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第6回「試す」applimに参加して

昨年はメンターとして、今年は審査員としてapplimに参加しました。

applimとは学生団体applimが主催する大学生のためのマーケティングコンテストで、今年で6回目を数えます。今回のテーマは「Re-invention ~ブランドに、再発明を~」。特別協賛企業を務めるTBSテレビ、日本たばこ産業  (JT)、マイクロソフトがそのブランドとなって、500人を超える学生さんが「これから提案すべきプロダクト、もしくはサービスを考案して下さい」というお題に挑みます。総勢130を超えるチームから予選を突破できるのは21チーム、ここから決勝レセプションに進めるのは6チームとのことなので、なかなかの狭き門です。

マイクロソフト部門の34作品と予選突破した21作品のマーケティングアイデアをしっかりと読み込んで、決勝レセプションに臨みます。ちなみにこの時点でマイクロソフト賞と審査員特別賞はここだなと心に決めていたのですが、最終的にはどちらも違う作品を推すことになりました。資料を読むこととプレゼンを聴くことは違うということですね。

電通の菅野さんの基調講演がとても面白くて、審査員であることをすっかり忘れて聞き入ってました。クリエーティブ・テクノロジストという肩書きを持つ菅野さんはいわゆるビックデータを視覚化し、広告やプロモーションに昇華されている方で、1989年のF1日本グランプリでアイルトン・セナが樹立した世界最速ラップを走行データから再現した「Sound of Honda Ayrton Senna 1989」のPVを見せてもらったときには鼻の奥がツーンとしました。データって、使い方次第で、見せ方次第で、ヒトを感動させられるんです。みなさんもぜひ見て下さい。

決勝レセプションでプレゼンをした6チームは、アイデアそのもの、そのアイデアの裏付け、伝えるための構成と展開、プレゼンテーションのいずれもがレベルが高かったと思います。とくに担当することになった企業や業界が抱えている課題のことを驚くほどきちんと勉強し、把握されていました。

キックオフのときにはSatya NadellaがCEO就任時に全社員に宛てたメールの一部「At our core, Microsoft is the productivity and platform company for the mobile-first and cloud-first world. We will reinvent productivity to empower every person and every organization on the planet to do more and achieve more.」を引用しながら(ここにもreinventという単語が登場します)、我々の現状と課題を伝えたのですが、マイクロソフト部門の多くのチームがここを出発点に企画を発想していました。もちろん、学生さん自身の力もあったと思いますが、ここにはメンター陣のサポートが効いていたのではないかと感じています。applimでは、学生だった参加者が卒業して社会人になってメンターになって戻ってくるという流れができているそうで、こういう積み重ねの工夫は見習わなければいけませんね。

マイクロソフト部門にエントリされていたのはこの2つです。

チームあおちょう

Surfaceを再発明。働き方に着目して、ログイン時に健康データを収集し、体調やパフォーマンスを数値化するサービスを提案。HPとMPというパラメータ付けがゲーム的で個人的に大好きです。生体データを取得する技術的な裏付けと機転の利いたプレゼンが印象的でした。

HALO-V

Microsoft アカウントを再発明。身体情報を追加したフィジカルアカウントを提案し、バーチャルフィッティングというオンラインショップ上でのデジタル試着体験を実現するサービスを提案。Microsoft アカウントへの着目と美しく整理されたプレゼンスライドが印象的でした。聞けばアドビでインターンをしている方がチームにいるとのこと。

結果的には「HALO-V」をマイクロソフト部門 最優秀賞に選出しました。その理由はMicrosoft アカウントを魅力的にするために、また、他のアカウントサービスとの差別化という観点からもフィジカルデータを採り入れることは確かに有効だと私自身が説得されたためです。具体的なサービスとして、ECサイトで洋服を買うときのサイズ合わせが提案されていましたが、それ以外にも健康管理やスポーツにも広げられそうな可能性がありますね。

決め手になったのは、この企画のためにデザインしたロゴを明快に、論理的に説明してくれたこと。さらに、それを説明するスライドを前もって用意していたこと。日頃、デザインはヒトに説明できないと不十分だと説いているので、これにはやられました。「チームあおちょう」が唯一、残念だったのはSurfaceの提案だったことです。これがWindowsの提案だったらもっとスケール感が出せたと思います。

どちらのチームも素晴らしかったのは、提案書とプレゼンのスライドをそれぞれの目的に合わせて準備してきたことです。読まれることを前提としている提案書とプレゼンの視覚情報に過ぎないプレゼンのスライドは情報量やレイアウトは違って然るべきで、安易に読むための資料をプレゼンで使わなかったことは目的と手段を意識できていることの証と言えます。伝える相手に適切な配慮をすることはなかなかできることではありません。

マイクロソフト部門には他にも「あいであまん」の「スマートいれば」、「チーム32」の「Azureを利用した新しい医療ITの普及促進」「リバプール」の「school yammer」、「ワカスタ」の「アバター」、「ALOHA,inc.」の「Windowsの提案」、「333」の「音声認識×ペンダント」、「どす恋」の「医療センター」など、興味を惹かれる提案がたくさんありました。CortanaやYammerに着目したチームがいたことには驚きながらも嬉しかったです。

あえて苦言を呈すると、既存の製品や技術の拡張や延長に留まった提案がいくつかあったこと。お題は「マイクロソフトがこれから提案すべきプロダクト、もしくはサービスを考案」することなので、たとえばKinectを使った新しいサービスではなく、次のKinectをマイクロソフトが出すとしたら、NUIデバイスとしてどうあるべきかという提案が欲しい。Kinectを使ったサービスを展開するのは、マイクロソフトではなく、マイクロソフトのパートナーさんという捉え方もありますし。

いただいたマーケティングアイデアは、私一人で見るには余りにももったいなので、早速、社内の関係者に共有しました。HALO-Vとチームあおちょうのみなさんには、宣言通り、12月の私の所属部門の月例ミーティングで発表していただきますので、よろしくお願いします。他の社員がどう見るのか、どんな質問が出るのか私も楽しみです。終わったら野菜ソムリエ協会認定のOne Microsoft Cafeでお茶しましょう。

「チームあおちょう」のみなさんと

 

「HALO-V」のみなさんと

審査員特別賞に輝いたJT部門の「close」はシンプルなアイデアが審査員の心を打ちました。いや、打ったのは膝かな。分煙を高さで解決するという発想はできそうでなかなかできないことです。プレゼンで使ったビデオも効果的でよかったですね。TBS部門の「壁ドンカモン」は若者らしさ、女性らしさに溢れた爽やかなアイデア。

私自身、たくさんの刺激を受けました。あそこにいたみなさんがこの先どんな人生を歩んでいくのか今から楽しみです。参加したみなさん、ありがとうございました!applimの実行委員会とはこのあとのことも考えてますので、お楽しみに。

エバンジェリスト 春日井