フィールド ノート否定できない IT の重要性
Romi Mahajan
『反抗的人間』の中でアルベール カミュは「...この時代特有の奇妙な転位によって、それはそれ自体を正当化することを求められたとしても罪ではない」と記しています。彼は植民地主義の災禍について書いていたのですが、このテーマは現在のきわめて異なる文脈においても共感を呼びます。なぜ IT はいつも、投資、人、価値、戦略に関して、その存在そのものを正当化することを求められなければならないのでしょうか。このような疑念はふさわしいものなのでしょうか、それとも無知または不正行為の産物なのでしょうか。これはあるべき姿ではないため、気になるところです。常に疑問視され、骨の髄まで詮索される部署なんて、社内に他にもあるでしょうか (マーケティングは例外だとしても)。
では、それぞれの観点について検討してみましょう。まず、IT に向けられる疑念はふさわしいものかどうかを考えてみます。ビジネスは、IT という概念さえ生まれていなかった時代でも、非常にうまく、ある程度の正確さで運営されていたという人もいます。ビジネスとは関係であり、関係とは人と人との接触の中に存在し、こうした接触を通じて実現されるものであるといいます。従業員の心と頭脳こそ資産であり、それ以外はすべてビジネスとの関連性が格段に低いものだといいます。
また、ニコラス カーは、IT は商品であり、比較上の優位をもたらすものではないため、まったく重要ではないということを示唆しています (『Harvard Business Review』、2003 年 5 月)。資本主義的企業にとって、まったく重要でないということは軽蔑されているのと同じです。
さらに、IT は、企業に金銭的利益をもたらさないと言われます。実際、金銭的利益を生まないどころか、IT の必需品 (コンピュータ、サーバー、ソフトウェア、IT プロフェッショナル) は費用を生み出します。企業は金銭を稼ぐために事業を運営していますから、IT にある程度の懐疑的な目が向けられても仕方がありません。
しかし、こうした意見はかなり簡単に論破できます。たしかにビジネスは人が関与するものですが、人だけが関与するものではありません。人が生み出すもの、人が移動する場所、人が接触する方法、そしてこれらすべてをいかに迅速に行うことができるかもビジネスに関与します。このような分野で IT が果たす役割は明白です。
IT は商品でしょうか。必ずしもそうではありません。部分的には代替可能なものもありますが、全体を考えると明らかに違います。IT が適切に機能していない会社で、またはそのような会社と仕事をしたことはあるでしょうか。それならば、優れた IT が必要なものであることはたしかだとおわかりでしょう。もちろん、業績の高いビジネスを実現するにはそれだけでは十分でない可能性もあります。
また、金銭的利益を生み出すプロセスにおいて、"最終段階の取引" のみが重要なステップであると考えるのは間違いです。このステップは、それ以前の多大な取り組みなしにはあり得ません。さらに、電子商取引が、取引の主要手段となってきていますが、IT なしでは電子商取引は成り立ちません。
さて、IT に対する敬意のなさは、知識がないか、それよりも悪い理由のために生まれているという考えについてはどうでしょうか。これは、IT 部門のスキルこそが問題であると言われるかもしれません。企業は地理的に分散しており、その顧客やパートナーも同じように地理的に分散しています。IT は、そんな企業や顧客、パートナーすべてが、驚くほどの速さで、間違いなく、コミュニケーションをとり、取引できるようにしています。その意味で、IT はビジネスを実現する基盤であると言えます。多くの業界でインフラストラクチャのあまりにも多くの領域に IT が組み込まれているため、当然のものと考えられ、その結果、敬意が払われずにいます。エンド ユーザーには認識されなくても、もちろん、これはほとんど IT 組織の功績によるものです。このような事実から、疑念ではなく、賞賛が生み出されるべきです。
IT は金銭的利益を生まないため価値がないという考え方は間違いです。この考えは完全に、売上を実現するすべてのものを否定しています。会社の建物や、従業員のデスクの価値を疑問視するようなものです。このような見方は、組織の各部署間の競争から、またはビジョンの欠如から生まれたものでしょうか。ともかく、他の部署が組織の経済全体にどのように貢献しているかを認識できない人というのは、了見が狭いとしか言えません。
私の見解を理解するのは難しいことではありません。私から見れば、IT は現在のビジネスで重要な役割を果たしています。ときには、他の部署よりも重要なこともあります。IT は、明らかにビジネスとの関連性が高い場合もありますし、あくまでも補佐的な役割しか担わない場合もあります。しかし、いずれにせよ、IT は非常に重要なものです。人が重要であるのと同じように。
Romi Mahajan は Ascentium Corporation のマーケティング最高責任者です。Ascentium に加わる前は、マイクロソフトに 7 年以上勤務し、最後はテクニカル オーディエンスおよびプラットフォーム マーケティングを率いるディレクタを務めていました。テクノロジ、政治、経済学、社会学など幅広い分野で自身の考えを発表しています。