ユニバーサルアプリ

[アーティクル]
01/02/2015

アプリに OBEX を装備する

この 10 年間で、携帯電話、PC、ヘッドセットなどのデバイス間の近距離ワイヤレス通信技術として、 Bluetooth が広く使われるようになっています。Buluetooth Special Interest Group (BTSIG) は、Bluetooth プロファイル仕様のワイヤレスサービスに関する標準を定める業界団体です。

こうしたプロファイルの 1 つが Object Push Profile (OPP) で、デバイス間のファイルのやり取りに使われます。この OPP の基礎の一部となるのがオブジェクト交換プロトコル (OBEX: Object Exchange Protocol) です。OBEX は OPP 以外のプロファイルでも使われ、デバイス間でオブジェクトを転送する汎用プロトコルです。

今回は、アプリで OBEX を使おうと考える開発者向けに、Windows ランタイム (WinRT) の Bluetooth API を基盤に、アプリ内部から OBEX を提供する一連の API を開発します。この一連の API はユニバーサルアプリ用のライブラリパッケージになるため、Windows Store アプリや Windows Phone Silverlight アプリにも同じ API を活用できます。

OBEX と OPP

最初に、OBEX と OPP の概要としくみを理解しておくことが大切です。OPP は、ある Bluetooth デバイスから別の OPP 対応の Bluetooth デバイスに、ファイルまたはオブジェクトを送信できるようにします。OBEX 本来の用途は赤外チャネル経由のファイル共有でしたが、BTSIG はこのプロトコルを Bluethooth 経由のファイル共有に再利用しました。基盤となるトランスポートメディアを除き、赤外チャネル経由の OBEX と Bluetooth 経由の OBEX はほぼ同じです。

OBEX はクライアント/サーバーモデルが基盤です。つまり、受信側の Bluetooth デバイスが OBEX サーバーを実行し、クライアント接続をリッスンし、受け入れます。クライアント側の Bluetooth デバイスは、サーバー側の Blutooth デバイスへ、Bluetooth 経由のストリームチャネルとして接続します。接続とオブジェクト転送を許可する認証要件は、OBEX を使用するサーバーやアプリケーションによって異なります。たとえば、すばやく名刺交換を行うプロセスを効率化する場合、OPP では認証を行わない接続を可能にします。OBEX を使うサービスによっては、認証を受けた接続以外は許可されないものもあります。

ファイルは 3 種類のパケットを使って共有します。このパケットをそれぞれ先頭 PUT、中間 PUT、末尾 PUT と呼びます。先頭 PUT パケットはファイル転送の初期化を表し、末尾 PUT パケットはパケットの完了を表します。中間 PUT パケットは複数存在し、データのブロックを含みます。サーバーは各 PUT パケットを受信すると、受信確認パケットをクライアントへ返します。

通常のシナリオでは、OBEX パケットを以下の手順で送信します。

OBEX クライアントから接続パケットを送信し、受信側のデバイスに接続します。このパケットではクライアントが受信できる最大パケットサイズを指定します。
接続の承諾を示す応答をサーバーから受信したら、OBEX クライアントは先頭 PUT パケットを送信します。このパケットには、ファイル名やサイズなど、オブジェクトを表すメタデータが含まれています (OBEX プロトコルでは先頭 PUT パケットにオブジェクトデータも含めることも可能ですが、今回開発したライブラリのOBEX 実装では、先頭 PUT パケットでオブジェクトデータをまったく送信していません)。
先頭 PUT パケットを受け取った確認をサーバーから受信したら、OBEX クライアントはオブジェクトデータを含む複数の PUT パケットを送信します。送信するパケットの長さはサーバーが受信できる最大パケットサイズに制限します。この制限は、手順 1. で送信した接続パケットに対してサーバーが応答することで設定します。
末尾 PUT パケットには末尾 PUT を表す定数と、オブジェクトデータの最終ブロックを含めます。
ファイル共有を完了したら、OBEX クライアントは切断パケットを送信して Bluetooth 接続を閉じます。OBEX プロトコルでは、手順 2. と 3. を繰り返し、同じ接続上で複数のオブジェクトを送信できます。

OBEX クライアントは任意の時点で ABORT パケットを送信して共有プロセスを中止することができます。その場合、共有は直ちにキャンセルされます。今回のライブラリでは、OBEX プロトコルの実装の詳細は隠されているので、大まかな API しか確認できません。

OBEX ライブラリ

Windows Store アプリ用の Bluetooth OBEX クライアントライブラリは、Windows Store アプリおよび Windows Phone Silverlight 8.1 アプリをターゲットとする移植可能なライブラリとして設計しています。このライブラリには、このライブラリを OBEX クライアントのランタイムにする 3 つの DLL が含まれています。Bluetooth.Core.Service、Bluetooth.Core.Sockets、および Bluetooth.Services.Obex. という 3 つの DLL はそれぞれ特定のタスクを処理するように設計しました。

Bluetooth Core Service: Bluetooth.Core.Service.dll ファイルは Bluetooth.Core.Service 名前空間を含みます。このライブラリは、クライアントデバイスとペアになる近くの Bluetooth デバイスを検索してカウントするように設計しています (図 1 参照)。現在はペアになるデバイスを 1 回だけカウントするように制限します。今後のバージョンには、さらに Bluetooth デバイスの検索を続けるウォッチャーを含める予定です。

図 1 BluetoothService のメソッドと関連イベント

メソッド (パラメーター)

作業を始める

今回のライブラリは Windows Store アプリと Windows Phone 8.1 アプリをターゲットにするため、ユニバーサルアプリを使って作業を始めます。ユニバーサルアプリは、あらゆる Windows デバイス向のアプリを開発する優れた方法です。ユニバーサルアプリの詳細については、bit.ly/1h3AQeu (英語) を参照してください。ユニバーサルアプリを使って作業を始めるには、Visual Studio 2013 で [ストアアプリ] ノードの [ユニバーサルアプリ] から空のアプリケーションプロジェクトを新しく作成します。(図 6 参照)。今回は Visual C# を使いますが、Visual Basic や Visual C++ を使うこともできます。

図 6 空のユニバーサルアプリの新しいプロジェクトを作成

Bluetooth OBEX クライアントアプリのプログラミングを始める前に、両方のプロジェクト (Windows 8.1 用と Windows Phone 8.1 用) の package.appxmanifest ファイルを次のように更新します。

<Capabilities>
  <m2:DeviceCapability Name="bluetooth.rfcomm">
    <m2:Device Id="any">
      <m2:Function Type="name:obexObjectPush"/>
    </m2:Device>
  </m2:DeviceCapability>
</Capabilities>

この更新を行うには、ソリューションエクスプローラーのコンテキストメニューで [コードの表示] を選択し、package.appxmanifest をコードファイルとして開きます。今回は <Application> タグの終りにこのスニペットを追加します。このコードスニペットは、今回のアプリで Bluetooth RFCOMM (Radio Frequency Communication) サービスを使うためのデバイスレベル機能を提供するために必要です。さらに、今回のデバイスと互換性のある全種類のサービスとデバイスも指定しています。

このシナリオでは、あらゆる OPP 対応デバイスと互換性のあるデバイスからの obexObjectPush サポートが必要です。Windows 8.1 と Windows Phone 8.1 でサポートされるプロファイルの詳細については、bit.ly/1pG6rYO (英語) を参照してください。その機能が指定されていなければ、デバイスの列挙が CapabilityNotDefined 列挙型定数で失敗します。

コーディングを始める前に、先ほどの 3 つのライブラリファイルへの参照を追加して、ライブラリの OBEX 実装を使えるようにします。両方のプロジェクトにそれぞれライブラリへの参照を追加する必要があります。参照を追加しないと、プロジェクトでその機能を使用することができません。

以下のコーディングパターンとプラクティスに従います。

Windows プロジェクトには Windows Store 8.1 アプリ用の UX デザインを実装する。
Windows Phone プロジェクトには Windows Phone 8.1 アプリ用の UX デザインを実装する。
共有プロジェクトに共通機能を実装する。
共有プロジェクト内でプラットフォーム固有のコンパイラ定数を使って、プラットフォーム固有の実装を行う (Windows 8.1 には WINDOWS_APP、Windows Phone 8.1 には WINDOWS_PHONE_APP を使用します。このコンパイラ定数はプロジェクトの一部として既に定義されています)。

サンプルコードをダウンロードして、ライブラリに関する実践例を確認し、そのコーディング方法に沿ってユニバーサルアプリを開発することをお勧めします。図 7 はソリューションエクスプローラーウィンドウに表示されたファイル構造とパターンです。

図 7 BluetoothDemo アプリのソリューションエクスプローラー

ペアになるデバイスの列挙

ペアになるデバイスとファイルを共有する前に、ペアになるデバイスの一覧を確認し、ターゲットにするデバイスを選択します。デバイスから提供される Bluetooth コアサービスを表す、Bluetooth.Core.Service.BluetoothService のインスタンスへのハンドルを取得します。Bluetooth サービスはデバイスごとに 1 つしか利用できないため、このインスタンスを GetDefault 静的ファクトリメソッドを使って取得します。

デバイスを列挙するには、SearchForPairedDevicesAsync メソッドを呼び出します。このメソッドは、ペアになるデバイスの列挙を開始します。Windows Store 8.1 アプリの場合、デバイスを列挙するにはペアになるデバイスの使用を許可する必要があります。デバイスの使用をブロックすると、ペアになるデバイスは列挙されません。

API が正常に完了すると、SearchForPairedDevicesSucceeded イベントが発生するので、イベントの引数からペアになるデバイスのコレクションを取得します。正常に終了しなかった場合、SearchForPairedDevicesFailed イベントが発生し、イベントの引数には使用可能なエラー列挙型定数が含まれます。図 8 に、デバイスを列挙するコードを示します。

図 8 ペアになるデバイスの列挙

protected async override void OnNavigatedTo(NavigationEventArgs e)
{
  base.OnNavigatedTo(e);
  await EnumerateDevicesAsync();
}
public async Task EnumerateDevicesAsync()
{
  BluetoothService btService = BluetoothService.GetDefault();
  btService.SearchForPairedDevicesFailed +=
    btService_SearchForPairedDevicesFailed;
  btService.SearchForPairedDevicesSucceeded +=
    btService_SearchForPairedDevicesSucceeded;
  await btService.SearchForPairedDevicesAsync();
}
void btService_SearchForPairedDevicesSucceeded(object sender,
  SearchForPairedDevicesSucceededEventArgs e)
{
  (sender as BluetoothService).SearchForPairedDevicesFailed -=
    btService_SearchForPairedDevicesFailed;
  (sender as BluetoothService).SearchForPairedDevicesSucceeded -=
    btService_SearchForPairedDevicesSucceeded;
  this.cvBtDevices.Source = e.PairedDevices;
}
void btService_SearchForPairedDevicesFailed(object sender,
  SearchForPairedDevicesFailedEventArgs e)
{
  (sender as BluetoothService).SearchForPairedDevicesFailed -=
    btService_SearchForPairedDevicesFailed;
  (sender as BluetoothService).SearchForPairedDevicesSucceeded -=
    btService_SearchForPairedDevicesSucceeded;
  txtblkErrorBtDevices.Text = e.FailureReason.ToString();
}

今回は、Windows 8.1 では BottomAppBar に、Windows Phone 8.1 では ApplicationBar にスキャンボタンを用意しました。アプリのユーザーはこのボタンを使用して、新しくペアになるデバイスが現れたとき、再スキャンを行えるようになります。

Windows Phone 8.1 でデバイスが列挙されるとき、デバイスが実在するかどうか、Bluetooth 無線がオンかオフかに関わらず、すべての OBEX 対応デバイスが列挙されます。ただし、Windows 8.1 でデバイスが列挙されるときは、近くに実在し、Bluetooth 無線がオンになっているデバイスのみが一覧されます。

ペアになるデバイスを列挙したら、ファイルを共有するデバイスを選択します。各デバイスは Bluetooth.Core.Services.BluetoothDevice クラスのオブジェクトとして表されます。オブジェクトにはペアになるデバイスとの接続状態や、デバイスの表示名が含まれます。Bluetooth.Services.Obex.ObexService はその接続状態の情報を内部で使用して、Bluetooth.Core.Sockets.BluetoothSocket のインスタンスを作成し、ペアになるデバイスに接続します。

ObexSercive の使用

ファイル共有のターゲットになるデバイスを表す Bluetooth.Core.Services.BluetoothDevice オブジェクトのインスタンスを取得したら、OPP を用いたファイル共有に Bluetooth.Services.Obex.ObexService を使うことができます。また、共有の際にキューに登録するためファイルのリストも必要です。コードサンプルではごくわずかなファイルしか用意していません。別の方法として、複数のファイルを選択するために Windows.Storage.Pickers.FileOpenPicker (「FileOpenPicker Class」) を使用するか、Windows.Storage.ApplicationData.Current.LocalFolder (「ApplicationData.LocalFolder localFolder property」) のカスタムロジックを使用します。

現時点では、共有できるファイルは接続ごとに 1 つだけです。共有を完了するときに、ターゲットのデバイスとの接続を閉じます。複数のファイルを送信する場合は、Bluetooth.Services.Obex.ObexService インスタンスへのハンドルを複数回取得する必要があります。このインスタンスは、静的ファクトリメソッドの GetDefaultForBluetoothDevice (Bluetooth.Core.Services.BluetoothDevice) を使って取得できます。このメソッドは、デバイス上の Obex サービスを表す Bluetooth.Services.Obex.Obex.Service のインスタンスを 1 つ返します。

共有するファイルを表すには FileItemToShare クラスを使用します。このクラスは、ファイルの名前、パス、サイズ、およびディスク上のファイルインスタンスを表す Windows.Storage.IStorageFile (「IStorageFile Interface」) のインスタンスを含みます。今回は、共有する必要のあるすべてのファイルをデータ構造オブジェクト単位にキューに登録します。複数のファイルを共有するときは、現状、リストの先頭にあるファイルを共有します。共有を完了すると、そのファイルはリストから除外されます。図 9 はファイルの共有用に ObexService とイベントをフックする方法を示しています。

図 9 ObexService とイベントのフック

ObexService obexService = null;
BluetoothDevice BtDevice = null;
ObservableCollection<FileItemToShare> filesToShare = null;
async override void OnNavigatedTo(NavigationEventArgs e)
{
  base.OnNavigatedTo(e);
  if (e.Parameter == null || !(e.Parameter is BluetoothDevice))
  {
    MessageDialog messageBox = new MessageDialog(
      "Invalid navigation detected. Moving to Main Page", "Bluetooth Hub");
    messageBox.Commands.Add(new UICommand("OK", (uiCommand) =>
    {
      this.Frame.Navigate(typeof(MainPage));
    }));
    await messageBox.ShowAsync();
    return;
  }
  BtDevice = e.Parameter as BluetoothDevice;
  filesToShare = GetFilesFromLocalStorage();
  this.cvFileItems.Source = filesToShare;
  obexService = ObexService.GetDefaultForBluetoothDevice(BtDevice);
  obexService.Aborted += obexService_Aborted;
  obexService.ConnectionFailed += obexService_ConnectionFailed;
  obexService.DataTransferFailed += obexService_DataTransferFailed;
  obexService.DataTransferProgressed += obexService_DataTransferProgressed;
  obexService.DataTransferSucceeded += obexService_DataTransferSucceeded;
  obexService.DeviceConnected += obexService_DeviceConnected;
  obexService.Disconnected += obexService_Disconnected;
  obexService.Disconnecting += obexService_Disconnecting;
  obexService.ServiceConnected += obexService_ServiceConnected;
  await obexService.ConnectAsync();
}

ConnectAsync メソッドを呼び出すと、ObexService オブジェクトが、ファクトリメソッドで渡された BluetoothDevice オブジェクトの接続プロパティを取得します。これにより、Bluetooth チャンネル経由でターゲットの BluetoothDevice との接続の作成が試みられます。正常に接続されると、DeviceConnected イベントが発生します。図 10 は、ObexService の DeviceConnected イベントハンドラーを示しています。

図 10 DeviceConnected イベントハンドラーメソッド

async void obexService_DeviceConnected(object sender, EventArgs e)
{
  await this.Dispatcher.RunAsync(CoreDispatcherPriority.Normal, async () =>
  {
    System.Diagnostics.Debug.WriteLine("device connected");
    if (filesToShare.Count > 0)
    {
      filesToShare.ShareStatus = FileShareStatus.Connecting;
      await obexService.SendFileAsync(filesToShare[0].FileToShare);
    }
    ...
  });
}

デバイスがターゲットのデバイスと接続すると、直ちにファイルのリストからインデックス 0 のファイルの共有を開始します。ファイルは、FileToShare 型のデータ構造を持つオブジェクトの IStorageFile によって表されるファイルオブジェクトを渡して SendFileAsync (Windows.Storage.IStorageFile) を呼び出すことで共有します。このメソッドを呼び出すと、ObexService がターゲットデバイスで実行されている OBEX サーバーへの接続を試みます。接続が正常に行われると、ServiceConnected イベントが発生します。接続に失敗すると ConnectionFailed イベントが発生します。以下のコードは ServiceConnected イベントハンドラーを示します。

async void obexService_ServiceConnected(object sender, EventArgs e)
{
  await this.Dispatcher.RunAsync(CoreDispatcherPriority.Normal, () =>
  {
    System.Diagnostics.Debug.WriteLine("service connected");
    filesToShare[0].ShareStatus = FileShareStatus.Sharing;
  });
}

図 11 は、ObexService の ConnectionFailed イベントハンドラーを示しています。

図 11 ConnectionFailed イベントハンドラーメソッド

async void obexService_ConnectionFailed(object sender, 
  ConnectionFailedEventArgs e)
{
  await this.Dispatcher.RunAsync(CoreDispatcherPriority.Normal, async () =>
  {
    System.Diagnostics.Debug.WriteLine("connection failed");
    filesToShare[0].ShareStatus = FileShareStatus.Error;
    filesToShare[0].Progress = 0;
    FileItemToShare currentItem = filesToShare[0];
    filesToShare.RemoveAt(0);
    filesToShare.Add(currentItem);
  });
}

ターゲットのデバイスの OBEX サーバーに接続すると、ファイル共有プロセスが開始します。ファイル共有の進行状況は DataTransferProgressed イベントで判断できます。以下のコードは DataTransferProgressed メソッドを示します。

async void obexService_DataTransferProgressed(object sender,
  DataTransferProgressedEventArgs e)
{
  await this.Dispatcher.RunAsync(CoreDispatcherPriority.Normal, () =>
  {
    System.Diagnostics.Debug.WriteLine("Bytes {0}, Percentage {1}",
      e.TransferInBytes, e.TransferInPercentage);
    filesToShare[0].Progress = e.TransferInBytes;
  });
}

ファイル共有が完了すると、DataTransferSucceeded イベントが発生します。ファイル共有が失敗すると、DataTransferFailedEvent が発生します。以下のコードは、DataTransferSucceeded イベントハンドラーを示しています。

async void obexService_DataTransferSucceeded(object sender, EventArgs e)
{
  await this.Dispatcher.RunAsync(CoreDispatcherPriority.Normal, () =>
  {
    System.Diagnostics.Debug.WriteLine("data transfer succeeded");
    filesToShare.RemoveAt(0);
  });
}

ファイル共有エラーが発生すると、DataTransferFailed イベントが発生します。以下のコードは、このイベントハンドラーを示しています。

async void obexService_DataTransferFailed(object sender,
  DataTransferFailedEventArgs e)
{
  await this.Dispatcher.RunAsync(CoreDispatcherPriority.Normal, async () =>
  {
    System.Diagnostics.Debug.WriteLine("Data transfer failed {0}",
      e.ExceptionObject.ToString());
    filesToShare[0].ShareStatus = FileShareStatus.Error;
    filesToShare[0].Progress = 0;
    FileItemToShare fileToShare = this.filesToShare[0];
    filesToShare.RemoveAt(0);
    this.filesToShare.Add(fileToShare);
  });
}

ファイル共有によるデータ転送が完了すると、共有されたファイルがリストから除外され、ObexService が切断されます。ObexService の切断を開始すると、Disconnecting イベントが発生します。接続が正しく切断されると、Disconnected イベントが発生します。以下は、Disconnecting イベントハンドラーを示しています。

void obexService_Disconnecting(object sender, EventArgs e)
{
  System.Diagnostics.Debug.WriteLine("disconnecting");
}

切断が正しく完了すると、図 12 に示したコードで Disconnected イベントの発生を処理します。

図 12 Disconnected イベントハンドラーメソッド

async void obexService_Disconnected(object sender, EventArgs e)
{
  await this.Dispatcher.RunAsync(CoreDispatcherPriority.Normal, async () =>
  {
    System.Diagnostics.Debug.WriteLine("disconnected");
    obexService.Aborted -= obexService_Aborted;
    obexService.ConnectionFailed -= obexService_ConnectionFailed;
    obexService.DataTransferFailed -= obexService_DataTransferFailed;
    obexService.DataTransferProgressed -= 
      obexService_DataTransferProgressed;
    obexService.DataTransferSucceeded -= 
      obexService_DataTransferSucceeded;
    obexService.DeviceConnected -= obexService_DeviceConnected;
    obexService.Disconnected -= obexService_Disconnected;
    obexService.Disconnecting -= obexService_Disconnecting;
    obexService.ServiceConnected -= obexService_ServiceConnected;
    obexService = null;
    if (filesToShare.Count.Equals(0))
    {
      ...
      MessageDialog messageBox =
        new MessageDialog("All files are shared successfully",
        "Bluetooth DemoApp");
      messageBox.Commands.Add(new UICommand("OK", (uiCommand) =>
      {
        this.Frame.Navigate(typeof(MainPage));
      }));
      await messageBox.ShowAsync();
    }
    else
    {
      obexService = ObexService.GetDefaultForBluetoothDevice(BtDevice);
      obexService.Aborted += obexService_Aborted;
      obexService.ConnectionFailed += obexService_ConnectionFailed;
      obexService.DataTransferFailed += obexService_DataTransferFailed;
      obexService.DataTransferProgressed += 
        obexService_DataTransferProgressed;
      obexService.DataTransferSucceeded += 
        obexService_DataTransferSucceeded;
      obexService.DeviceConnected += obexService_DeviceConnected;
      obexService.Disconnected += obexService_Disconnected;
      obexService.Disconnecting += obexService_Disconnecting;
      obexService.ServiceConnected += obexService_ServiceConnected;
      await obexService.ConnectAsync();
    }
  });
}

Disconnected イベントが発生したら、すべてのハンドラーを削除し、ObexService インスタンスをクリアします。データの転送中、実行中の転送を中止しなければならなくなる場合があります。実行中の転送を中止する場合は AbortAsync を呼び出します。Aborted イベントは以下のコードによって発生し、ターゲットのデバイスとの接続を閉じます。

async void obexService_Aborted(object sender, EventArgs e)
{
  await this.Dispatcher.RunAsync(CoreDispatcherPriority.Normal, () =>
  {
    System.Diagnostics.Debug.WriteLine("Aborted");
    if (!filesToShare.Count.Equals(0))
    {
      filesToShare.RemoveAt(0);
    }
  });
}

まとめ

これでデモアプリは完成です。ユニバーサルアプリという考え方は、複数の Windows プラットフォームやフォームファクターに対して 1 つのコードを作成するもので、これにより開発全体の負担が非常に軽くなります。

ここで使用したライブラリは、数多くの Windows Store アプリや Windows Phone アプリで使うことができます。Code Create (無料の Windows Phone アプリ) や OBEX (ユニバーサルアプリ) を検索して、API がアプリと連携してどのような働きをするか確かめてみてください。今回のライブラリは NuGet リポジトリからダウンロードして入手できます。NuGet オンラインダイアログで "Bluetooth OBEX for Store Apps" を検索して、Visual Studio ソリューションを取得し、プロジェクトへの参照としてこのライブラリをインポートします。

Uday Gupta は、Symphony Teleca Corp. (インド) Pvt Ltd の製品開発部門でシニアエンジニアを務めており、数多くの .NET テクノロジ (特に、Windows Presentation Foundation (WPF)、Silverlight、Windows Phone、および Windows 8) に携わった経験を持っています。

この記事のレビューに協力してくれたマイクロソフト技術スタッフの Jeff Kelley および Guruprasad Subbarayan に心より感謝いたします。

メソッド (パラメーター)	関連イベント
コンストラクター (Bluetooth.Core.Services.BluetoothDevice) コンストラクター (Bluetooth.Core.Services.BluetoothDevice, System.UInt32) コンストラクター (Bluetooth.Core.Services.BluetoothDevice, System.String) コンストラクター (Bluetooth.Core.Services.BluetoothDevice, System.UInt32, System.String)	なし
PrepareSocketAsync	成功時 - SocketConnected 失敗時 - ErrorOccured
SendDataAsync(System.Byte[]) SendDataAsync(System.String)	なし
CloseSocket	SocketClosed
関連メソッドなし	DataReceived

次の方法で共有

ユニバーサルアプリ

アプリに OBEX を装備する

OBEX と OPP

OBEX ライブラリ

作業を始める

ペアになるデバイスの列挙

ObexSercive の使用

まとめ

その他のリソース

メソッド (パラメーター)	関連イベント
[static] GetDefaultForBluetoothDevice(Bluetooth.Core.Services.BluetoothDevice)	なし
ConnectAsync	成功時 - DeviceConnected 失敗時 - ConnectionFailed
SendFileAsync(Windows.Storage.IStorageFile)	成功時: ServiceConnected DataTransferProgressed DataTransferSucceeded Disconnecting Disconnected 失敗時: ConnectionFailed DataTransferFailed
AbortAsync	Aborted

次の方法で共有

ユニバーサル アプリ

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OBEX と OPP

OBEX ライブラリ

作業を始める

ペアになるデバイスの列挙

ObexSercive の使用

まとめ

その他のリソース

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