グループウェアは末永く使えるクラウド プラットフォームに任せよう

発行日: 2010 年 7 月

米田 真一

ここ 2、3 年、ビジネス アプリケーションの分野でもクラウドの導入が急速に進んでいます。中でもメールやファイル共有などを行うグループウェアは、一番クラウド化がされてきている分野です。しかし、目先のコスト削減効果だけで製品選定をしてしまうと、思わぬ落とし穴にはまってしまい後で後悔しかねません。今回は、グループウェアのクラウド化を行うにあたって事前に検討すべきポイントを、技術的な観点からご紹介します。

クラウド コンピューティングは特にメールやグループウェアなどの情報共有基盤の分野から活用が進むといわれており、必要な時に必要な分だけコンピューター リソースを利用し、利用した分だけ支払えばよいというコンピューターの新しい利用形態です。使い方によっては効果的なコスト削減や、環境の変化への対応を柔軟に行うことができるので、うまくサービスを選択して上手に活用したいところです。

ところで、グループウェア サービスの選定にあたっては、単純に大容量メールボックスを提供する安価なクラウド サービスを導入すればよいでしょうか。クラウドにおけるコストを考えるときは、直近でかかってくる月額の費用やサービス開始時にかかる設定・環境整備費用に加えて、将来的にさまざまな要件に応えるための機能拡張、他システムとの連携、将来的な環境の変化に対応するための費用や自由度を想定しておく必要があります。

機能を独自プラットフォームで作り込んでいくとロックインが進む

ディレクトリ システムとの同期や認証基盤の統一、メール送受信時のルール実装など、サービスによっては存在しない機能が求められる場合があります。内製で作り込みをしたり、協力会社に外注したりして追加機能を実装する場合、独自の言語や方法で実装する必要が出てくることがあります。実装の自由度がかなりあるサービスも存在しますが、独自に作り込んでしまうと将来的にそのプラットフォームにロックインされてしまい、かつて一世を風靡した内部設置型のグループウェアで行われた過ちを再び繰り返してしまうことになりかねません。将来的に内部設置型に戻したり、他のソリューションに移行したくなった時に多大なコストがかかることになります。

サービスの選定にあたっては、必要な機能がなるべく標準で実装されており、標準的な方法で簡単な設定やカスタマイズを行うだけで使うことができるものを選択することをおすすめします。

将来を見据えてハイブリッド運用が実現可能な技術を選ぼう

ところで、今後クラウド化はどこまで進んでいくのでしょうか? クラウド コンピューティングは、よく電気ガスや水道、レンタカー、賃貸住宅などにたとえられます。これら既存の「利用」するビジネス モデルのしくみを見てみると、モノによって「利用」と「所有」の割合はさまざまですが、すべて「利用」の形態にはなっていないことがわかります。また、これらの割合はその時の社会情勢によって変化することがあります。コンピューター リソースについても、分野によってある程度までクラウド化が進むと思われますが、その後は「所有」と「利用」の形態がバランスを取りながら推移していくと考えるのが妥当です。

また、ひとつの企業ではグループウェア、CRM、ERP、などいろいろな分野のコンピューター リソースを利用し、それらの間で動作やデータの連携をさせる必要もあります。将来的な利便性を考えると、このようなハイブリッド運用の環境の中でも力が発揮できるように今から考えておく必要があります。マイクロソフトのテクノロジーはクラウドでも内部設置でも同じテクノロジーを使うことができ、連携はもちろんのこと内部設置からクラウドへの移行やその逆についても比較的容易に行うことができます。外部アプリケーションとの連携が必要になった際には、クラウド上でも内部設置型と同様にリレーショナル データベースを活用したり、.NET Framework を使った開発を行ったりすることも可能です。プラットフォームの選択時にこのような視点も持っておくことをおすすめします。

米田 真一

マイクロソフト株式会社インフォメーションワーカー本部エグゼクティブ プロダクト マネージャー。Exchange Online や SharePoint Online などの SaaS 系のクラウド コンピューティング担当。前職は Microsoft Office、Microsoft Dynamics CRM など、マイクロソフトでインフォメーション ワーカー系の製品の開発を 10 年近く手掛ける。