SharePoint 2013、Exchange 2013、および Lync 2013 の電子情報開示の概要
原文の記事の投稿日: 2012 年 11 月 9 日 (金曜日)
多くの組織には、電子メール メッセージや電子ドキュメントの形態のデータが大量にあります。電子メールやドキュメントだけでなく、ソーシャル データ、インスタント メッセージ、Web ページなど、その他の種類のコンテンツもあります。法的な問題が生じると、こうしたデータの保持、検索、および提出が大きな法的リスクになります。これらのコンテンツを検索して電子情報開示に適した形式でエクスポートするにはどうすればよいでしょうか? ビジネスを保護しつつユーザーに最高のコラボレーション テクノロジを提供するにはどうすればよいでしょうか? こうしたニーズに応えるのが、SharePoint Server 2013、Exchange Server 2013、および Lync 2013 の新しい電子情報開示機能です。
電子情報開示とは、訴訟や捜査に必要な電子コンテンツの検索、保持、分析、および提出のプロセスです。インプレース保持、ほぼリアルタイムの検索、および対応コンテンツの増加により、このプロセスに要する時間を節約し、法的なリスクを軽減できるようになりました。SharePoint 2010 と Exchange 2010 の電子情報開示機能が拡張されて、SharePoint、Exchange、Lync、およびファイル共有の電子情報開示をすべて 1 か所から実行できるようになったほか、インプレース保持を使って SharePoint と Exchange のコンテンツを保護したり、電子情報開示クエリを使ってコンテンツの識別と削減を行ったり、法務レビューのために結果をオフライン形式でエクスポートしたりできます。
SharePoint 2013、Exchange 2013、および Lync 2013 による電子情報開示の簡単な概要を以下に示します。
- インプレース保持: コンテンツをその場でリアルタイムに保護します。これにより、コンテンツの再現性が向上し、ストレージ コストが削減されます。ユーザーの毎日の仕事に影響を与えることもありません。
- クエリ: 最新の関連コンテンツと統計情報をすばやく取得して、質問に速やかに答えることができます。エクスポート: 関連コンテンツをポータブルなオフライン形式でシステムから転送します。
- 対応コンテンツの増加: ドキュメント、電子メール メッセージ、OneNote ファイル、Web ページ、コミュニティへの投稿、ミニブログ、Lync IM など、さまざまなコンテンツを保持、検索、およびエクスポートできます。
SharePoint 2013 には、電子情報開示センター サイト コレクションが導入されています。このサイト コレクションは、eDiscovery Reference Model (EDRM) の前半部分、すなわち、識別、保全、収集、処理、および分析を支援する機能を備えています。電子情報開示センターは、社内でも Office 365 でも使用できます。また、Exchange に接続できるため、SharePoint、Exchange、および Exchange にアーカイブされた Lync コンテンツにまたがる電子情報開示を実行できます。電子情報開示センターでは、電子情報開示ケース サイトを作成して、特定のケースのインプレース保持、クエリ、およびエクスポートを整理できます。電子情報開示ケース サイトは、電子情報開示の作業を行う社内法務チームのための機能です。
図 1: 電子情報開示ケース サイトのホーム ページ
インプレース保持を使ってデータを保持する
お客様によれば、法的な問題が生じると、多くの場合、証拠となる可能性がある関連コンテンツが変更されたり破棄されたりしないようにする必要があります。コンテンツは、電子メール サーバー、ファイル共有、コンテンツ管理システム、ユーザーのコンピューターなど、さまざまな場所に散らばっています。以前のバージョンの SharePoint は、ページやリストなど、オフライン コピーにエクスポートするのが困難な種類のコンテンツが数多くあるために電子情報開示上の課題となっていました。SharePoint 2013 では、新機能の電子情報開示セットにより、コンテンツの保護がより簡単になっています。この機能を使うと、Exchange メールボックスと SharePoint サイトを識別し、それらをグループ化してフィルター条件を適用し、コンテンツにインプレース保持を適用できます。
図 2. [電子情報開示セット] ページでは、Exchange メールボックスと SharePoint サイトのインプレース保持を管理できます。
インプレース保持では、ユーザーは引き続きコンテンツを編集したり削除したりできますが、その裏で、電子情報開示のために元のバージョンが保持されます。その場で保持されるため、各アイテムのメタデータとコンテキストも維持されます。
インプレース保持:
- ブログ、Wiki ページ、ミニブログのコンテンツ、アーカイブされた Lync インスタント メッセージ、電子メール メッセージ、予定表アイテム、連絡先など、さまざまなコンテンツがその場で保持されます。
- 広範なコンテンツ (SharePoint サイトと Exchange メールボックス) をすばやく保護してリスクを軽減できます。関係がありそうなコンテンツをすべてコピーするために何週間も何か月も費やす必要はありません。
- 編集または削除されたコンテンツのみが保持されるため、ストレージ コストを削減できます。フィルターを入力して、保持するコンテンツの量を減らすこともできます。
クエリを使って関連データを識別する
法務レビューのコストは 1 GB あたり数千ドルに及びます。そのため、電子情報開示プロセスでは、法務レビューに回すコンテンツの量を減らすことも重要になります。新しい [電子情報開示クエリ] ページでは、キーワード構文、プロパティ制限、および絞り込みを使って、データを識別して減らすことができます。このクエリ機能では、検索したコンテンツを判断しやすいように、個々のソースとクエリ フラグメントの統計情報が提示されます。SharePoint と Exchange のコンテンツをプレビューして、識別した結果が間違っていないかどうかを確認することもできます。
図 3. [クエリ] ページでは、キーワード、絞り込み条件、および統計情報を使って関連コンテンツを識別できます。
電子情報開示クエリでは、統計情報とプレビューを使って、コンテンツを関連アイテムのみに絞り込むことができます。以下に主な機能とその例を示します。
- 近接検索: たとえば、wingtip NEAR(30) marketingでは、"wingtip" が "marketing" から 30 ワード以内にある結果が識別されます。
- Exchange ドメインによるフィルター: たとえば、 @contoso.comを含むすべての結果を取得できます。
- Exchange、Exchange にアーカイブされた Lync コンテンツ、SharePoint、およびファイル共有を 1 つの検索ページから検索できます。クエリの統計の内訳を取得して、クエリの個々の部分が結果セットに与える影響を確認できます。
データをエクスポートする
電子情報開示で SharePoint と Exchange を扱う際の最大の課題の 1 つは、データをポータブルなオフライン形式でシステムから取り出すことです。これは、社内でも Office 365 でも問題になります。新しいバージョンでは、いくつかのボタンをクリックするだけで簡単にデータをエクスポートできるようになりました。クエリが終了したら、[エクスポート] ボタンをクリックし、いくつかのオプションを選択して、検索結果を直接ローカル コンピューターにダウンロードできます。このエクスポート機能では、重複する Exchange コンテンツを削除したり、SharePoint のドキュメントのバージョンを含めたりできます。検索できないアイテム (インデックス処理エラーがあったアイテム) を含めることもできます。
図 4. エクスポート機能を使うと、データが社内にあっても Office 365 にあっても、Exchange と SharePoint の検索結果を簡単にダウンロードできます。
エクスポートには、エクスポートされたアイテムに関するメタデータを提供する Electronic Discovery Reference Model XML (英語) マニフェストが含まれます。エクスポートしたコンテンツは次のように処理されます。
- Exchange コンテンツ (アーカイブされた Lync コンテンツを含む) は PST ファイルに格納されます。
- SharePoint コンテンツとファイル共有コンテンツはネイティブ形式でダウンロードされます。
- SharePoint ページは MHT ファイルとしてキャプチャされます。
- SharePoint リストは CSV ファイルとして格納されます。
エクスポートが完了したら、一般的なレビュー ツールにインポートしたり、法務レビューに回したりできます。
まとめ
新しい電子情報開示機能には、法的な調査に役立つ 3 つの特長があります。
- インプレース保持: コンテンツをネイティブ ストアで保持および検索できます。この方法は、現行のプロセスよりすばやく簡単で、コンテンツの再現性も高くなります。さらに、記憶域の使用量も削減できます。
- ほぼリアルタイムの検索: SharePoint と Exchange の組み込みの検索システムが使われるため、常に最新のコンテンツが検索され、いつでも検索を実行できます。最新のライブ データを検索して数分で答えを得ることができます。
- 対応コンテンツの増加: OneNote ファイル、Web ページ、コミュニティ、ミニブログ、Lync の IM、Lync 会議など、さまざまなコンテンツを保持、検索、およびエクスポートできます。
SharePoint 2013、Exchange 2013、および Lync 2013 を使うと、法的なリスクを軽減し、時間を節約できます。これらがあれば、法的な要求に速やかに対応して、組織を保護することができます。ユーザーのじゃまになることもありません。
この機能を使うには、まず電子情報開示センター サイト コレクションを作成し、次に電子情報開示ケース サイトを作成します。Exchange との統合を実現するにはいくつかの構成が必要です。詳細については、TechNet の記事「SharePoint Server 2013 で電子情報開示を計画する」を参照してください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。ご質問をお待ちしております。
Quentin Christensen
プログラム マネージャー、エンタープライズ コンテンツ管理
これはローカライズされたブログ投稿です。原文の記事は、「Intro to eDiscovery in SharePoint, Exchange, and Lync 2013」をご覧ください。