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人と人がリアルタイムにつながる俊敏な組織作り

標準化されていないビジネスのスピードが勝敗を決する

現代ビジネスにはスピードが求められます。前回までにご紹介の通り、急激に変化する市場環境の中で、個人と組織の競争力を保っていくためには、変化への適応力、とりわけ適応のスピードが重要です。前回までに、意思決定力を向上させる仕組みとしてのビジネス インテリジェンス (BI) や、組織全体でもれなく知識を引き出すナレッジ マネジメント (KM) も、それらが管理対象とする情報の品質や正規化された矛盾のない管理構造に腐心するよりも、いかにスピーディにそれらを使って行動に移ることができるかに焦点を当てるべき、とご説明させていただきました。これらは、個人と組織が変化へ対応するために、最適な「情報」という武器を効率的に入手するための仕組みです。

もう 1 つ、適応スピードを左右する重要な要素として、「コミュニケーション」のスピードがあります。この要素は、前述のような、どこかに格納された情報の発掘と利用という観点だけでなく、ビジネス プロセス全体の効率性という観点でも大きな影響を与えます。今回は後者の観点を中心にご説明します。

コミュニケーションとは情報伝達です。情報システムにおいては、システムと人、システムとシステム、システムを介して人と人がコミュニケーションを行います。これらはすべて、ビジネス価値を生み出すための中間的、または最終的な情報の伝達手段であることに変わりはないのですが、しかしそれぞれに流れる情報の種類が異なり、したがってスピード アップをするためのポイントもまた異なります。それらの違いを明らかにするために、典型的な「商談」ビジネス プロセスを、以下のように、標準化された基幹業務 (LOB) プロセス、非定型ではあるが手続き的なワークフロー、および完全にスポットなコミュニケーションの 3 種類に分けてみました。

 

最下層に位置する標準化された LOB プロセスは、いわゆる ERP や CRM などの基幹業務アプリケーションがその内部に実装、あるいは相互接続により実現されます。もちろん拡張や変更はあるものの、業務効率化のベストプラクティスを軸としており、その企業のビジネス モデルそのもの、すなわち骨格をなすシステムです。よってここでは、人手による非効率と不安定をシステムにより代替し、安定的なプロセスをできるだけ短いサイクルで運営することが求められます。人とシステムの接点を少なくするほど安定し、システム間のコミュニケーションはデータ (定義は前回を参照してください) によってなされます。したがって、できるだけシステムによる自動化の範囲を広げ、データを統合することで品質と再利用性を高めるのがこのシステムの効率を上げるための基本戦略となります。

ですが、標準化 LOB プロセスだけではビジネスはまわらないことがあります。その場合、市場の変化に対応するために、柔軟性の高い「人」がショック アブソーバーになる必要があります。ここでは手続き的なワークフローの部品を使って、人の判断で、LOB システムと人の集合体である市場のギャップを埋めることになります。ここではいかにスピーディかつ柔軟に部品を組み替えられるか、そしてその伝達経路にいかにスピーディかつ簡単に情報を乗せられるかがカギとなります。システムと人のコミュニケーションとなるため、データまたは文書がやり取りされます。ビジネスによっては、この部分をもテクノロジーとある一定の割り切りをもって自動化し、コスト削減しているケースもあります。

ここまでの 2 つは、システム化において、従来から志向されてきたアプローチであり、いずれも手続きの自動化 (もはやオフィス オートメーションなどの言葉は死語と化していますが) によりプロセスの精度とスピードを向上させようとする試みであることに変わりはありません。しかし、ビジネス プロセスはすべてが手続き的なわけではありません。

人と人との接点においては、非定型かつスポットでのコミュニケーションが頻繁に発生します。また前回ご説明の通り、人との会話による直接的なコミュニケーションを通じて真のナレッジ共有が可能となります。さらにここでは、ビジネスを円滑に進めるために、人をモチベートしながら共同作業を進めるための「ハイタッチ」なコミュニケーションも必要です。しかし同時に、多くのエラーやロスが発生しやすい場所でもあります。

 

Microsoft Lync 2010 - 先進のリアルタイム コラボレーション プラットフォーム

この人と人のハイタッチなコミュニケーションの効率を向上するのが、ユニファイド コミュニケーションと呼ばれる技術です。マイクロソフトでは、電子メールをはじめとする非同期のメッセージング インフラを支える Exchange Server と、リアルタイムなコミュニケーションを支える Office Communications Server を組み合わせたプラットフォームを提供しています。そして間もなく、Office Communications Server の後継製品であり、数多くの機能拡張により新しいブランド名を与えられた新製品「Microsoft Lync」が登場します。

 

Microsoft Lync では、プレゼンス、IM、オンライン会議、VoIP電話機能が、単一インターフェースに結合され、いつでもどこからでも、素早くコミュニケーションを開始できます。Exchange だけでなく Microsoft Office や SharePoint といったコラボレーション プラットフォームと密連携し、慣れ親しんだアプリケーションから直接利用することもできます。また Microsoft Lync では、オンプレミス用のサーバー製品である Microsoft Lync Server 2010、クラウド サービスである Microsoft Lync Online、リッチ クライアントである Microsoft Lync 2010、Web クライアントである Microsoft Lync Web App、スマートフォン クライアント (名称未定) の提供を予定しており、目的やシーンに応じて適切な環境やデバイスから素早く利用することができます。

次回以降、それぞれの機能が実現する価値について、もう少し詳細にご紹介していきます。