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メッセージング レコード管理についての計画

 

適用先: Exchange Server 2007 SP3, Exchange Server 2007 SP2, Exchange Server 2007 SP1

トピックの最終更新日: 2011-06-21

ここでは、メッセージング レコード管理 (MRM) の計画プロセスに関するガイダンスとして、考慮する必要のあるいくつかの要素、ベスト プラクティス、および問題について概要を示します。Exchange 2007 で MRM を構成し管理するのは技術的には容易ですが、MRM の実装を正しく計画するには時間と深い考察、さらにさまざまなビジネス管理業務からの情報が必要になります。Exchange 管理者と IT 部門に加えて、役員、レコード マネージャ、人事担当者、法律顧問、さらにはエンド ユーザーも、計画プロセスの中で重要な役割を果たす場合があります。

準備

MRM ソリューションを実装する前に、多くの要素を考慮する必要があります。これらは必ずしも技術的な要素ではありません。ここでは、これらの要素のいくつかについて説明します。

サンドボックス

MRM のインストール、構成、および保守について理解するには、まずテスト環境 (サンドボックス インストールとも呼ばれます) をセットアップすることをお勧めします。テスト環境での MRM の設定および構成の詳細に精通した Exchange 管理者は、MRM ソリューションを正しく構築するための技術要件について組織内の他のメンバに意見を求めたり提言したりする際に、より的確な対応が可能です。

ポリシーと計画

MRM ソリューション実装の初期段階で、組織のレコード管理ポリシーを作成または更新する目的で、チームを編成することをお勧めします。ポリシーの作成または確認のプロセスには、たとえば以下の人々を含めることを検討します。

  • レコード管理の専門家
  • 弁護士
  • 人事担当者
  • トレーニング
  • 上級管理職
  • IT 管理者
  • コンサルタント

このチームの仕事は、組織の現在および将来のニーズに対処するために十分な適用範囲の広さを持ったレコード管理ポリシーを作成することです。また、そのポリシーは、MRM ソリューションとして Exchange 管理者が実装できるように十分明確で詳細である必要があります。このポリシーを開発するプロセスは長期にわたる場合があります。それは、管理可能な MRM 実装を作成できるようにするためのポリシーを策定するには、チームの各メンバが、法的要件、予算、複雑さ、および管理上や人的な考慮事項のバランスをとりながら、他のメンバの作業内容を検討し、提案を行い、変更していく必要があるためです。

特に電子メール環境が確立された組織でチームが考慮する必要のある問題としては、次のものがあります。

  • MRM ソリューションに対してユーザーが抱く懸念と抵抗感
  • 組織のメッセージング ポリシーの監視および適用方法

管理できる場所でのメッセージの保持

メッセージを管理するには、管理フォルダ アシスタントがメッセージにアクセスできる必要があります。つまり、メッセージング レコード管理を効果的に行うには、メッセージが Exchange サーバーに格納されている必要があります。このため、以下の 2 つが必要になります。

  • 多くの場合、ユーザーのメールボックスに保持できるアイテム数を増やすためにメールボックスのサイズを拡大する必要があります。
  • ユーザーのコンピュータ上の個人用フォルダ ファイル (.pst) へのアクセスを制限または禁止する必要があります。

メールボックス サイズの拡大

通常、サーバー上のメールボックス内にすべてのユーザー メッセージを保持するには、場合によってはギガバイト (GB) 規模でユーザーのメールボックス サイズを拡大する必要があります。Exchange 2007 の高いパフォーマンスが、これらの拡大したメールボックスの管理を可能にします。

.pst ファイルへのアクセスの制限

まず、新しいアイテムを既存の .pst ファイルに追加することを禁止するグループ ポリシーを作成して、ユーザーに .pst ファイルを使用させないようにします。.pst ファイルを読み取り専用にすることで、ユーザーに対して、既に存在している .pst ファイルへのアクセスは許可しながら、保持が必要なメッセージを各自の Exchange メールボックスに保持するよう促します。最終的に、すべての .pst ファイルへのアクセスを禁止するグループ ポリシーを作成します。

.pst ファイルへのアクセスを制限することで、一部のユーザーの作業習慣が損なわれる可能性がありますが、多くの利点もあります。

サーバー上にユーザーのメッセージを保持し, .pst ファイルへのアクセスを制限することの利点を以下に示します。

  • 管理および監視が可能な場所にメッセージを保持することで、MRM の有効性が大幅に高まります。
  • 定期的にバックアップされるサーバー上ではなく個人のハード ドライブに格納されている重要なデータを失うリスクが軽減されます。
  • ベンダ、インターン、および従業員が組織を離れるときの組織の知的財産の流失を低減できます。
  • すべてを各ユーザーのメールボックスに格納することで、ユーザーの各自のデータへのアクセスが向上します。
  • Web 接続がある場所ならどこでもすべてのユーザー メッセージにアクセスできるので、Microsoft Outlook Web Access の有効性が高まります。
  • 訴訟時の法令に基づく開示のコストが削減されます。.pst ファイルに格納されている情報を取得して探し出すプロセスは、労力とコストがかかります。それは、まずユーザーのコンピュータ上にある .pst ファイルを見つけ、さらにその内容を法務担当者が処理する必要があるためです。

Microsoft Office Outlook 2007 が .pst ファイルなしで動作するようにユーザーのシステムを構成するには、次の操作を行います。

  1. 次のレジストリ サブキーの値を 1 に設定するグループ ポリシーを作成します。この設定により、ユーザーが新しいアイテムを .pst ファイルに追加できなくなります。ユーザーは新しい .pst ファイルを作成できますが、それには何も追加できません。この設定は、Microsoft Outlook の .pst ファイルだけが対象です。Microsoft SharePoint の .pst ファイルは、ユーザーの Outlook プロファイルで接続および更新できます。同様のレジストリ キーを使用して、Outlook 2003 の .pst ファイルへの書き込みを無効にすることができます。

    HKEY_CURRENT_USER/Software/Microsoft/Office/12/Outlook/PST/PstDisableGrow
    
  2. 次のレジストリ サブキーの値を 0 に設定するグループ ポリシーを作成します。これらの設定により、Outlook の [古いアイテムの整理] メニューが無効になります。また、ユーザーが [ツール] をクリックし、[オプション] をクリックして、[その他] タブをクリックしたときに表示される [古いアイテムの整理] オプションが削除されます。

    HKEY_CURRENT_USER/Software/Policies/Microsoft/Office/12/Outlook/Preferences/ArchiveDelete
    HKEY_CURRENT_USER/Software/Policies/Microsoft/Office/12/Outlook/Preferences/ArchiveMount
    HKEY_CURRENT_USER/Software/Policies/Microsoft/Office/12/Outlook/Preferences/ArchiveOld
    HKEY_CURRENT_USER/Software/Policies/Microsoft/Office/12/Outlook/Preferences/DeleteExpired
    HKEY_CURRENT_USER/Software/Policies/Microsoft/Office/12/Outlook/Preferences/DoAging
    HKEY_CURRENT_USER/Software/Policies/Microsoft/Office/12/Outlook/Preferences/PromptForAging
    
  3. 次のレジストリ サブキーの値を 5575 に設定するグループ ポリシーを作成します。この設定により、Outlook で [ファイル] をクリックして [新規作成] をポイントしたときに表示される [Outlook データ ファイル] オプションが削除されます。

    HKEY_CURRENT_USER/Software/Policies/Microsoft/Office/12/Outlook/DisableCmdBarItemsList/TCID1
    

パイロット プログラム

最初にパイロット実装を行うことで、組織全体に実装する前に、MRM ソリューションを微調整し、エンド ユーザーの満足度を予測することができます。たとえば、ユーザーは受信トレイの保存期間が 6 か月間では短すぎると感じ、制限が 1 年間であれば納得することがわかります。または、ジャーナリングを追加するにはアーカイブ ソリューションのアップグレードが必要であることがわかる場合もあります。

MRM 計画チームのメンバは、MRM パイロット プログラムの最初のメンバとしても適している場合があります。追加のメンバは、IT 担当者および関心を持っている管理職から募ることができます。パイロット プログラムの運用が安定したら、組織内から追加の参加メンバを募ることができます。管理メッセージングを採用することにユーザーが消極的な場合でも、メールボックス容量の増加、電子メールの自動管理 (短期保存フォルダに入れられる定期的な通知やメッセージの自動削除など)、および質問や懸念に対処するためのトレーニングを約束することで抵抗感が緩和されることがあります。

MRM の実装方法

組織に MRM ソリューションを実装する際は、組織内の人々と Exchange システムの両方が必要な変更に適応できるように段階的実装を検討します。

MRM 実装時の人的な考慮事項

MRM の導入を徐々に進めていくことで、作業習慣の変更に適応する時間をユーザーに与えることができます。たとえば、次のような計画が可能です。

  1. ソリューションのテストと調整を行うためのパイロット プログラムを開始します。
  2. 追加のユーザーを募ってパイロット プログラムに参加してもらいます。大容量のメールボックスが参加の誘引になる場合があります。
  3. 組織全体に MRM をロールアウトする準備が整ったら、最初に、MRM および関連する組織のメッセージング ポリシーについてのトレーニングを行います。
  4. ユーザーのメールボックスのサイズを拡大します。
  5. ユーザーのメールボックスに管理フォルダを追加します。ただし、有効期限は設定しません。ユーザーに MRM を試してみるように促し、各自のニーズおよび組織のメッセージ保持ポリシーに従ってメールボックスの内容を適切な管理フォルダに分類するように働きかけます。
  6. ユーザーが管理フォルダを使い始めてから 3 週間後に、MRM を有効にし, .pst ファイルを読み取り専用にします。
  7. MRM の実装の開始時に高いレベルのユーザー サポートを提供できるように準備します (ロールアウトに先立ったトレーニングにより、ユーザーの質問や懸念は減少します)。
  8. システムのパフォーマンスを監視します。
  9. ユーザーの遵守状況を監視します。

MRM 実装時のシステム上の考慮事項

Exchange システムは、MRM に適合させる必要があります。管理フォルダ アシスタントを初めて実行したときには、通常、多くのアイテムが処理されます。この処理では、メールボックス サーバーとネットワーク両方のリソースを大量に消費する場合があります。また、メールボックスの内容とサーバーとの同期の間に、Outlook クライアントが多くの時間とネットワーク リソースを消費する可能性があります。リソースの過負荷を避けるため、慎重に計画する必要があります。サーバーの負荷が少ないときに管理フォルダ アシスタントを実行し、一度に全ユーザーを追加するのではなく、徐々にユーザーを追加することで、移行を円滑に進めることができます。

トレーニングと人的な要素

人は、私的でない電子メールでも個人的なものだと感じます。組織のメッセージング ポリシーの急な変更に直面すると、ユーザーは不快に感じたり当惑したりします。特に、新しいポリシーにメッセージの自動的な削除が含まれている場合はそうです。受信トレイを決して空にしない、すべてを .pst ファイルに保存するなどの、長年行ってきた方法の変更は、一部のユーザーに大きな混乱を引き起こす可能性があります。MRM ソリューションの実装で混乱をできるだけ少なくするには、以下の推奨事項を考慮します。

  • 段階的な実装
    一度にすべてではなく、徐々に MRM を導入します。
  • トレーニング
    ユーザーのトレーニングによって、前もって懸念に対処し、円滑な実装を行うことができます。考慮する必要があるトレーニング内容は、次のとおりです。

    • 組織のメッセージング ポリシーの概要。
    • 現代の職場環境における MRM の必要性。たとえば、レコード管理の欠如によってもたらされる潜在的な法的責任の概要や、法的責任により組織が受ける金銭的影響と業務への影響。
    • 電子メール自動削除によって、日常的にたまる古くなったコンテンツが自動的に廃棄され、時間の節約になること。
    • メールボックスの拡大によって、保存できるメッセージ数が増えること。
    • サーバーベースのストレージによって、データへのモバイル アクセスが向上すること。
    • ユーザーが特定のタスクを実行する方法の変更が必要であること。たとえば、メッセージを .pst ファイルに追加できないことや、メッセージの分類および処理にもっと注意を払う必要があること。
    • MRM が組織の IT リソースの節約にどのように役立つか。
  • 事前の通知
    予定される変更について、ユーザーに通知します。具体的には、MRM が実装される正確な日付と変更内容を通知します。
  • ユーザー サポート
    実装の初期段階で手厚いユーザー サポートを提供することによって、MRM への移行を容易にできます。展開段階では通常、予測していた技術的な問題以外の問題が発生します。多くの場合、懸念の中心は「何をすればよいのか」というような質問をするユーザーです。この種の質問に答えられる人々のチームを設けることが、これらの懸念の管理に役立ちます。

遵守、監視、および徹底

以下に、ユーザーが MRM ポリシーに対処するための方法をいくつか示します。

  • メッセージを .pst ファイルに保存する (.pst ファイルがグループ ポリシーで無効にされていない場合)
  • 他の場所 (たとえば、Microsoft Hotmail アカウント) にメッセージを転送する
  • メッセージをコンピュータ上にファイルとして保存する
  • (Outlook 2007 を使用して) Microsoft OneNote にメッセージを送信する
  • メッセージを印刷する
  • 管理フォルダ内のすべてのメールボックス フォルダの保存期間設定を最長に設定する

組織のメッセージング ポリシーをユーザーへの啓蒙は遵守の徹底に役立ちます。ただし、MRM ソリューションを実効性のあるものにするには監視が必要です。メッセージング ポリシーを徹底するには、多くの場合上級管理職の関与と指導が必要です。

Get-MailboxFolderStatistics コマンドレットを使用したユーザーの遵守情報の取得

Exchange 管理シェルで Get-MailboxFolderStatistics コマンドレットを使用して、指定したメールボックス内のフォルダに関する情報を取得することができます。この情報には、フォルダ内のアイテムの数とサイズ、フォルダ名と ID、およびその他の情報が含まれます。この方法は、たとえば、メールボックスのすべてのアイテムを最も緩やかな保持ポリシーが設定されたフォルダに移動するなどのメッセージング ポリシー違反をユーザーが行っているかどうかを監視するための効果的な手段です。

次の例では、Get-MailboxFolderStatistics コマンドレットを使用して、John Peoples というユーザーの管理フォルダの内容の所在を監視します。

Get-MailboxFolderStatistics -Identity jpeoples -FolderScope ManagedCustomFolder | Format-List
  • -FolderScope パラメータを使用して、コマンドが返す情報の範囲を狭めることができます。この例では、John の管理フォルダの内容についての統計情報だけを要求しています。
  • このコマンドでは、Get-MailboxFolderStatistics コマンドを単独で使用するよりも多くの情報をより有用な形式で取得するために、結果を Format-List コマンドにパイプしています。

Get-MailboxFolderStatistics コマンドレットの詳細については、「Get-MailboxFolderStatistics」を参照してください。

法令に基づく開示命令への対応

Exchange 管理シェルで Export-Mailbox コマンドレットを使用すると、特定のメールボックスの内容を別のメールボックスのフォルダにコピーできるので、メールボックスの内容についての法令に基づく開示命令に容易に応じることができます。たとえば、次のコマンドを使用して、ユーザー John Peoples のメールボックスの内容を DiscoveryOrderMailboxes という名前の特別に作成されたメールボックスにコピーできます。

Export-Mailbox jpeoples -TargetMailbox DiscoveryOrderMailboxes -TargetFolder mailbox_jpeoples
  • -TargetMailbox パラメータには、John のメールボックスの内容をコピーするメールボックスを指定します。
  • -TargetFolder パラメータには、John のメールボックスの内容をコピーするメールボックス内のフォルダを指定します。

詳細については、「Export-Mailbox」を参照してください。

ユーザー自身によるフォルダ管理用の Web サイト

John の組織では、John が追加の管理フォルダをメールボックスに追加できる Web サイトを作成することもできます。この自己管理オプションにより、ユーザーによる制御性およびユーザーの満足度を高めながら、管理の負担を削減できます。管理フォルダのユーザーによる管理用の Web サイトの追加の詳細については、管理フォルダ セレクタのサンプルを参照してください (このサイトは英語の場合があります)。

詳細情報

MRM の詳細については、以下のトピックを参照してください。

MRM とそのしくみの詳細については、以下の Exchange Server チーム ブログの記事を参照してください (これらのサイトは英語の場合があります)。

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