マイクロソフト内の国際的な IT エンジニアリンク組織である、Microsoft OEM 部門 IT Center of Excellence (OEM IT) は、Microsoft® Visual Studio® 2005 Team System を導入しました。OEM IT は、完全に統合されたソフトウェア開発プラットフォームを活用することで、大幅かつ測定可能なコスト削減を実現し、品質の高いソフトウェアを、少ないプロ ジェクト管理作業で開発し提供することが可能になりました。
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目次
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状況
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ソリューション
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ベスト プラクティス
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メリット
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まとめ
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品質の高いソフトウェア製品を期日に間に合うように、スケジュールどおりに、予算内で提供しようとした場合には、どのような大規模ソフトウェア開発 組織でも同じような管理的課題に直面します。組織は、ソフトウェア開発チームの活動を計画し、スケジュールを立て、管理する必要があります。また、開発 チームのメンバが、このような管理的作業に時間を取られることなくソフトウェア開発に集中できるように、管理的作業は効率的に行われる必要があります。
最 近まで、プロジェクト管理、ソフトウェアとデータベースの設計、ソフトウェア コーディング、テスト、およびパッケージ化は、別々に行われるのが通常でした。また、多くの開発組織で、これらのための管理的作業は、孤立したドキュメン トやスプレッドシートにデータ入力を繰り返すという方法で実施されてきました。このようなドキュメント、およびスプレッドシートは、記入された後、電子 メールの添付として配布されていました。これらの作業が自動化されている場合でも、そのシステムは、1 つの活動を対象とできるだけでした。それらのシステムを統合したり、連携したりするには、そのたびに手動のプログラミングが必要となり、その後の保守、お よびサポートにもカスタマイズが必要でした。
Microsoft Visual Studio 2005 Team System は、大規模なソフトウェア開発チームの最初から最後まですべての要件に対応できるように設計され、作成されています。各コンポーネントが連携して 1 つの統合ソフトウェア開発環境を形成し、ソフトウェア製品の要件収集から、設計、コーディング、テスト、パッケージ化、および配布まですべてに対応します。
こ の技術導入事例では、Microsoft OEM IT が Visual Studio 2005 Team System をどのように導入したかについて説明します。これは、Visual Studio 2005 Team System の導入を目指す組織にとって、1 つのモデルとなるでしょう。この導入事例は、情報最高責任者 (CIO)、IT ディレクタ、ソフトウェア開発担当の役員とマネージャ、ソリューション アーキテクト、および技術的意思決定者を対象としています。
状況
Microsoft OEM 部門は、マイクロソフトの国際的な営業およびマーケティング グループの一部です。この部門は、コンピュータや他の機器のメーカー、および組み込みシステムのメーカーと、マイクロソフトとの間の関係を管理していま す。この部門は、マイクロソフトが OEM メーカーに直接的にライセンスを許可できるすべての製品を取り扱います。たとえば、Microsoft Windows®、および Windows Server® オペレーティング システム、Microsoft Office、Windows Mobile®、Windows CE、Microsoft Works、Microsoft Exchange、および Microsoft SQL Server 2005 などがあります。
OEM IT は、国際的 IT エンジニアリング組織であり、エンタープライズ ビジネス ソリューションを Microsoft OEM 部門、およびマイクロソフト内の他のいくつかの部門に提供しています。特に OEM 事業、OEM 営業、Microsoft Xbox® 事業、システム ビルダ関連事業、および Microsoft MapPoint® 事業などにソリューションを提供しています。OEM IT は、約 200 人で構成され、ここには、マイクロソフトの従業員と、世界のベンダ パートナーからの人員とが含まれています。OEM IT のオフィスは、ワシントン州レドモンド、ネバダ州リノ、アイルランド ダブリン、中国北京、およびインド ハイデラバードにあります。OEM IT は、この各地で、マイクロソフトの内部ビジネス顧客としての役割も果たしています。
OEM IT 開発チームは、約 220 万行のコードを保持しており、それらのコードの約半分は SQL コードで、残りの半分は Web コードです。このチームは、40 個の基幹業務アプリケーションを顧客に提供しています。OEM IT は、SAP (コーポレート エンタープライズ リソース プランニング システム) のマイクロソフト実装の更新に合わせてスケジュールした 4 つのリリース (1 年に 4 回のソフトウェア リリース) を予定しています。各リリースは、複数のプロジェクトで構成され、65,000 行から 220,000 行のコードの新規作成または変更が行われます。どの時点でも、OEM IT は通常、四半期ごとのリリース版の 3 つに取り組んでいます。(構想とビジョンの作成ステージ、設計とビルドのフェーズ、および安定化 (テスト) フェーズです)。必要な場合には、1 つのグループが 4 つ、または 5 つのリリース版に同時に取り組む場合もあります。
Microsoft Visual Studio 2005 Team System の導入以前、OEM IT は多数のソフトウェア開発組織という状態にありました。OEM IT は、内部で開発した複数のツールを別々に使用して、作業項目追跡、バージョン追跡、障害追跡、テスト ケース管理、およびビルド管理を行っていました。また、ソース コード管理にもスタンド アロンの製品を使用していました。これらのツールは、別々のサーバー上で稼動しており、高度には統合されておらず、管理も困難でした。またこれらのシステ ムは、アーキテクチャおよびインフラストラクチャがそれぞれに異なるため、統合するのも難しい状態にありました。
プロジェ クト チームは、ツールごとに別々のサポート チームとやり取りする必要がありました。このため、問題がどのサポート チームの担当であるかということでたびたび混乱が発生していました。また、プロジェクト チームは、自分たちのビルド システムを手動で管理する必要がありました。彼らは 5 つのビルド構成を、それぞれのすべての依存関係も含めて管理する必要がありました。
OEM IT 開発チームは、ソース コード管理に Microsoft Visual SourceSafe® を使用していました。これは、ソース管理という限られた用途としては十分に機能していましたが、手動ビルド システム、またはビルド レポーティング システムとの統合がありませんでした。またコードをブランチする方法が複雑で管理しにくく、配布可能なパッケージに結合するときに多くの問題が発生してい ました。
障害追跡ツールは、内部で開発されたものであり、これにもいくつかの問題がありました。プロジェクトの状態レポー トを使用して、実際のテスト作業と、その日に計画されているテスト作業を特定していましたが、レポート作成の大部分を手動で行っていたため、作成に時間が かかり、間違いも発生しやすい状態でした。データは、Microsoft Office Project、および Microsoft Office Excel® のスプレッドシートに手動で入力していました。プロジェクトの状態情報は、日次ベースで判断するのも難しく、リアル タイムに生成するのは不可能でした。テスト チームは、手動システムを使用してのテスト ケースの計画、およびリリース間でのテスト ケースのインポートに時間がかかっていると感じていました。
プロジェクト マネージャは、リレーショナル データ ストアに対して静的なレポート クエリを実行して、レポート作成を行っていました。履歴データを参照したり、傾向を分析したりすることはできませんでした。新しい指標やプロセスをサポー トできるようにシステムを変更するには、SQL コーディングやレポートの書式設定といった面倒な作業を行う必要がありました。また、法定の報告要件を満たすのは難しく、コストもかかりました。たとえ ば、サーベンス オクスリー法 (SOX法) は、「十分な内部統制構造」を証明することを要求していますが、それを満たすのは簡単ではありませんでした。
プロセス手法 について、OEM IT 開発プロジェクトは、カーネギー メロン大学ソフトウェア エンジニアリング研究所の Personal Software Process (PSP)、および Team Software Process (TSP) を使用しています。PSP を使用してソフトウェアを開発するエンジニアは、定義済みのプロセスに従い、詳細な指標を収集します。収集する指標としては、要した時間、開発のさまざま なステージにおいて作り出され、除去された欠陥、および完成製品のサイズなどがあります。OEM IT エンジニアは、PSP と TSP の指標を手動で収集し、分析していました。
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ソリューション
ソフトウェア開発ライフサイクルの全体において自動化、統合、およびコラボレーションを実現することを目的として、マイクロソフトは Visual Studio 2005 Team System を開発しました。このクライアント/サーバー システムは、プロジェクト管理、作業項目追跡、ソース コード管理、ビルドとテスト環境、および障害追跡を連携させることができます。
Visual Studio Team System のコンポーネント
Visual Studio Team System は、クライアント アプリケーション、Visual Studio Team Foundation Server、およびいくつかの他の関連のコンポーネントで構成されます。
Visual Studio Team Edition およびチーム エクスプローラ
Visual Studio Team System クライアント アプリケーションは、ユーザーが開発プロジェクトの中で果たす役割ごとに用意されています。クライアント アプリケーションは、Team Edition と呼ばれます。ソフトウェア開発には、以下の 3 つの Team Edition があります。
- Team Edition for Software Architects
- Team Edition for Software Developers
- Team Edition for Software Testers
また、データベース設計者向けに、以下の Team Edition もあります。
- Team Edition for Database Professionals
さらに、ここに記述したすべてのクライアント アプリケーションの機能を提供する、以下のクライアント エディションもあります。
最後に、以下の Team Foundation Server クライアントがあります。これは、プロジェクトのビルド、およびサーバーの管理に使用されます。
- Visual Studio チーム エクスプローラ
図 1 は、ソフトウェア開発クライアント アプリケーションが含む機能をわかりやすく示しています。
図 1. Visual Studio Team Edition の機能
カスタム クライアント
Microsoft Office Project 2003、および Microsoft Office Excel 2003 を Visual Studio Team System クライアントとして使用することが可能です。また、入手可能な Visual Studio Team System プログラミング ツールを使用して、必要に応じて、カスタム クライアントを作成することも可能です。
Visual Studio Team Foundation Server
Visual Studio Team Foundation Server は、Visual Studio Team Edition および他のクライアントと連携して、ソフトウェア開発プロセスを構成する中心的な役割をすべて統合します。Team Foundation Server は、コラボレーション エンジンであり、また一元管理されるデータ ウェアハウスでもあります。
Team Foundation Server は、ソース管理、作業項目追跡、統合された分析とレポーティング、およびコラボレーションを促進する統合プロジェクト Web サイトを提供します。これは、ビルドおよびテストのツールも管理できます。さらに Team Foundation Server では、Office Project 2003、および Office Excel 2003 を統合して、レポーティング機能、および追跡機能を拡張することができます。Team Foundation Server は、2 つの層 (アプリケーション層、およびデータ層) と、1 つのチーム ポータル、および複数のチーム レポートで構成されます。
アプリケーション層 Team Foundation Server のアプリケーション層は、主に Web サービスで構成されます。Web サービスには、Team Foundation 共通 Web サービス (Registration、Security、Linking, Eventing、Classification)、Version Control Web サービス、Work Item Tracking Web サービス、Team Build Web サービスがあります。アプリケーション層は、オブジェクト モデルを介して通信します。
データ層 Team Foundation Server のデータ層は、SQL Server 2005 データベース サーバー、および Team Foundation Server 専用のいくつかのデータベースで構成されます。データ層には、データ ウェアハウスも含まれます。データ ウェアハウスは、SQL Server 2005 Integration Services、および Analysis Services を使用して、必要な情報を運用データベースから抽出し、それをビジネス中心のデータ モデルに変換し、オンライン分析処理 (OLAP)、つまり多次元データベースに読み込みます。多次元の OLAP データベース システムは、レポートの情報源として機能するだけでなく、次のようなことも実現します。
- 大量のデータを短時間で分析できます。
- ユーザーが、詳細データから集計フィールドを作成したり、集計フィールドを構成している詳細を調べたりすることを可能にします。
- ユーザーが、新たな視点からデータを調査することで、見過ごされていた傾向や問題を特定することを可能にします。
チーム ポータル Team Foundation Server には、チーム ポータル (Windows SharePoint® Services Web サイト) が含まれます。プロジェクトのメンバは、このサイトから、Visual Studio Team Foundation Server が提供するプロジェクトのデータや、コラボレーションを促進する機能を使用することができます。
チーム レポート Team Foundation Server には、事前定義のレポートが含まれます。これらのレポートは変更が可能です。また、SQL Server 2005 Reporting Services を使用して新しいレポートを作成することもできます。
Microsoft Team Foundation Service
Microsoft Team Foundation Service は、Visual Studio Team Foundation Server によるメリットをマイクロソフトのすべてのプロジェクト チームにもたらすこと、および複数のプロジェクトにわたって効果的な管理およびレポーティングを可能にすることを目的として、マイクロソフトが作成した サービスです。OEM IT は、この管理されたサービスを使用して、Team Foundation Server の設定、ホスティング、および管理を行いました。
Visual Studio Team System のアーキテクチャ
図 2 は、OEM IT が配置した Visual Studio Team System 実装のアーキテクチャ スキーマを示しています。このアーキテクチャは、Visual Studio Team System の代表的な配置です。
図 2. Visual Studio Team System の代表的なアーキテクチャ
図 2 には、次のようなものが示されています。
- Visual Studio Team Edition は、すべての Visual Studio Team System クライアント製品、つまり Team Edition、Team Suite、およびチーム エクスプローラを表しています。
- Office システムは、Visual Studio Team System クライアントとして機能する Excel 2003、および Project 2003 の統合を表しています。(Team Foundation Server には、Excel 2003、および Project 2003 を統合するためのテンプレートが含まれています。)
- Microsoft Windows Internet Explorer® は、チーム ポータルへのユーザーの Web アクセスを表しています。
- Team Foundation Server オブジェクト モデルは、クライアントとアプリケーション層の間の通信層です。
- Team Foundation Server のアプリケーション層には、Web サービスが含まれます。また、アプリケーション層上には、チーム レポート (SQL Server Reporting Services 機能)、およびチーム ポータル Web サイト (Windows SharePoint Services) も存在します。
- Team Foundation Server のデータ層には、SQL Server 運用データベース、およびデータ ウェアハウスが含まれます。
OEM IT における Visual Studio Team System の実装
Visual Studio Team System がまだ開発途中の段階にあったときから、OEM IT のマネージャは、その機能を学習し、Microsoft Team Foundation Service を提供する計画を立てていました。OEM IT は、新製品および新サービスをマイクロソフトで最初に採用する部署の 1 つになることを決定しました。OEM IT は、この製品の機能価値を理解したうえで、製品を国際的なチームに導入することを決定しました。
Visual Studio Team System 製品がリリースされた時期は、OEM IT がビジネス顧客に対して主要なリリースを開始する時期と重なっていました。OEM IT 管理チームは、OEM IT のメンバに新しい製品の機能、およびその有用性を説明しました。そして、これを導入することへの意欲を確認することができました。メンバはこの製品によっ て多くの管理的作業が省かれ、本来の作業により集中できるようになるという効果をすぐに理解しました。
管理チームは、その 後、ビジネス パートナーに対してプランを提示しました。管理チームはこのとき、Visual Studio Team System を長い時間をかけて説明する必要はないと感じました。ビジネス パートナーは、統合システムの利点にすぐに理解を示しました。
システムの設定
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ビジネス パートナーと話をすると、Visual Studio Team System は自然に売れました。長くても、15 分もあれば理解してもらうことができました。 |
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Al Buckingham Director OEM IT Microsoft Corporatio |
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OEM IT は、Microsoft Team Foundation Service チームと協力して、Team Foundation Server にプロジェクトを設定しました。このサービスにより、Team Foundation Server には、既に 2 つのプロセス モデル テンプレート (Capability Maturity Model Integration (CMMI) プロセス、および Microsoft Solutions Framework (MSF) for Agile Software Development プロセス) が設定されていました。OEM IT プロジェクトは CMMI モデルを使用しているため、開発チームはそのモデルを使用して、Team Foundation Server プロジェクトの構築を始めました。
Team Foundation Server のプロジェクト管理モデルでは、OEM IT は、作業項目タイプ定義 (障害、タスク、課題など)、クエリ、およびインスタンス テンプレートなども含めた作業項目を設定しました。インスタンス テンプレートは、すべてのプロジェクトで発生する、事前に定義されたタスクの集合を含みます。たとえば要件収集、ビジョンを示すドキュメントの作成などが これに含まれます。OEM IT は、以前のシステムで使用していたワークフロー、およびタイプ定義をそのまま維持できました。
OEM IT は、Team Foundation Server に付属のレポートをわずかに変更して使用しました。また、カスタム レポートも少し追加しました。開発チームは、表示や分析のために OLAP データ ウェアハウスから Excel ピボットテーブル動的ビューに読み取ったデータに基づく一連のカスタム レポートも作成しました。カスタム レポートによって、個人が必要とするデータを必要とする形式で配布することが可能になります。このため、こうしたレポートでは、個人がたくさんの情報の中 から必要な情報のみを分類するというような作業は必要なくなります。
また、Team Foundation Server に付属の SharePoint ポータルを開始する際、OEM IT は、チームの意向に合わせてポータルを変更しました。開発チームは、OEM IT のプロジェクトごとに、レポート ダッシュボードも作成しました。ダッシュボードは、プロジェクトの状況把握に必要な複数の情報を、図などを用いてビジュアルに表示できます。
OEM IT は、それまでの障害追跡プロセスを Team Foundation Server に移植し、それを強化しました。OEM IT は、OEM IT チームのメンバが慣れている名前、および定義はそのまま維持しました。
開 発チームは、ビルド プロセスに特別な注意を払いました。チームのビルド プロセスをカスタマイズして、プロセスが自動的に行われ、Team Foundation Server に統合されるようにしました。開発チームは、ユーザー受け入れテストおよび本番稼動のために配布するファイルのパッケージ化も、自動的に行われるようにし ました。
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ベスト プラクティス
OEM IT は、Visual Studio Team System の導入および実装をとおして、次のようなベスト プラクティスを見いだしました。これらは、同様の導入を計画している組織にとって参考となるでしょう。
以前のシステムのプロセスおよび定義を維持する。
組織は、以前のシステムからのプロセス、および定義は可能な限り維持する必要があります。たとえば、OEM IT は、作業項目追跡プロセス、および作業項目タイプ定義を以前のシステムから Team Foundation Server に移植しました。これにより、チームのメンバが新システムで生産性を上げるようになるまでにかかる時間を短くすることができました。メンバは、新しいユー ザー インターフェイスの使用を学習するだけで済みました。
プロセスや定義の改善は、メンバが新システムを使いこなせるようになってから始めることをお勧めします。
Visual Studio Team System のテスト チームへ導入は慎重に計画する。
テスト作業が開始するのは、ソフトウェアの設計、およびコーディングが完了してからです。テストの開始までに、プロジェクト マネージャ、設計者、およびプログラマは、ある程度システムを使用して、詳細や適切な使用方法を理解しています。しかしテスタは、このときからシステムの 使用を開始します。
Visual Studio Team System の導入を計画する際は、テスト チーム、およびユーザー受け入れテストに関与するエンド ユーザーが、実作業の負担のかかる中でもシステムを使用できるように、十分なトレーニングを考えておく必要があります。
テスト ケース管理プロセスの設計は慎重に行い、トレーニングを計画する。
Team Foundation Server は、柔軟性がとても高く、プロジェクト チームの意向に合わせて構成することが可能です。しかしプロジェクト チームは、ユーザーを考慮して慎重に構成を、設計および計画する必要があります。
OEM IT の場合、テスト ケース管理の実装に、特に注意が必要となりました。通常のテスト チームは、ソフトウェア テストを専門とするメンバで構成されます。このようなメンバは、高度なテスト ケース管理システムの使用を比較的短期間のうちに習得することができます。しかし、ユーザー受け入れテストに参加するエンド ユーザーは、それぞれの実務を専門としているため、必ずしも技術的な能力が高いわけではありません。
Team Foundation Server でテスト ケース管理システムを設計する場合は、どちらかといえば非技術的な人々がそれを使用するということを考慮する必要があります。トレーニングの計画において も、アプリケーションの非技術的エンド ユーザーの要望に特に注意を払う必要があります。
ソフトウェア リリース プロセスは慎重に設計する。
ソフトウェア リリース プロセスでは、必ず、ソース コード ファイルの承認された最新バージョンをビルドにコンパイルし、テスト環境、または本番環境にリリースする必要があります。このプロセスは、ほぼすべてに及 ぶ Team Foundation Server コンポーネントを使用します。このプロセスの設計、実装、およびテストには細心の注意を払う必要があります。
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メリット
Visual Studio Team System は、OEM IT に次のようなメリットをもたらしました。
- 多数の管理作業の自動化によって、ソフトウェア開発プロジェクトの時間とコストが削減されます。
このシステムは、ソフトウェア開発ライフサイクル全体を連携し結合する、一体型の統合システムであり、役割別に提供されます。メンバは、管理的作業に時間を取られることなく、本来の作業により集中することができます。
- 強力で柔軟性の高いプロジェクト レポーティング機能が提供されます。
情 報および指標は、自動的に収集され、OLAP データ ウェアハウス内に編成されます。個人は、必要とする最新の情報のみを、最も適切かつ使いやすい形式で受け取ります。チームのメンバは、動的に集計を行った り、その場で詳細データまで調査したりすることで、より高度なデータ分析を行うことができます。プロジェクト マネージャは、問題がプロジェクトの進行に影響を与える前に、それらの問題を検出できます。上級マネージャは、プロジェクトの運営をこれまで以上に把握で きるようになります。レポーティングが自動化されたことにより、サーベンス オクスリー法などの法律による要件を低コストで満たすことができるようになります。
一 貫性のある、一体型システムであるため、チーム メンバは、ツールごとにいくつものサポート組織とやり取りする必要がなくなります。1 つのサポート組織が、Team Foundation Server のすべてのコンポーネント (作業項目追跡、ソース管理、バージョン追跡、障害追跡、テスト ケース管理、およびビルド管理) のサポートを提供します。
- ビルド生成、およびビルドに関するレポーティングのプロセスが自動化されます。
プロジェクト チームは、ビルド システムを手動で管理する必要がなくなります。
- 包括的かつ効率的なチーム コミュニケーションのためのチーム ポータルが提供されます。
チーム ポータルは、すべてのチーム メンバにとって単一のアクセス ポイントとなります。
管理的作業が取り除かれることで、チーム メンバは本来の仕事により集中できるため、仕事に対する満足度が大幅に向上します。
マイクロソフト全体にとっては、Visual Studio Team System の導入より次のようなメリットがありました。
- プロジェクトの手法や分類法の標準化が支援されます。
すべての開発プロジェクトにわたって、手法や分類法の使用の標準化が促進されます。
- レポートが、統合および標準化され、一貫性を持ち、いくつものプロジェクトにもわたって作成されるようになります。
このレポーティング機能により、管理者は状況をより把握できるようになります。また、法定の要件も低コストで満たすことができるようになります。
サポート組織は、多岐にわたる多数のツール セットをサポートする必要がなくなります。標準化されたハードウェア、ソフトウェア、構成、および手法により、サポート組織への負荷が軽減されます。
省力化の測定
OEM IT では、Visual Studio Team System の使用により、以前のツールの使用と比べて大幅な省力化が実現され、それは数字としても明らかにされました。次の表は、開発 (コーディング) プロセス、およびテスト プロセスにおいて、主な作業がどれくらい省力化されたかを示しています。この表では、省力化された量をそのパーセンテージで示しています。この数字は、実 際の時間、およびお金の減少に基づいています。
表 1. Visual Studio Team System 開発における省力化
開発作業
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省力化されたパーセンテージ
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備考
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ビルドの自動化 |
1.7% |
ビルド プロセスの時間が短縮されました。
開発リードがビルド プロセスにかける時間が少なくなりました。 |
ソース管理 |
14.5% |
ソース管理システムの操作に必要な時間が短縮されました。
システムの高度な機能とパフォーマンスの高さにより、生産性が増しました。 |
障害の解決 |
11.6% |
作業項目追跡、障害追跡、およびソース管理が統合されており、カスタマイズしたクエリを実行することが可能であるため、問題をすばやく簡単に解決できるようになりました。これにより、テスト フェーズにおける開発者の時間が大幅に節約されました。 |
再作業の減少 |
6.7% |
ソース管理、ビルド管理が適切に行われ、障害がすばやく解決されるようになったため、品質が向上し、再作業が減少しました。これにより、開発者リードがレビューおよび検査を行う時間が大幅に短縮されました。 |
表 2. Visual Studio Team System テストにおける省力化
テスト作業
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省力化されたパーセンテージ
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備考
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ビルドの自動化 |
21% |
回帰テストのテスト ケースのレビューにかかる時間が短縮されました。
将来の回帰テストのためにテスト ケースを分析、および最適化する時間が短縮されました。 |
Microsoft Office Word ドキュメントを障害追跡ツールに移植しない |
6% |
Word ドキュメントを障害追跡ツールに移植する必要がなくなり、時間が節約されました。 |
再発障害のレビュー |
6% |
再発障害のレビュー中に、手動の SQL クエリを実行する必要がなくなりました。 |
指標レポートの生成 |
25% |
テスト指標レポートの作成にかかる時間が短縮されました。 |
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まとめ
OEM IT は、Visual Studio Team System の使用により、メンバの作業が大きく変わったと考えています。メンバは、包括的に統合されたシステムを、日常的に、通常ワークフローの一部として使用しま す。プロジェクトでは、電子メールによるやり取りが減少し、必要なミーティングも減少しました。プロジェクトのドキュメントから最新のテスト結果に至るま で、すべてのプロジェクト情報には、チーム ポータルとうい 1 つの場所からアクセスできます。レポートは、自動的に更新され、1 回のクリックで入手できます。OLAP データ ウェアハウス内の情報は、新たな視点で分析、および調査することが可能です。
Microsoft Team Foundation Service は、Team Foundation Server のすべてのコンポーネント (作業項目追跡、ソース管理、バージョン追跡、障害追跡、テスト ケース管理、およびビルド管理) のサポートを提供します。OEM IT でサポートの必要が発生した場合は、1 つのサポート組織に連絡します。ツールごとにいくつものサポート組織とやり取りする必要はありません。
開 発組織に Visual Studio Team System を導入したことにより、Microsoft OEM 部門 IT Center of Excellence は、開発プロジェクト間のコミュニケーションを大幅に改善することができ、チーム メンバの仕事に対する満足度が向上しました。プロジェクト マネージャ、および上級管理者の目が行き届くようになり、プロジェクトの問題がすぐに明らかになるようになりました。また、大幅かつ測定可能なコスト削減 が実現されました。
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