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Exchange 2010 での X.400 の権限のあるドメインのサポート

 

適用先: Exchange Server 2010 SP2, Exchange Server 2010 SP3

トピックの最終更新日: 2016-11-28

ここでは、Microsoft Exchange Server 2010 で X.400 ドメインがどのようにサポートされるかについて説明します。Exchange 2010 では、Exchange 管理シェル コマンドを使用することによって、1 つまたは複数の X.400 の権限のあるドメインの名前空間を構成することができます。

トランスポート サーバーの管理に関連する管理タスクについては、「トランスポート サーバーの管理」を参照してください。

目次

X.400 アドレス

X.400 の権限のあるドメインの構成

X.400 の権限のあるドメインの受信者解決およびルーティング

X.400 アドレス

X.400 アドレスは、国際電気通信連合の電気通信標準化部門 (ITU-T) の勧告によって定義された一連の電子メール標準の一部として定義されているアドレスです。X.400 アドレスは、階層型の名前付け体系を使用し、一連の属性で構成されています。これらの属性により、X.400 アドレスが形成されます。アドレス内の属性には、組織を指定するものと、受信者を指定するものがあります。すべての組織の属性の組み合わせによって、X.400 アドレス階層内で一意のノードが指定されます。

Exchange 2010 では、次の X.400 のシナリオはサポートされていません。

  • X.400 アドレスのノードを別の電子メール システムと共有する。Exchange 2010 では、内部の中継承認済みドメインを構成することで、SMTP ドメイン名前空間を共有できます。この構成は、X.400 名前空間には使用できません。Exchange 2010 に、X.400 ドメインに対する権限が必要です。または、権限のある X.400 ドメインの外部中継サブドメインとして X.400 ドメインを構成する必要があります。

  • エッジ トランスポート サーバー上での X.400 の権限のあるドメインの構成。

  • Exchange 管理コンソールで、X.400 の権限を持つドメインを構成する。X.400 の権限のあるドメインを構成するには、シェルを使用する必要があります。

  • X.400 メッセージ転送エージェント (MTA) への直接のルーティングまたは中継。Exchange 2010 は、Microsoft Exchange Server 2003 を実行し X.400 コネクタをホストしている送信元サーバーを介して、またはサード パーティ製の Exchange 2010 X.400 コネクタを介してルーティングする必要があります。

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X.400 の権限のあるドメインの構成

X.400 の権限のあるドメインは、ハブ トランスポート サーバーの役割の上に構成します。特定のドメインに対する権限を持つように組織を構成する場合、この組織は、そのドメイン内の受信者のすべてのメールボックスをホストしていると見なされます。X.400 の権限のあるドメイン名を作成した後、そのドメインを電子メール プロキシ アドレスで指定するための電子メール アドレス ポリシーを作成できます。Exchange 組織は、X.400 の権限のあるドメインの名前空間を使用する X.400 電子メール プロキシ アドレスを割り当てられた受信者に送信される電子メールを受け入れます。権限のある名前空間内の X.400 受信者アドレスの中で、Active Directory 内のメールボックスまたは連絡先に解決されないすべてのアドレスはエラーとして処理され、このメッセージからは配信不能レポート (NDR) が生成されます。エラーを発生させるメッセージが NDR などの配信状態通知 (DSN) である場合、そのメッセージは削除されます。

権限のない X.400 ドメインが権限のあるドメインのサブドメインである場合、Exchange 2010 ではこの X.400 ドメインはサポートされます。権限のある X.400 ドメインのサブドメインに対して Exchange 組織が権限を持たない場合の例外を定義するには、New-X400AuthoritativeDomain コマンドレットの X400ExternalRelay パラメーターを使用します。既定では、X400ExternalRelay パラメーターの値は $false に設定されています。そのため、X.400 サブドメインの受信者に送信される電子メール メッセージの受信者解決ができない場合、NDR が生成されます。X400ExternalRelay パラメーターの値が $true に設定された場合、Exchange は受信者解決の不能をエラーとして処理せず、X.400 サブドメインの受信者に送信されたメッセージを外部アドレスにルーティングします。

X.400 名前空間の定義

既定では、X.400 の権限のあるドメインを構成すると、Exchange 組織は、階層内のすべての X.400 アドレスについて権限を持つと見なされます。

X.400 アドレスは、組織の構成要素を定義し、受信者を指定するための一連の属性で構成されます。X400DomainName パラメーターに指定する X.400 名前空間には、X.400 の組織の構成要素のみを含めることができます。次の表は、Exchange 2010 での X.400 ドメイン名前空間の定義に使用できる属性の一覧です。属性は階層順で示されています。

X.400 の組織の構成要素

属性の短縮形 組織の構成要素 必須/省略可能 最大文字数

C

Country    Country 属性の値は、国際標準化機構 (ISO) 3166 の 2 文字の国または地域指定です。この属性は、X.400 ドメイン名前空間の国または地域を識別します。

必須

2

A

ADMD   公的管理ドメイン (ADMD) の値は、通常は一般のメール サービス プロバイダーを識別します。有効な値は、国または地域に基づいて決定されます。

必須

16

P

PRMD   私的管理ドメイン (PRMD)の値は、Exchange 組織の名前空間における最上位ドメインを定義します。

省略可能

16

O

Organization    Organization 属性の値は、PRMD (PRMD が存在しない場合は ADMD) の中で一意な値です。

省略可能

64

OU1

Organizational unit 1   各組織単位の値は、直前の上位階層のアドレス要素の範囲内における一意のアドレス要素を識別します。

省略可能

64

OU2

Organizational unit 2   各組織単位の値は、直前の上位階層のアドレス要素の範囲内における一意のアドレス要素を識別します。

省略可能

64

OU3

Organizational unit 3   各組織単位の値は、直前の上位階層のアドレス要素の範囲内における一意のアドレス要素を識別します。

省略可能

64

OU4

Organizational unit 4   各組織単位の値は、直前の上位階層のアドレス要素の範囲内における一意のアドレス要素を識別します。

省略可能

64

X.400 名前空間を指定する場合、アドレス属性はセミコロンで区切り、アドレスは引用符 (") で囲む必要があります。以下に例を示します。

"C=US;A=ATT;P=Contoso;O=Example" 

X.400 ドメイン名には、以下の ASCII 文字のみを含めることができます。

  • A ~ Z

  • a ~ z

  • 0–9

  • 以下の句読点および特殊文字:(スペース) ' () + , - . / : = ?

アスタリスク (*) などのワイルドカード文字は、X.400 の権限のある名前空間ではサポートされていません。各属性は、X.400 名前空間内に 1 回のみ使用できます。

定義された組織の構成要素の下位の階層にあるすべてのアドレスは、Active Directory 内の受信者または連絡先に解決される必要があります (X400ExternalRelay パラメーターに$true を指定してサブドメインの例外を定義している場合を除きます)。カテゴライザーが受信者を解決できない場合、メッセージに対して NDR が生成されます。メッセージが DSN の場合は削除されます。

たとえば、X.400 の権限のあるドメインを "C=US;A=ATT;O=Contoso" として構成した場合、Exchange 組織は、X.400 名前空間 "C=US;A=ATT;O=Contoso;OU1=Tailspin Toys" についても権限を持つと見なされます。Tailspin Toys のすべての受信者が別の組織に存在する場合、すべての受信者は、Contoso の組織の Active Directory 内の連絡先として表される必要があります。これを行うことができない場合は、Tailspin Toys 名前空間を外部中継サブドメインとして定義する必要があります。

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X.400 の権限のあるドメインの受信者解決およびルーティング

電子メール メッセージのルーティングの処理方法を決定するために、Exchange 2010 カテゴライザーは、受信者のアドレスと Exchange 組織が権限を持つドメインの一覧を比較します。これによってカテゴライザーは、権限のある名前空間で受信者が見つからない場合に、X.400 のアドレスを持つメッセージを外部システムにルーティングするかどうか、およびメッセージに対して NDR を生成するかどうかを決定することができます。Exchange 組織が権限を持つ X.400 ドメインの受信者アドレスに対してメッセージが送信されている場合、そのメッセージは有効な受信者に配信されます。また、Active Directory 内に受信者が見つからない場合は、送信者に NDR が返されます。Exchange 組織が権限を持たない X.400 ドメインに対してメッセージが送信されている場合、メッセージは X.400 コネクタを介して外部にルーティングされます。

X.400 の権限のある名前空間を定義すると、Exchange 組織は、この名前空間に一致する電子メール プロキシ アドレスを持つすべての受信者にメッセージを配信する役割を担うと見なされます。そのため、Exchange 2010 ハブ トランスポート サーバーによって受信された X.400 のアドレスを持つメッセージは、以下のように処理されます。

  • 受信者アドレスが Active Directory 内の受信者に解決される場合、メッセージは配信されます。

  • 以下のすべての条件に当てはまる場合、送信者に NDR が返されます。

    • 受信者アドレスが Active Directory 内の受信者に解決されない。

    • 受信者アドレスと、Exchange が権限を持つ X.400 名前空間が一致する。

    • 電子メールがメッセージである。

  • 以下のすべての条件に当てはまる場合、電子メールは削除されます。

    • 受信者アドレスが Active Directory 内の受信者に解決されない。

    • 受信者アドレスと、Exchange が権限を持つ X.400 名前空間が一致する。

    • 電子メールが DSN である。

  • 以下のすべての条件に当てはまる場合、電子メールは X.400 コネクタにルーティングされます。

    • 受信者アドレスが Active Directory 内の受信者に解決されない。

    • 受信者アドレスと、Exchange が権限を持つ X.400 名前空間が一致しない。

    • 電子メールが X.400 コネクタにルーティングされる。

X.400 名前空間のアドレスが指定された電子メールを受信するように受信者を構成することができますが、Exchange 2010 は、X.400 の転送をネイティブではサポートしていません。リモート X.400 ドメインとの間で X.400 電子メール メッセージを送受信するには、Exchange 2003 サーバー上で 1 つ以上の X.400 コネクタを維持するか、または X.400 バックボーンへの外部コネクタを構成する必要があります。

Exchange 2010 には、X.400 MTA はありません。このため、Exchange 2010 ではメッセージを X.400 形式に変換することはできません。X.400 メッセージへの変換を行うには、Exchange 2003 サーバーでホストされる X.400 コネクタでメッセージを処理するか、または外部コネクタでメッセージを処理する必要があります。X.400 メッセージを転送するため、Exchange 2010 では、メッセージを SMTP 経由で、MIME でカプセル化された TNEF (Transport Neutral Encapsulation Format) メッセージとしてルーティングします。

Exchange 2003 で X.400 コネクタを作成する方法の詳細については、X.400 コネクタの作成方法に関するページを参照してください (このサイトは英語の場合があります)。外部コネクタを作成する方法の詳細については、「外部コネクタを作成する」を参照してください。

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