Windows Server 2012: Windows 展開サービスを使いこなす
Windows 展開サービスは、特に他の展開ツールと一緒に使用すると、強力で柔軟なソリューションになります。
Johan Arwidmark
Windows 展開サービス (WDS) は、Windows Server 2003 の時代から Windows Server で利用できました。中核となる機能は同じですが、Windows Server 2012 リリースの WDS には多数の新機能が用意されています。WDS は、Microsoft Deployment Toolkit (MDT) 2012 Update 1 や Microsoft System Center 2012 Configuration Manager などの最新の展開ソリューションにとって重要な役割を果たします。
WDS 自体は展開ソリューションではなく、MDT や Configuration Manager などの本物の展開ソリューションで使用する重要なインフラストラクチャ コンポーネントです。技術的には、WDS で OS イメージを展開することは可能で、制限はあるもののドライバー導入メカニズムもサポートされていますが、WDS 自体には、エンタープライズ環境で Windows クライアントや Windows Server を展開するのに必要な OS の展開機能は用意されていません。
WDS は、MDT や Configuration Manager と組み合わせて使用したときに、優れた展開ソリューションになります (図 1 参照)。この組み合わせでサポートされている主な機能は次のとおりです。
- ネットワーク ブート (Pre-boot Execution Environment (PXE)) による MDT または Configuration Manager のブート イメージの起動
- 現在サポートされている全 クライアント OS とサーバー OS の展開
- ソリューションを構築および管理する管理インターフェイス
- タスク シーケンスによる全展開プロセスのフローの制御
- 展開のリアルタイムの監視
- ドライバー導入の優れたメカニズム
- OS 展開の動的な設定
- Windows 更新プログラムの自動展開 (すべての必要な再起動を含む)
- すべてのバージョンの Windows へのアプリケーションの展開 (Windows 8 を含む)
図 1 強力な組み合わせの Windows 展開サービスと Microsoft Deployment Toolkit
WDS の新機能
Windows Server 2012 リリースの WDS では、多数の新機能が導入されていますが、この記事では、エンタープライズ環境の展開で使用する WDS の新機能をいくつか紹介します。
- スタンドアロンに対応の新しくなったセットアップ ウィザード
- プレステージ デバイスを管理するために追加されたウィザードとプロパティ
- 向上したマルチキャストのパフォーマンス
- 向上したブート イメージのダウンロードのパフォーマンス
- 新しい ARM と Unified Extensible Firmware Interface (UEFI) x86/x64 プラットフォーム (アーキテクチャ) のサポート
新しくなったセットアップ ウィザード: WDS の役割を構成するときには、Active Directory と統合するか、スタンド アロン モードにするかを選択できるようになり、ワークグループ用に構成された Windows Server 2012 を実行している WDS サーバーの展開と管理が簡略化されました (図 2 参照)。
図 2 Windows 展開サービスの構成ウィザードの新しいインストール オプション
追加されたウィザード: 多くの場合、MDT や Configuration Manager を使用しているときには、展開プロセスの一環として、展開ソリューションで Active Directory にコンピューター アカウントを作成します。ただし、プレステージ デバイスのオプションを使用して、展開を始める前に適切な組織単位の Active Directory にコンピューター アカウントを作成している組織もあります。
Windows Server 2012 には、プレステージ デバイスを管理するための新しいノードがあります (図 3 参照)。WDS をスタンドアロン モードで使用しているときにも、プレステージ デバイスを使用できます。WDS をスタンドアロン モードで使用している場合、プレステージ デバイスは Active Directory ではなく、ローカルのデータベースに保存されます。
図 3 プレステージ デバイスの新しいノード
向上したマルチキャストのパフォーマンス: マルチキャストは、すべての環境で可能なわけではありませんが、多数のコンピューターに対して同時に展開を行ったり、展開に使用できるネットワークの帯域幅が限られている場合には強力なツールになります。WDS で使用するマルチキャストの機能では、インターネット グループ管理プロトコル (IGMP) バージョン 3 を使用します。ネットワーク スイッチでは、このプロトコルをサポートする必要があり、マルチキャストに対応するようにネットワーク スイッチを構成する必要があります。
基本的に、マルチキャストを使用するには、ネットワーク グループと友好な関係を築く必要があります。Windows Server 2012 では、Windows Server 2008 R2 よりも、マルチキャスト展開のパフォーマンスが向上しています。
向上したブート イメージのダウンロードのパフォーマンス: Windows Preinstallation Environment (Windows PE) 4.0 と UEFI ベースのハードウェアを使用しているときは、ブート イメージにもマルチキャストを使用できます (Windows PE 4.0 は、Windows アセスメント & デプロイメント キット (ADK) に収録されています)。多くの企業では、まだ、UEFI 対応のハードウェアに Windows を展開しておらず、多くのブート イメージは、依然としてユニキャスト方式でダウンロードしています。
そのため、ダウンロード速度の観点で最も重要なコンポーネントは、簡易ファイル転送プロトコル (TFTP) ブロック サイズに関連するコンポーネントです (図 4 参照)。Windows Server 2012 では、このコンポーネントを UI から直接構成できます。可変のウィンドウ拡張と呼ばれる新機能があります。この機能は既定で有効になっており、この機能を使用すると、WDS では、ネットワークの実行状況を把握して、ウィンドウ サイズが適宜調整されます。
図 4 Windows Server 2012 の簡易ファイル転送プロトコル (TFTP) のオプション
新しいプラットフォームのサポート: Windows 8 と Windows Server 2012 のリリースにより、マイクロソフトでは、新しいプラットフォームのサポートを追加しました。WDS も、これらの OS をサポートするように更新されました。現在、UEFI 2.3.1 をサポートしているハードウェアは数が限られていますが (UEFI 2.3.1 では、Windows 8 と Windows Server 2012 の完全なサポートが必要です)、2013 年の早い段階で多くのベンダーから UEFI 2.3.1 をサポートしているハードウェアが提供される予定です (図 5 参照)。
図 5 [ブート] タブの新しい構成
Windows Server 2012 の WDS は、今も MDT 2012 や Configuration Manager 2012 などのマイクロソフト展開ソリューションにとって重要なコンポーネントです。パフォーマンスの向上により、Windows Server 2012 は PXE サーバーとして実行する価値があります。MDT 2012 Update 1 では、Windows Server 2012 の WDS が完全にサポートされていますが、Configuration Manager 2012 における Windows Server 2012 のサポートについては、Configuration Manager 2012 SP1 がリリースされるまで待つ必要があります。
この記事で紹介した Windows Server 2012 の WDS の新機能は、MDT 2012 や Configuration Manager 2012 などの完全な展開ソリューションと組み合わせたときに、展開タスクをカスタマイズおよび促進する強力なツールになります。
Johan Arwidmark は、エンタープライズ レベルの Windows 展開ソリューションを専門とするコンサルタントで、執筆も行っているオールラウンドな IT 担当者です。毎年、Microsoft Management Summit や TechEd など、複数のカンファレンスで講演しています。また、deploymentresearch.com (英語)、myitforum.com (英語) などの展開に関するコミュニティにも積極的に参加しており、セットアップと展開の Microsoft Most Valuable Professional に認定されています。Windows 展開ツールとソリューション、Microsoft Deployment Toolkit、Windows プレインストール環境、ユーザー状態移行ツール、Windows 展開サービス、および Microsoft System Center Configuration Manager を専門としています。