WMI Provider for Server Events と WQL の使用
更新 : 2006 年 4 月 14 日
管理アプリケーションは WQL (WMI Query Language) ステートメントを実行することにより、WMI Provider for Server Events を使用して SQL Server イベントにアクセスすることができます。WQL は、SQL (構造化照会言語) を単純化したサブセットであり、WMI 特有の拡張機能を備えています。WQL を使用した場合、アプリケーションは SQL Server の特定のインスタンス、データベース、またはデータベース オブジェクト (現在サポートされているオブジェクトはキューのみ) に対してイベントの種類を取得します。WMI Provider for Server Events はクエリを変換して、データベース スコープまたはオブジェクト スコープのイベント通知の場合は対象データベースに、サーバー スコープのイベント通知の場合は master データベースにイベント通知を作成します。
たとえば、次の WQL クエリについて考えてみます。
SELECT * FROM DDL_DATABASE_LEVEL_EVENTS WHERE DatabaseName = 'AdventureWorks'
このクエリから、WMI プロバイダは、このイベント通知と同等のものを対象サーバー上に生成しようとします。
USE AdventureWorks ;
GO
CREATE EVENT NOTIFICATION SQLWEP_76CF38C1_18BB_42DD_A7DC_C8820155B0E9
ON DATABASE
WITH FAN_IN
FOR DDL_DATABASE_LEVEL_EVENTS
TO SERVICE
'SQL/Notifications/ProcessWMIEventProviderNotification/v1.0',
'A7E5521A-1CA6-4741-865D-826F804E5135';
GO
WQL クエリ (DDL_DATABASE_LEVEL_EVENTS
) の FROM
句の引数には、イベント通知を作成できる有効なイベントを指定することができます。SELECT
句および WHERE
句の引数は、イベントまたはその親イベントに関連付けられたイベント プロパティを指定することができます。有効なイベントおよびイベント プロパティのリストについては、「WMI Provider for Server Events のクラスとプロパティ」を参照してください。
次の WQL 構文は、WMI Provider for Server Events によって明示的にサポートされます。追加の WQL 構文を指定することもできますが、このプロバイダに特有ではないため、代わりに WMI ホスト サービスによって解析されます。WMI Query Language の詳細については、Microsoft Developer Network (MSDN) の WQL のドキュメントを参照してください。
構文
SELECT { event_property [ ,...n ] | * }
FROM event_type
WHERE where_condition
引数
- event_property
イベントのプロパティ。例には、PostTime、SPID、および LoginName が含まれています。イベントのプロパティについては、「WMI Provider for Server Events のクラスとプロパティ」に記載されている各イベントを参照してください。たとえば、DDL_DATABASE_LEVEL_EVENTS イベントには、DatabaseName プロパティおよび UserName プロパティがあります。また、親イベントから SQLInstance プロパティ、LoginName プロパティ、PostTime プロパティ、SPID プロパティ、および ComputerName プロパティを継承しています。
- ,...n
event_property に対するクエリを複数回実行することを示すには、コンマで区切ります。
- *
イベントに関連付けられたすべてのプロパティを照会することを指定します。
event_type
イベント通知を作成できるイベント。使用できるイベントのリストについては、「WMI Provider for Server Events のクラスとプロパティ」を参照してください。event type の名前は、CREATE EVENT NOTIFICATION を使用してイベント通知を手動で作成する場合に指定できる、同じ event_type | event_group に対応していることに注意してください。event type には、CREATE_TABLE、LOCK_DEADLOCK、DDL_USER_EVENTS、TRC_DATABASE などがあります。メモ : DDL に似た操作を実行する一部のシステム ストアド プロシージャもイベント通知を起動することができます。実行されるシステム ストアド プロシージャへの応答を判断するために、イベント通知をテストしてください。たとえば、CREATE TYPE ステートメントと sp_addtype ストアド プロシージャはいずれも、CREATE_TYPE イベントで作成されるイベント通知を起動します。しかし、sp_rename ストアド プロシージャはどのようなイベント通知も起動しません。詳細については、「イベント通知で使用する DDL イベント」を参照してください。
where_condition
event_property の名前、および論理演算子と比較演算子から構成される WHERE 句クエリ述語です。where_condition は、対応するイベント通知が対象データベースに登録されているスコープを決定します。また、event_type のクエリ元となる、特定のスキーマまたはオブジェクトを対象とするフィルタとしても機能します。詳細については、このトピック後半の「解説」セクションを参照してください。DatabaseName、SchemaName、および ObjectName と共に使用できるのは、
=
オペランドのみです。その他の式は、これらのイベント プロパティと共に使用することはできません。
解説
WMI Provider for Server Events の構文の where_condition によって、次のことが決定されます。
- 指定された event_type をプロバイダが取得しようとするスコープ。スコープには、サーバー レベル、データベース レベル、オブジェクト レベル (現在サポートされているオブジェクトはキューのみ) があります。最終的に、このスコープは対象データベースで作成されたイベント通知の種類を決定します。このプロセスは、イベント通知登録と呼ばれます。
- データベース、スキーマ、オブジェクトのうちの適切な登録場所。
WMI Provider for Server Events は、bottom-up および first-fit アルゴリズムを使用して、基になる EVENT NOTIFICATION に対してできるだけ小さなスコープを生成します。アルゴリズムにより、サーバーの内部的な利用状況、および SQL Server インスタンスと WMI ホスト プロセス間のネットワーク トラフィックが最小になるように試行されます。プロバイダは、FROM 句で指定された event_type と、WHERE 句の条件を調べ、基になる EVENT NOTIFICATION を、できるだけ狭いスコープで登録しようとします。プロバイダが最も狭いスコープで登録できない場合は、登録が正常に終了するまで、順次より高いスコープでの登録が試行されます。最も高いスコープ (サーバーレベル) に到達して失敗した場合、エラーがコンシューマに返されます。
たとえば、WHERE 句で DatabaseName='AdventureWorks'
を指定した場合、プロバイダによって、AdventureWorks データベースでイベント通知が登録されます。AdventureWorks データベースが存在し、呼び出し側クライアントが、AdventureWorks のイベント通知を作成するために必要な権限を持っている場合、登録は正常に完了します。それ以外の場合は、イベント通知をサーバー レベルで登録しようとします。WMI クライアントが必要な権限を持っている場合、登録は正常に終了します。ただし、このシナリオでは、AdventureWorks データベースが作成されるまで、イベントはクライアントに返されません。
また、where_condition は、特定のデータベース、スキーマ、またはオブジェクトに対するクエリの制限を追加するためのフィルタとして機能します。たとえば、次の WQL クエリについて考えてみます。
SELECT * FROM ALTER_TABLE
WHERE DatabaseName = 'AdventureWorks' AND SchemaName = 'Sales'
AND ObjectType='Table' AND ObjectName = 'SalesOrderDetail'
登録プロセスの結果によっては、この WQL クエリは、データベース レベルまたはサーバー レベルのどちらかに登録されます。ただし、サーバー レベルに登録された場合でも、プロバイダは、AdventureWorks.Sales.SalesOrderDetail
テーブルには適用されない ALTER_TABLE
イベントを最終的にフィルタします。つまり、プロバイダは、この特定のテーブル上で発生した ALTER_TABLE
イベントのプロパティのみを返します。
DatabaseName='AW1'
OR DatabaseName='AW2'
などの複合式が指定された場合、2 つの異なるイベント通知ではなく、サーバー スコープで 1 つのイベント通知の登録が試行されます。呼び出し側クライアントが権限を持っている場合、登録は正常に終了します。
WHERE
句で、SchemaName='X' AND ObjectType='Y' AND ObjectName='Z'
がすべて指定されている場合、イベント通知をスキーマ X
内のオブジェクト Z
上に直接登録する試行が行われます。クライアントが権限を持っている場合、登録は正常に終了します。現時点では、オブジェクト レベル イベントは、キュー上でのみ、および QUEUE_ACTIVATION event_type に対してのみサポートされていることに注意してください。
ある特定のスコープでは、すべてのイベントを照会できるわけではないことに注意してください。たとえば、Lock_Deadlock など、トレース イベント上の WQL クエリ、または TRC_LOCKS などのトレース イベント グループは、サーバー レベルでのみ登録できます。同様に、CREATE_ENDPOINT イベントおよび DDL_ENDPOINT_EVENTS イベント グループも、サーバー レベルでのみ登録できます。イベントを登録するための適切なスコープの詳細については、「イベント通知のデザイン」を参照してください。event_type をサーバー レベルでのみ登録できるような WQL クエリの登録は、常にサーバー レベルで行われます。WMI クライアントが権限を持っている場合、登録は正常に終了します。それ以外の場合は、クライアントにエラーが返されます。ただし、WHERE 句は、イベントに対応するプロパティに基づいたサーバー レベル イベントに対するフィルタとして使用できる場合もあります。たとえば、多くのトレース イベントに含まれている DatabaseName プロパティは、WHERE 句でフィルタとして使用できます。
サーバースコープのイベント通知は、master データベースで作成され、sys.server_event_notifications カタログ ビューを使用して、メタデータに対してクエリを行うことができます。
データベーススコープまたはオブジェクトスコープのイベント通知は、指定されたデータベースで作成され、sys.event_notifications カタログ ビューを使用して、メタデータに対してクエリを行うことができます (カタログ ビューのプレフィックスには、対応するデータベース名を使用する必要があります)。
例
A. サーバー スコープのイベントを照会する
次の WQL クエリは、SQL Server のインスタンス上で発生する SERVER_MEMORY_CHANGE
トレース イベントのイベント プロパティをすべて取得します。
SELECT * FROM SERVER_MEMORY_CHANGE
B. データベース スコープのイベントを照会する
次の WQL クエリは、AdventureWorks
データベース内で発生し、DDL_DATABASE_LEVEL_EVENTS
イベント グループに存在するイベントの特定のイベント プロパティを取得します。
SELECT SPID, SQLInstance, DatabaseName FROM DDL_DATABASE_LEVEL_EVENTS
WHERE DatabaseName = 'AdventureWorks'
C. データベース スコープのイベントを照会し、スキーマおよびオブジェクトでフィルタ処理を行う
次のクエリは、テーブル AdventureWorks.Sales.SalesOrderDetail
上で発生する ALTER_TABLE
イベントのイベント プロパティを取得します。
SELECT * FROM ALTER_TABLE
WHERE DatabaseName = 'AdventureWorks' AND SchemaName = 'Sales'
AND ObjectType='Table' AND ObjectName = 'SalesOrderDetail'
参照
概念
WMI Provider for Server Events
その他の技術情報
ヘルプおよび情報
変更履歴
リリース | 履歴 |
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2006 年 4 月 14 日 |
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