第 1 章: Excel Services 入門

この記事は、『**Programming Excel Services』 (英語) (Alvin J. Bruney 著、MSPress 発行) (ISBN 9780735624078, copyright MSPress 2007, all rights reserved) からの抜粋です。批評記事やレビューに短く引用する場合を除き、これらの章のいかなる部分も、発行元の事前の書面による許諾を受けることなく、その目的を問わず、どのような形態であっても、複製または譲渡、あるいは検索システムに格納または公開することは禁じられています。ここで言う形態とは、複写や記録など、電子的、電気的、または物理的なすべての手段を含みます。 (30 ページ)

目次

  • Excel Services 入門

  • Excel Services アーキテクチャの概要

  • Excel Services と Office SharePoint Server 2007

  • Office プログラミングについて

  • ビジネス インテリジェンス システム

  • インストールと配置

  • Excel Services の権限

  • Web アプリケーション ルートの検索

  • まとめ

  • 追加情報

書籍に付属するサンプル コードをダウンロードする (英語)

Excel Services 入門

ときどき、ソフトウェアの設計および構築方法に大きな変化をもたらす製品が市場に出ることがあります。Microsoft Office SharePoint Server (MOSS) 2007 の Excel Services はそうした製品です。この製品によって、Microsoft Office System アプリケーションの作成方法が完全に変わりました。この章では、この製品の真価を理解するために、考え方の基本的な変化をもたらした Excel Services アーキテクチャの紹介と説明に焦点を当てます。コードにはあまり焦点を当てず、大まかに Excel Services を描写することに、より多くの焦点を当てます。これにより、全体的な構造を理解することができます。後半では、この新しいテクノロジをもたらした基本的な要素について探ることにします。その後、Microsoft Office SharePoint Server 2007 で提供される共通インフラストラクチャ バックボーン上にさまざまなアプリケーションを構築および統合するための、より高度な概念にまで言及していきます。

Excel Services は、開発者が Office SharePoint Server 2007 を使用して Microsoft Office Excel ブックを読み込み、計算し、そして表示できる新しいテクノロジです。ある点では、Excel Services は、開発者が Excel ブックをベースにしてアプリケーションを構築できる開発フレームワークのように動作します。開発者向けのフレームワークを提供するという概念は、必ずしも新しいものではありません (Microsoft .NET Framework など)。ただし、このテクノロジを公開する方法は、従来のアプローチとは基本的に異なります。この根本的に異なるアーキテクチャを使用すると、Microsoft Office System および Office SharePoint Server を対象とした新しいアプリケーションを効率的で、堅牢で、スケーラビリティのあるものにすることができます。従来の Office アプリケーションでは、こういった特長はほとんど実現できません。

Excel Services は、ASP.NET 2.0 および Office SharePoint Server 2007 上で構築されます。.NET Framework および Office SharePoint Server 上で Excel Services を使用すると、Excel Services はこれらの高評価のプラットフォームの柔軟性および性能を享受することができるため、この構造上の決定は重要です。SharePoint は完成されたテクノロジであり、特に挙げると、コラボレーション、コンテンツ管理、およびビジネス インテリジェンス機能が提供されます。一方、ASP.NET では、Web アプリケーション ソフトウェアの構築フレームワークが提供されます。Excel Services は Office SharePoint Server の一部であり、主要な SharePoint の機能およびアプリケーションのスケーラビリティを内部的にサポートするエンタープライズ ソフトウェアを構築および配置するための方法が提供されます。

注意

Excel Services を使用してアプリケーションを構築すると、ASP.NET プラットフォームが使用されているために、コード作成の労力を削減でき、高速アプリケーション開発 (RAD) テクノロジから利益を得られ、アーキテクチャおよび設計レベルでベスト プラクティスが組み込まれ、そして負荷が増加した状態でも問題なく動作することを期待できます。また、Office SharePoint Server プラットフォームが使用されているため、構成の変更が可能であり、管理のための労力を削減でき、そして本質的に分散化されていることを期待できます。

ただし、.NET の開発者が SharePoint の観点から Excel Services にアプローチすることは非常に重要です。最終的には、考え方を切り替えることよって、Office SharePoint Server 2007 向けアプリケーション開発の品質と労力が向上することになります。Office SharePoint Server は、購入時には組み立て済みで、適切に構成済みであるように設計された製品です。このことは、コード ブロックを使用して製品をゼロから構築する必要がある ASP.NET の考え方とは大きく異なります。この新しい考え方に従うと、開発労力の大部分の焦点は Office SharePoint Server の拡張に当てることになります。この記事の大部分は、これらの方針に沿って設計されています。つまり、資料は SharePoint の観点から考えるようになっています。ASP.NET の開発者は、.NET Framework を使用して Office SharePoint Server 向けのスタンドアロン アプリケーションの機能を構築したいという衝動を抑えるようにしてください。むしろ、ASP.NET の開発者は、Office SharePoint Server で既に提供されている機能を補強する機能を構築することを探るようにしてください。

今から焦点を当てる基本の 1 つは、Office SharePoint Server と Office System アプリケーション間のブリッジです。ここで重要なことは、Excel Services は Excel ブックのみを対象としている点です。アプリケーション製品および機能の奥深さと幅広さは、Excel Services では直接利用できません。たとえば、Excel Services には Microsoft Office Outlook オートメーションの内部サポートは含まれていません。しかし、このことは障害とはなりません。Excel ブック自体が、その他多数の Office System アプリケーションと連携でき、Office System の機能を提供する中心的な役割を担うからです。

たとえば、Excel ブックでは、検索機能の呼び出し、チャートの作成、Microsoft ピボットテーブル動的ビューの表示、XML ファイルの読み取り、データ ストアのクエリ、Web サービス機能の提供などの多数の操作を行うことができます。Excel Services が Excel ブックと Office SharePoint Server 間のブリッジとして機能する場合、このブリッジを通じて、Office SharePoint Server にホストされた Web アプリケーションに Office System 機能を間接的に公開することになります。そして、これが今後探求していく方向となります。つまり、Office SharePoint Server に統合された実世界のソフトウェアを構築することを学習します。第 7 章「Excel Services の高度な概念」には、例を示して興味深い統合アイデアを示します。

この後、データの取得およびブックの操作を行うために Excel Services で使用されるツールおよび戦略を理解することになります。Excel Services を使用すると、安全な方法で接続情報を保持しながら、さまざまなバック エンドにわたるデータに接続できます (第 4 章「Excel Calculation Services」を参照)。特にブックに組み込まれた機能を使用して、知的財産を保護する方法について学習します (第 7 章を参照)。Excel Services ともう一方の本格的な機能を持つ Microsoft Office Excel 2007 との間の境界を定義します (第 2 章「Excel Web Services」)。ただし、最も重要なことは、古くからある問題に対処するために、新しいツールを使用した新しい方法で考えることを学習することです。

Excel Services アーキテクチャの概要

図 1-1 では、高レベルの Excel Services アーキテクチャを紹介します。

図 1-1 Excel Services アーキテクチャの全体像

Excel サービスのアーキテクチャ

Office SharePoint Server 2007 は、図 1-1 の一番左にある垂直セクションで示す複数の主要コンポーネントで構成されます。ここでは、ビジネス インテリジェンス コンポーネント内の Excel Services レイヤに焦点を当てます。Excel Services はエンタープライズ レベルでビジネス インテリジェンスの要件に対処するように設計されているため、ビジネス インテリジェンスの階層内に配置することは重要です。この記事では、垂直セクションのその他の部分 (図の左下にあるコラボレーションやドキュメント管理項目など) については、Excel Services のコンテキスト内でのみ検討します。

このアーキテクチャでは、ビジネス インテリジェンスに関連する問題の特定のサブセットが解決されます。これらは Office System プラットフォーム全体にわたる問題で、ブラウザと密接に結び付いたユーザー インターフェイスによるアプリケーション、ブック セキュリティの不足、バージョン管理の問題、スケーラビリティの欠如、エンタープライズ レベルのパフォーマンスの低さなど、さまざまなものが挙げられます。新しいソフトウェア ツールが豊富にあっても、共通点のないバック エンドからのデータの収集、異種情報の分析、同期の外れたデータの制御など、より基本的な問題によって、データ分析の進展が脅威にさらされています。Excel Services は、ビジネス インテリジェンスの領域で障害となる、広範囲の技術上およびビジネス上の問題に対してソリューションを提供するように設計されました。

新しいアーキテクチャでは、今日のビジネス インテリジェンスの進行を妨げる数多くの障害に対する手直し以上のものが提供されます。Excel Services では、設計レベルでのソリューションが提供されます。つまり、水平と垂直の両方向に拡張できるアプリケーションを設計できます。現在、ASP.NET 2.0 プラットフォームに基づく新しいアーキテクチャには、今後のソフトウェア ソリューションを構築するための強固な基盤を提供する業界で実証済みのデザイン パターンを使用して体系化されたガイダンスが組み込まれています。また、Excel Services を使用すると、開発者は充実した Office SharePoint Server のエンド ユーザー エクスペリエンスに参加できます。たとえば、カスタム コードを使用すれば、Office SharePoint Server の新機能にフックして、クライアントが任意のリストやドキュメント ライブラリを Outlook に接続できるようになります。クライアントがモデムに接続されていない場合でもデータを手元に保持できるように、Outlook との統合の範囲はオフラインのシナリオにまで及びます。

図 1-1 で、Excel Services コンポーネントでは Excel モデルへのプログラムによるアクセスが複数の論理レイヤーに分割されていることを確認してください。たとえば、フロント エンドは Excel Web Access 経由で公開され、中間層は Excel Web Services 経由で公開されます。その後、これらのレイヤーは真の階層構造で、単一のコンピュータ上またはファーム内の複数のコンピュータ間で実行できます。このようにして、モデルによる水平方向の拡張が実現されます。垂直方向の拡張では、サーバーの物理的制限以内での複数 CPU の構成およびメモリ リソースの追加が Excel Services アーキテクチャでサポートされます。実際に、Excel Services プラットフォームに構築されたアプリケーションでは、プロセッサごとにほぼ線形のパフォーマンス向上が実現されます。

図 1-1 で示したアーキテクチャをしばらく考察してください。すると、このテクノロジによって、あらゆるプログラミングの可能性が開かれることに気付くでしょう。たとえば、Excel Services ブリッジ経由または個別に SOAP クライアント経由で、Office System 製品の全範囲をプログラムからアクセスできるようになります。さらに興味深いことは、Excel Services アーキテクチャを構成する 3 つの部品すべてが組み合わさって、Excel 計算エンジンへは、単一のエントリ ポイントが公開されるという点です。計算エンジンについては、第 4 章で詳細に説明します。

Office SharePoint Server との関係については、Excel Services アーキテクチャを示した図 1-2 を参照してください。

図 1-2 Excel Services 統合の概要

Excel サービス MOSS 統合の概要

Windows SharePoint Services はアーキテクチャ内の中心的存在であることを確認してください。Windows SharePoint Services 3.0 が別のサービスであることがわかります。Windows SharePoint Services 3.0 は、オペレーティング システム サービスとして Office SharePoint Server から独立してインストールされます。この分離によって、スケーラビリティを保証しながら、堅牢性が確保されるようになります。第 5 章「Windows SharePoint Services 3.0」では、Windows SharePoint Services についてさらに詳細に検討します。

Windows SharePoint Services

ビジネスの観点から見ると、Windows SharePoint Services はエンタープライズ レベルのコラボレーション サービスを提供するように設計されました。Windows SharePoint Services を使用すると、企業は地理的な境界を越え、組織の階層レベルをとおしてドキュメントを管理および操作できるようになります。コラボレーションはナレッジ ワーカーに焦点を当てたユーザー フレンドリな方法で、ローカルまたは海外に存在するシック クライアントまたはシン クライアント経由で公開できます。ここでは、これらの特長について単に説明するだけでなく、構築も行います。

構成可能で、簡単に配置でき、変更に対応できるプラットフォーム上にコラボレーションは構築されます。Windows SharePoint Services は、実際にソフトウェアの実世界での要求を満たす次世代の集合点レイヤーです。プラットフォームに接続された、Windows 以外のシック クライアントからの要求か、Windows で動作するダッシュボードに配置された Web パーツ経由の要求であるかに関係なく、Windows SharePoint Services のバックボーンは、これらのさまざまな要求を企業全体で効率的な方法で柔軟に対処できます。これはソフトウェアの実世界での役割であり、Windows SharePoint Services はそういった要求を適切に処理するように構築されています。第 2 章では、こうした興味深いソフトウェアを使用してアプリケーションを構築するプロセスについて説明します。

次のセクションでは、アーキテクチャ内部の詳細について説明します。Excel Services プラットフォームを対象としたコードを書き始める前に、各要素および要素どうしがどのように相互作用するのかを理解する必要があります。また、この新しいアーキテクチャからパフォーマンスと機能を引き出すために、別のアプローチで何が可能か、また何を再検討すべきかについてよく理解する必要もあります。その後で、数多くのコードを作成します。

Excel Web Access

Excel Web Access (EWA) コンポーネントは、Excel Services の最も目にする部分です。EWA では、クロスブラウザ対応の HTML がクライアントに表示されます。スプレッドシート、ピボットテーブル、およびチャートは、すべてのブラウザで同一の外観が保証された状態で表示されます。これは、Office プラットフォームを対象として構築された Web アプリケーションとは基本的に異なります。これまで、Office プラットフォームを対象に構築された Web クライアントでは、ActiveX オブジェクトとカスタム オブジェクトを幅広く組み合わせることで、スプレッドシートとピボットテーブルを表示していました。

このアプローチでも目先の問題は解決されましたが、これは偏りのある近視眼的なものだったため、さまざまなクライアントがスプレッドシートを参照および操作できるという企業全体に対するソリューションを提供することができませんでした。このアプローチの一般的な問題点は、これらの製品に追加コストがかかり、構築および配置のシナリオが多くの場合で複雑になったことです。また、副作用として、ActiveX コントロールを使用すると Web クライアントにブラウザの制限が課されました。ActiveX コントロールを内部的にサポートするブラウザは、Microsoft Internet Explorer しか存在しなかったため、結果的に、このテクノロジに基づいたアプリケーションは Microsoft Internet Explorer ブラウザでしか実行できませんでした。

新しいアプローチは包含のポリシー上に構築されています。すべての上位ブラウザで HTML、DHMTL、および ECMAScript (JScript、JavaScript) がサポートされているため、EWA ではすべてのブラウザで使用可能な方法で出力が構成されることは道理にかなっています。このように、開発者は構築できるアプリケーションの種類では制約されません。また、このようなアプリケーションに組み込むことができる機能の範囲によっても制限されません。これで、EWA アプリケーションは、可能な限り広範囲の顧客を対象にできるようになりました。「第 3 章: Excel Web Access」では、EWA 向けのソリューションの構築および配置のプロセスについて説明します。

多くの場合で、EWA のピボットテーブルまたはスプレッドシートの外観は、デスクトップ バージョンの外観と同じです。ただし、フロント エンド機能の一部にある顕著な違いについては、多少慣れる必要があります。このような違いの例には、エンド ユーザーがデータを EWA スプレッドシートに入力する方法があります。スプレッドシートのセルは読み取り専用です。これらのセルには直接データを入力できません。その代わりに、対象セルに関連付けられたコントロールにデータを入力する必要があります。図 1-3 には EWA スプレッドシートを示します。

図 1-3 Excel Web Access スプレッドシート

Excel Web アクセスのスプレッドシート

デスクトップ バージョンと比較すると、このアプローチは不格好で、外観が不自然です。さらに重要なことは、ユーザーにこの新しい入力機能の操作方法を教育するために、時間と労力を投資する必要があることです。第 6 章「高度な Web パーツ プログラミング」では、この制限に対処する方法について説明します。

警告

このように入力方法が大幅に異なる理由は不明です。ただし、明らかに技術的な制限によるものではありません。Google スプレッドシートでは、HTML、DHTML、および ECMAScript (JScript、JavaScript) 上で同一の外観が構築されていますが、エンド ユーザーは直接セルにデータを入力できます。

もう 1 つの出発点は、EWA は Web パーツと密接に関連している点です。ASP.NET Web パーツは、Web ページでひとまとまりの機能を提供するコントロールです。この種の機能は開発者によって組み込まれ、Web パーツ コントロールで公開されます。第 3 章と第 6 章で示されるいくつかのコード例は、Web パーツの操作性を向上させるためのものです。

また、Web パーツを使用すると、アプリケーション開発者がユーザー インターフェイスの背後の機能をカプセル化できます。そして、SharePoint サイトでユーザー エクスペリエンスと機能を向上させることできます。Excel Services では、エンド ユーザーがカスタム Web パーツを使用してオン ザ フライで選択的に機能を組み込むことができるアプリケーションを開発できるようになりました。

Excel Services アプリケーションを開発する場合、Web パーツ コントロールでカプセル化されたエンド ユーザー機能を提供することについて検討し始める必要があります。EWA ではスプレッドシート、ピボットテーブル コントロール、Excel チャートをそのままページに配置できません。これは ASP.NET での開発とあまり変わっていませんが、このアプローチを使用するといくつかの利点があります。1 つには、これらの Web パーツを Microsoft Office SharePoint Designer 2007 ページに組み込むと、同じ機能を提供できます。もう 1 つの利点は、Web パーツを使用すると、エンド ユーザーはコントロール レベルで個人用設定テーマを適用し、ユーザー インターフェイスをカスタマイズできるようになります。この機能は、Web ページおよびアプリケーションのアクセシビリティの設計および構築時に特に重要となります。第 3 章では、カスタマイズ可能な Web パーツの開発に焦点を当てます。第 7 章の一部では、アクセシビリティについて詳細に説明します。

Excel Web Services

Excel Web Services (EWS) は、Office SharePoint Server 2007 に配置された正式な Web サービスです。EWS は、フロント エンドから計算プロセスを分離します。このように役割を分離することによって、オペレーティング システムの境界を越えたアプリケーションを構築できるようになります。EWS では、計算サービスとブックの機能セットがクライアントに公開されます。クライアントは計算結果を表示するタスクに集中できます。

EWS では、エンタープライズ Web ファーム全体にわたってスケーラブルに、スレッド セーフな方法で要求を処理できます。つまり、Excel Services インフラストラクチャでは自動的に同時実行の問題が処理されるため、計算の異常が発生するリスクが削減されます。第 4 章では、計算を Web ファーム全体に拡張できる Office SharePoint Server の機能に焦点を当てます。

EWS には、他の Web サービスにアクセスする場合と同様に、SOAP クライアント経由で Web メソッドを呼び出すことによって、通常の Web サービスとしてアクセスできます。または、直接リンクと呼ばれるテクノロジを使用することによって、ローカル アセンブリへの参照を通じて機能にアクセスできます。株式取引などのリアルタイムの制約内で実行する必要があるアプリケーションでは、通常、直接リンクが使用されます。一方、その他すべてのシナリオでは Web サービスが使用されます。参照をローカルで設定する方法および EWS へ Web 参照を追加する方法に関するウォークスルーについては、『プロジェクト設定ガイド』を参照してください。第 2 章にはさらに詳細な説明があり、これらの記述の背後にある技術的な利点を探求します。

Excel Calculation Services エンジン

実際の機能は、Excel Calculation Services (ECS) レイヤーで実行されます。名前が示すように、計算エンジンは計算要求の処理を担当します。各計算要求はアトミックです。つまり、要求が受け取られると、単一のトランザクションとして処理されます。計算の正確さが保証されるように、トランザクションは特定のセッションに対して固定されます。計算エンジンの設計は、冗長化ソフトウェアを使用した高パフォーマンス クラスタ上の分散計算に対応しています。ファームに新しいサーバーを追加すると、サーバー単位でほぼ線形にパフォーマンスが向上するようにアーキテクチャが調整されています。計算エンジンの計算の整合性に対するペナルティなしで、パフォーマンスが向上します。さらに、分散されているかどうかに関係なく、計算エンジンは、Excel のデスクトップ バージョンと同様に計算するため、計算結果については、Excel レベルの正確さが保証されます。

ブックの読み込みおよび計算という通常業務の他に、ECS では開かれたブックのセッション状態が保持および管理されます。セッション状態は、構成可能なタイムアウトおよび関連するイベントを持つ ASP.NET セッションのように動作します。第 4 章では、このアプローチの技術的な部分についてさらに詳細に説明します。

また、ECS ではブックのキャッシュも管理されます。開かれた Excel ブックは、ユーザー セッションに従ってキャッシュされます。たとえば、同じアカウント資格情報を共有する複数のユーザーはプールされ、これらの要求の処理にブックの単一インスタンスが使用されます。計算の状態、結果、および外部データも、ECS で管理されるキャッシュされたプールの一部を形成します。この動作は、ファーム全体での多数の同時実行を処理するために特に設計されたもので、その結果、プールされたユーザー セットのパフォーマンスが向上しています。第 4 章では、ECS についてより詳細に説明します。

パフォーマンスとスケーラビリティの検討

Excel Services は、垂直および水平方向に拡張できるように設計されました。CPU の増設などの垂直方向の拡張では、Excel Services は複数の CPU に合わせて自動的に調整されます。Excel Services では、64 ビットの CPU アーキテクチャもネイティブでサポートされています。水平方向の拡張では、Web アプリケーション サーバーをファームに追加し、サーバーの全体管理 Web アプリケーションを使用して構成するだけ対応できます。新しいサーバーの追加ごとに、Internet Information Services (IIS) が必要です。

主に Excel ロード バランサによって、機能的な整合性および計算の正確性が、拡張するファーム全体にわたって実現されます。ロード バランサには、プロキシ コンポーネントとして機能するマネージ ライブラリが含まれます。ECS プロキシでは、フロントエンド Web サーバーとサーバー ファーム上のアプリケーション サービス層との間の通信が自動的に処理されます。プロキシ コンポーネントは、コードからプログラミングできません。

図 1-4 では、ロード バランサの構成に使用される管理コンソールを示します。構成可能なオプションは数多くあります。ただし、各オプションは静的です。つまり、実行中の負荷に合わせた動的な調整は行われません。管理者が、実行中に設定を調整する必要があります。図 1-4 には、管理者が使用できるさまざまな設定を示します。

Office SharePoint Server は、ストレージを Microsoft SQL Server データベースに依存します。後で、データベースの重要な部分を構成する方法について説明します。ここでは、バックエンド ストアには物理的な上限が設けられていないという点が重要です。Office SharePoint Server は、メガバイト (MB) からテラバイト (TB) までの任意のサイズのデータベースに対応します。ただし例外として、無償版の Microsoft SQL Server Express Edition には 4 MB の上限が設けられています。

図 1-4 ロード バランサの設定

ロード バランサの設定

Excel Services と Office SharePoint Server 2007

Office SharePoint Server 2007 は、2006 年に突然登場したわけではありません。実際には、長く充実した歴史があります。1997 年ごろにリリースされた Site Server という製品からすべてが始まりました。この製品には、Web コンテンツ管理、個人用設定、ドキュメント管理、および検索サービスが含まれていました。Site Server は Commerce Server に姿を変え、さらに Digital Dashboard Starter Kit という新しい製品に置き換えられました。Digital Dashboard では、Web ページに追加できる、プラグ可能な機能部品である Web パーツの概念が導入されました。

これまでに、Digital Dashboard では数回の改訂を経て、Web ポータル サービスが向上しました。Digital Dashboard の機能セットは、"Tahoe" という新しい製品と統合され、"SharePoint Portal Server 2001" という名前に変わりました。Digital Dashboard に導入された Web パーツの成功は、ASP.NET の領域でも進化を続け、このコントロールに対して 2 つの開発のコードの流れをもたらしています。

このころ、Microsoft から Web ベースのチーム コラボレーションを提供する SharePoint Team Services という製品がリリースされました。SharePoint Team Services は、Microsoft Windows Server 2003 で提供された Windows SharePoint Services に姿を変えました。SharePoint Server Version 2 は、Windows SharePoint Services 上に構築されました。そして、これらのテクノロジが集結した結果、今日の Office SharePoint Server 2007 が誕生しました。

10 年間の進化の過程で、理想のソフトウェアが統合されたことにより、以下のようなサービス一式が提供されます。

  • ページとコンテンツのカスタマイズ

  • ドキュメントの管理と保存

  • Notification Services

  • 検索とインデックス作成

こうした進化を経て、Office SharePoint Server は成長および成熟し、組織内のコラボレーションを促進するツールになりました。このコラボレーションには、情報の作成、管理、および保存が含まれます。これらの便利な機能に加えて、Excel Services が Excel ブックの機能を統合するため、コラボレーションに新しい特性が付加されます。管理者に提供する機能の大部分は、Windows SharePoint Services によって提供される開発モデルを使用して構築できます。第 5 章では、製品のこれらの面やその他の面に焦点を当てます。

注意

これは、以前のバージョンで Windows SharePoint Services 3.0 に加えられた改善点の短い一覧です。これらのトピックの一部 (オブジェクト モデルの強化、拡張可能なフィールド タイプ、サイト列、コンテンツ タイプの設定、ごみ箱、RSS フィード、リストの強化、ワークフロー、プロパティ バッグ、Web サービスの強化、変更ログ、イベントの強化、作業項目とタイマ機能、およびモバイル機能) については、この記事で広範囲にわたって取り扱います。

Excel Services をプログラムを使用して探求し始める前に、Excel Services と Office SharePoint Server 間の密接な関係を理解する必要があります。Excel Services には Office SharePoint Server 2007 が必要です。ただし、Excel Services コンポーネントは、Office SharePoint Server 2007 Enterprise Edition にのみパッケージされています。Office SharePoint Server 2007 Standard Edition には、コラボレーション、エンタープライズ コンテンツ管理、ワークフロー、個人用サイト、プロファイルと個人用設定、およびエンタープライズ検索の機能しか含まれていません。Enterprise Edition の機能には、ビジネス データ カタログ、Excel Services、レポート センター、Microsoft Office InfoPath Forms Services、主要業績評価指標 (KPI)、フィルタ Web パーツ、および Windows Workflow Foundation が含まれています。

2 つのパッケージは明確に分かれていますが、対象コンピュータにはすべてのコンポーネントがインストールされることに注意してください。製品に付属するインストール キーは、単に指定されたパッケージのロックを解除するだけです。キーの暗号は強固であり、技術力のあるハッカーが無許可のパッケージへのアクセス権を取得することを躊躇させるには十分なものです。

スプレッドシートを公開する場合は、Office Enterprise 2007 または Office Professional Plus 2007 をインストールする必要があります。その他のすべてのバージョンには、スプレッドシートを公開する機能はありません。その他のすべてのバージョンでは、公開済みのスプレッドシートが非対話モードで存在します。つまり、エンド ユーザーはスプレッドシートにデータを入力したり、変更したりできません。第 6 章では、Office System の Enterprise または Professional Plus バージョンがインストールされていない場合に、対話型を実現するプログラミング アプローチを示します。プログラミング要件に対話型のコンテンツが含まれていない場合は、Excel Services の利点が得られない場合があります。

顧客を中心とするもう 1 つの特長は、Office SharePoint Server 2007 および Excel Services の購入を確約する前に試用できることです。試用期間は 6 か月間です。その後、ソフトウェアの一部が使用できなくなります。試用版では実際の製品と同じ機能が提供されるため、そのソフトウェアが顧客の企業に価値をもたらすことができるかどうかについて実際に判断できます。製品を使用し続けることを決めた場合、通常の購入経路を通じて購入し、ロックを解除するキーを入手します。通常、製造するソフトウェアの機能に自信があるソフトウェア メーカーは試用期間を用意しているため、実際に顧客側で失うものは何もありません。

Office SharePoint Server 2007 のライセンスと使用条件

ソフトウェア評価の重要な部分は、ライセンス構成と使用条件に関するものです。製品がすべての要望を満たすこともありますが、厳しい予算で運営するような店舗の財務的な観点から見ると、手が届かない可能性もあります。また、Excel Services が Office SharePoint Server 2007 にバンドルされていることも重要です。この 2 つの製品は切り離せません。Excel Services の機能を利用するには、Office SharePoint Server 2007 Enterprise Edition を購入する必要があります。

もう 1 つの考慮点は、ライセンスがオペレーティング システムにまで及ぶという事実です。この場合、Windows Server 2003 には、サーバーで実行するアプリケーションでサポートできる同時実行ユーザー数に関する特定のライセンスがあります。

もう 1 つの問題は、既定のライセンスが提供するインストールが、イントラネット アプリケーション向けである点です。認証されていないユーザーを対象とする外部向けサイトの場合、外部に公開する Windows Server 2003 ごとに External Connector のライセンスを購入する必要があります。

システム上のユーザーごとに、クライアント アクセス ライセンス (CAL) を購入する必要があります。CAL はサイト アクセス用です。クライアントが表示専用のアクセスを必要とするかどうかに関係なく、各クライアントには別々の CAL が必要です。企業全体で使用するには、サイトにアクセスするエンド ユーザー数を正確に見積もる必要があります。これらの見積もりに従って簡単な計算を行うと、製品の費用を確認できます。

Office SharePoint Server 2007 は、Microsoft SQL Server 2000 Service Pack 3 (SP3)、Microsoft SQL Server 2005、または Microsoft SQL Server Embedded Edition のいずれかに密接に統合されています。これらのデータベースには、例外なくエンド ユーザーのライセンス契約が含まれています (一部のものは他のものよりも限定的)。Excel Services の購入を確約する前に、これらの製品ごとにライセンス条件を理解することに時間と労力を費やすことは非常に価値があります。Excel Services を使用するために追加製品を購入する必要があることに気付く場合もあります。また、Excel Services では、パッケージを組み合わせることができないため、さらに問題が複雑になります。たとえば、顧客は、単に Excel Services が含まれる Standard Edition を購入することはできません。この組み合わせでは対話型の機能を提供できないためです。

Standard Edition と共にインストールされる組み込みのデータベース サーバーは、Office SharePoint Server から見た場合は、本格的な SQL Server と機能的に同等です。ただし、楽しみを台無しにするような特定の制限があります。以下の一覧に、制限を順不同で示します。

  • データベースの容量には、4 GB のデータ制限があります。

  • ビジネス インテリジェンス機能はインストールされません。

  • 統合および相互運用機能は限定されています。

  • Notification Services は使用できません。

  • 管理機能セットは限定されています。

  • スケーラビリティおよびパフォーマンス調整用のツールはありません。

  • エンタープライズ可用性機能セットは使用できません。

これらの制限に不満がある場合は、データベースをアップグレードすることを検討してください。

Office プログラミングについて

Office アプリケーションが人気を得て以来、開発者は特注のアプリケーションで Office プラットフォームを活用しようとしてきました。Excel スプレッドシートは、実世界で広く使用されています。Microsoft Office プラットフォームを活用しようとするこうした試みは、現実的には困難でありつつも、すべて同一の基本となる Office COM プラットフォームを対象としています。実際は、新しいリリースはそれぞれ特定の Office 製品またはクライアント アクセス ライセンスに密接に結び付いているため、これまで Office System のプログラム機能への単一のアクセス ポイントは存在しなかった可能性があります。たとえば、Microsoft Office Web コンポーネントはライセンスに結び付き、Visual Studio Tools for Office 2003 は Microsoft Office XP に結び付き、Excel Services は Office SharePoint Server 2007 に密接に結び付いています。Microsoft Office System を対象としたアプリケーションの開発に関して、知識に基づいた選択ができるように、中心的存在に焦点を当てることが重要となります。

Excel Services および Office System のプログラマビリティに関して、説明がやや誇張気味に感じたかもしれません。厳密に言えば、Excel Services が Office System を対象としていると主張することは技術的には正しくありません。また、この点を明確にすることは本当に重要です。Excel Services では、コードを呼び出して Excel ブックを操作することしかできません。

Excel ブックは Office System の均衡を保つ必要不可欠な部分であり、幅広く使用されているため、Excel Services が Excel Services ゲートウェイ経由で Office System に接続していると想定しても差し支えありません。したがって、この記事では、この関係を前提に引き続き説明します。また、第 7 章では、Office System コンポーネントを自動化する Excel Services のアプリケーション コードの例を示します。

Excel Services の代替

Excel Services の評判では、実際に、エンタープライズ レベルで Excel ブックを対象とする製品で Excel Services に匹敵するものはありません。次のいくつかのセクションで示す製品では、開発者がスプレッドシートを対象にすることができる一定の機能が提供されます。ただし、これらの製品には、Excel Services の柔軟性とスケーラビリティがないことを理解する必要があります。つまり、現在入手できる製品には、Excel Services と同じだけの機能性を持つものは 1 つもありません。

一方で、対象とする特定の機能セット (Excel チャートやピボットテーブルなど) を見ると、このタイプの機能を提供する製品が豊富にあることがわかります。一部のサード パーティ製品では、より優れた機能も提供されています。たとえば、チャート パッケージは高度化および特殊化され、通常は機能そのものに関しては Excel にバンドルされている Excel チャートよりも充実しています。ただし、Office System 全体にわたるエンタープライズ アプリケーションの開発に適した構造的なバックボーンを提供する製品はありません。Excel Services を評価し、現在 "競合する" 製品と比較する場合は、このことを忘れないでください。

Office Web コンポーネント

Office Web Components (OWC) は、Microsoft Office 2000 へのアドインとしてリリースされました。それ以降、Web アプリケーション開発者の世界は、このコンポーネント セットに熱中する集団を育ててきました。今日でも、コンサルタントはこの使用を推奨し続けています。Microsoft がこれらのコントロールの開発を中止したにもかかわらず、企業では OWC に基づいたアプリケーションを実装し続けています。第 6 章では、これらの製品を Web パーツに統合して Excel Services モデルに固有の限界を乗り越えるためのいくつかの例を見ていきます。詳細については、『Office Web Components "Roadmap"』 (英語) のブログ エントリを参照してください。

OWC がこのような成功を収めた理由を理解するには、それを作成するきっかけとなったビジネス要求を最初に理解する必要があります。長い間、Web アプリケーションには Excel の機能がありませんでした。OWC では、デスクトップの Excel の機能を Web ブラウザ エクスペリエンスに統合する方法が提供されました。OWC によって Web アプリケーションの多数の可能性が開かれました。さらに、OWC をデスクトップ上の Windows アプリケーションで実行すると、2 倍の業務を実行できました。

ただし、この柔軟性には高い代償が伴いました。セキュリティは常に問題でした。OWC が動作する ActiveX プラットフォームが原因で、OWC は顕著なセキュリティ上の欠陥や弱点に苦しみました。Microsoft は、大きく開いたセキュリティ ホールを閉じる適切なエンタープライズ ソリューションを見つけることができないでいました。一方で、このテクノロジに投資し続けることを正当化していました。しかし、セキュリティ問題を解決するためには、OWC を中止し、より安全な何かを導入する必要があることは明白でした。

EWA は OWC の代替ではありませんが、ブラウザに配置されたデスクトップの Excel 機能をエンド ユーザーに提供するというビジネス要求に対して、適切なエンタープライズ ソリューションを提供します。また、Internet Explorer と密接に関連付いた OWC コンポーネントが持つ複雑な問題は過去のものです。EWA は、Internet Explorer 以外のブラウザでも、Excel での表示を完全に再現します。OWC での開発向けの信頼できるガイドである『The Microsoft Office Web Components Black Book with .NET**』 (英語) (Lulu.com, 2005) は、Amazon.com で入手可能です。

Excel COM Interop ライブラリ

常に、顧客は Excel をサーバー技術として使用したいと考えてきました。スプレッドシートの計算、範囲の計算、または同時実行環境での変更の保存は、顧客の変わらない要求です。この種類の要求は、Excel の黎明期にも存在していました。今日でも、エンタープライズ デスクトップ開発の重い負担を避けるために、企業がアプリケーションを Web に移行するにつれて、要求が増え続けています。

ただし、問題があったとすれば、Excel がクライアント側のテクノロジとして設計されたという点です。サーバー側アプリケーションを提供することは考慮されていなかったのです。巧妙なハックや怪しいプログラミング技術を使用してクライアント側のテクノロジで強制的にサーバー側の業務を実行することは、アーキテクチャの限度を超えるため、障害が発生する要因となります。また、ソフトウェアの陰に隠れたままとすべき、最悪な事態も存在します。

しかし、Excel Services によって、サーバー上で動作するように設計された計算エンジンが提供されるようになりました。この計算エンジンは、クライアントのフロント エンドの奥深くに届くことができる Web サービス レセプタクルを持つため、シン クライアント、シック クライアント、およびスマート クライアントがスケーラビリティのある方法でバック エンドに接続できます。

Visual Studio Tools for Office

Microsoft Visual Studio Tools for Office は Visual Studio へのアドインであり、スタンドアロン製品でもあります。この記事を記述した時点では、製品は第 2 版であり、第 3 版を製作中です。このツール スイートは、.NET の開発者が Office System アプリケーションを対象にマネージ コードを使用できるように設計されました。Visual Studio Tools for Office では Windows アプリケーション向けの機能が提供されます。Web 向けには設計されていませんが、Visual Studio Tools for Office には、サーバー上でドキュメントを操作するためのサーバー コンポーネントがあります。Visual Studio Tools for Office には、いくつかの制限があります。最も目立つ制限は、特定バージョンの Microsoft Office を対象としている点です。

Visual Studio Tools for Office は、ゼロから設計されたわけではありません。むしろ、Office COM ライブラリ上に構築され、Visual Studio Tools for Office の機能を Windows アプリケーションで使用可能にするテンプレートとしてインストールされます。その結果、スケーラビリティおよびパフォーマンスよりも機能性が優先されます。たとえば、Visual Studio Tools for Office を使用すると、Windows コントロールをスプレッドシートに埋め込めるようになります。

Visual Studio Tools for Office には、検討に値する利点がさらにあります。ただし、製品はデスクトップ専用に設計されています。Excel Services では、この機能の大部分に、パフォーマンスおよびスケーラビリティの優先という利点が付加されます。また、Excel Services の機能は、デスクトップ アプリケーションに限定されません。Visual Studio Tools for Office の開発に適した資料として、最新の拙書である『Professional VSTO 2005: Visual Studio 2005 Tools for Office』 (英語) (Wrox, 2006) があります。

サード パーティ コンポーネント

Office System の機能を提供することを目的としたアドホックなテクノロジのために、一種の空白状態ができたことは明白です。たとえば、インターネット向けのスマート クライアント用アプリケーションを開発している場合に、適切な製品を選択することは困難です。このシナリオに限定すると、Visual Studio Tools for Office は特定の Office バージョンに結び付いているため、適切な選択ではない可能性があります。もう 1 つの問題点は、各 Visual Studio Tools for Office のインストールには特定バージョンの .NET Framework が必要であることです。

OWC は適切な選択です。ただし、エンド ユーザー向けライセンス契約によって、これらのコンポーネントはイントラネット環境でしか使用できません。正確には、OWC の使用条件を規定する規則が複雑すぎるため、使用条件そのものを理解するのは困難です。しかし、この規則を精読すると、対話型での使用についてインターネットに配置することは許可されていないことがわかります。

これらの要求やその他の種類の要求を満たすために、開発者が Office System モデルを対象することができるサード パーティのコントロールが開発されました。これらのコントロールは、言及するには数が多すぎますが、すべてのコントロールについて同じ問題が存在します。つまり、業界が認める製品は無償ではなく、独自のライセンス契約が含まれ、提供されるサポートのレベルがさまざまであるという問題です。

ビジネス インテリジェンス システム

この 10 年くらいの間で、ビジネス インテリジェンスはデータ マイニングよりも重要性を持つようになりました。この用語には、さまざまなバック エンドからデータを収集することからモデル主導のデータ分析までのすべてが含まれます。通常、ナレッジ ワーカーはこのような大量のデータの意味を理解するために、さまざまなツールを利用します。Excel スプレッドシートが実世界のこうしたビジネスの大部分で活用されていることは、驚くべきことではありません。その結果、Microsoft は、ナレッジ ワーカーが主導権を握れるようにするビジネス インテリジェンス ツールの完全スイートを提供し、Office SharePoint Server 2007 を強化することによって、このドメインでリーダーシップを発揮してきました。

Office SharePoint Server 2007 では、ナレッジ ワーカーが SQL Server、SAP、Siebel、スプレッドシート、Web サービスなどのさまざまなバック エンドに接続できるようにすることで、データのギャップが埋められます。大量のデータは、レポート センター サイトという新しい強力なツールによって、整理および正規化されます。ナレッジ ワーカーは、主要業績評価指標 (KPI) 分析を使用してデータを問い合わせることができます。

Office SharePoint Server 2007 のレポート センター サイトでは、Web パーツおよび KPI の表示に Excel Services を利用します。特別なデータ接続ライブラリ (DCL) に格納された組み込み接続ポイントを経由して、プラットフォーム全体からデータを収集することができます。構造化されたデータは、ピボットテーブル レポート経由で表示するか、またはリアルタイムに Office SharePoint Server ダッシュボードで目立つように表示できます。

インストールと配置

Office SharePoint Server 2007 はリソースを占有します。既定の構成では、正確に 50% のメモリが使用されます。Office SharePoint Server は、複数のサービス (それぞれがさまざまなジョブを担当) を実行するために、要求が多いことは仕方がありません。さらに、SQL Server 2005 もかなりの割合のリソースを消費します。つまり、このプラットフォームでは大量のコンピューティング リソースが必要になるということです。開発者が評価目的で Office SharePoint Server 2007 をパーソナル コンピュータ上で実行する場合、大きなパフォーマンス ペナルティが発生することに注意する必要があります。

パフォーマンス ペナルティは、サーバーの全体管理コンソールなどのクライアント側のアプリケーションおよび計算エンジンの応答時間などのサーバー側の機能に現れます。一方、最低限のハードウェアおよびソフトウェアの要件を満たすサーバーでは、Office SharePoint Server 2007 が効率的に実行されます。

デスクトップまたはラップトップ上にアプリケーションを作成および配置し始める前に、このことを覚えておく必要があります。繰り返しになりますが、配置および設定ガイドで概要を説明したように、Office SharePoint Server 2007 は、十分なコンピューティング リソースおよびハードウェア リソースを持つ高性能サーバー上で実行するように設計されています。企業では、サイトのパフォーマンスを向上させるために、Excel Services のリソース消費を増加または減少させるように構成できます。

インストールの前提条件とシステム要件

Excel Services はスタンドアロンとして、またはサーバー ファーム環境にインストールできます。スタンドアロン設定の場合、サーバーが以下の条件を満たしていることを確認してください。

  • クロック速度が 2.5 GHz 以上のデュアル プロセッサ

  • 1 GB 以上の RAM

  • Windows Server 2003 Service Pack 1 (NTFS を使用)

  • Microsoft .NET Framework 2.0

  • Windows Workflow Foundation (WF) ランタイム コンポーネント

  • インターネット インフォメーション サービス 6.0

ソフトウェアを評価したり、管理コストを削減したりする必要がある場合は、スタンドアロン構成が役立ちます。スタンドアロン アプリケーションでは、SharePoint サイトの強化に使用される Windows Internal Database がインストールおよび構成されます。

サーバー ファーム環境では、上記の要件をすべて満たすことに加えて、SQL Server 2005 または SQL Server 2000 Service Pack 3 が必要です。

Office SharePoint Server では、2 つのモードが使用可能です。これらのモードは、インストール後に管理者によって構成されます。評価モードの既定は、委任モデルです。エンタープライズ モードの既定は、信頼できるサブシステム モデルです。セキュリティの観点から見ると、委任モードではより強固なデータ保護は保証されません。実際に、委任モードの安全性が低い場合があります。委任を使用すると、ユーザー資格情報を Excel Services フロント エンドからバック エンドに流すことができます。委任と共に Kerberos を使用すると、多層構成のシナリオで資格情報が機能します。

注意

Kerberos Version 5 プロトコルは、ドメイン内の認証用の主要なセキュリティ プロトコルです。ユーザーとネットワーク サービスの両方の ID の検証には、相互認証が使用されます。最初に Kerberos プロトコル上で認証のネゴシエーションが試みられますが、成功しなかった場合は NTLM プロトコルが使用されます。NTLM のクライアント認証は、チャレンジ/レスポンスのメカニズムに基づいています。NTLM を Office SharePoint Server で使用すると、NTLM 認証のみを使用できるシステムとの通信を簡略化できます。

最低限の要件を満たしていれば、SharePoint 製品とテクノロジ構成ウィザードを実行するだけで、Office SharePoint Server を構成できます。このウィザードに従うと、順を追ってデータベース、Windows SharePoint Services 3.0、および Office SharePoint Server サーバーの全体管理アプリケーションをインストールおよび構成できます。

ウィザードの完了後に、サーバーの全体管理アプリケーションを起動するたびにユーザー名とパスワードが要求されないように、信頼済みサイトの一覧にサーバーの全体管理サイトを追加する必要があります。この設定は、Internet Explorer の信頼済みサイトの設定から実行できます。

次に、Office SharePoint Server サービスを構成する必要があります。このサービスは、サーバーの全体管理アプリケーションから構成できます。また、サーバーの全体管理アプリケーションを使用すると、数多くの構成を調整して以下の機能を追加できます。

  • 電子メール メッセージの構成

  • SharePoint サイトの作成

  • ログおよび監査の動作の構成

  • アンチウイルス アプリケーションの構成

SharePoint サーバーの全体管理アプリケーションは、管理インフラストラクチャの中心となる部分です。Office SharePoint Server を集中管理および構成できるように書き直されています。たとえば、ファーム内の 1 台のサーバーで管理上の変更が行われると、ファームの残りのサーバーにも伝達するようになります。自動同期および自動伝達は、Windows SharePoint Services 管理サービスと Windows SharePoint Services Timer サービスの 2 つのサービスで処理されます。SharePoint Shared Services オプションを使用すると、Excel Services の大部分を管理できるため、このオプションにはよく慣れておく必要があります。

サーバー マシンに IIS をインストールおよび構成すると、フロントエンドの Web サーバー上の Excel Services がアプリケーション サーバー上の Excel Calculation Services に要求を転送できるようになります。IIS がインストールされていない場合、または正しく構成されていない場合は、Excel Services コンポーネントを使用できません。

警告

この記事は、Office SharePoint Server のチュートリアルとして設計されていません。この記事の焦点は、Excel Services を使用した .NET の開発に当てられています。ただし、Excel Services の機能を動作させるために必要な場合は、Office SharePoint Server 管理の該当箇所についても説明する場合があります。 SharePoint に関する書籍としては、『Microsoft Office SharePoint Server 2007 Administrator's Companion』 (英語) (Microsoft Press, 2007) をお勧めします。

Excel Services の権限

管理コントロールは、Excel Services アプリケーションで使用されるブック リソースにまで及びます。たとえば、共有ブックに対して、クライアントの使用を表示専用モードに制限できます。または、エンド ユーザーがブック内のファイル ソースや数式を表示できないようにする一方で、ブックのオープン、操作、および計算を許可することができます。これらのすべてのアクティビティに対する権限を構成する手順は同一であり、管理者の責任の一部になります。

IT サポート担当者またはサイト管理者は、Excel Services 上で実行されるアプリケーションのプログラミングの詳細を理解する必要はありません。ただし、これらのアプリケーションを企業内のセキュリティ基準の下で実行されるようにポリシーを作成して、適用する必要があります。企業内の開発者の場合は、Office SharePoint Server の管理と構成には別途リソースを用意して、これらの部分にあまりかかわらないで済むようにする必要があります。

1 人の開発者が複数の役割を兼ねているような中小規模の店舗では、管理および構成のオプションを理解することが重要になります。この規模までは、さまざまな管理ツールおよび構成オプションを使用することで、主導権を握ることができます。これらのツールは、柔軟性および使いやすさを考慮して設計されています。また、可能な限り短い時間でそれらを把握するために役立つドキュメントも数多くあります。後で、コード例を示しながら構成方法を説明します。

インストール ウォークスルー

SharePoint サーバーの全体管理アプリケーションは、管理インフラストラクチャの中心となる部分です。Office SharePoint Server 2007 を集中管理および構成できるように書き直されています。たとえば、ファーム内の 1 台のサーバーで管理上の変更が行われると、ファームの残りのサーバーにも伝達するようになります。

警告

Office SharePoint Server の配置には、ドメイン レベルでのローカル管理権限を持つアカウントが必要です。このアカウントは、Web ページが構築されるときに、構成データベースの変更にアクセスするためにも使用されます。データベース アカウントとして使用するアカウントでは、いくつかの重要なサービスが実行されるために、サービスとして実行する権限も必要です。グループ ポリシーでこれらに対する制限が明示的に適用されている場合は、Office SharePoint Server を正しくインストールして動作させるために、制限を解除する必要があります。

インストールを開始しましょう。設定アプリケーションを実行して、インストール ウィザードを起動します。インストール プロセス中に、[基本] と [詳細] のどちらかのインストール オプションを選択してください (図 1-5)。****

構成オプションについて

図 1-5 には、設定中に使用できる構成オプションを示します。

図 1-5 設定中のインストールの選択

セットアップ中のインストールの選択

[基本] オプションでは、既定設定を使用して、単一のスタンドアロン サーバーとして対象コンピュータ上にインストールされます。構成や資格情報は要求されません。[詳細]**** インストール オプションからスタンドアロン オプションを修復、アップグレード、または選択する場合も、これらの既定の構成が使用されます。このオプションでは、特別版の Windows データベースである MSSEE (Microsoft SQL Server Embedded Edition) がインストールされます。

[基本] インストール オプションを選択した後は、追加のオプションを検討する必要はありません。SQL Server のライセンス付きバージョンを持っていない場合、アカウント資格情報の構成を必要としない場合、またはソフトウェアを評価する場合は、このオプションを検討してください。このリリース以降、Office SharePoint Server では SQL Server 製品ファミリのデータベースのみがサポートされます。図 1-6 には、インストール中に設定するサーバー タイプを示します。

図 1-6 サーバー タイプのインストールの選択

サーバーの種類のインストールの選択

[詳細] オプションを使用すると、単一サーバーまたはサーバー ファーム向けのコンポーネントをインストールできます。[完全]、[Web フロント エンド]、および [スタンドアロン] の 3 つのオプションがあります。これらのオプションの内容は各オプションが説明するとおりです。インストール中に、資格情報が要求されます。[詳細]**** オプションの場合でも、SQL Server Embedded Edition に対して、コンポーネントは全機能を実行できます。ウィザードによって、追加入力なしでインストールが完了します。インストール プロセス中にエラーが発生した場合、ファイルはロールバックされません。問題を診断した後に、設定アプリケーションを再実行する必要があります。エラーの詳細メッセージを提供するログ ファイルが書き込まれます。エラー ダイアログ ボックスには、ディスクに格納されたログ ファイルへのパスが表示されます。図 1-7 には、構成の失敗例を示します。

Office SharePoint Server のインストールが完了すると、すぐにインストール ウィザードによって SharePoint 製品とテクノロジ構成ウィザードが起動します。このウィザードに従うと、順を追って Windows SharePoint Services 3.0 を構成し、Office SharePoint Server 2007 のインストールを完了できます。第 5 章では、Windows SharePoint Services に焦点を当てます。

図 1-7 失敗した構成のダイアログ ボックス

[Failed configuration] ダイアログ ボックス

SharePoint 製品とテクノロジ構成ウィザードについて

SharePoint サーバーの全体管理を起動するには、SharePoint 製品とテクノロジ構成ウィザードを実行する必要があります。このウィザードでは、以下の機能が実行されます。

  • 初期構成

  • 不足するコンポーネントの識別

  • 構成の検証と修復

  • セキュリティのリセット

構成ウィザードでは、Windows SharePoint Services に依存した、適切に登録されたその他のアプリケーションから、Windows SharePoint Services 管理サービス、Windows SharePoint Services Timer サービス、IIS、およびサービスを開始、停止、またはリセットする必要がある場合があります。ウィザードは、[スタート] メニューの [Microsoft Office Server]**** メニュー グループからいつでも実行できます。

ウィザードのインストール プロセスの一部に、データベースの構成があります。データベースの構成中に、データベース設定を構成するオプションがあります。フィールドの内容はそのフィールド名が表しています。データベース名を指定しない場合は、ウィザードが代わりにデータベースを作成します。データベース名を指定する場合は、そのデータベースにテーブルが含まれないようにしてください。含まれた場合には、エラー ダイアログ ボックスが表示され、その問題を知らせます。

有効なまたはライセンス済みの SQL Server 2000 または SQL Server 2005 を持っていない場合で、[詳細] オプション (図 1-6) をインストールするときは、データベース名を \##SSEE (SQL Server Embedded Edition) と入力すると、SharePoint 製品とテクノロジ構成ウィザードを SQL Server Embedded Edition を指すように指定できます。ただし、前に説明したように、MSSEE で適用される数多くの制限に注意してください。図 1-8 には、[構成データベースの設定]**** ページを示します。

図 1-8 データベース構成オプション

データ設定のオプション

構成データベースについて

サーバー ファームの構成およびサイトマッピング情報を格納するために、構成データベースが使用されます。サーバー ファームが 1 台のコンピュータで構成されているか、複数のコンピュータで構成されているかに関係なく、サーバー ファームあたりの構成データベースは常に 1 つです。新しい構成データベースを作成する場合、構成ウィザードにデータベース名を指定します。既存のデータベースを使用する場合は、テーブル、ストアド プロシージャ、またはその他のオブジェクトが含まれないようにしてください。含まれている場合は、重複エラーが発生します。また、さまざまなデータベース テーブルに GUID が含まれていることに気付くかもしれません。この名前付け規則は、Excel Services オブジェクト モデル以外からの、これらのテーブルに対する変更が禁止されていることを意味しています。

既存の構成データベースに接続する場合は、[データベース名の取得] をクリックします。SQL Server を実行するコンピュータ上に存在する構成データベースが一覧に表示され、適切な構成データベースを選択できます。新しいデータベース サーバーを作成するように選択した場合は、このオプションは使用できません。構成データベースが別のコンピュータにホストされている場合は、ドメイン アカウント用の資格情報を指定する必要があります。垂直方向に拡張できるように、ドメイン アカウントを指定することをお勧めします。

構成データベースがドメイン アカウントにホストされている場合は、Windows SharePoint Services サービス アカウントとして指定できる一意のドメイン ユーザー アカウントが必要です。このユーザー アカウントは、構成データベースへのアクセスに使用されます。データベース アクセス アカウントは、データベースの初期構成と現在の接続の両方で使用されます。

作成された一意のユーザー アカウントは、SharePoint サーバーの全体管理アプリケーション プールのアプリケーション プール ID としても機能します。これは、Windows SharePoint Services Timer サービスが動作するアカウントと同じです。SharePoint 製品とテクノロジ構成ウィザードによって、このアカウントが SQL Server ログイン、SQL Server データベース作成者サーバー ロール、および SQL Server セキュリティ管理者サーバー ロールに追加されます。

データベースのプロビジョニングが完了した後は、ウィザードでポートを構成できます。図 1-9 には、ポートを構成するための [SharePoint サーバーの全体管理 Web アプリケーションの構成]**** ページを示します。

図 1-9 サーバーの全体管理のポート構成

サーバーの全体管理ポートの設定

データベース権限の構成

データベース アクセス アカウントには、以下の権限が必要です。

  • セキュリティ管理者

  • データベース作成者

  • データベース所有者

SQL Server には、これらの権限を手動で構成する必要があります。構成ウィザードでは、この構成は実行されません。

データベース アクセスに指定するアカウントには、以下の最低限の権限が必要です。

  • 構成データベースへの読み取り/書き込み権限

  • SQL Server のサーバー全体の権限

  • DBO 権限

新しい構成データベースの場合、データベース アクセス アカウントには以下の権限が必要です。

  • データベースの作成

  • プロシージャの作成

SharePoint 製品とテクノロジの構成

この時点で、図 1-10 に示したように、SharePoint 製品とテクノロジ構成ウィザードが実行され、所定のタスク セットが構成されます。

図 1-10 [SharePoint 製品とテクノロジの構成中] ページ

SharePoint 製品とテクノロジの設定

SharePoint 製品とテクノロジ構成ウィザードでは、数多くの機能が実行されます。ウィザードは、システムに旧バージョンの SharePoint 製品が存在するかどうかを確認し、事前スキャン ツールを使用することを要求し、旧バージョンのコンポーネントが検出された場合には終了します。ウィザードによって、Office SharePoint Server 2007 で使用するデータベース アクセスが構成されます。このウィザードでは、使用されるさまざまな機能およびサービスもインストールおよび構成されます。これらの機能およびサービスには、Excel Calculation Services とドキュメント管理ライブラリが含まれます。ウィザードではセキュリティが構成され、実行時のサイトのセキュリティと構成をカスタマイズするための、サーバーの全体管理ウィザードへのフックが用意されます。また、ビジネス インテリジェンス シナリオで使用するサンプル データも作成されます。システムに変更を行う必要があるため、SharePoint 製品とテクノロジ構成ウィザードを実行するアカウントは管理者グループのメンバである必要があります。

注意

アップグレードを実行する前に、事前スキャン ツールを実行する必要があります。コマンド プロンプトで「c:\program files\common files\shared\web server extensions\12\bin\prescan.exe /all」と入力すると、事前スキャンを実行できます。このスキャンは、ファームのサイズに応じて数分から数時間かかることもあります。

ウィザードが完了すると、3 つのメッセージのいずれかが表示されます。[構成完了]**** ダイアログ ボックスは、必要な構成タスクが完了し、サーバーの全体管理を使用できる準備ができたことを示します。[構成成功] ダイアログ ボックスは、必要な構成タスクがエラーなしで正常に完了したことを示します。正常に完了しなかった場合は、ウィザードが成功しなかったことを知らせるエラー ダイアログ ボックスが表示されます。

設定が完了すると、コンピュータに単一の Web アプリケーションが追加されます。この Web アプリケーションには、SharePoint サイトをホストする単一の SharePoint サイト コレクションが含まれています。サーバーの全体管理ユーティリティを使用すると、追加の SharePoint サイト コレクション、サイト、および Web アプリケーションを作成できます。この詳細については、すぐ後で説明します。

[基本]**** インストールでは、サーバーの全体管理はこのダイアログ ボックスが消えた後に自動的に起動します。[詳細] インストールでは、構成プロセス中に適用された設定内容を確認するダイアログ ボックスが表示されます。SharePoint 製品とテクノロジ構成ウィザードを再実行する必要がある場合は、[スタート]**** ボタンをクリックし、[プログラム] をポイントします。次に、[管理ツール]**** をポイントし、[SharePoint 製品とテクノロジ構成ウィザード] をクリックします。

Windows のプログラムの追加と削除****を使用して製品をアンインストールするように選択した場合は、SharePoint 製品とテクノロジ構成ウィザードがサイレント モードで起動します。サイレント モード中にエラーが発生した場合は、SharePoint 製品とテクノロジ構成ウィザードにエラー コードが返され、[構成失敗] ダイアログ ボックスが表示されます。エラーが表示された後に設定を終了すると、対象のコンピュータはその時点までの構成が完了した状態になります。つまり、ロールバックは実行されません。

インストールが完了すると、サーバーの全体管理 Web アプリケーションが起動します。サーバーの全体管理アプリケーションを使用すると、サーバー ファームの構成設定を管理できます。

注意

サーバーの全体管理アプリケーションには、[個人用サイト] タブなどの複数のタブおよびリンクが含まれています。[個人用サイト] のサイトは、各チーム メンバが個人情報を保存するために使用できる個人用のサイトです。その他のメンバとは共有されません。

サーバーの全体管理の仮想サーバーおよびサイトが作成されると、1024 ~ 32767 のランダムなポート番号が割り当てられます。サーバーの全体管理サイトにリモートからアクセスするには、このポート番号を覚えておく必要があります。stsadm.exe コマンド ライン ユーティリティを使用すると、管理用ポート番号を表示または変更できます。

[サーバーの全体管理の構成] ダイアログ ボックスでは、サーバーの全体管理 Web アプリケーションに対してセキュリティ面および割り当て済みポートを構成できます。Kerberos は、推奨されるセキュリティ設定ですが、特別な構成が必要になります。Windows Server 2003 向けの Kerberos 構成ドキュメントについては、『Kerberos Authentication in Windows Server 2003』 (英語) を参照してください。いずれの場合でも、大部分のエンタープライズ インストールで NTLM 認証を安全に使用できます。図 1-11 には、サーバーの全体管理のホーム ページを示します。

図 1-11 サーバーの全体管理 Web アプリケーション

サーバーの全体管理の Web アプリケーション

サーバーの全体管理アプリケーションは、Office SharePoint Server 2007 を構成するための主要なツールです。サーバーの全体管理の中心となる部分は、左側にある [サーバーの全体管理] および [共有サービス管理]**** メニュー、上方にある [ホーム]、[サーバー構成の管理]、[アプリケーション]、[管理] の各タブ、一番右にある [サイト アクション] メニューです。これらのメニューを使用すると、管理者は特定のコンピュータまたはファーム全体にインストールされているすべてのサービスと機能に対して検索および構成できるようになります。

注意

この記事はサーバーの全体管理のチュートリアルとしては書かれていません。代わりに、.NET Framework で作成するサポート コードに構成を適用しながら、構成面について説明できるように書かれています。いずれの場合でも、この構成面は、サーバーの全体管理および Office SharePoint Server に関して、実用的な知識を提供するのには十分すぎる内容となっています。

Excel Services の構成

インストールのこの時点では、Excel Services はサーバーにプロビジョニングされません。次の数ステップでは、Excel Services 機能の構成とプロビジョニングについて説明します。ここで説明する構成オプションでは、サーバーの全体管理のみを使用するため、サーバーの全体管理を正しく実行することが重要となります。もう 1 つの方法として、Office SharePoint Server には stsadm.exe が用意されており、これを使用することで Office SharePoint Server の構成およびプロビジョニングを行うこともできます。

サーバーの全体管理のホーム ページには、初めて使用するときに実行する管理タスクがあることに注意してください。実行する主なタスクは、共有サービス プロバイダ (SSP) のプロビジョニングです。SSP の概念を理解する最良の方法は、"ブドウのたとえ話" を使用することです。茎に 1 房のブドウがなっていて、それぞれのブドウの粒が主なつるから栄養分を吸収していると考えてください。この特定の構造は、主なつるから、茎から生えるブドウの粒に対して栄養分を適切に配分することに適しています。

Office SharePoint Server アーキテクチャの場合では、ブドウは Web サイトとサブサイトなどの実際のポータルに相当します。茎に付いたブドウの粒と同じくらい多くの Web サイトとサブサイトが存在します。茎は SSP です。栄養分が不足することなくブドウが成長できるように、茎にはブドウの要求を満たす責任があります。同様に、エンド ユーザーの要求に効率的に対処できるように、SSP はポータルおよび Web サイトに共有サービス一式を提供します。SSP は、Reporting Services、Personalization Services、Business Data Catalog Services インフラストラクチャ、Search Services、および Excel Services を提供します。図 1-12 には SharePoint アーキテクチャを示します。

図 1-12 ブドウのたとえ話の図

グレープ類似 ダイアグラム

各つるでは、複数の茎にブドウがなる場合もあります。同様に、Office SharePoint Server のアーキテクチャに複数の SSP が存在し、それぞれが 1 つ以上のポータルの要求を処理している場合があります。ファーム全体にわたるさまざまなリソースを管理する場合は、複数の SSP を構成できます。SSP からサービスが提供されるポータルは、SSP で定義されたサービスしか提供できません。1 粒のブドウまたはポータルは、単一の SSP からのみサービスを受けることができます。特定の茎になる 1 房のブドウ、または特定の SSP 上のサイト コレクションでは、この特定の SSP のリソースが消費されます。ブドウに供給する "栄養分" または Web アプリケーションに提供するネットワーク リソースを物理的に制限する方法はありません。ただし、必要に応じて、プライバシー ポリシーを使用して制限を課すことができます。Office SharePoint Server 内のさまざまな Web サイトのコンテンツおよびリソースを制御する必要がある場合は、特に SSP の概念がよく機能します。第 5 章で、再びブドウのたとえ話に戻ります。

Excel Services のプロビジョニングについて

ここまでで、SharePoint の全機能に対するアクセスを制御するサーバーの全体管理サイトを作成しました。サーバーの全体管理は、ファームに最初に追加されたサーバーにホストされます。ただし、一般にコードの開発および実行は、管理者ではなく開発者が行います。この章の残りの部分で作成するサポート コードを説明するために、このサーバーかファーム内のその他のサーバーのどちらかで、新しい Web アプリケーションを作成およびプロビジョニングする必要があります。このアプリケーションはチーム サイトとなります。Office SharePoint Server では、多数のチーム サイトがサポートされます (サーバーのリソース制限内)。

セキュリティのベスト プラクティスでは、アプリケーションを管理サイトに配置されないようにすることをお勧めします。また、この新しい Web サイトは管理者特権の下で実行しないでください。テキストがこれらの推奨事項に反するときは、控えめに、説明目的でのみ実行されます。

考慮すべきもう 1 つの点は、Windows Server 2003 の [プログラム] メニューの [管理ツール]**** にあるサーバーの全体管理へのリンクです。ただし、新たに作成するチーム サイトへのクイック リンクはありません。サーバーの全体管理とチーム サイトの 2 つのサイトは必ずしも同じコンピュータにホストされるわけではないため、チーム サイトへの独自のリンクを作成できます。または、必要に応じて、[サーバーの全体管理] メニューにある [Shared Service Provider] リンクからチーム サイトにアクセスできます。これが、2 つのサイト間の基本的な違いであり、この違いを理解することは非常に重要です。

感覚をつかむために、説明を開始する前にプロセスの簡単な概要を示しましょう。最初に、SharePoint サイト向けの Web アプリケーションを作成します。IIS が、クライアント要求をこの Web アプリケーションに転送します。Web アプリケーションには、ポータル サイトが追加されます。ポータル サイトによって、チーム メンバおよびユーザーがログイン、Web パーツの使用、その他のアクティビティを行えるようになります。

ポータル サイトでは、Shared Service Provider で提供されるリソースが使用されます。つまり、最初に Web アプリケーション向けの SSP をプロビジョニングしてから、最初のポータル サイトを作成する必要があります。最後に、サーバーの全体管理サイトが Office SharePoint Server 向けの管理機能を提供するのと同様に、ポータルサイトを保持する、新たに作成する Web アプリケーションにも管理ページを追加します。このページは、管理者がポータルへのアクセスを制御するときに役立ちます。この管理ページは、必ずしもサーバーの全体管理ページまたはサーバーの全体管理を実行するアカウントに関連するわけではありません。

この新しいポータル サイトと各ページの [個人用サイト] リンクを混同しないでください。各ページの最上部にある [個人用サイト] タブは、認証された各ユーザーの個人用スペースを提供する特別なサイトへのリンクです。その他のチーム メンバは、このサイトにアクセスできません。[個人用サイト] ページへのリンクを使用すると、Office SharePoint Server の任意のページから個人用スペースに迅速にジャンプできます。次の数ステップでは、SSP および Web アプリケーションのプロビジョニング手順を実行します。

Excel Services をプロビジョニングするには、最初に 1 つ以上の SSP を構成する必要があります。SSP をプロビジョニングする前に、いくつかの依存タスクを実行する必要があります。サーバーの全体管理から、[サーバー構成の管理] を選択します。メイン ウィンドウから、[このサーバーのサービス]**** を選択します。Excel Calculation Services を開始します。検索サービスもプロビジョニングする必要があります。図 1-13 で示すように、[開始] ボタンをクリックして、適切な項目を入力します。

図 1-13 検索のプロビジョニングと構成

検索のプロビジョニングと設定

図 1-14 で示すように、[サーバー構成の管理] メニューの [ファームの管理機能]**** をクリックして、Excel Calculation Services が動作していることを確認します。

図 1-14 ファーム セッションの構成オプション

ファーム セッションの設定オプション

図 1-15 で示すように、[状態] 列はサービスが動作しているかどうかを示します。

図 1-15 サービスの確認

サービスの確認

同様の手順を実行して、検索サービスが動作していることを確認します。SSP のプロビジョニングには、有効なインデックスが必要です。有効なインデックスは、検索サービスから構成します。

次に、[共有サービス管理] をクリックして、SSP のプロビジョニングを開始します。最上部のタブにある [新規] **** を選択して、ウィザードに従います。セントラル サイトおよび管理サイトを作成する必要があります。サイトの作成は簡単なプロセスです。SSP をプロビジョニングした後に、左側のナビゲーション メニューにあるリンクをクリックします。

このウィンドウでオプションを検討して、ファーム向けに Excel Services を構成します。短いセッションと長いセッションの設定に慣れていない場合は、次の記述を参考にしてください。効率性のために、フロント エンド Web サーバーからの呼び出しはユーザー セッションに基づいて処理されます。これらのセッションには、時間制限が設定されます。要求にスプレッドシートへのアクセスが含まれていない場合は、時間制限を厳しくしてリソースを節約できるように、短いセッションを選択します。

一方、ユーザーがスプレッドシートを操作し、バック エンドへの永続的なセッションが必要な場合は、セッションの時間制限を緩くします。これが、長いセッションです。これらの設定を適宜調整してください。

注意

SharePoint Configuration Analyzer は、インストールおよびコンテンツに対して分析とレポートを行うためのツールです。このツールは、Microsoft ダウンロード センターからダウンロードできます。SharePoint Configuration Analyzer では、構成上の問題、構成ファイル、およびその他のデータに対する広範囲のレポートが作成されます。データは、詳細分析またはアーカイブ用に結果フォルダに書き込まれます。

信頼できるファイル保存場所について

この時点で、信頼できるファイル保存場所を構成してください。信頼できるファイル保存場所は、Office SharePoint Server 2007 のドキュメントの格納域および取得用の保護されたリポジトリです。ここにスプレッドシートを格納し、これらのドキュメントにセキュリティ アクセス権を割り当てます。このアクセス権の範囲は、フロント エンドおよび Web サービスのドキュメント操作にまで及びます。 信頼できるファイル保存場所を構成するには、Excel Services の [設定] メニューから [信頼できるファイル保存場所]**** を選択します。図 1-16 には、Excel Services の [設定] メニューを示します。

図 1-16 信頼できるファイル保存場所

信頼されているファイルの場所

ブラウザのアドレス バーにあるサーバー名およびポート情報を使用して、信頼できるファイル保存場所を定義します。まずは、%PROGRAMFILES%\common files\microsoft shared\Web server extensions\12\bin を使用することをお勧めします。[OK] をクリックして、情報を保存します。第 2 章で作成するコードでは、この場所を信頼できるため、ここからスプレッドシートが読み込まれます。

Office SharePoint Server に慣れていない場合、またはプロセス中にわからなくなった場合は、この章で示した図の最上部にあるブレッドクラムの足跡を確認すると役立つ場合があります。サーバーの全体管理サイトのすべてのページには足跡があります。これらの足跡は、ページ階層内の現在の場所を確認するのに役立ちます。

サーバーの全体管理は数多くの設定およびさまざまなページで構成されますが、心配しないでください。この記事を読み進めるにつれて、さまざまな設定およびページでの実地体験が得られます。いずれの場合でも、これらのさまざまなページおよび設定はそれほど複雑ではなく、サイトの管理およびエンタープライズ プロビジョニングで役割を果たすために必要な労力はそれほど高くありません。サーバーの全体管理は、使いやすさを考慮して設計されています。

サポートされていない機能および制限

評価プロセスの一部では、サポートされていない機能を対象とする必要があります。サポートされていない機能が見つかると、導入プロセスが停滞したり、ソフトウェアに幻滅したりする可能性があります。この幻滅によって、気付かないうちに見込み顧客の意欲がそがれてしまうことがあります。サポートされていない主な機能の短い一覧を見てみましょう。

Excel マネージ アセンブリを Windows XP Professional にコピーして、Excel Services プロジェクトを正常にコンパイルすることはできますが、Excel Web Access オブジェクトの実行時の作成には失敗します。Excel Services は、Windows Server 2003 などのサーバー コンピュータ上で動作するように設計されています。Windows XP や Windows Vista などの、コンシューマ向けオペレーティング システムでは、Office SharePoint Server は動作しません。ただし、Excel Services のテンプレートをダウンロードおよびインストールした場合は、任意のオペレーティング システム上でコンパイルが可能なプロジェクトを作成できます。これらのアセンブリを実行することはできませんが、これらのアセンブリを配置用サーバーに渡すことはできます。第 3 章では、このプロセスについて詳細に説明します。

Excel Services は、Excel ブックを作成するように設計されていません。ブックを作成するには、Excel のデスクトップ バージョンを使用する必要があります。Excel Services では単に、作成済みのブックにアクセスして、そのブックに課せられたセキュリティ上の制約を適用するだけです。Office SharePoint Server を評価するときには、このことを忘れないでください。

サーバーの全体管理 Web アプリケーションには、Office SharePoint Server の全機能セット向けの構成は用意されていません。全機能セット向けの完全な構成は、stsadm.exe ツールで行います。既定インストールの場合、このツールは %PROGRAMFILES%\common files\shared\Web server extensions\12\bin に存在します。stsadm.exe ツールによって、Office SharePoint Server 2007 をコマンド ラインから管理できるようになります。バッチ ファイルまたはスクリプトを実行する必要がある場合に、stsadm.exe ツールを使用してください。このツールのヘルプは、コマンド プロンプトで「stsadm.exe /?」と入力すると表示されます。第 2 章では、開発に必要な Office SharePoint Server および Web パーツの重要点について触れています。

Excel Services では、セルの外部参照はサポートされていません。この対応策は、ユーザー定義関数 (UDF) を実装することです (第 4 章と第 7 章を参照)。UDF を使用すると、Web サービスの呼び出し、外部ライブラリの呼び出しなどの幅広いタスクを実行できます。

Web アプリケーション ルートの検索

Office SharePoint Server がインストールされると、IIS アプリケーションの範囲が拡張されて、Windows SharePoint Services を含むようになります。拡張された Web アプリケーションには、Uniform Resource Identifier (URI) にマッピングされるルートが含まれます。ただし、大部分の SharePoint Services の機能はコンテンツ データベースに格納されていて、Web アプリケーションのルート サイトまたはファイル構造には格納されていません。このことについては、第 5 章でより詳細に説明します。それまでは、ルートには、Web アプリケーションに固有の web.config、ユーザー コントロール、Web パーツ定義ファイル、およびその他のリソースなどのファイルが含まれていることにだけ注意してください。

したがって、結果として表示される Web ページは、ファイル構造とコンテンツ データベース (物理的な場所は ドライブ**:\inetpub\wwwroot\wss\virtualdirectories\GUID**) からのコンテンツを組み合わせたものです。仮想ディレクトリには、2 つ以上の GUID** ディレクトリがある場合があります。GUID の 1 つはサーバーの全体管理を表し、もう 1 つの GUID は既定のコンテンツ アプリケーションを表します。管理者の観点から見ると、2 つの GUID** を簡単に区別する方法はありません。

以下の手順に従って、Web アプリケーションのルート ディレクトリを判別します。

  1. コマンド プロンプトから「inetmgr」****と入力します。

  2. [Web サイト] ノードを展開します。

  3. 該当する Web アプリケーションを右クリックします。

  4. 図 1-17 で示すように、ホーム ディレクトリからのパスを確認してください。

この手順は、Web パーツを配置するときに役立つので、必ず慣れておくようにしてください。

図 1-17 IIS からの Web アプリケーション ルートの判別

IIS からの Web アプリケーション ルートの決定

まとめ

Excel Services は、Excel スプレッドシートを操作するために構築および調整された新しいテクノロジです。この新しいテクノロジを特長付ける点は、Office SharePoint Server 2007 を使用するように設計されていることです。Excel Services のプログラム可能な部分には .NET Framework が採用されているため、Web パーツを作成して Office SharePoint Server 上で実行できます。

Excel Services のプラットフォームとして Office SharePoint Server が採用されたため、また、機能を拡張するためのフックが .NET Framework から利用できるようになったために、少なくとも Office SharePoint Server の構成と管理の基本原則を理解する必要があります。この章では、理解が必要な主要部分について説明しました。いずれの場合でも、構成と管理はあまり苦労せずに学べます。このすばらしいテクノロジを飼い慣らすには、.NET Framework のセキュリティおよびカスタマイズの概念について、うわべ以上の知識を習得しておく必要があります。Excel Services 向けに作成されたアプリケーションでは、サーバー ファーム全体にわたるクラスタ環境に内蔵された負荷分散機能を使用して、多数の同時接続をサポートできます。

Excel Services のプラットフォームとして Office SharePoint Server を使用するという Microsoft の決定は、過去から学んだ教訓から強く影響を受けました。Office SharePoint Server は完成された、構成可能で、スケーラブルな、安全な製品です。この共生関係は、基本的に Excel Services が追加の負担なしで、これらの大きな利点を享受することを意味します。全般的に見て、Excel Services は革新的な前進であり、過去の試みの失敗を避けるように構築されています。適切に動作する Office System アプリケーションの開発は、しだいに簡単になっています。さらに前進する余地もまだあります。以上でインストールの基本は終了し、ここからはコードを書く時間です。

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