Azure RemoteApp 提供終了と今後に関する補足
こんにちは、マイクロソフトの前島です。
8月12日(日本時間では8月13日未明)、Microsoft のデスクトップ仮想化ソリューションに関する重要な発表がありました。この中には、既存サービスである Azure RemoteApp (以下 ARA)提供終了のお知らせも含まれています。
“サービス提供終了” という言葉だけだと、どうしてもネガティブな印象を持たれる方もいらっしゃるかと思います。
ですが今回の施策は極めて前向きなものであり、現在 ARA をご利用中のお客様を含め、すべてのユーザーによってプラスとなるように検討した結果であるとご理解ください。
公式発表記事(英語)だけではご理解しにくい点もあるかと思いますので、現時点でお伝えできる情報を整理してご紹介します。
なおお約束事ですが、本文に入る前に下記2点ご了承ください。
- 本記事には、 XenApp “express” などの現在開発中の製品に関する情報が含まれています。今後の開発において、提供されるサービスや機能に変更が生じる可能性があります。
- 本ブログ記事はオフィシャルなものではありません。公式発表との差異がないように細心の注意を払っていますが、万が一、公式情報と違う内容・ニュアンスになってしまっている場合は公式情報が正となります。
■ 簡単にまとめると?
Microsoft と Citrix は20年以上にわたって協業してきましたが、パートナーシップを一層強化し、それぞれの強みを活かしたサービスを共同で作っていきます。
いくつかの協業施策が進行中ですが、限られたリソースを集中的に投入し、より良いサービスを迅速に提供できるよう、重複するサービスを統合することも検討しています。その一環として、今回 ARA の提供終了、および新しく開発中の XenApp “express” などへの移行プランを発表しました。
■ どこで発表されたの?
Micorsoft と Citrix それぞれのサイトで、同時発表されています。
【Microsoft : Application remoting and the Cloud】
【Citrix : Quickly deliver secure apps from Azure to any device - New Citrix cloud service combines the simplicity of Microsoft Azure RemoteApp with the enterprise security and scale of Citrix XenApp】
https://www.citrix.com/global-partners/microsoft/remote-app.html
■ どうして Azure RemoteApp のサービスを終了するの?
平たく言うと、Microsoft と Citrix それぞれの得意分野にリソースを集中させ、”好いとこ取り”することで、より良いサービスを迅速に提供できるようにしていくためです。
両社で重複していたり、いずれか一方が先行する分野は統合・集約し、相互補完関係の下でひとつのソリューションを完成させる方針をとります。
最近流行りのキーワードでいうと、企業間の垣根を越えた「選択と集中」ともいえます。
ご存知のように、デスクトップ仮想化の分野は長年Citrix 社がけん引してきており、さまざまな機能・実績において一日の長があります。
一方の Microsoft は、プラットフォームとしての Azure に対する積極的な投資を継続しており、他社パブリッククラウドサービスをしのぐ勢いで成長を続けています。
今回新たに発表したサービス、XenApp “express” はまさにこの組み合わせ(Citrix のデスクトップ仮想化技術 + Microsoft の Azure プラットフォーム)を具体化したマネージドサービスです。具体的な機能等は今後追って公開される予定ですが、ARA で現在ご提供中の機能を網羅しており、確実に移行できるという判断のもと、重複する ARA の提供終了を決定しました。
■ XenApp “express” ってどんなもの?
Citrix がAzure 上で提供する、マネージド型のデスクトップ・アプリケーション提供サービスです。ARA は Windows Server 標準機能である RDS (Remote Desktop Services) をベースにした仕組みでしたが、これの Citrix XenApp 版と言えます。
通常 XenApp 環境を動かすためには各種サーバーの構築や運用が必要ですが、これらをCitrix が管理することで、難しいインフラの設計や運用を考えることなく、サービスとして利用いただくことができます。
Azure RemoteApp の良さ(簡単さ、従量課金、柔軟性など)はそのままに、Citrix ならではの強み(監視機能、画面転送プロトコルの HDX など)が組み合わさります。
また、諸々の事情で ARA では実装しきれなかった機能、たとえば Azure Resource Manager (ARM) 対応なども計画されており、選択と集中の効果をみなさまにお届けできる予定です。
なお、8月23日 (日本時間では8月24日 午前2時)に、Citrix / Microsoft 共催のバーチャルイベントが予定されており、そちらでより詳細な情報が公開される見込みです。どなたでも参加可能ですので、ご興味のある方はこちらの “Register now” ボタンより事前登録をお願いします。
(8月24日追記) バーチャルイベントで発表された内容をまとめて、別記事として公開しました。
■ 現在 ARA を使っている場合はどうしたらいい?
ARA をご利用中のお客様は、サービス提供が終了する来年8月末までは引き続きご利用いただくことができます。当然ながら、サポートも通常通りに継続されます。
ただし最終的には、来年8月末までに何らかの代替ソリューションに移行いただく必要があります。Microsoft では、具体的な移行先として下記3つを挙げています。
- XenApp “express”
- hosting partners が提供する XenApp や RDS ベースのデスクトップホスティングサービス
- RDS on Azure (Azure IaaS 上で構築する Remote Desktop Services)
なお、できるだけご負担の少ない形で移行いただけるよう、XenApp “express” 移行ツールを開発するなどの準備を進めています。
移行ツールの詳細等は、追って Citrix 社より提供される見込みです。
■ RDS とか MSVDI はどうなるの?
Windows Server 標準機能として提供される RDS や MSVDI ですが、今回の協業によってこれら機能がなくなる予定はありません。
あと1か月半ほどで次期サーバーOS “Windows Server 2016” が登場しますが、当然この中には多くの機能改良(GPU仮想化機能の強化など)が行われた RDS や MSVDI が含まれています。
ARA や XenApp “express” に代表されるマネージドサービスはとても便利ですが、一方でサービスであるがゆえに、必ずしもすべての利用ケースに適合できるとは考えていません。そのため、オンプレミスまたは IaaS 上で自由に設計・構築可能な RDS などは、引き続き提供していきます。
特に、リソースの柔軟性が高い Azure 上で RDS 環境を作りたいというご要望は急速に増えています。Microsoft ではこのご要望に応えるべく、Azure と Windows Server 2016 の RDS との組み合わせにおいて、クラウドならではの新機能(例:SQL Database のサポートなど)も提供する予定です。
手前味噌ですが、このあたりの詳細は 5月に行われた de:code でご紹介させていただいています。
【デスクトップ仮想化の実践 -powered by Windows Server 2016 & Azure-】
- セッション動画: https://channel9.msdn.com/Events/de-code/2016/inf-012
- セッション資料: https://docs.com/decode2016/2966/inf-012-powered-by-windows-server-2016-azure
また、英語での情報になりますが、Windows Server 2016 ベースの RDS を Azure上で展開する場合の具体的な設計の考え方や手順を公開しています。
【Host desktops and apps in Remote Desktop Services on Azure】
なお、この IaaS 方式においても、 RDS 単体ではご要件を満たすのが難しい場合も出てくるかと思います。その場合、XenApp on Azure (IaaS) という形でも安心してご利用いただけるよう、さまざまな準備を進めています。すでに形になっているものの一例として、XenApp の評価環境を数クリックで作れる仕組みを、Microsoft Azure Marketplace で提供しています。
【XenApp Trial on Azure (IaaS) 】
https://azure.microsoft.com/ja-jp/marketplace/partners/citrix/citrix-xacitrix-xa-trial/
■ ほかにどんな協業を予定しているの?
今年5月にラスベガスで行われた Citrix Synergy において、Windows 10 や Office 365 などに関する協業を発表しています。
【Microsoft and Citrix Partner to Help Customers Move to the Cloud】
このうち、本ブログを参照される方の一番の興味は、Windows 10 VDI の話かと思います。8月12日の発表では含まれていませんでしたが、XenDesktop をベースとした "VDI on Azure with Windows 10" の実現に向けても着々と準備を進めています。こちらも8月23日のバーチャルイベントでは言及されるかもしれません。
■ マイルストーンは?
現在公表されている、主なマイルストーンは下記の通りです。
- 8月23日 (日本時間 8月24日 午前2時): Citrix / Microsoft 共催バーチャルイベント
- 9月26日~30日: Microsoft Ignite
この中で Citrix 共同セッションがあり、XenApp “express” のデモなども予定されています。
また、本イベントは Windows Server 2016 / System Center 2016 の Launch event としても位置付けられています。 - 2016年第4四半期: XenApp “express” の Tech Preview 開始
早期評価に興味のある方は、 こちらの “How do I get started?” の入力フォームを埋めて submit してください。 - 2017年初頭: XenApp “express” 正式サービス開始
- 2017年8月末: Azure RemoteApp 提供終了
-- 更新履歴 (本補足情報一覧は、適時更新していく予定です) --
・8月15日: 同日時点で公開可能な情報をまとめて、初版として公開
・8月18日: 「現在 ARA を使っている場合はどうしたらいい?」および「マイルストーンは?」の文言を微修正
・8月24日:「XenApp “express” ってどんなもの?」に、Citrix/MS 共催バーチャルイベントに関する記事リンクを追記