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Windows SharePoint Services のワークフロー : シナリオ

ほとんどの組織において社員が行う最も一般的なワークフローの例は、さまざまな種類の承認です。社員のグループは、何らかのドキュメントを承認または却下する必要があります。場合によっては、決定理由を説明するコメントを追加する必要もあります。この一般性を反映し、ここで紹介する例は Windows SharePoint Services を使用した承認のワークフローがどのように行われるかを示します。この例の説明に移る前に、それぞれの人物の役割を明確にしましょう。各人物の役割には、次のものがあります。

  • ワークフローの作成者 : ワークフロー テンプレートを作成する開発者またはインフォメーション ワーカーです。

  • Windows SharePoint Services 管理者 : ワークフロー テンプレートをインストールし、このテンプレートをドキュメント ライブラリまたはリストと関連付ける人物です。

  • ワークフローの開始者 : 実行中のワークフローを開始した人物です。ワークフローの開始により、特定のワークフロー テンプレートからワークフロー インスタンスが作成されます。

  • ワークフローの参加者 : サポートするビジネス プロセスを遂行するため、ワークフロー インスタンスと対話する人物です。

次の説明にあるように、これらの役割を持つ各人物はワークフローの作成、インストール、インスタンス化、使用においてそれぞれの責任を果たします。

ワークフローの作成

Microsoft で Windows SharePoint Services を対象とするワークフローを作成するには、次の 2 つの選択肢があります。開発者は Visual Studio 2005 と WF Workflow Designer を使用し、インフォメーション ワーカーは Office SharePoint Designer の提供するシンプルなルールに基づいたアプローチを使用します。どちらの場合もワークフロー テンプレートを作成し、Windows SharePoint Services を実行するサーバーに展開する必要があります。ワークフローの作成については、この文書の後半で詳しく説明します。このシナリオでは、テンプレートが既に作成されていることを前提とします。

ワークフローとドキュメント ライブラリまたはリストの関連付け

使用する前に、ワークフロー テンプレートを Windows SharePoint Services システムにインストールしてから特定のドキュメント ライブラリ、リスト、またはコンテンツ タイプと関連付ける必要があります。その後、ワークフローを任意のドキュメント、ドキュメント ライブラリやリスト内のアイテムから開始できるようになります。ワークフローはアイテムやドキュメントに対して同じように作用するため、通常はワークフロー テンプレートをどちらに添付してもかまいません (項目のみ、またはドキュメントのみとの関連付けが可能なテンプレートも作成できます)。コンテンツ タイプからワークフローを明示的に開始することはできませんが、コンテンツ タイプと関連付けられたワークフローは、そのコンテンツ タイプの添付されているドキュメントまたはリストから開始できます。

Office SharePoint Designer で作成したワークフローのインストールと関連付けは自動的に実行されます。WF Workflow Designer と Visual Studio で作成したワークフローについては、Windows SharePoint Services サーバー管理者が明示的にワークフロー テンプレートをインストールする必要があります。その後、テンプレートをサーバー管理者権限のない人物が実行できるライブラリ、リスト、またはコンテンツ タイプと関連付ける必要があります。また、この関連付けを作成する人物は、テンプレートに一意の名前を付けてユーザーが参照できるようにします。必要に応じて、ワークフローの作成者は関連付けを作成する人物がワークフローの動作に対する関連付けのオプションを設定できるようにします。これには、プロセスに必ず参加するべき人物の既定のリストの指定などがあります。1 つのテンプレートを複数のライブラリ、リスト、コンテンツ タイプと関連付け、それぞれの関連付けを必要に応じてカスタマイズすることもできます。関連付けの作成と任意のオプションの設定後、ワークフローの開始者は次の説明にあるように、この関連付けからワークフロー インスタンスを作成できます。

ワークフローの開始

Windows SharePoint Services でワークフロー インスタンスを作成するには、次の 3 つの選択肢があります。いずれの選択肢もワークフローを毎回、最初から実行します。(特定の関連付けから作成されたワークフロー インスタンスが実行中である場合は、同じ関連付けから別のインスタンスを作成することはできません)。3 つの選択肢は次のものです。

  • Windows SharePoint Services ユーザーは手動でワークフローを開始できます。

  • ドキュメントまたはアイテムの変更時にワークフローが自動的に実行されるように構成できます。

  • ドキュメントまたはアイテムの作成時にワークフローが自動的に実行されるように構成できます。たとえば、Microsoft Word ユーザーがサイトのドキュメント ライブラリに新規ドキュメントを保存すると、このライブラリと関連付けられたワークフローのインスタンスが実行されます。これを実行するには、ワークフローの開始者が Microsoft Word 2007 以降のバージョンを使用している必要があります。この方法では、Microsoft 以外のアプリケーションからもワークフローを開始できます。

このシナリオでは最初の選択肢、ワークフローを手動で開始する選択肢を使用します。以下の画面は、Windows SharePoint Services ユーザーに表示されるドキュメント ライブラリ内にあるドキュメントを示しています。このドキュメントからワークフロー インスタンスを開始するには、ドキュメントをクリックしてメニューから [ワークフロー] を選択します。

Windows SharePoint Services のワークフロー シナリオ

このように選択すると、以下の画面が表示されます。

Windows SharePoint Services のセットアップ ワークフロー

[新しいワークフローの開始] という見出しの下に、このドキュメントから開始できるすべてのワークフローの名前が表示されます。この例では、[承認] と [フィードバックの収集] の 2 つの選択肢があります。管理者により、このドキュメント ライブラリにその他のワークフロー テンプレートが関連付けられている場合は、その名前も表示されます。ワークフローの開始者が [承認] を選択すると、次の画面が表示されます。

Windows SharePoint Services のワークフロー シナリオ

今までの画面とは異なり、この画面のコンテンツはワークフローそのものにより定義されています。必要に応じて、ワークフローの開始時 (つまり、ワークフロー インスタンスの作成時) にユーザーが関連情報を指定できる画面を表示させることもできます。ここで示す [承認] ワークフローの場合、この情報にはドキュメントを承認するべき人物の名前、承認の期日、通知を受け取る人物のリストが含まれています。これらの情報の入力後、ユーザーは画面の右下隅にある [スタート] ボタンをクリックします。ワークフローの実行が開始され、画面に名前を入力した各参加者にドキュメントの確認を促す通知が送信されます。

必要に応じてワークフローの開始時に、開始者に電子メール メッセージを送信することもできます。同様に、ワークフローの完了時には作成者に電子メールで通知することもできます。たとえば、この例に示す [承認] のワークフローでは承認プロセスが完了した際に作成者に通知メールを送信するようにします。ワークフローの参加者、この例ではドキュメントを承認する人物にワークフローで要求される作業内容があることを電子メールで通知することもできます。

ワークフローとの対話

ある人物と実行中のワークフローとの間の対話は、[タスク] という概念を使用してモデル化されています。タスクとは、ある個人に割り当てられた作業単位です。この例では、このワークフローの承認リストに含まれる各人物にドキュメントの承認を要求するタスクが割り当てられます。Windows SharePoint Services は各サイトのタスク リストを維持し、実行中のワークフローはこのリストにタスクを追加して各タスクの対象となる人物を指定できます。サイトの各ユーザーは Web ブラウザで各自のタスク リストにアクセスするか、または各自の Outlook 2007 タスク リストとサイトのタスク リストを同期させることにより、自分に割り当てられたタスクを確認できます。以下の画面は、この例で使用されているドキュメントの承認を割り当てられた人物に対してタスク リストがどのようにブラウザに表示されるかを示しています。

Office SharePoint Server のワークフロー - タスク

Windows SharePoint Services ユーザーの待機中のタスクはリスト形式で表示されます。上の画面は、ユーザーが画面の左側に表示されているオプションから [タスク] リストを選択した状態です。現在、リストに表示されているタスクは、ドキュメント承認の要求のみです。(ドキュメント自体には、画面の右側に表示される [リンク] からアクセスできます)。ここではタスクを遂行するため、ユーザーはタスク名をクリックして次の画面を表示させます。

Windows SharePoint Services のワークフロー タスク

ワークフローと参加者の間の対話は、異なる場合もあります。したがって、この画面もワークフローそのものによって定義されます。この例では、参加者にはドキュメントを承認または却下するボタンと共にコメント フィールドが用意されています。その他のオプションを使用し、タスクを別の人物に割り当てなおしたり、変更を要求したりすることもできます。ここで、ユーザーがコメントを入力してから [承認] ボタンをクリックしたとします。その後、ワークフローは、承認者のリストに含まれる次の人物のタスク リストにタスクを作成します。すべての参加者が応答すると、ワークフローは終了します。

Windows SharePoint Services のワークフローでは、次のようなその他のオプションが用意されています。

  • ワークフローの開始者はワークフローの状態を確認できます。たとえば、このシナリオではワークフローの開始者が承認プロセスの進捗を確認できます。

  • ワークフローは実行中に変更できます。この場合、許可される変更内容はワークフローの作成者によって決定されます。たとえば、承認のワークフローでワークフローの進行中に新規の承認者を追加する場合もあります。実際の作業手順を反映できるため、実行中のワークフローを変更できる機能は重要です。ビジネス プロセスにおける内発的な変更は避けられない事実なので、Windows SharePoint Services のワークフローではこれに対処する方法が提供されています。

プロセスのまとめ

Windows SharePoint Services のワークフローには、さまざまな可変部分があります。以下の図は、プロセスがどのように動作するかについての全体的なビューを示しています。

Windows SharePoint Services のワークフロー例

まとめ : この図には示されていませんが、ワークフロー テンプレートがインストールされてドキュメント ライブラリ、リスト、またはコンテンツ タイプと関連付けられると、サイトのユーザーがワークフロー インスタンスを作成できるようになります。ワークフローの開始者がドキュメントと関連付けられたワークフロー テンプレートを選択すると、プロセスが開始されます (手順 1.)。開始者はこの関連付けでワークフロー インスタンスを作成してから (手順 2.)、新しいインスタンスをカスタマイズして開始します (手順 3.)。

次に、実行中のワークフロー インスタンスが参加者のタスク リストにタスクを追加します (手順 4.)。(このシナリオで使用する承認のワークフローではこれらのタスクを順に割り当てていますが、複数の参加者に一括してタスクを割り当ててタスクを同時に実行することもできます)。ワークフローの参加者は、各自のタスク リストを確認することでワークフローにより割り当てられたタスクを知ることができます (手順 5.)。その後、各参加者は実行中のワークフロー インスタンスと対話してタスクを遂行します (手順 6.)。この例ではドキュメントの承認が要求されていますが、ワークフローの作成者が選択した任意の内容になります。

ワークフローの実行されているドキュメント自体は、ユーザー間で送信されたものでなくても関係はありません。その代わりドキュメントはサイト内に保存されたままになり、ワークフローの各参加者にはドキュメントへのリンクが提供されます。実際、ワークフローでドキュメントまたはドキュメントと関連付けられたアイテムを使用する要求はありません。強調するべきは、ワークフローの開始者と参加者に表示される手順 1.、手順 2.、および手順 5. の内容が Windows SharePoint Services そのものにより定義されていることです。ただし、手順 3. と手順 6. で使用されているフォームはワークフローの作成者により定義されています。これにより、作成者はユーザーがワークフローをカスタマイズする、対話する方法を制御できます。

Windows SharePoint Services Version 3.0 には人間のワークフローに適用するためのプラットフォームのほか、エンド ユーザーがそのまま使用できる定義済みの [案件管理] のワークフローが用意されています。このワークフローでは参加者にアクティブな案件を割り当てて、これらの案件を管理できます。作成後、案件は担当するワークフローの参加者により対処済みであることを示す [解決済み] の状態に移行し、次にワークフローの開始者が解決を承認して案件を終了したことを示す [終了] 状態に移行します。

Windows SharePoint Services のワークフローの基本的な使用方法を理解することは、このテクノロジを理解する上では不可欠な要素です。ワークフローの作成者がどのようにワークフローを作成するかを知ることも役に立ちます。次のセクションでは、ワークフローを作成する 2 つの方法を考察します。

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入手可能なドキュメントの詳細な一覧については、「Office SharePoint Server 2007 のダウンロード可能なブック」を参照してください。