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クラウド コンピューティング

クラウド コンピューティングを取り巻く環境を明確にする

Karen Forster

クラウド コンピューティングは、至るところで関心を集めています。ですが、クラウド コンピューティングにはさまざまな形態があります。各クラウド オプションの目的やクラウド製品の相違点がわからないという方もいるでしょう。クラウド コンピューティングの範囲を制限して、Business Productivity Online Suite (BPOS) および Windows Azure Platform というマイクロソフトのクラウド 製品の 2 つだけに注目した場合でも、多くの混乱が生じる可能性があります。BPOS と Azure がどのように組み合わされ、現在各製品が IT やビジネスのニーズとどのように関連しているかについて知識があれば、ひとりぼっちではありません。それでは、説明しましょう。

BPOS の最前線

マイクロソフトは、長年にわたって、自社のサーバー製品や管理製品で構成されたスイートをパッケージ製品として販売し、ライセンスを発行してきました。皆さんになじみのあるサーバー ライセンス パッケージとしては、Small Business Server (SBS) や Essential Business Server (EBS) などがあります。また、さらにさかのぼると BackOffice Server があります。このようなパッケージを念頭に置くと、BPOS はマイクロソフト製品の 1 つのスイートと考えられます。違いは、組織内からアクセスする BPOS 製品が、物理的に組織の施設ではなくマイクロソフトが管理するデータセンターに配置されている点です。

Microsoft BPOS チームのプリンシパル プログラム マネージャーである Dharmesh Singh 氏は、「BPOS はライセンス スイートで、Windows Server、Exchange Server、および SQL Server で実行される、グループ作業を可能にする一連のエンド ユーザー サービスです。これらの製品は、組織内で使用できる製品と同じです。クラウドという観点では、これらの製品は共有のマルチテナント アーキテクチャのデータ センターで実行されています」と説明しています。

BPOS Standard Suite では、Exchange Online、SharePoint Online、Office Live Meeting、および Office Communications (OCS) Online がパッケージ化されています。Singh 氏によると、Office LiveMeeting と OCS を含めていることは、BPOS と Google が提供している競合製品を差別化する重要な要素となります。Google には、それに匹敵する製品がないからです。移動に関する経済的な検討事項を考慮すると、LiveMeeting と OCS は、組織でコスト削減を実現できる代替方法を提供することになります。

BPOS には、Business Productivity Online Deskless Worker Suite というバージョンもあります。これは、基本的な電子メールとドキュメントのコラボレーション機能だけを必要とする組織向けの製品です。このバージョンには、Exchange Online Deskless Worker と SharePoint Online Deskless Worker が同梱されています。Exchange Online Deskless Worker には、メールボックス、予定表、連絡先、Outlook Web Access Light が含まれ、マルウェア対策機能が備わっています。また、SharePoint Online Deskless Worker では、ポータルに読み取り専用でアクセスすることが可能で、フォームに入力することができます。

BPOS コンポーネントでは、インフォメーション ワーカーにとって最も一般的なタスクに対応しているので、これらのコンポーネントが、まとめて提供されるのは理にかなっています。これらのアプリケーションをクラウドに配置すると、IT 部門では、ビジネスの成功を左右する、特定の業界のテクノロジや自社開発アプリケーションなど、ビジネスの中核能力に注力できるようになります。

「IT の観点では、BPOS は、IT 意思決定者、つまり CIO や CTO にとって魅力的な製品です。IT 意思決定者は、電子メール、テレフォニー、ドキュメント コラボレーションなど、主要なコラボレーション機能をミッションクリティカルなアプリケーションと見なしますが、このような機能は、実際にビジネスで利益を生む機能ではありません。このような機能は必要ですが、業務に必要な基本的な技術では、他社に負けないような差別化を図ることはできません。それは、インフラストラクチャの要件に過ぎません」と Singh 氏は語っています。

Azure のアプローチ

BPOS は、インフォメーション ワーカーの生産性を維持するのに必要なインフラストラクチャ技術を提供するライセンス パッケージです。ですが、Azure は別の種類の技術です。Azure はプラットフォームです。Singh 氏の定義によれば、このプラットフォーム自体は、アプリケーション スタックの基本的な要素である、オペレーティング システム "Windows Azure"、開発フレームワーク "Windows Azure Platform AppFabric" (旧称、.NET Services for Azure)、およびリレーショナル サービス "SQL Azure Database サービス" で構成されています。Singh 氏は「Azure は、ISV がアプリケーションを構築するための開発プラットフォームである」とも語っています。Azure の OS コンポーネントでは、開発、サービス ホスティング、およびサービス管理を行うための基盤を提供しています。

初期段階にある現在の Azure では、主に ISV や企業開発者を対象としています。マイクロソフトは、常に、開発者にアプリケーションの作成を勧めることによって、マイクロソフトが提供する製品の市場を開拓してきました。アプリケーションによって、顧客はプラットフォームに引き寄せられ、そのプラットフォームを使用するようになります。

このマイクロソフトの伝統に従い、「Azure では非常に ISV を重視している」と Singh 氏は強調しています。さらに、「ISV や社内開発者は、アプリケーションを構築し始めると、多くのアプリケーションがクラウドでの実行に適していることに気付くと思います。最初のうちは、Azure プラットフォームは、主に計算 (アプリケーションの実行に必要なサービス) やストレージ (BLOB (Binary Large Object)、非リレーショナル テーブル、およびキューを格納するための場所) に使用されるでしょう」と語りました。

Azure で構築されたアプリケーションや Azure 向けに構築されたアプリケーションはクラウドでホストされていますが、Azure は、BPOS スイートとは異なり、インフラストラクチャをホストするためのマルチテナント アーキテクチャではありません。Azure モデルを使用すると、マイクロソフトのデータセンターにあるコンピューティング リソースを有料で借りることが可能で、その料金は使用するリソースの量に応じて請求されます。このアプローチにより、ニーズの変化に応じてコンピューティング リソースを増減することが可能になり、さらに重要なことに、このような変化に応じて料金も増減するようになります。

Azure のライセンスには、従量課金制と月額料金に割引が適用される 6 か月契約の 2 種類があります。マイクロソフトでは、Azure の価格とさまざまなサービスの評価に役立つ、比較表を提供しています。

マイクロソフトは、既に基盤となる完全なソフトウェア プラットフォーム (Windows を始めとする、さまざまなサーバー アプリケーションやクライアント アプリケーション) を持っているので、Azure は、競合するインフラストラクチャ サービスのクラウド製品とは一線を画しています。Azure プラットフォームには、フレームワークに加え、Azure アプリケーションが動作し、クラウドやオンプレミスにある他のアプリケーションと連動できるようにする開発機能や接続機能が用意されています。その機能は、マイクロソフトの Software Plus Services (S+S) 戦略の中核にあります。この機能により、オンプレミスのソフトウェアとハードウェアをクラウドのソリューションと統合できるようになります。

Azure と他のサービスのもう 1 つの決定的な違いは、Azure バーチャル マシン (VM) を直接管理しない点です。競合ソリューションでは、管理アクセスに加えて、ある程度の柔軟性と制御機能が提供されますが、構成や修正プログラムの適用など、一般的な管理タスクを行う必要もあります。Azure モデルでは、このような面倒で日常的なタスクが自動化されます。

クラウドに関する考慮事項

セキュリティとコンプライアンスは、クラウド コンピューティングに関する主な懸念事項です。ただし、マイクロソフトは、長年にわたって企業の IT のニーズに対応し、このような懸念事項を考慮してきました。「マイクロソフトが他社と差別化される大きな要素は、データの保管方法です。マイクロソフトは、いつでもデータの保管場所を教えることができます。ユーザーは、データをクラウドに配置することを望みながらも、コンプライアンスに対応する必要があると思っています。また、顧客のデータを損失するというリスクがあります。たとえば、Google では、データの場所を教えることができません。それはアーキテクチャの問題です。マイクロソフトでは、コンプライアンスの要件を現地仕様にすることもできます。たとえば、EU 在住者が、EU 圏外にデータが持ち出されないようにすることを望む場合、マイクロソフトでは、それを保証できます。私たちは、責任を持って、すべてのデータセンターが監査されるようにします」と Singh 氏は述べています。

Singh 氏の主張は非現実的なものではありません。マイクロソフトの Thrive サイトのポッドキャスト インタビュー (英語) では、Dan Holme 氏が自身の見解を述べていました。彼は、Intelliem 社の Training and Consulting のディレクターで、NBC Universal のマイクロソフト テクノロジ コンサルタントを務めています (バンクーバー オリンピックの放送で使用するマイクロソフトのテクノロジ インフラストラクチャを担当しました)。「私は、クラウド サービスを信頼しています。インフラストラクチャを管理する必要がないということは非常に大きなメリットです。クラウドはより経済的で、アプリケーションへのアクセスに関して論理的な制約がある場合に問題を解決できます。使用しているアプリケーションのセキュリティは、これまでよりも簡単に管理できます。マイクロソフトのホスティング サービスに関する私の個人的な見解ですが、マイクロソフトは、外部団体 (特に EU) からの非常に厳しい要件を満たすために、ホスティング サービスのインフラストラクチャとセキュリティ インフラストラクチャを構築する必要がありました。ですから、マイクロソフトのホスティング サービスは、かなり高いセキュリティが確保されていると考えて問題ないと思っています」と述べています。

クラウドのメリット

クラウド サービスとして、BPOS と Azure の両方を、組織の環境ポリシーに含めることができます。Singh 氏は、環境面のメリットを、マイクロソフトが提供するクラウド製品の重要な側面だと考えており、「マイクロソフトのデータ センターは、グリーン IT の標準に合わせて設置しています。二酸化炭素排出量の削減を検討している場合は、その目標を達成する方法として、クラウド コンピューティングが打って付けです」と述べています。

さらに、クラウド サービスによって、新しいビジネスや成長中のビジネスでは、先行投資コストを削減することができます。「新しいビジネスに取り組む場合でも、最初に設備投資を行う必要はありません。テクノロジ インフラストラクチャは、使用量に応じて料金を払う、運用コストにするべきです」と Singh 氏は語っています。

現実的に見て、Holme 氏は "ホスティング サービスによって、ほとんどの組織では、ハードウェアに関するコストの効率が高くなる" という点で Singh 氏と考えが一致しています。

不透明な状況からの脱却

BPOS と Azure はどちらも "クラウド コンピューティング" ですが、その目的や機能の違いは明確です。BPOS では、組織が所有しているサーバーで実行するのと同じインフラストラクチャ ソフトウェアをパッケージ化していますが、ソフトウェアの保守や日常的な操作はクラウドで行われます。Azure には、クラウドでアプリケーションの構築、実行、保存、およびアクセスを行い、このようなアプリケーションをオンプレミスのソリューションと統合するためのプラットフォームが用意されています。クラウド製品は、混乱を引き起こすのではなく、IT 戦略や予算に応じた選択肢や柔軟性を提供する必要があります。BPOS と Azure では異なるニーズに対応しているため、両者を理解すると、IT に関する的確な決定を下せるようになります。

Karen Forster は、Advaiya, Inc の子会社である Platform Vision のバイス プレジデントで、出版業界と科学技術の分野で 20 年以上のキャリアがあります。Karen は、創刊時の『Windows NT Magazine』 (現在の Windows IT Pro)、『SQL Server Magazine』、および関連する Web サイトやオンライン発行物の編集長を務めていました。また、マイクロソフトでは、Windows Server User Assistance チームのディレクターを務めた経験があり、その際には、コロラドからシアトルに移住しました。

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