SharePoint 2013 の検索の概要
原文の記事の投稿日: 2012 年 9 月 29 日 (土曜日)
簡単な紹介:
こんにちは。企業のインフォメーション ワーカーのための検索シナリオを担当している SharePoint 組織のチームでグループ プログラム マネージャーを務めている Gerhard Schobbe です。
リリースの目標
最初に、このリリースの目標について説明させてください。
このリリースでは、他のリリースと同様に、いくつかの領域が強化の対象になりました。中でも重視されたのは次の 3 つです。
- 単一のエンタープライズ検索プラットフォームに移行する
- 検索システムを操作するエンド ユーザーに目に見える進歩を提供する
- そのプラットフォームをアプリケーション (SharePoint の他の部分や、サードパーティが開発したものを含む) のためのより一般的な情報アクセス層として確立する
ここでは、これらの目標のそれぞれについて、どのような点が強化されたのかを示す例を使って詳しく説明します。さらに、今後数週間から数か月かけて、一連の投稿でさまざまなサブシステムの内部について詳しく説明します。
単一の検索プラットフォーム
では、単一のエンタープライズ検索プラットフォームに移行するという目標から見ていきましょう。2008 年半ばの FAST の買収と、それに続く Office 2010 のリリースにより、Microsoft SharePoint 2010 の製品ラインアップには、異なるテクノロジ スタックに基づく 2 つの層の検索サービスが含まれるようになりました。SharePoint 2010 には、レドモンドで開発されたコードベースに基づくエンタープライズ検索システムが含まれており、その上の層には、買収を受けて FAST のテクノロジ スタックに基づいて開発された FAST Search Server 2010 というシステムが含まれています。
しかし、両方の実装の最良の部分を組み合わせたシステムを作れば、より優れた汎用のエンタープライズ検索製品が実現されるだけでなく、お客様の選択も簡単になるため、良いことずくめなのは明らかでした。さらに、全体的なアーキテクチャを見直す過程で、更新されたコンテンツとクエリの処理のフレームワークなど、FAST で本格的なリリースまで至らなかったいくつかの最新コンポーネントを統合する機会も得られます。
この計画の結果、数年間のエンジニアリング作業を経て、SharePoint 検索でおなじみのクローラー/コネクタ フレームワークと FAST の次世代コンテンツ処理/クエリ処理フレームワークを組み合わせた単一のシステムが生まれました。これらはすべて、FAST Search に基づく検索コアと連携します。
エンド ユーザーと IT 管理者の既定のユーザー エクスペリエンスは、今回も SharePoint でホストされます。ただし、エンド ユーザーのエクスペリエンスは、2010 のサーバー ベースのレンダリング アプローチから非同期のクライアント側アプローチに変更されています (これについては後ほど詳しく説明します)。
さらに、ランク付けアルゴリズムやおすすめ候補などのさまざまなジョブのランタイムとして機能する新しい分析エンジンを統合することもできました。
そのほか、この検索プラットフォームをクラウドでホストするためにも多くの作業が行われました。最新バージョンの O365 サービスで使用される予定です。
以上を図にまとめると、次のようになります (図をクリックすると拡大されます)。
革新的なユーザー エクスペリエンスの作成
次に、すべてのエンド ユーザーに飛躍的な進歩を提供するという 2 つ目の目標について見てみましょう。従来は、ユーザーが検索センターのホームページで検索用語を入力すると、それらがキーワードとして処理されて、3 行の概要と少量のメタデータを含むリンクのランク付けされた単一のリストが結果として返されました。以降では、これらがそれぞれどのように進化したのかを説明します。
検索センターのホームページが主要なエントリ ポイント:
このリリースでは、すべてのチーム サイトのすべての検索ボックスから、従来のスコープのサイト検索だけでなく、エンタープライズ検索、人の検索、およびその他の特殊な検索のエクスペリエンスに完全にアクセスできます。検索ボックス内のドロップダウン リストで目的のスコープを選択できます。
これにより、SharePoint のチーム サイトやさまざまなハブで作業しているすべてのユーザーが、エンタープライズ レベルの検索エクスペリエンスをいつでもすぐに利用できるようになります。
すべての用語がキーワード:
許可を得てお客様のクエリ ログをいくつか詳しく分析したところ、多くのユーザー クエリにキーワードとコマンド ワードが混在していることが明らかになりました。コマンド ワードは、ユーザーが求めている結果の種類を示す場合があります。そのほかに多かったのは、ナビゲーションに関するクエリです。これは、期待されている結果が場所であるクエリです。その場所には、チーム サイト、その他の Web サイト、ドキュメント ライブラリ、さらにはユーザーが何度か使用したことがある特定のドキュメントも含まれます。
コマンド ワードの概念について詳しく検討するために、"marketing deck" (マーケティング デッキ) という例について見てみましょう。この例では、ユーザーがマーケティングに関するプレゼンテーションを探しているのは (人間の目には) 明らかですが、"deck" (デッキ) という語は業界用語なので、どのプレゼンテーションにも含まれていません。このような場合は、クエリに含まれる用語を実際のキーワード (この場合は "marketing" (マーケティング)) とコマンド ワードに分類して、コマンド ワードをクエリに対する他の制約 (この場合は、結果の種類をプレゼンテーションとして定義されているすべてのファイルの種類に限定する "種類" の制約) に変換する方がはるかに有効です。これは、たとえば、ユーザーがサイトを探している場合や、Web ページ以外のドキュメントを探している場合の手がかりにも当てはまります。この思考過程から生まれたのがクエリ ルールです。クエリ ルールとは、クエリの用語をキーワードにマップして、コマンド ワードをプロパティ クエリに変換できるようにする、クエリ分析のための一般化された拡張可能なシステムです。クエリ ルールには、ユーザーの動作を活用して結果ブロックを作成するなどのより高度な機能もあります。クエリ ルールを使用して実現できることについては、今後のブログ投稿で詳しく説明します。
ランク付けされた単一の結果リスト:
クエリ ルールでは、同じクエリの複数の解釈が許容されます。たとえば、まず、上の例のように種類の制約に的を絞った解釈によって一連のドキュメントが返されます。また、マイクロソフトのような企業では "Marketing" (マーケティング) という用語が職種の辞書で部門として明確に定義されているため、この用語によって別のルールが呼び出されて、部門ごとのコンテンツを含む企業の HR リポジトリにスコープが限定された結果が返されます。さらに、これらの解釈が両方とも間違っていて、ユーザーが求めている結果が得られる可能性が最も高いのはインデックスに対する従来のキーワード クエリであると想定することもできます。この 3 つの結果セットを 1 つのページにまとめようとするときに必要になるのが、結果ブロックの概念です。結果ブロックは、ランク付けされた単一の結果リストを、ランク付けされた一連のブロックで拡張します。これらのブロックはさまざまな場所に挿入され、各ブロックにそれぞれランク付けされた結果が含まれます。
ここでも、基となる概念の力を示すためにはこの領域全体についてより詳しく説明する必要があります。
次のスクリーンショットをご覧ください。これは、"marketing deck" (マーケティング デッキ) というクエリに対する結果ページの例です。ここでは、"marketing" (マーケティング) というクエリに一致した "deck" (プレゼンテーション) を含むブロックの後に、完全なクエリに対する標準の結果が続いています。
3 行の概要を含むリンク:
画面上の同じスペースにさらに多くの情報を詰め込んでも、ユーザーが結果リストで最適なものをすばやく見つけられるようにならないのは明白でした。そのため、サイト、ドキュメント、および会話のプレビューをはるかに大きく表示できるホバー パネルが導入されました。これにより、ドキュメントや Web ページを読むだけの暗黙的に一方通行だったエクスペリエンスを、ユーザーが検索結果で直接実行できる拡張可能な一連のアクションへと拡張するための余地も生まれました。たとえば、ドキュメントをフォローする、編集モードに切り替える、ドキュメントが格納されているライブラリを共有したり開いたりしてその他のコンテンツを確認するなどの操作を実行できます (しかも、これらはすべて既定のアクションです)。
さらに、いくつかの種類のドキュメントでは、テキストの概要だけでなくセマンティック セクションを抽出することもできます。それらは、ホバー パネル内の強力な "ディープ リンク" として表示されます。たとえば、ファイル名からは内容がわからない場合でも、PowerPoint プレゼンテーションのスライドには、内容がわかるようなタイトルが付けられている可能性があります。
キーワードに対応するスライド タイトルが抽出されて表示されるようになれば、インデックス内の 1 億ものアイテムのクエリを、関連するタイトルを持つ 1 つのスライドに絞り込むことができます。さらに、1 回クリックするだけで、プレゼンテーションのそのスライドの箇所を開くことができます。この機能は、Word 文書や Excel ドキュメントでも使用できます (グラフと名前付きテーブルが対象)。さらに、SharePoint サイトでも使用できます (最上位のサブサイトとドキュメント ライブラリが対象)。
これらの新機能のすべてをサポートする UI フレームワークも再設計されています。新しい UI フレームワークは、JavaScript と HTML で定義される入れ子状のレイアウト テンプレートに基づいているため、従来よりはるかに簡単に拡張できます。結果の種類ごとに、結果リストのレイアウトを制御するテンプレートとホバー パネルのテンプレートが 1 つずつあります。ブロックのレイアウトはまた別のテンプレートによって制御されます。すべての結果のレイアウトはグループ テンプレートによって定義されます。これらすべてを、目的の表示レイアウトに合わせて調整できます。たとえば、既定で含まれているビデオ検索では、カスタマイズされた結果レイアウトを含むグリッド レイアウトを使用してビデオの結果が表示されます。テンプレートを変更するだけで外観を一変させることができます。基本の結果 Web パーツのコードを変更する必要はありません。
これらすべての機能強化により、SharePoint のどこからでも利用でき、従来よりはるかによくユーザーのクエリを理解して、高度に視覚的な結果を返す (サイトやドキュメントの内部の最も詳細な情報に直接アクセスして、結果ページから離れずに結果を操作できます)、強力で応答性の高いユーザー エクスペリエンスが実現されます。
次の図は、このユーザー エクスペリエンスを PowerPoint プレゼンテーションで使用した例を示しています。ファイル内の関連するスライド タイトルへのリンクと、デッキのページ間を移動できるプレビューが表示されています。パネル下部には一連のアクション リンクも含まれています。
情報アクセス プラットフォームとしての検索
3 つ目の目標は、検索プラットフォームをより一般的な情報アクセス プラットフォームとして確立することでした。
適切に構成されたエンタープライズ検索のインデックスは、企業内で利用可能な情報の驚くべきコレクションを構成しています。さまざまなドキュメント管理システムで個別に管理されている情報が集められているだけでなく、それらのシステムのメタデータ スキーマが標準化されています。
それらの情報をキーワード駆動型のインタラクティブなユーザー エクスペリエンスとして公開するだけでもすばらしいことですが、その利用価値はそれだけにとどまりません。基になるシステムの境界に制限されずに、コンテンツのキーワードに基づく照合とランク付けを活用して最も適切なアイテムを最初に表示するユーザー中心のビューは、さまざまな情報エクスペリエンスに活用できます。
たとえば、SharePoint 2013 には次のような機能が既定で含まれています。
- 個人用サイトでは、自分に割り当てられたすべての SharePoint タスクの一覧が、割り当てが格納されているサイトに関係なく表示されます。
- すべてのドキュメント ライブラリの上部に表示されるようになった検索ボックスから、メタデータとドキュメントの全文を検索できます。結果リストは、結果ページとしてではなく標準の SharePoint ビューとして表示されます。
- 投稿やディスカッションのハッシュ タグをクリックすると、そのトピックに関する社内のすべての会話のリストが表示されます。
このリリースには、そのほかにも、ルールに基づいて種類を定義するための新しい方法 (たとえば、契約書は汎用のファイルの種類 "Word" とは異なる種類である必要があります)、UI および XRANK で調整可能な既定の関連性の強化、SharePoint と Exchange にまたがる電子情報開示、コンテンツを最新の状態に保つ継続的なクロール、"ハイブリッド" 構成で O365 テナントの結果を社内の結果と結合する機能、CSOM と RESTful の API など、すばらしい新機能が数多くあります。
興味を持たれた方は、オンラインの O365 プレビュー環境 (英語) にサインアップするか、ここ (英語) からファイルをダウンロードしてローカル コンピューターにインストールしてください。
皆様のご意見をお待ちしています。
G.
これはローカライズされたブログ投稿です。原文の記事は、「Overview of Search in SharePoint 2013」をご覧ください。