トリガーのセキュリティの管理

既定では、DML トリガーも DDL トリガーも、トリガーを呼び出したユーザーのコンテキストで実行されます。 トリガーの呼び出し元は、トリガーが実行される原因となったステートメントを実行したユーザーです。 たとえば、ユーザー Mary が DELETE ステートメントを実行し、このために DML トリガー DML_trigMary が実行された場合、 DML_trigMary 内のコードは、 Maryのユーザー権限のコンテキストで実行されます。 この既定の動作は、悪意のあるコードをデータベースやサーバー インスタンスに組み込もうとするユーザーによって悪用される危険性があります。 たとえば、次の DDL トリガーがユーザー JohnDoeにより作成されたとします。

CREATE TRIGGER DDL_trigJohnDoe

ON DATABASE

FOR ALTER_TABLE

AS

GRANT CONTROL SERVER TO JohnDoe ;

GO

このトリガーの内容は、 GRANT CONTROL SERVER sysadmin 固定サーバー ロールのメンバーなど、 ステートメントを実行する権限を持ったユーザーが ALTER TABLE ステートメントを実行した直後に、 JohnDoeCONTROL SERVER 権限を付与するようにしています。 つまり、 JohnDoe 自身は CONTROL SERVER 権限を自分に付与することはできませんが、トリガー コードを利用して、上位の特権の下での実行権限を獲得しています。 DML トリガーも DDL トリガーも、このようなセキュリティの脅威にさらされています。

トリガーのセキュリティに関するベスト プラクティス

次の方法を使用することで、トリガー コードが上位の特権の下で実行されないようにすることができます。

  • sys.triggers カタログ ビューと sys.server_triggers カタログ ビューをクエリし、データベースとサーバー インスタンスに存在する DML トリガーおよび DDL トリガーを認識します。 次のクエリは、現在のデータベースにあるすべての DML とデータベースレベルのすべての DDL トリガーと、サーバー インスタンスにあるすべてのサーバー レベルの DDL トリガーを返します。

    SELECT type, name, parent_class_desc FROM sys.triggers  
    UNION  
    SELECT type, name, parent_class_desc FROM sys.server_triggers ;  
    
  • DISABLE TRIGGER を使用して、トリガーが上位の特権の下で実行された場合に、データベースやサーバーの整合性に支障をきたす可能性のあるトリガーを無効にします。 次のステートメントは、現在のデータベースにあるすべてのデータベースレベルの DDL トリガーを無効にします。

    DISABLE TRIGGER ALL ON DATABASE  
    

    このステートメントは、サーバー インスタンスにあるすべてのサーバーレベルの DDL トリガーを無効にします。

    DISABLE TRIGGER ALL ON ALL SERVER  
    

    このステートメントは、現在のデータベースにあるすべての DML トリガーを無効にします。

    DECLARE @schema_name sysname, @trigger_name sysname, @object_name sysname ;  
    DECLARE @sql nvarchar(max) ;  
    DECLARE trig_cur CURSOR FORWARD_ONLY READ_ONLY FOR  
        SELECT SCHEMA_NAME(schema_id) AS schema_name,  
            name AS trigger_name,  
            OBJECT_NAME(parent_object_id) as object_name  
        FROM sys.objects WHERE type in ('TR', 'TA') ;  
    
    OPEN trig_cur ;  
    FETCH NEXT FROM trig_cur INTO @schema_name, @trigger_name, @object_name ;  
    
    WHILE @@FETCH_STATUS = 0  
    BEGIN  
        SELECT @sql = 'DISABLE TRIGGER ' + QUOTENAME(@schema_name) + '.'  
            + QUOTENAME(@trigger_name) +  
            ' ON ' + QUOTENAME(@schema_name) + '.'   
            + QUOTENAME(@object_name) + ' ; ' ;  
        EXEC (@sql) ;  
        FETCH NEXT FROM trig_cur INTO @schema_name, @trigger_name, @object_name ;  
    END  
    GO  
    
    -- Verify triggers are disabled. Should return an empty result set.  
    SELECT * FROM sys.triggers WHERE is_disabled = 0 ;  
    GO  
    
    CLOSE trig_cur ;  
    DEALLOCATE trig_cur;  
    

参照

CREATE TRIGGER (Transact-SQL)
DML トリガー
DDL トリガー