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ちょっとひと言
高等教育の改革
David Platt
この話題はいつもどおり 1 月号のために取っておいたのですが、それより先にさまざまな出来事が起こりました。約 18 か月前、初めてのコンピューター サイエンスの大規模公開オンライン講義 (MOOC: Massive Open Online Course) として、スタンフォード大学の Sebastian Thrun による AI に関する講義について報告しました (msdn.microsoft.com/magazine/hh708761、英語)。6 か月前には、MOOC が広く知られるようになっても、学位認定の単位を取得できないため、まだ大学の講義に代わる存在にはなっていないことを報告し (msdn.microsoft.com/magazine/jj883963、英語)、この状況は抗いきれない経済の魅力によってすぐに変わるだろうと予測しました。それが現実になりました。早速お話しましょう。
ジョージア工科大学では、MOOC を使用してコンピューター サイエンスのオンライン修士号を認定することになりました (b.gatech.edu/140FDnH(英語) および slate.me/163CyTJ(英語) 参照)。授業料は、学校の従来のプログラムが 45,000 ドルなのに対し、たったの 6,600 ドルです。教授と顔を合わせる時間はあまりありませんが、授業料に比べればささいなことです。大学に通っていたころ、教授と会う時間はどれだけあったでしょう。その価値はどれくらいだったでしょう (私の場合は、物理学部を除いて、ほとんどありませんでした)。
コロラド州立大学の歴史学教授の Jonathan Rees は、MOOC を悪だと考えています (slate.me/1499qaL、英語)。大学教授としての終身職と役得を失うことや、今までの大学社会とは別世界の経済社会に放り出されることを恐れているのかもしれません。現実世界へようこそ。
もしかすると、彼は視野が狭いため、良質で低価格な教育を幅広い人が受けられることが、従来の大学と比べて費用面、品質面以外にも社会にどれほどのメリットをもたらすかに思い至っていないのかもしれません。詩に関する MOOC が老人ホームの入居者の心に刺激を与えること、囚人がナンバープレート作成以外の技術を身に付け、出所後に雇用の機会を得られること、私の娘のように賢い高校生がさらに学習を進められることなど、想像してみてください。わかりますよね。
Rees の姿は、VCR の普及を阻止しようとして失敗した、1980 年代初頭の映画関係者を思い起こさせます。もう 1 つ、私が思い浮かべるのが映画と演劇の対比です。演劇は、初期コストはあまりかかりませんが、毎回の公演には費用の高い専門施設と出演料が高い役者や音楽家が必要になります。映画は、初期コストはかかりますが、毎回の上映にはコストがほとんどかからないため、できる限り多くのチャネルで、できる限り多くの映画を販売すれば、初期コストを分散できます。ニュー ヨークでは映画チケットは 10 ドルですが、ミュージカル劇場のチケットは 100 ドルです。映画チケットの方がはるかに売れています。同じ経済学が MOOC と教室での講義にも当てはまります。ジョージア工科大学では MOOC の初年度に、利益を上げられるだけの MOOC 学生が集まると予想しています。
私は創造的破壊にはいつも賛成です。これまでタイプライター製造者、旅行代理店、百科事典のセールスマンなどを失業させてきましたが、それを嘆くことはしません。いつも創造的破壊者でしたが、これまで創造的に破壊されることはありませんでした。
私は、自分が開講している講義の価値を高める方法についてじっくり考えます。Harvard Extension School の .NET に関するオンライン講義を 2,000 ドル以上の価値にするにはどうすればよいでしょう。MOOC は拡張できないサービスなので、講師と受講生が直接やり取りすることはできません。そこで、講義の最初に受講生全員を個人的に Skype に招待します。このようにして、受講生の立場、出身、目的などを把握します。遠距離学習に携わる前、受講者全員に講義室で直接話しかけることができたときも、よくこのようにしていました。怠惰な大学院生と比べたら、顔を合わせる時間はいくらか価値のあるものだと自負しています。どのようにしてこの興奮をオンライン グループ ビール セッションを通じて伝播していくこうか考えています。
ジョージア工科大学は、オンライン プログラムの品質を維持することができるでしょうか。私はできると思います。この学校は Thrun の企業 Udacity とパートナー関係にあります。Udacity は MOOC の運用に関して最も詳しい企業です。この段階においてはよくあることですが、解決が必要な課題がまだいくつかあります。不正の検出や、卒業生を潜在的な利用者にすることが大きな課題です。しかし、最初のコラムで述べたように、このような経済の魅力によって、この課題は解決されるでしょう。
私が従来の 4 年制寄宿制大学生だったなら、今頃震えていたことでしょう。しかし、もうすぐ大学生になるティーンエイジャーの父としては (msdn.microsoft.com/magazine/dn385715参照)、高等教育の大規模改革の始まりを見ることができて本当に幸せです。
David S. Plattは、ハーバード大学の公開講座や世界中の会社で .NET のプログラミングの講師をしています。『Why Software Sucks...and What You Can Do About It』(Addison-Wesley Professional、2006 年) や『Microsoft .NET テクノロジ ガイド』(日経BPソフトプレス、2001 年) などの、11 冊のプログラミング関連の書籍の著者でもあります。2002 年には、マイクロソフトから Software Legend に指名されました。David は、8 進法で数える方法を学べるように、娘の 2 本の指をテープで留めるかどうか悩んでいるところです。連絡先は rollthunder.com(英語) です。