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宣言の概要

宣言子は、オブジェクトまたは関数の名前を指定する宣言の構成要素です。 また、宣言子は、名前付きオブジェクトがオブジェクト、ポインター、参照、または配列であるかどうかも指定します。 宣言子は基本型を指定しませんが、ポインター、参照、配列などの派生型を指定するために、基本型の型情報を変更します。 関数に適用されると、宣言子は型指定子と組み合わせて、関数の戻り値の型がオブジェクト、ポインター、または参照であるかを完全に指定します (「宣言」で説明した指定子は、型やストレージ クラスなどの特質を意味します。 このセクションと「Microsoft 固有の修飾子」で説明した修飾子は、宣言子を変更します)。次の図は、MyFunction の宣言全体と宣言の構成要素を示します。

指定子、修飾子、および宣言子

修飾子、指定子、および宣言子

Microsoft 固有の仕様 →

ほとんどの Microsoft 拡張キーワードは派生型を作成する修飾子として使用できます。指定子または宣言子ではありません (「Microsoft 固有の修飾子」を参照してください)。

END Microsoft 固有の仕様

宣言子は、宣言構文では、省略可能な指定子のリストの後に記述されます。 これらの指定子については、「宣言」で説明します。宣言には複数の宣言子を含めることができますが、各宣言子は 1 つの名前だけを宣言します。

次の宣言例は、指定子と宣言子を組み合わせて完全な宣言を作成する方法を示します。

const char *pch, ch;

この宣言では、const キーワードと char キーワードが指定子のリストを構成しています。 *pch および ch という 2 つの宣言子が並べられています。 複数のエンティティを宣言する場合、宣言は、型指定子の後に宣言子のコンマ区切りリストが続き、セミコロンで終わります。

単純なオブジェクトの宣言子

int や double のような単純なオブジェクトの宣言子は単なる名前であり、かっこは省略可能です。

int i; // declarator is i

int (i); // declarator is (i)

ポインター、参照、および配列の宣言子

名前の前に挿入されたポインター演算子により、オブジェクトはポインターまたは参照になります。 * 演算子は名前をポインターとして宣言し、& 演算子は名前を参照として宣言します。

int *i; // declarator is *i
int **i; // declarator is **i;
int &i = x; // declaratory is &i

後ろに const または volatile を付けると、ポインターに特殊な特質が与えられます。 型指定子ではなく宣言子でこれらの指定子を使用すると、ポイントされるオブジェクトではなく、ポインターの特質が変更されます。

char *const cpc; // const pointer to char 
const char *pcc; // pointer to const char 
const char *const cpcc; // const pointer to const char

詳細については、「const ポインターと volatile ポインター」を参照してください。

クラスまたは構造体のメンバーへのポインターは、適切な入れ子になった名前指定子で宣言されます。

int X::* pIntMember; 
int ::X::* pIntMember; // the initial :: specifies X is in global scope
char Outer::Inner::* pIntMember; // pointer to char in a nested class

名前の後に省略可能な定数式を囲む角かっこがあると、オブジェクトは配列になります。 連続する角かっこは、配列への追加の次元を宣言します。

int i[5]; // array with five elements of type int numbered from 0 to 4
int i[]; // array of unknown size
char *s[4]; // array of pointers to char
int i[2][2]; // two dimensional array

関数の宣言子

引数リストを囲むかっこは、関数を宣言する名前の後に使用されます。 次の例は、戻り値の型が int の関数と、int 型の 3 つの引数を宣言します。

int f(int a, int b, int c);

引数リストの詳細については、「関数の宣言」を参照してください。

関数へのポインターおよび参照は、次に示すように、関数名の前にポインター演算子または参照演算子を付けることによって宣言します。 かっこ (通常は省略可能) は、ポインターを返す関数と関数へのポインターを区別するために必要です。

int (*pf)(int); // pointer to function returning int
int *f(int i); // function returning pointer to int
int (&pf)(int); // reference to function 

メンバー関数へのポインターは、入れ子になった名前指定子によって区別されます。

int (X::* pmf)(); // pointer to member function of X returning int
int* (X::* pmf)(); // pointer to member function returning pointer to int

メンバーへのポインター」も参照してください。

同じ宣言内の関数とオブジェクト

関数とオブジェクトは、次のように同じ宣言内で宣言できます。

int i, *j, f(int k);  // int, pointer to int, function returning int

この構文は状況によっては誤解を招く可能性があります。 次の宣言

int* i, f(int k);  // pointer to int, function returning int (not int*)

は、int ポインターと int* を返す関数の宣言のように見えますが、違います。 これは、* が i の宣言子の一部であり、f の宣言子の一部ではないためです。

typedef による宣言子構文の簡略化

ただし、もっと適切な手法は typedef キーワード、または、かっこと typedef キーワードの組み合わせを使用することです。 関数へのポインターの配列を宣言する場合を考えます。

//  Function returning type int that takes one 
//   argument of type char *.
typedef int (*PIFN)( char * );
//  Declare an array of 7 pointers to functions 
//   returning int and taking one argument of type 
//   char *.
PIFN pifnDispatchArray[7];

typedef 宣言を使用しなくても同等の宣言を記述できますが、非常に複雑となるためエラーを生む危険性が利点を上回ります。

int ( *pifnDispatchArray[7] )( char * );

typedef の詳細については、「typedef 指定子」を参照してください。

単一の基本型のポインター、参照、配列は、次のように (コンマで区切って) 1 つの宣言にまとめることができます。

int a, *b, c[5], **d, &e=a;

より複雑な宣言子の構文

  • ポインター、参照、配列、および関数の宣言子を組み合わせて、関数へのポインターの配列や配列へのポインターのようなオブジェクトを指定できます。

  • 以下の再帰的な文法は、ポインターの宣言子の構文を完全に記述しています。

  • declarator は次のいずれかとして定義されます。

1. identifier 
2. qualified-name 
3. declarator ( argument-list ) [cv-qualfiers] [exception-spec]
4. declarator [ [ constant-expression ] ] 

5. pointer-operator declarator 
6. ( declarator )
  • pointer-operator は次のいずれかです。
* [cv-qualifiers]
& [cv-qualifiers]
:: nested-name-specifier * [cv-qualfiers]

宣言子は宣言子を含んでもよいため、上記の規則を使用して、ポインターの配列、関数ポインターの配列を返す関数など、さらに複雑な派生型を構築することもできます。 構築の各ステップを実行するには、まず、基本データ型を表す識別子を作成し、前の式を declarator として上記の構文規則を適用します。 構文規則を適用する順序は、式を日本語で説明するときと同じ順序にする必要があります。 pointer-operator 構文規則を配列または関数式に適用する場合、以下の表の最後の行に示すように、配列または関数へのポインターが必要なときは、かっこを使用します。

次の例は、「int へのポインターを 10 個含む配列へのポインター」の構造を示します。

言葉による表現

宣言子

適用される構文規則

i

1

int へのポインターを

*i

5

10 個含む配列への

(*i)[10]

4

ポインター

*((*i)[10])

6、続いて 5

複数のポインター、参照、配列、または関数の修飾子を使用するときは、宣言子がかなり複雑になる場合があります。 トピック「さらに複雑な宣言子の解釈」では、より複雑な宣言子構文の解釈方法について説明しています。 このトピックは C と C++ の両方に適用されますが、C++ では、* を使用してポインターを示す場合、MyClass::* などの修飾名を使用して、クラスのメンバーへのポインターを指定することもできます。

参照

関連項目

宣言子