メッセージ フローの概要
相互接続されたサービスを持つ分散システムでは、サービス間の因果関係を調べる必要があります。状態監視、トラブルシューティング、原因分析などの重要なシナリオをサポートするには、要求フローに含まれるさまざまなコンポーネントを理解することが重要です。.NET Framework 4 では、多様なサービス間でトレースを関連付けることができるように、次の機能のサポートが追加されています。
分析トレース: Event Tracing for Windows (ETW) を使用したトレース機能です。詳細度が低く、パフォーマンスに優れています。
WCF/WF サービス用のエンドツーエンドのアクティビティ モデル: System.ServiceModel 名前空間および System.WorkflowModel 名前空間が生成するトレースの相関関係をサポートする機能です。
WF の ETW 追跡: この機能では、WF サービスによって生成された追跡レコードを使用して、ワークフローの現在の状態と進行状況を把握します。
追跡レコードまたはトレース レコードに記録されたエラーを使用して、コード障害や誤った形式のメッセージを検出できます。エラー状態のアクティビティの特定には、イベントのメッセージ ヘッダーにある Correlation ノードの ActivityId プロパティを使用することができます。アクティビティ ID ごとにメッセージ フローのトレースを有効にする方法については、「メッセージ フローのトレースの構成」を参照してください。このトピックでは、チュートリアル入門で作成されたプロジェクトでメッセージ フローのトレースを有効にする方法を示します。
チュートリアル入門で作成されたプロジェクトでメッセージ フローのトレースを有効にするには
[スタート] ボタン、[ファイル名を指定して実行] の順にクリックし、「eventvwr.exe」と入力してイベント ビューアーを開きます。
分析トレースを有効にしていない場合は、[アプリケーションとサービス ログ]、[Microsoft]、[Windows]、[アプリケーション サーバー - アプリケーション] の順に展開します。[表示]、[分析およびデバッグ ログの表示] の順にクリックします。[分析] を右クリックし、[ログを有効にする] をクリックします。トレースが表示されるように、イベント ビューアーを開いたままにします。
チュートリアル入門で作成されたサンプルを Visual Studio 2010 で開きます。サービスを作成できるように、管理者として Visual Studio 2010 を実行する必要があることに注意してください。WCF サンプルがインストールされている場合、このチュートリアルで作成する完成済みのプロジェクトが含まれている入門サンプルを開くことができます。
Service プロジェクトを右クリックして、[追加]、[新しい項目] の順にクリックします。[アプリケーション構成ファイル] をクリックし、[OK] をクリックします。
上の手順で作成した App.Config ファイルに次のコードを追加します。
<system.serviceModel> <diagnostics> <endToEndTracing propagateActivity="true" messageFlowTracing="true"/> </diagnostics> </system.serviceModel>
Ctrl キーを押しながら F5 キーを押して、サーバー アプリケーションをデバッグなしで実行します。Client プロジェクトを右クリックし、[デバッグ]、[新しいインスタンスを開始] の順にクリックして、Client プロジェクトを実行します。
クライアントからサーバーへのイベントをトレースするには、Client プロジェクトのアプリケーション構成ファイルに次の内容を追加します。
<diagnostics> <endToEndTracing propagateActivity="true" messageFlowTracing="true"/> </diagnostics>
クライアントの Program.cs に、次の Using ステートメントを追加します。
using System.Diagnostics;
Client プロジェクトの program.cs ファイルにある Main メソッドで、トレース GUID をイベント ログに伝達するように設定します。
Guid guid = Guid.NewGuid(); Trace.CorrelationManager.ActivityId = guid;
最新の情報に更新し、[分析] ログを調べます。イベント ID が 220 のイベントを探します。イベントを選択し、プレビュー ペインで [詳細] タブをクリックします。このイベントには、呼び出し元アクティビティの相関 ID が含まれています。
<Correlation ActivityID="{A066CCF1-8AB3-459B-B62F-F79F957A5036}" />
注 :
ActivityID に同じ GUID を持つすべてのイベントは、1 つの要求に関連しています。これは、特定のクライアントから特定のサービスへメッセージを関連付けるために使用できます。このクライアントが別のサービスを呼び出した場合、同じクライアントが ActivityID によって識別されます。 場合によっては、ActivityID が元の GUID から新しい ActivityID に変更されます。その場合、転送イベントが生成されます。このイベント ID は 499 で、イベントのヘッダーに次のデータが格納されます。
<Event xmlns="https://schemas.microsoft.com/win/2004/08/events/event"> <System> <Provider Name="Microsoft-Windows-Application Server-Applications" Guid="{c651f5f6-1c0d-492e-8ae1-b4efd7c9d503}" /> <EventID>499</EventID> ... <Correlation ActivityID="{A066CCF1-8AB3-459B-B62F-F79F957A5036}" RelatedActivityID="{85FC0930-9C49-42DA-804B-A7368104BD1B}" /> ... </System> </Event>
注 :
転送イベントは、アクティブな ActivityID が、ActivityID として指定された GUID から RelatedActivityID として指定された GUID に変更されたことを記録します。転送イベントの生成後は、すべてのイベントに新しい GUID が ActivityID として格納されます。