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考えてから話そう

Steven M. List

"ここにいるのは言葉のわからん男だ。"これは『暴力脱獄』という映画の中のセリフです。映画史に残る名セリフの 1 つだと私は思います。そして、開発チーム、中でも特にアジャイル チームと仕事をするときに、肝に銘じるようにしている言葉でもあります。

効果的に機能するチームの核にあるのは、効果的なコミュニケーションの能力です。効果的なコミュニケーションという言葉は、感じたり考えたりしたことを、感じたり考えたりしたそのときに話すことであり、他の人にも同じようにさせることであると、誤って理解されていることがよくあります。または、準備が整うまで待ってから、全員に向かって一気に話すこと、と考えられる場合もあります。もちろん、どちらも効果的なコミュニケーションとは言えません。

それでは、効果的なコミュニケーションの定義はどのようなものでしょうか。意味が交換され、人が敬意を持って扱われ、なんらかの価値が生み出される、そのようなコミュニケーションは効果的と言えます。

意味の交換とは、「それではだめだ」のように断言するのではなく、「それではうまくいかないと思うよ。このことは考えてみたのかな」というように断定的な表現を和らげて対話に持ち込むことです。また、「ばかげた考えだ」といった感情的な言葉遣いをやめて、状況に即した言葉を使うようにします。「プロジェクトの目標から考えて、それではうまくいかないと思うよ。君はどう思う?」

敬意を持って他者と接することが難しい人もいます。わかりやすく説明しましょう。あなたが相手を尊敬しているかどうかということと、相手に対するあなたの振る舞いは別のものです。つまり、言葉遣いや表情を含めた振る舞いは、常に礼儀正しいものでなければなりません。

黄金律やプラチナ ルールはコミュニケーションの優れたガイドラインですが、その解釈は 1 つと決まってはいません。たとえば、私の親友で、「率直にはっきり言ってくれ。気を悪くしたりしないから」と言う男がいます。ほとんどの人は彼のようには考えないので、彼が (黄金律に従って) 自分がそうされたいと思う態度で相手に接すると、相手は気分を害し、侮辱されたと感じます。同様に、彼は他人がどのように扱ってもらいたいのかを本当には理解しておらず (プラチナ ルール)、いくぶん無神経なところもあるので、彼はやはり自分がそうしてほしいと思うように他人に接してしまいます。なぜなら、彼は他人が自分と同じような意見であると思いこんでいるからです。

これは効果的なコミュニケーションとは言えません。ここには、敬意を持って他人に接するという考え方がありません。もっとも、友人は、率直で正直な方が、そうでないよりよほど相手を尊敬した行動であると言うでしょうが。

方程式の最後の部分である「価値を生み出す」ことも、簡単なことではありません。次のような言葉を聞いたことがありますか。

「私は彼に正しいやり方を教えてやったのに、彼はそのとおりにしていない。だから、私は彼に『君は大ばかものだ』と言ったんだ。」

「私は彼に間違っていることを指摘した。どうすればいいかは、彼が自分で考えることだ。」

このようなやり取りから価値が生み出されるでしょうか。もちろんそんなことはありません。このような言い方では相手に不快感を与えるだけで、生産性も士気も向上しません。

価値を生み出すということは、コミュニケーションが終わったときに、当事者間に存在する何かが減るのではなく、増えているということです。理解が深まり、知識が増え、仲間意識が強まらなければなりません。

大事なことは、だれもが効果的なコミュニケーションを学ぶ必要があるということです。それがいやなら、1 人だけでできる仕事を探し、いつでも完璧な結果を出すことです。そうすれば、だれとも話し合う必要はありません。完璧な結果を出せないのなら、そのうちだれかと話し合うことが必要になります。相手を困らせない話し方をしてみてはどうでしょうか。

私のブログを読んだことがある方なら、コミュニケーションには 2 つの基本的なパターンつまり IAAM– と IAAM+ があるという私の考えをご存じでしょう。これらは、「It's All About Me (すべては自分のこと)」というパターンの 2 つのバリエーションです。

つまり、次のように考えることができます。あなたの発言や行動は、すべてあなた自身についての発言であり、行動です。あなたの気持ち、あなたの意欲、あなたの反応がそこに現れます。だれか他人のことではありません。私に言わせれば、「彼は私を怒らせた」とか「彼女は私の気持ちを傷つけた」といった言い方は正しくありません。自分の感情や行動に責任があるのは、他人ではなく自分なのです。ただし、同じようにあなたも他人の感情や行動に対する責任はありませんが、それでも相手に注意を払い、相手に特定の感情を抱かせるような行動に気を付ける責任はあります。

これが効果的なコミュニケーションの核心です。つまり、自分の感情と行動に責任を持つことです。

他人との対話について反省するとき、私は次のようなことをよく考えます。

  • 私がその場にいたなら、たとえ黙って見ていたとしても、私は関与したことになります。
  • だれかが何かを感じた場合、私はそのことに責任はありませんが、そのように感じさせた環境に私も関与している可能性があります。
  • 私は自分の行動と発言を確認したでしょうか。
  • そして最も重要なのは、自分がその関係にふさわしいか、またその関係に貢献しているか、ということです。

会議でも個人的な会話でも、私はいつもこのようなことを考えています。だれもが同じようにすれば、私たちの相互関係からさらに良い結果が得られ、生産性は向上し、チームの結束力は高まることでしょう。

Steven M. List (通称 "Doc") は、キャリアについてのテクノロジスト、リーダー、コーチ、推進者であり、現在は ThoughtWorks で組織変革コンサルタントとして働いています。彼はよく知られたプロの Open Space 推進者であり、Microsoft や ALT.Net コミュニティで働いたこともあります。彼がファシリテーション、コミュニケーション、チーム構築、個人的成長などのトピックについて考察しているブログは、www.stevenlist.com/blog でご覧ください。