Windows 秘話適切なボリュームを求めて
Raymond Chen
通知領域の [ボリューム コントロール] アイコンをクリックすると、小さなボリューム コントロールが表示されます。音楽を再生している場合は、音楽の音量によって変化する 2 つの音量レベル (灰色と緑色のバー) が表示されます。これらは一体何でしょうか。
灰色のバーは、ボリューム スライダを最大値に設定した場合の音量を表します。緑色のバーは、ボリューム コントロールを現在のレベルに設定した場合の実際の音量を表します。
2 つのバーの意味はおわかりいただけたと思うので、今度は、ボリューム コントロールに、2 つの音量レベルが表示されている理由をご説明しましょう。
オーディオ開発担当者は、音声が聞こえないという問題に直面すると、大半のユーザーが、まずボリューム コントロールにアクセスするということを理解しています。そのため、ボリューム コントロールに、ごく一般的な診断情報をさりげなく含めたいと考えました。一目瞭然ではないかもしれませんが、少し操作すると、提示されているデータの意味を理解できるでしょう。
それでは、いくつかのシナリオを見てみましょう。
音声が聞こえない理由その 1: 何も再生されていない。たとえば、ユーザーが [再生] ボタンをクリックし忘れた場合に、このような状況が発生します。ボリューム コントロールのスライダに緑色と灰色のどちらのバーも表示されない場合は、この状況に該当すると判断できます。また、何も再生していないので、スピーカーから音声が聞こえません。
音声が聞こえない理由その 2: 音量を下げすぎている。灰色のバーが動いているのを確認できる場合は、何かが再生されています。しかし、このような状況では、設定されている音量が小さすぎて、実際に出力されている音声はささやき声のような小さな音で、緑色のバーは、ほとんど見えない状態です。スライダを上方向に移動すると、緑色のバーが大きくなり、出力される音声も大きくなります。
音声が聞こえない理由その 3: スピーカーが接続されていないか、物理的なボリュームつまみの設定が低すぎる。このような状況では、灰色のバーが動いていて、緑色のバーも動いている (適度なサイズになっている) のに、音声が聞こえません。(バーの色と動作から) コンピュータでは音楽が再生していると認識されているので、コンピュータとスピーカーの接続を確認します。スピーカーが接続されていること、スピーカーを間違ってライン入力端子に接続していないこと、スピーカーのボリュームつまみが、適度な設定になっていることを確認します。
Windows チームのオーディオ担当者は、難しい状況に直面していました。単に音声を再生することを望んでいる (安価なスピーカーを使用し、おもしろおかしい猫のオンライン ビデオを再生したりする) 初心者向けに音声操作をシンプルにする必要があると同時に、(高価なステレオ システムを使用して劣化の少ない録音物を再生する) 熱烈なオーディオファンを満足させる必要もありました。自動的にボリューム レベルを調整するなどして、インターネット上で配信されているビデオの再生に重点を置くと、オーディオファンに敬遠されることになります。その結果、既定では、多くの有益な機能を無効にし、音声の再生品質を重視するユーザーの機嫌を損ねる事態を回避しました。
便利なオーディオ機能を有効にする方法をご紹介しましょう。コントロール パネルで [サウンド] をダブルクリックし、[再生]、[プロパティ]、[拡張] を順にクリックして、[ラウドネス イコライゼーション] チェック ボックスをオンにします。この設定は「一度音量を適切なレベルに設定したら、その後は変更しない」ということを Windows に通知するものです。この設定により、テレビ録画、DVD、または CD を再生していても、Windows の警告音が鳴った場合でも、Windows では、すべての音声を指定の音量で再生します。ただし、プログラムによっては、プログラム独自のラウドネス イコライゼーションを採用しているものもあるため、過度の調整は関連機能 (この場合は、信号品質) に悪影響を及ぼすことがあります。
ラウドネス イコライゼーションの機能が既定で有効になっていたら、多くの熱狂的なオーディオファンが激怒することは間違いないでしょう。「繊細なオーディオ サンプルになんてことをしてくれるんだ」という具合にです。
このコラムの執筆材料となる情報を、無意識のうちに提供してくれた Larry Osterman、Steve Ball を始めとする Windows オーディオ チームのメンバに感謝します。
Raymond Chen は自分の Web サイト「The Old New Thing」および同じタイトルの書籍 (Addison-Wesley、2007 年) で、Windows の歴史と Win32 プログラミングについて扱っています。彼は安価なスピーカーで音楽を聴いています。