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例 : Exchange Server サイトの統合 - Proseware, Inc.

 

ここでは、架空の会社である Proseware, Inc. の Exchange Server サイト統合プロジェクトを例として取り上げます。ここでは具体的な説明のために、全米に 5 つのオフィスを持ち、社員数が 500 人を超える Proseware, Inc. という架空の企業の例を取り上げます。Proseware, Inc. のシアトルにある本社は、200 人以上の社員が働く最大規模のオフィスです。デンバー、フェニックス、ロサンジェルス、マイアミの 4 つの支社では、高帯域幅の接続を装備しています。

Exchange サービスの配置は次のようになっています。

  • シアトルの本社には、200 人のユーザー用のパブリック フォルダおよびメールボックスをホストする Exchange 5.5 サーバーを 1 つ配置しています。
  • 各支社には、50 ~ 100 人のユーザー用のパブリック フォルダおよびメールボックスをホストする Exchange 5.5 サーバーを 1 つずつ配置しています。

各支社には、ローカル サーバーを管理する専任の IT 管理者が 1 人ずついます。ただし、サーバーの大部分は、シアトルに配置され、現地の IT グループによって管理されています。Proseware, Inc. は、Exchange 2003 へのアップグレードと、その過程で各 Exchange サイトを統合することを計画しています。最近、サポートおよび監視操作を一元化したため、同様に Exchange の管理も一元化することが望まれています。また、ユーザーの数やメールボックスおよびパブリック フォルダのデータ量も増え続けています。Exchange サーバーの寿命も間近にせまっている状況にあります。

これらの問題に対処するため、Proseware, Inc. はシアトルにデータ センターを設立し、各サイトに Exchange サービスを提供することを計画しています。Outlook 2003 へのアップグレードを行い、Exchange キャッシュ モードを使用する予定です。可用性と拡張性を最大限に高めるために、データ センターでは Microsoft Windows Server™ 2003 のクラスタ化とボリューム シャドウ コピー サービスのバックアップを活用します。

一般にサイトを統合する場合、あらかじめ Exchange ネイティブ モードに切り替えることが推奨されていますが、Proseware, Inc. では、すべての Exchange 5.5 サーバーを Exchange 2003 に移行するためのコストを考慮して、この方法は採用しないことにしました。その代わり、Exchange 2003 SP1 に付属するサイト統合ツールを使用して Exchange データを中央サイトに移動し、Exchange 5.5 サーバーを削除することを計画しています。

以下では Proseware, Inc が実行するサイト統合プロセスを説明します。

サイト統合計画の作成

Proseware, Inc. では、まず最初にサイト統合ツールを検討し、その問題点や必要条件を把握します。シアトルのデータ センターのサーバー リソースで、すべての支社の Exchange サービスをすべてサポートできるかどうかを判断しました。

ユーザーの電子メールの要件を調査してみると、デンバー支社においてエンジニアが電子メールを使用して非常に大きなファイルのやりとりを頻繁に行っていることがわかりました。WAN 経由で大きなファイルを転送する能力が必要になるため、Exchange サーバーをデンバーのサイトから中央サイトに移動することは不可能でした。このため Proseware, Inc. では、デンバー支社の Exchange サーバーを保持することにしました。このため、サーバーを Exchange 5.5 から Exchange 2003 にアップグレードしました。

どのサイトを統合するかを決定した後、Proseware, Inc. はサイト統合計画を作成します。各支社の移行のタイミングを決定する必要がありました。レプリケーションによって発生するネットワークの待機時間を考慮して、パブリック フォルダおよびメールボックスの移動をネットワーク活動の最も少ない週末にスケジュールしました。

Proseware, Inc. では、サイト統合プロセスを開始する前に、シアトルのデータ センター内で Exchange 2003 を展開し、確実に Exchange が混在モードで実行されるようにしました。具体的には、Exchange Server デプロイメント ツールの手順とツールを使用して、第 1 の Exchange 2003 サーバーを展開し、Exchange 5.5 と Exchange 2003 の共存を確立しました。

また、Exchange キャッシュ モードを使用するため、Proseware, Inc. では、4 支社の全クライアント コンピュータを Outlook 2003 にアップグレードしました。各ユーザーのメールボックスのローカル コピーを作成するために Exchange キャッシュ モードを有効にしました。メールボックスを移動する前にローカル コピーを作成することにより、メールボックスをローカル サイトから移動した後に大量のダウンロード トラフィックが発生することを回避しました。

最後に、実際のサイト統合プロセスを開始する前に、テスト用メールボックスを使用してプロセス全体を実行してみました。テストを実行することにより、プロセスを検証し、ネットワークへの影響およびレプリケーションの所要時間に関するデータを収集できました。

フェーズ 1: サイト統合のための準備

Proseware, Inc. では、最初の統合対象であるフェニックス支社に対してサイト統合プロセスを開始します。Exchange Server デプロイメント ツールによって指示される次の手順を実行します。

  1. Proseware, Inc. は、確実にすべての ADC サーバーを Exchange 2003 SP1 バージョンの ADC に更新します。次に、ADC ツールを使用して、すべての ADC 接続許可書が正しく構成されていることを検証します。
  2. Proseware, Inc. は、4 つの支社にあるすべての Exchange 5.5 パブリック フォルダ サーバーを DS/IS 整合性調整機能の修正プログラムを使用して更新します。
  3. 金曜日の夕方に、Proseware, Inc. は、PFMigrate を使用してパブリック フォルダのレプリカをシアトルにある Exchange 2003 サーバーに追加します。週末の間、レプリケーションを続行できます。

フェーズ 2: Exchange の混在モードでのサイト統合

パブリック フォルダのレプリケーションが完了したことを確認した後、Proseware, Inc. では引き続きフェニックスのサイトを統合します。メールボックスの移動と Object Rehome ツールの使用により、待機時間が長くなる可能性があるため、このフェーズの実行は週末に行うことにしました。Exchange Server デプロイメント ツールを使用して、次の手順を実行します。

  1. メールボックスの移動ウィザードを使用して、フェニックスから中央サイトにメールボックスを移動します。
  2. 月曜日の朝にユーザーがログオンしたときに、exprofre.exe が実行されるようにログオン スクリプトを作成します。このスクリプトによりユーザーの Outlook プロファイルが更新され、新しいサイトが反映されるようになります。
  3. 再度 ADC ツールを実行して、接続許可書が適切にセットアップされていることを確認します。ディレクトリのレプリケーションが完了していることを確認します。
  4. Object Rehome ツールを使用して、シアトルのサイトを反映するように、フェニックスにあるカスタム受信者および配布リストを更新します。
  5. Object Rehome ツールによる作業が完了したら、再度 ADC ツールを実行して接続許可書が適切にセットアップされていることを確認します。ディレクトリのレプリケーションが完了していることを確認します。
  6. フェニックスの Exchange 5.5 サーバー上で、DS/IS 整合性調整機能を実行してパブリック フォルダの ACL をクリーンアップします。

フェーズ 3: リモート サイトの削除

フェーズ 2 の完了後、Proseware, Inc. ではシアトルの Exchange 2003 サーバー上ですべての Exchange データが表示されることを確認します。その後、フェニックスの Exchange サーバーを削除します。Exchange Server デプロイメント ツールを使用して、次の手順を実行します。

  1. PFMigrate を実行して、フェニックスのサイトからパブリック フォルダのレプリカを削除します。
  2. ADC ツールを使用して、接続許可書が適切にセットアップされていることを確認します。パブリック フォルダのレプリケーションが完了したことを確認します。
  3. Object Rehome ツールを使用して、配布リストおよびカスタム受信者がフェニックスのサーバーから正常に削除されたかどうかを確認するためのレポートを生成します。
  4. フェニックス支社から Exchange 5.5 サーバーを削除するための手順を実行します。

Proseware, Inc. では、ロサンジェルス支社とマイアミ支社に対して、同じプロセスを繰り返し実行します。これらの作業が完了すると、フェニックス、ロサンジェルス、マイアミのユーザーをホストする Exchange 2003 サーバーがシアトルに配置され、デンバーにはローカルのユーザーをホストする Exchange 2003 サーバーが配置されることになります。最後に、稼動中の Exchange 5.5 が存在しなくなるため、ネイティブ モードに切り替えます。