行セットと SQL Server カーソル
Microsoft SQL Server では、2 種類の方法でコンシューマに結果セットが返されます。
- 既定の結果セット。これには次の特徴があります。
- オーバーヘッドを最小限に抑えます。
- 最高のパフォーマンスでデータをフェッチします。
- 既定の順方向専用かつ読み取り専用のカーソル機能だけをサポートします。
- 一度に 1 行をコンシューマに返します。
- 1 つの接続でサポートされるアクティブ ステートメントは一度に 1 つだけです。
ステートメントの実行後は、コンシューマがすべての結果を取得するまで、またはステートメントが取り消されるまで、その接続で別のステートメントを実行することはできません。 - すべての Transact-SQL ステートメントをサポートします。
- サーバー カーソル。これには、次の特徴があります。
- すべてのカーソル機能をサポートします。
- コンシューマに行のブロックを返すことができます。
- 1 つの接続で複数のアクティブ ステートメントをサポートします。
- カーソル機能とパフォーマンスのバランスが取れています。
カーソル機能をサポートすると、既定の結果セットに比べてパフォーマンスが低下する場合があります。コンシューマはカーソル機能を使用して比較的小さな行のセットを取得することで、この欠点を補うことができます。 - 複数の結果セットを返す Transact-SQL ステートメントはサポートしません。
コンシューマは、特定の行セット プロパティを設定することで、行セットでのカーソルの動作を変更できます。コンシューマでそれらの行セット プロパティがまったく設定されないか、またはすべてのプロパティが既定値に設定された場合、SQL Native Client OLE DB プロバイダでは既定の結果セットを使用して行セットが実装されます。プロパティのいずれか 1 つでも既定値以外の値に設定されると、サーバー カーソルを使用して行セットが実装されます。
次の行セット プロパティによって、SQL Server カーソルを使用することが SQL Native Client OLE DB プロバイダに指示されます。プロパティによっては、他のプロパティと組み合わせて使用できるものもあります。たとえば、DBPROP_IRowsetScroll プロパティと DBPROP_IRowsetChange プロパティを備えた行セットは、即時更新動作を表すブックマーク行セットになります。同時に指定できないプロパティもあります。たとえば、DBPROP_OTHERINSERT を備えた行セットにはブックマークを含めることはできません。
プロパティ ID | 値 | 行セットの動作 |
---|---|---|
DBPROP_SERVERCURSOR |
VARIANT_TRUE |
行セットを使用して SQL Server データを更新できません。行セットは順次処理され、順方向のスクロールとフェッチのみがサポートされます。相対行位置指定がサポートされます。コマンド テキストに ORDER BY 句を指定できます。 |
DBPROP_CANSCROLLBACKWARDS または DBPROP_CANFETCHBACKWARDS |
VARIANT_TRUE |
行セットを使用して SQL Server データを更新できません。行セットでは、両方向へのスクロールとフェッチがサポートされます。相対行位置指定がサポートされます。コマンド テキストに ORDER BY 句を指定できます。 |
DBPROP_BOOKMARKS または DBPROP_LITERALBOOKMARKS |
VARIANT_TRUE |
行セットを使用して SQL Server データを更新できません。行セットは順次処理され、順方向のスクロールとフェッチのみがサポートされます。相対行位置指定がサポートされます。コマンド テキストに ORDER BY 句を指定できます。 |
DBPROP_OWNUPDATEDELETE、DBPROP_OWNINSERT、または DBPROP_OTHERUPDATEDELETE |
VARIANT_TRUE |
行セットを使用して SQL Server データを更新できません。行セットでは、両方向へのスクロールとフェッチがサポートされます。相対行位置指定がサポートされます。コマンド テキストに ORDER BY 句を指定できます。 |
DBPROP_OTHERINSERT |
VARIANT_TRUE |
行セットを使用して SQL Server データを更新できません。行セットでは、両方向へのスクロールとフェッチがサポートされます。相対行位置指定がサポートされます。参照先の列にインデックスが存在する場合は、コマンド テキストに ORDER BY 句を指定できます。 行セットにブックマークが含まれる場合は、DBPROP_OTHERINSERT に VARIANT_TRUE を指定できません。この表示設定プロパティとブックマークを指定して行セットを作成しようとすると、エラーが発生します。 |
DBPROP_IRowsetLocate または DBPROP_IRowsetScroll |
VARIANT_TRUE |
行セットを使用して SQL Server データを更新できません。行セットでは、両方向へのスクロールとフェッチがサポートされます。IRowsetLocate インターフェイスを使用したブックマークと絶対位置指定が、行セットでサポートされます。コマンド テキストに ORDER BY 句を指定できます。 DBPROP_IRowsetLocate と DBPROP_IRowsetScroll は、行セット内にブックマークを要求します。ブックマークを含み、DBPROP_OTHERINSERT に VARIANT_TRUE を設定した行セットを作成しようとすると、エラーが発生します。 |
DBPROP_IRowsetChange または DBPROP_IRowsetUpdate |
VARIANT_TRUE |
行セットを使用して SQL Server データを更新できます。行セットは順次処理され、順方向のスクロールとフェッチのみがサポートされます。相対行位置指定がサポートされます。更新可能なカーソルをサポートするすべてのコマンドでは、これらのインターフェイスがサポートされます。 |
DBPROP_IRowsetLocate または DBPROP_IRowsetScroll、および DBPROP_IRowsetChange または DBPROP_IRowsetUpdate |
VARIANT_TRUE |
行セットを使用して SQL Server データを更新できます。行セットでは、両方向へのスクロールとフェッチがサポートされます。IRowsetLocate を使用したブックマークと絶対位置指定が、行セットでサポートされます。コマンド テキストに ORDER BY 句を指定できます。 |
DBPROP_IMMOBILEROWS |
VARIANT_FALSE |
行セットを使用して SQL Server データを更新できません。行セットでは、順方向のスクロールしかサポートされません。相対行位置指定がサポートされます。参照先の列にインデックスが存在する場合は、コマンド テキストに ORDER BY 句を指定できます。 DBPROP_IMMOBILEROWS は、別のセッションのコマンドや別のユーザーから挿入された SQL Server 行を表示できる行セットだけで使用できます。DBPROP_OTHERINSERT に VARIANT_TRUE を設定できない行セットで、プロパティに VARIANT_FALSE が設定されている行セットを開こうとすると、エラーが発生します。 |
DBPROP_REMOVEDELETED |
VARIANT_TRUE |
行セットを使用して SQL Server データを更新できません。行セットでは、順方向のスクロールしかサポートされません。相対行位置指定がサポートされます。別のプロパティで制約されている場合を除いて、コマンド テキストに ORDER BY 句を指定できます。 |
サーバー カーソルでサポートされる SQL Native Client OLE DB プロバイダ行セットは、IOpenRowset::OpenRowset メソッドを使用して、SQL Server ベース テーブルまたはビュー上に簡単に作成できます。テーブルやビューを名前で指定し、必要な行セット プロパティのセットを rgPropertySets パラメータで渡します。
コンシューマが、サーバー カーソルでサポートされる行セットを要求すると、行セットを作成するコマンド テキストが制限されます。具体的には、1 つの行セットを結果として返す 1 つの SELECT ステートメント、または 1 つの行セットを結果として返す 1 つの SELECT ステートメントを実装するストアド プロシージャに制限されます。
次の 2 つの表に、各種 OLE DB プロパティとカーソル モデルのマッピングを示します。また、特定の種類のカーソル モデルを使用するために設定する必要がある行セット プロパティも示します。
表の各欄には、特定のカーソル モデル向けの行セット プロパティ値を示しています。このトピックの前半で示した行セット プロパティのデータ型はすべて VT_BOOL で、既定値は VARIANT_FALSE です。表では、次の記号を使用しています。
F = 既定値 (VARIANT_FALSE)
T = VARIANT_TRUE
- = VARIANT_TRUE または VARIANT_FALSE
特定の種類のカーソル モデルを使用するには、カーソル モデルに対応する列を探し、列の値が "T" であるすべての行セット プロパティを見つけます。これらの行セット プロパティに VARIANT_TRUE を設定すると、その特定のカーソル モデルを使用できます。値が "-" の行セット プロパティには、VARIANT_TRUE と VARIANT_FALSE のどちらも設定できます。
行セット プロパティ/カーソル モデル | 既定の 結果 セット (RO) | 高速 順方向 専用 (RO) | 静的 (RO) | キーセット ドリブン (RO) |
---|---|---|---|---|
DBPROP_SERVERCURSOR |
F |
T |
T |
T |
DBPROP_DEFERRED |
F |
F |
- |
- |
DBPROP_IrowsetChange |
F |
F |
F |
F |
DBPROP_IrowsetLocate |
F |
F |
- |
- |
DBPROP_IrowsetScroll |
F |
F |
- |
- |
DBPROP_IrowsetUpdate |
F |
F |
F |
F |
DBPROP_BOOKMARKS |
F |
F |
- |
- |
DBPROP_CANFETCHBACKWARDS |
F |
F |
- |
- |
DBPROP_CANSRCOLLBACKWARDS |
F |
F |
- |
- |
DBPROP_CANHOLDROWS |
F |
F |
- |
- |
DBPROP_LITERALBOOKMARKS |
F |
F |
- |
- |
DBPROP_OTHERINSERT |
F |
T |
F |
F |
DBPROP_OTHERUPDATEDELETE |
F |
T |
F |
T |
DBPROP_OWNINSERT |
F |
T |
F |
T |
DBPROP_OWNUPDATEDELETE |
F |
T |
F |
T |
DBPROP_QUICKSTART |
F |
F |
- |
- |
DBPROP_REMOVEDELETED |
F |
F |
F |
- |
DBPROP_IrowsetResynch |
F |
F |
F |
- |
DBPROP_CHANGEINSERTEDROWS |
F |
F |
F |
F |
DBPROP_SERVERDATAONINSERT |
F |
F |
F |
- |
DBPROP_UNIQUEROWS |
- |
F |
F |
F |
DBPROP_IMMOBILEROWS |
- |
- |
- |
T |
行セット プロパティ/カーソル モデル | 動的 (RO) | キー セット (R/W) | 動的 (R/W) |
---|---|---|---|
DBPROP_SERVERCURSOR |
T |
T |
T |
DBPROP_DEFERRED |
- |
- |
- |
DBPROP_IrowsetChange |
F |
- |
- |
DBPROP_IrowsetLocate |
F |
- |
F |
DBPROP_IrowsetScroll |
F |
- |
F |
DBPROP_IrowsetUpdate |
F |
- |
- |
DBPROP_BOOKMARKS |
F |
- |
F |
DBPROP_CANFETCHBACKWARDS |
- |
- |
- |
DBPROP_CANSRCOLLBACKWARDS |
- |
- |
- |
DBPROP_CANHOLDROWS |
F |
- |
F |
DBPROP_LITERALBOOKMARKS |
F |
- |
F |
DBPROP_OTHERINSERT |
T |
F |
T |
DBPROP_OTHERUPDATEDELETE |
T |
T |
T |
DBPROP_OWNINSERT |
T |
T |
T |
DBPROP_OWNUPDATEDELETE |
T |
T |
T |
DBPROP_QUICKSTART |
- |
- |
- |
DBPROP_REMOVEDELETED |
T |
- |
T |
DBPROP_IrowsetResynch |
- |
- |
- |
DBPROP_CHANGEINSERTEDROWS |
F |
- |
F |
DBPROP_SERVERDATAONINSERT |
F |
- |
F |
DBPROP_UNIQUEROWS |
F |
F |
F |
DBPROP_IMMOBILEROWS |
F |
T |
F |
行セット プロパティの特定のセットに対して選択されるカーソル モデルは、次のようにして決まります。
行セット プロパティの指定されたコレクションから、上の表に示したプロパティのサブセットを取得します。これらのプロパティを、上に示した表の各行セット プロパティのフラグ値、必須 (T、F) またはオプション (-) に応じて、2 つのサブグループに分けます。最初の表から始め、左から右に向かってカーソル モデルごとに、2 つのサブグループ内のプロパティの値を、その列の対応するプロパティの値と比較します。必須プロパティに不一致がなく、かつオプション プロパティの不一致が最も少ないカーソル モデルが選択されます。複数のカーソル モデルが該当する場合は、一番左側のモデルが選択されます。
SQL Server カーソル ブロックのサイズ
SQL Server カーソルで SQL Native Client OLE DB プロバイダ行セットがサポートされる場合、IRowset::GetNextRows メソッドまたは IRowsetLocate::GetRowsAt メソッドの行ハンドル配列パラメータ内の要素数によって、カーソル ブロックのサイズが決まります。配列内のハンドルで指定される行が、カーソル ブロックのメンバです。
ブックマークをサポートしている行セットの場合、IRowsetLocate::GetRowsByBookmark メソッドを使用して取得される行ハンドルにより、カーソル ブロックのメンバが定義されます。
行セットの作成や SQL Server カーソル ブロックの形成にどのメソッドを使用したかにかかわらず、行セットの次の行をフェッチするメソッドが実行されるまで、カーソル ブロックはアクティブです。