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EXECUTE AS 句 (Transact-SQL)

SQL Server 2005 では、関数 (インライン テーブル値関数を除く)、プロシージャ、キュー、トリガなどのユーザー定義モジュールの実行コンテキストを定義できます。

モジュールが実行されるコンテキストを指定することにより、SQL Server 2005 データベース エンジンがどのユーザー アカウントを使用して、モジュールによって参照されるオブジェクトの権限を検証するかを制御できます。これにより、ユーザー定義モジュールとそれらのモジュールによって参照されるオブジェクト間に存在する、オブジェクトのチェーン全体に関する権限の管理を、さらに柔軟に制御できます。ユーザーに付与する必要のある権限は、モジュール自体に対するもののみで、参照されるオブジェクトに対する明示的な権限の許可は必要ありません。モジュールによってアクセスされるオブジェクトに対する権限が必要なのは、そのモジュールを実行しているユーザーのみです。

トピック リンク アイコンTransact-SQL 構文表記規則

構文

Functions (except inline table-valued functions), Stored Procedures, and DML Triggers
{ EXEC | EXECUTE } AS { CALLER | SELF | OWNER | 'user_name' } 

DDL Triggers with Database Scope
{ EXEC | EXECUTE } AS { CALLER | SELF | 'user_name' } 

DDL Triggers with Server Scope and logon triggers
{ EXEC | EXECUTE } AS { CALLER | SELF | 'login_name' } 

Queues
{ EXEC | EXECUTE } AS { SELF | OWNER | 'user_name' } 

引数

  • CALLER
    モジュール内のステートメントを、モジュールの呼び出し元のコンテキストで実行します。モジュールを実行するユーザーは、モジュール自体に対してだけでなく、そのモジュールによって参照されるすべてのデータベース オブジェクトに対する、適切な権限を持っている必要があります。

    CALLER はキュー以外のすべてのモジュールに対して、既定値となっています。またその動作は、SQL Server 2000 の場合と同じです。

    CALLER は、CREATE QUEUE または ALTER QUEUE ステートメントでは指定できません。

  • SELF
    EXECUTE AS SELF は、EXECUTE AS user_name と同等で、異なるのは指定されるユーザーがモジュールを作成または変更したユーザーであるという点です。モジュールを作成または変更するユーザーの実際のユーザー ID は、sys.sql_modules または sys.service_queues カタログ ビューの execute_as_principal_id 列に格納されます。

    SELF は、キューの場合の既定値です。

    ms188354.note(ja-jp,SQL.90).gifメモ :
    sys.service_queues カタログ ビューの execute_as_principal_id 列のユーザー ID を変更するには、ALTER QUEUE ステートメントで EXECUTE AS 設定を明示的に指定する必要があります。
  • OWNER
    モジュール内のステートメントを、モジュールの現在の所有者のコンテキストで実行します。モジュールの所有者が指定されていない場合、そのモジュールのスキーマの所有者が使用されます。OWNER は、DDL トリガに対しては指定できません。

    ms188354.note(ja-jp,SQL.90).gif重要 :
    OWNER は、単一アカウントにマップする必要があります。ロールまたはグループにはマップできません。
  • 'user_name'
    モジュール内のステートメントを、user_name で指定されたユーザーのコンテキスト内で実行します。モジュール内のすべてのオブジェクトの権限は、 user_name に対して検証されます。user_name は、サーバー スコープの DDL トリガには指定できません。代わりに login_name を使用します。

    user_name は、現在のデータベース内に存在し、単一アカウントである必要があります。また user_name には、グループ、ロール、証明書、キー、および、NT AUTHORITY\LocalService、NT AUTHORITY\NetworkService、NT AUTHORITY\LocalSystem などのビルトイン アカウントは指定できません。

    実行コンテキストのユーザー ID はメタデータ内に格納され、sys.sql_modules または sys.assembly_modules カタログ ビューの execute_as_principal_id 列で参照できます。

  • 'login_name'
    モジュール内部のステートメントを、login_name で指定された SQL Server ログインのコンテキストで実行します。モジュール内のすべてのオブジェクトの権限は、 login_name に対して検証されます。login_name は、サーバー スコープの DDL トリガにのみ指定できます。

    login_name には、グループ、ロール、証明書、キー、および、NT AUTHORITY\LocalService、NT AUTHORITY\NetworkService、NT AUTHORITY\LocalSystem などのビルトイン アカウントを指定できません。

解説

データベース エンジンによる、モジュール内で参照されるオブジェクトに対する権限の評価方法は、呼び出し元のオブジェクトと参照されるオブジェクト間に存在する所有権の継承によって異なります。以前のバージョンの SQL Server では、呼び出し元のユーザーに対して、参照されるすべてのオブジェクトへのアクセスを許可するためには、所有権の継承を使用する方法しかありませんでした。

所有権の継承には、次のような制限があります。

  • SELECT、INSERT、UPDATE、および DELETE の DML ステートメントのみに適用されます。
  • 呼び出し元のオブジェクトと呼び出されたオブジェクトの所有者は同一である必要があります。
  • モジュール内部の動的クエリには適用されません。

所有権の継承の詳細については、「所有権の継承」を参照してください。

モジュール内で指定される実行コンテキストに関係なく、次の操作が常に適用されます。

  • モジュールが実行されると、データベース エンジンは、モジュールを実行するユーザーにそのモジュールに対する EXECUTE 権限が与えられていることを最初に確認します。
  • 所有権の継承ルールは、引き続き適用されます。つまり、呼び出し元のオブジェクトと呼び出されたオブジェクトの所有者が同一の場合、基になるオブジェクトに対する権限は確認されません。

ユーザーが、CALLER 以外のコンテキスト内で実行するように指定されたモジュールを実行すると、そのユーザーに対してモジュールの実行権限が確認されますが、さらに、そのモジュールによってアクセスされるオブジェクトの追加の権限確認が、EXECUTE AS 句で指定されたユーザー アカウントに対して行われます。実質的に、モジュールを実行するユーザーは、指定されたユーザーの権限を借用します。

モジュールの EXECUTE AS 句で指定されたコンテキストは、モジュールの実行中のみ有効です。モジュールの実行が完了すると、コンテキストは呼び出し元に戻されます。モジュール内の実行コンテキストの切り替えについては、「モジュールでの EXECUTE AS の使用」を参照してください。

ユーザーまたはログイン名の指定

モジュールの EXECUTE AS 句で指定されたデータベース ユーザーまたはサーバー ログインは、モジュールが変更されて別のコンテキストで実行されるまでは削除できません。

EXECUTE AS 句で指定されたユーザーまたはログイン名は、それぞれ sys.database_principals または sys.server_principals 内にプリンシパルとして存在する必要があります。存在しない場合、モジュールの作成または変更処理は失敗します。また、モジュールを作成または変更するユーザーには、そのプリンシパルに対する IMPERSONATE 権限が必要です。

ユーザーが、Windows グループのメンバシップを使って SQL Server のデータベースまたはインスタンスに暗黙的にアクセスした場合、モジュールが作成されるときに次のいずれかの要件を満たしていれば、EXECUTE AS 句で指定されたユーザーが暗黙的に作成されます。

  • 指定されたユーザーまたはログインが、固定サーバー ロール sysadmin のメンバであること。
  • モジュールを作成するユーザーに、プリンシパルを作成する権限が与えられていること。

これらの要件がどちらも満たされない場合、モジュールの作成操作は失敗します。

ms188354.note(ja-jp,SQL.90).gif重要 :
SQL Server (MSSQLSERVER) サービスがローカル アカウント (ローカル サービスまたはローカル ユーザー アカウント) で実行されている場合、このサービスには、EXECUTE AS 句で指定されている Windows ドメイン アカウントのグループのメンバシップを取得する権限は与えられません。このため、モジュールの実行は失敗します。

たとえば、次のような条件を想定します。

  • CompanyDomain\SQLUsers グループに Sales データベースへのアクセス権がある。
  • CompanyDomain\SqlUser1SQLUsers のメンバであり、したがって Sales データベースへのアクセスが許可されている。
  • モジュールを作成または変更するユーザーに、プリンシパルを作成する権限が与えられている。

次の CREATE PROCEDURE ステートメントが実行されると、CompanyDomain\SqlUser1 が、Sales データベースのデータベース プリンシパルとして暗黙的に作成されます。

USE Sales;
GO
CREATE PROCEDURE dbo.usp_Demo
WITH EXECUTE AS 'CompanyDomain\SqlUser1'
AS
SELECT user_name();
GO

スタンドアロンの EXECUTE AS CALLER ステートメントの使用

スタンドアロンの EXECUTE AS CALLER ステートメントをモジュール内で使用すると、実行コンテキストがそのモジュールの呼び出し元に設定されます。

次のストアド プロシージャが SqlUser2 によって呼び出されるとします。

CREATE PROCEDURE dbo.usp_Demo
WITH EXECUTE AS 'SqlUser1'
AS
SELECT user_name(); -- Shows execution context is set to SqlUser1.
EXECUTE AS CALLER;
SELECT user_name(); -- Shows execution context is set to SqlUser2, the caller of the module.
REVERT;
SELECT user_name(); -- Shows execution context is set to SqlUser1.
GO

EXECUTE AS を使用したカスタム権限セットの定義

モジュールの実行コンテキストを指定すると、カスタム権限セットを定義する場合に非常に便利です。たとえば、TRUNCATE TABLE などの操作には、許可できる権限がありません。モジュール内に TRUNCATE TABLE ステートメントを組み込み、テーブルの変更権限を持つユーザーがモジュールを実行するように指定すると、モジュールの EXECUTE 権限を許可するユーザーに、テーブルを切り捨てる権限を拡張して与えることができます。詳細については、「EXECUTE AS の使用によるカスタム権限セットの作成」を参照してください。

実行コンテキストを指定したモジュールの定義を表示するには、sys.sql_modules (Transact-SQL) カタログ ビューを使用します。

推奨事項

モジュール内で定義された操作を実行する場合に必要となる最低限の権限を持つログインまたはユーザーを指定します。たとえば、データベース レベルの権限が必要とされない場合は、データベース所有者アカウントは指定しないでください。

権限

EXECUTE AS で指定されたモジュールを実行するには、呼び出し元に、そのモジュールに対する EXECUTE 権限が必要です。

別のデータベースまたはサーバー内のリソースにアクセスする CLR モジュールを、EXECUTE AS で指定して実行する場合、対象のデータベースまたはサーバーは、モジュールが生成されたデータベース (基になるデータベース) の認証情報を信頼する必要があります。認証情報の信頼関係を確立する方法の詳細については、「EXECUTE AS の使用によるデータベースの権限借用の拡張」を参照してください。

モジュールを作成または変更するときに EXECUTE AS 句を指定するには、指定されたプリンシパルに対する IMPERSONATE 権限とそのモジュールを作成する権限が必要です。ユーザー自身の権限は、常に借用できます。実行コンテキストを指定しない場合、または EXECUTE AS CALLER を指定する場合、IMPERSONATE 権限は必要ありません。

Windows グループのメンバシップを使ってデータベースに暗黙的にアクセスできる login_name または user_name を指定するには、そのデータベースに対する CONTROL 権限が必要です。

次の例では、ストアド プロシージャを作成し、実行コンテキストを OWNER に割り当てます。

USE AdventureWorks;
GO
CREATE PROCEDURE HumanResources.uspEmployeesInDepartment 
@DeptValue int
WITH EXECUTE AS OWNER
AS
    SET NOCOUNT ON;
    SELECT e.EmployeeID, c.LastName, c.FirstName, e.Title
    FROM Person.Contact AS c 
    INNER JOIN HumanResources.Employee AS e
        ON c.ContactID = e.ContactID
    INNER JOIN HumanResources.EmployeeDepartmentHistory AS edh
        ON e.EmployeeID = edh.EmployeeID
    WHERE edh.DepartmentID = @DeptValue
    ORDER BY c.LastName, c.FirstName;
GO

-- Execute the stored procedure by specifying department 5.
EXECUTE HumanResources.uspEmployeesInDepartment 5;
GO

参照

関連項目

sys.assembly_modules (Transact-SQL)
sys.sql_modules (Transact-SQL)
sys.service_queues (Transact-SQL)
REVERT (Transact-SQL)
EXECUTE AS (Transact-SQL)

その他の技術情報

ユーザーとスキーマの分離
実行コンテキストについて
コンテキストの切り替えについて
モジュールでの EXECUTE AS の使用

ヘルプおよび情報

SQL Server 2005 の参考資料の入手