ガバナンスの概要 (SharePoint Server 2010)
適用先: SharePoint Server 2010
トピックの最終更新日: 2017-01-19
ここでは、Microsoft SharePoint Server 2010 の展開を成功させるために不可欠なガバナンスとはどのようなことか、そして情報アーキテクチャと IT サービスの両方がガバナンス計画の重要な構成要素である理由について説明します。
このセクションの記事では、SharePoint Server 2010 展開のガバナンスの必要性を強調しています。また、一般的なガイダンスと、組織でガバナンスの対象として検討することが望ましい Microsoft SharePoint Server のアクティビティおよびプロセスの例も示します。
この記事の内容
ガバナンスについて
管理の対象
ガバナンス ポリシーの決定者
ガバナンスの実装方法
ガバナンスについて
ガバナンスとは、組織の業務部門と IT チームが協力してビジネス目標を達成する方法を誘導、指示、および管理する一連のポリシー、ロール、職責、およびプロセスです。包括的なガバナンス計画を作成すると、組織には次のようなメリットがあります。
SharePoint Server 2010 などの製品およびテクノロジの展開が簡単になります。
セキュリティ上の脅威や規制遵守の不徹底を防止し、企業を保護するために役立ちます。
たとえばコンテンツ管理や情報アーキテクチャのベスト プラクティスを徹底することで、テクノロジへの投資の収益率を最大化できます。
管理の対象
各組織には、ガバナンスに対するアプローチに影響を及ぼす固有のニーズと目標があります。たとえば、大規模な組織には、小規模な組織よりも多くの、より詳細なガバナンスが必要になります。
SharePoint Server 2010 の展開を成功させるには、以下の要素が必要です。
情報アーキテクチャ
情報アーキテクチャの目標は、ビジネス目標の達成に必要な情報の収集、保管、取得、および使用に役立つシステムを作成することです。Web サイトの情報アーキテクチャは、どのようにサイト (その Web ページ、ドキュメント、リスト、およびデータ) で情報をまとめ、どのようにサイトのユーザーに情報を表示するかを決定します。
組織の情報アーキテクチャを総合的に評価すると、以下のような、効率を下げる可能性がある要因を識別できます。
メタデータの使用方法に一貫性がないと、関連するデータやコンテンツの検索と比較が複雑になる場合があります。
コンテンツのストレージが適切に設計、管理されていないと、ドキュメントの複数のバージョンが作成され、正式なバージョンを特定できなくなる可能性があります。
データのストレージが適切にカタログ化および管理されていないと、意志決定者が不適切なデータを検索して使用するおそれがあります。
ナビゲーションの設計または情報の提示方法が適切でないと、重要なサイトや情報の検索が困難になる場合があります。
SharePoint Server をホストする IT サービス
SharePoint Server 2010 には、包括的なガバナンス計画によって処理する必要のある新機能が多数含まれています。それらの一部を以下に示します。
Microsoft SharePoint Foundation 2010 に組み込まれている、SSP モデルに代わる新しいサービス アプリケーション アーキテクチャ。
バックアップと復元の機能向上。
マルチテナント機能。真のホスティング環境を作成し、サイト購読に基づいてデータを区分化しながら複数の顧客 (テナント) の間でサービス リソースを共有できるようにします。
パスワードの変更を自動化する管理アカウント。
Windows PowerShell。特にシステム管理者を対象として設計された新しいコマンド ライン インターフェイスおよびスクリプト言語です。
ガバナンス計画を作成しないと、SharePoint Server を実行する個別に管理された Web サーバーが統制されないまま急速に拡大し、予期しない結果を招く可能性があります。たとえば次のような事態が考えられます。
共通の検索インデックス、ナビゲーション、またはセキュリティ スキーマを持たない、緩やかに組織化されたサイトのグループが、分離されたサーバーによってホストされている。セルフサービス サイト作成をサポートする場合は、コンテンツの廃棄とサイトのアーカイブを対象とする計画を用意する必要があります。
サーバーが安全ではないアプリケーションをホストしている。コンテンツの整合性が損なわれる可能性があります。
SharePoint Server を実行していることがサポート チームに知られていないローカル サーバーに対するテクニカル サポートが要求される。
法令順守などの非常に重要な活動が、サーバー間で一貫性のない方法で管理されている。
データのバックアップと復元や製品の更新プログラムのインストールなどの定期的なメンテナンス作業が、不十分なトレーニングや一貫性のないサーバー構成のために適切に実施されていない。
サイト所有権の変更によって、コンテンツの所有権に関する問題が発生したり、サイトがロックされたりしている。
企業での SharePoint Server 2010 の使用が増えてきたら、IT 部門は、適切に管理された一連のホスティング サービスを実装することで、SharePoint Server 2010 を使用できるようにして、その使用と構成に対する管理を確立する必要があります。
SharePoint Server 2010 のソリューションを実効性があって管理しやすいものにするには、次の追加領域のガバナンスについて検討する必要があります。
カスタマイズ ポリシー
SharePoint Server 2010 には、ビジネス インテリジェンス、フォーム、ワークフロー、コンテンツ管理など、複数の製品の領域に及ぶカスタマイズ可能な機能が用意されています。カスタマイズにより、SharePoint Server 2010 環境の安定性、保守性、およびセキュリティに対するリスクが発生します。対象を管理しながらカスタマイズをサポートするには、次の要素を考慮したカスタマイズ ポリシーを策定する必要があります。
承認されたカスタマイズ ツール。たとえば、Microsoft SharePoint Designer 2010 の使用を許可するかどうかを決定し、だれがどのサイト要素をカスタマイズできるかを指定する必要があります。
ソース コードの管理方法 (ソース管理システムなど) およびコードのドキュメント化に関する標準。
開発標準 (コーディングのベスト プラクティスなど)。
テストと検証の標準。
必要なパッケージ化手段とインストール手段。サンドボックスの使用を管理する必要があります。サンドボックスを使用することで、サイト所有者は、SharePoint の実装の他の部分に影響を与えることがないように、部分的に信頼されたコンテキストでカスタム ソリューションをホストできます。
サポートされるカスタマイズの種類。たとえば、Microsoft Silverlight 3 アプリケーションと SharePoint サイトを統合するための Web パーツの使用を許可できます。
カスタマイズの管理プロセスの詳細については、ホワイトペーパー「SharePoint 製品とテクノロジのカスタマイズ ポリシー」(https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=92311&clcid=0x411) を参照してください。
ブランド化
会社全体で使用する情報アーキテクチャと一連のサイトを設計している場合、ガバナンス計画にブランド化を含めることを検討してください。一連のブランド化ポリシーを正式に設けることで、企業のイメージ、フォント、テーマ、およびその他のデザイン要素がサイトに一貫して使用されるようになります。たとえば、SharePoint Server 2010 で、Microsoft PowerPoint 2010 のテーマを SharePoint サイトに直接インポートして、すべてのサブサイトに自動的に適用できます。
トレーニング
SharePoint Server 2010 は直感的な Web ベースのインターフェイスとオンライン ヘルプを備えていますが、一部のユーザーにとって、SharePoint Server 2010 に基づくサイトの使用や管理は複雑な場合があります。さらに、IT 部門や業務部門が実装する一連のガバナンス ポリシーには、説明が必要な場合もあります。ユーザー コミュニティに適切なトレーニングを提供することで、SharePoint Server 2010 の実装に対する満足度を高め、サポート コストを抑えることができます。
ガバナンス ポリシーの決定者
SharePoint Server 2010 の展開を成功させるには、業務管理者、IT 担当者、インフォメーション ワーカーが継続的に話し合いを行い、連携していく必要があります。ガバナンス委員会を設けるときは、以下のグループとロールから可能な限り多くの代表者を加える必要があります。
注意
組織によっては、同等の役割がない場合、または役職名が異なる場合があります。
上級管理者: 主要な上級管理者は、ガバナンス委員会の全体的な目標を定め、そのグループに権限を与え、実装されたプラクティスとポリシーの成功の度合いを定期的に評価する必要があります。
財務担当者: 財務担当者は、ガバナンスの規則とプロセスが、企業による SharePoint 製品とテクノロジへの投資からの収益率の向上に役立つようにする必要があります。
IT リーダー: IT リーダーは、サービスの開発を支援し、IT 部門に課された責務 (セキュリティの強化、信頼性の維持など) を果たす方法を決定すると共に、業務チームが必要とする機能をサポートする必要があります。
業務部門のリーダー: 業務リーダーとは、会社の主要な業務を遂行し、SharePoint Server 2010 の展開にかかわるアーキテクチャと機能の要件を明らかにするチームの代表者です。情報アーキテクトと協力して、会社の情報アーキテクチャと組織の分類法の標準を決定する必要があります。また、IT リーダーと連携してサービス レベル アグリーメントやその他のサポート ポリシーを策定する必要があります。
情報アーキテクトまたは分類法担当者: これらのグループのメンバーは、情報システムと分類法の計画と設計に関する幅広い経験を持っています。利用者の情報ニーズの分析に基づいて、組織の目標をサポートする計画を作成し、サイトのアーキテクチャとナビゲーションを定義します。
法令遵守責任者: ガバナンスには、企業が規則や法律上の要件を満たし、企業知財が管理されるように確認する作業も含まれます。社内にコンプライアンスや法律への準拠を監督する部署が存在する場合は、その部署の代表者をガバナンスの担当グループに加えてください。
開発リーダー: ソフトウェア開発組織のリーダーは、使用を許可するカスタマイズ ツール、コードのセキュリティの検証方法、その他コード関連のベスト プラクティスを決定する際の支援を行う必要があります。
インフォーメーション ワーカー: 日常業務を遂行する組織のメンバーは、SharePoint Server 2010 サービスと情報アーキテクチャのニーズが満たされるようにする必要があります。
トレーナー: トレーニング計画の作成と、必要なすべてのトレーニングおよび教育の実施を担当する専門の指導者です。
ガバナンスの実装方法
ガバナンス計画の実効性を高めるには、組織の業務部門と IT チームのニーズと目標を反映させる必要があります。どの企業にも固有の特徴があるので、環境に合わせたガバナンス計画を実装する最善の方法を決定する必要があります。
以下に示すガバナンスの推奨実装過程をそれぞれの組織で検討してください。
最初の原則と目標を決定する。
ガバナンス委員会は、コンプライアンスの状況を追跡し、企業に対するメリットを数値化するために測定できる、ガバナンスのビジョン、ポリシー、および標準を策定する必要があります。たとえば、計画では、SharePoint Server 2010 の展開の技術面と業務面の両方に対するサービス提供要件を明らかにする必要があります。
ビジネス情報/コンテンツを分類する。
既存の分類法に従って、またはビジネス ソリューションのサポートに必要なすべてのコンテンツを含む独自の分類法を作成して、情報を整理します。情報を整理した後、情報アーキテクチャを設計して、会社のコンテンツを管理します。その後、情報アーキテクチャのサポートに最適な IT サービスを決定します。
教育戦略を作成する。
人的要素は、ガバナンス計画自体以外では、SharePoint Server 2010 の展開の成功または失敗を左右する最も重要な要因です。包括的なトレーニング計画では、実装される標準と実践方法に従って SharePoint Server 2010 を使用する方法を示し、そのような標準と実践が重要である理由を説明する必要があります。計画では、特定のユーザー グループに必要なトレーニングの種類を示し、適切なトレーニング ツールについて説明する必要があります。たとえば、IT 部門では SharePoint Server 2010 の提供サービスについてのよく寄せられる質問 (FAQ) を掲載したページを Web サイトで提供することがあり、業務部門では新しいドキュメント管理プロセスを設定および使用する方法を説明するオンライン トレーニングを提供することがあります。
持続的な計画を策定する。
成功するガバナンスは反復的なプロセスです。ガバナンス委員会は、定期的に話し合いを行って、ガバナンス計画への新しい要件の盛り込み、ガバナンスの原則の再評価と調整、業務部門と IT 部門の間の競合の解決などを行う必要があります。委員会は、説明責任を果たし、会社全体でコンプライアンスを徹底するために、役員レベルの支持者に定期的に報告する必要があります。こうした活動が面倒に思われても、SharePoint Server 2010 への投資の収益率を高め、SharePoint Server 2010 ソリューションの実用性を最大限に活用し、会社の生産性を向上させることが目的であることを忘れないようにしてください。