
myvideo.bat
このファイルには、入力ファイル名や出力ファイル名、使用するプロファイル、その他希望する結果をエンコーディング セッションで実現するのに必要なオプションが記入されています。 バッチ ファイルに記入できる項目数に制限はなく、バッチ ファイルはテキスト ファイルですから編集が容易です。
次に、バッチ ファイルで見かけるコマンドの例を示します。 このコマンドは、30 fps にテレシネされた 640 × 480 bps で 24 fps のフィルムをソースとして取り、逆テレシネ フィルタを使用して 24 fps に変換します。
wm8eutil -input clip.avi -output clip.wmv -v_mode 2 -v_quality 95 -v_keydist 30 -v_preproc 5
wm8eutil -input clip.avi -output clip.wmv -v_mode 2 -v_quality 97 -v_keydist 30 -v_preproc 5 -v_width 320 -v_height 240
wm8eutil -input clip.avi -output clip.wmv -v_mode 1 -v_bitrate 1000000 -v_keydist 30 -v_buffer 10000 -v_quality 100 -v_preproc 5
wm8eutil -input clip.avi -output clip.wmv -v_mode 1 -v_bitrate 500000 -v_keydist 30 -v_buffer 10000 -v_quality 100 -v_preproc 5
-v_width 320 -v_height 240
バッチ ファイルおよび前の例で使用された全コマンドの詳細な説明については、Windows Media 8 エンコード ユーティリティのヘルプを参照してください。
プロファイルの使用
Windows Media 8 エンコード ユーティリティには、Windows Media エンコーダ 7.1 にインストールされているものと同じ多数のプロファイルが含まれています。またプロファイルは、新しい Windows Media Audio および Windows Media Video バージョン 8 の CODEC も使用できます。 ユーティリティには新しいオーディオ プロファイル、CD Audiophile Transparency も含まれています。CD Audiophile Transparency を使用すると、128 Kbps のビットレートでエンコードできます。
プロファイルは編集できませんが、コマンドにオプションを追加することにより、個々の設定を変更できます。 たとえば av700 プロファイルを使用して品質設定を 0 ではなく 40 に指定する場合、次のようにコマンドを入力します:
wm8eutil –input myfile.avi –output myfile.wmv ?profile av700 –v_quality 40
Windows Media 8 エンコード ユーティリティがこのコマンドを処理する場合、プロファイル内の品質設定は無視して、-v_quality オプションで指定された品質設定を適用します。
プロファイルを独自に作成するには、ビットレートやフレーム レート、バッファ サイズ、codec など、エンコーディング セッション中にコンテンツに適用するすべてのオプションを含むコマンドをコマンド ラインに入力します。 設定をくり返し使用する場合は、設定を構成ファイルに保存してください。 プロファイルについての詳細は、Windows Media 8 エンコード ユーティリティのヘルプを参照してください。
統計情報の監視
1 つのファイルをエンコードする時もディレクトリ全体をエンコードする場合も、ファイルがエンコードされた後には、統計情報が表示されます。 表示される統計情報には、エンコードされたバイト数、平均ビットレート、サンプリング レート、ファイル長、使用 codec などがあります。 統計情報ではエンコーディング セッションの進行状況が直ちにわかるので、必要に応じて設定を微調整できます。
既定では、利用可能な全統計情報のサブセットだけ表示されます。 ただしコマンドに -allstats オプションを追加すると、全統計情報が表示されます。 また -silent オプションを使用すると、統計情報をオフにできます。
覚えておきたい事
Windows Media 8 エンコード ユーティリティを使用すると、最新の圧縮テクノロジを使用して既存のオーディオ/ビデオ ファイルをエンコードできますが、残念ながらユーティリティはユーザーのエンコーディングへのニーズのすべてを満足させるように設計されてはいません。 Windows Media 8 エンコード ユーティリティでエンコードするにあたって覚えておきたい事柄の一部を示します:
- 可変ビットレート コンテンツは、Windows Media Player バージョン 7 以上 で再生すると最高の画質になります。 Windows Media Player 6.4 以前のバージョンは可変ビットレート エンコーディングをサポートしていません。
- 可変ビットレート コンテンツは、ダウンロードして再生するシナリオに最適です。 コンテンツをストリームする場合は、可変ビットレート エンコーディングは使用しないでください。ネットワークのデータ 速度は一定なので、ビットレートの大きな変動に適応できないからです。
- マルチビットレートでのエンコーディングは、接続速度がさまざまな複数クライアントに配信する効率的な方法です。 Windows Media エンコーダ 7.1 にはマルチビットレート プロファイルがあり、マルチビットレートでコンテンツをエンコードするのに最も効率的なツールです。
- Windows Media オーディオおよび Windows Media ビデオ バージョン 8 の codec は、Windows Media 8 エンコード ユーティリティだけと組合わせて使用するように設計されています。 次にリリースされる Windows Media エンコーダでは、最新の Windows Media codec をサポートする予定です。
- Windows Media 8 エンコード ユーティリティは、ファイル間のエンコーディングしかサポートしていません。 VCR やデジカメなど周辺機器からエンコードするには、Windows Media エンコーダ 7.1 を使用します。
- Windows Media エンコーダ 7.1は、今なおライブ コンテンツをエンコードしてストリームするための最高のツールです。
詳細情報
より詳しくは、Windows Media 8 エンコード ユーティリティのヘルプを参照してください。
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