Windows 秘話

[スタート] メニューのシャットダウン コマンドの進化

Raymond Chen

Windows 95 では、シャットダウン コマンドは [スタート] メニューのメニュー オプションとして配置されており、長年にわたってお笑い芸人の漫才のネタになっていました (実際、シャットダウン コマンドが [スタート] メニューに配置されたのは、ユーザビリティ テストで、ユーザーにコンピューターを終了するように求めたところ、ユーザーが最初に [スタート] ボタンをクリックしたからです。ユーザーがコンピューターを終了するコマンドを探すのに [スタート] ボタンをクリックしたことを受けて、そこに配置すべきだと判断したという話です)。Windows 95 では、[シャットダウン] をクリックすると、シャットダウンのオプション ダイアログ ボックスが表示されました。

Windows XP で [スタート] メニューのデザインを変更したとき、シャットダウン コマンドは [スタート] メニューの最後の項目として維持されましたが、"終了オプション" という名称に変更されました。ですが、基になる動作は変更されませんでした。[終了オプション] をクリックすると、以前と変わらずシャットダウンのオプション ダイアログ ボックスが表示されました。

Windows Vista では、この余分なクリック操作をなくして、1 回のクリック操作でコンピューターを終了できる [電源] ボタンが [スタート] メニューに導入されました。既定の動作が適切でない場合は、フライアウト メニューを使用して、別のシャットダウン オプションを選択することが可能でした。また、既定の動作が好ましくない場合は、コントロール パネルの電源オプション ユーティリティを使用して設定を変更できました。

使用データとユーザーからのフィードバックにより、この簡略化は、意図に反して混乱を引き起こしていたことが判明しました。多くの場合、ユーザーは、ユーザー フレンドリーな大きなボタンを使用して実行できる操作を実行しているにもかかわらず、ボタンではなく、フライアウト メニューを開いて、コンピューターを終了していました。

この結果を踏まえて、Windows 7 では、見た目には表面的な変化ですが、実質的には大きな変更を電源ボタンに加えました。ユーザーが、フライアウト メニューにアクセスしていたのは、電源ボタンをクリックしたときに実行される処理が明確ではなかったことに原因があるので、この変更により、ユーザーがフライアウト メニューを開いて操作を実行するという問題を解決できます。電源ボタンに表示されている操作が必要としているものでなければ、Windows 7 でも、フライアウト メニューを開いて、他の利用可能なオプションを確認できます。

フライアウト メニューには他の利用可能なオプションが表示されます。電源ボタンの操作と重複するものはフライアウト メニューに表示されません。これには、長年にわたるユーザー調査から学んだ教訓が盛り込まれています。その教訓は、「ある操作を行う方法がいくつもあると、どの方法を使用するかについて、ユーザーが混乱する」というものです。たとえば、"オン"、"オフ"、"オフ" という 3 つの状態がある電気のスイッチを想像してみてください。多くの人は、「どうしてオフというスイッチが 2 つあるのでしょうか。この 2 つには何か違いがあるのでしょうか。一方は、少しの間、電気を消す場合に使用して、もう一方は、長い間、電気を消す場合に使用するのでしょうか。この 2 つのボタンには何か違いがあるはずです。そうでなければ、オフというボタンが 2 つある意味がありません」と考えるでしょう。

Windows 7 で [スタート] メニューの電源ボタンをクリックしたときに行われる処理は、[タスク バーと [スタート] メニューのプロパティ] ダイアログ ボックスで変更できます。これは [スタート] メニューの電源ボタンに関する小さな 3 つ目の変更点です。コントロール パネルの [電源オプション] というわかりづらい場所に電源ボタンの構成を配置するのではなく、[スタート] メニューの電源ボタンの構成が [スタート] メニュー自体からアクセスできるようになりました (電源オプションでは、さまざまなシャットダウン関連の操作を実行したときのコンピューターの動作をカスタマイズできます)。コントロール パネルの電源オプションは、コンピューターの電源管理に関する設定を制御する場所なので、コンピューターおたくと同じ思考回路を持っている人であれば、電源オプションは [スタート] メニューの電源ボタンを構成する場所としては論理的な場所です。ただし、多くのユーザーは、そのような思考回路を持ち合わせていないので、[タスク バーと [スタート] メニューのプロパティ] は、ユーザーが電源ボタンを構成する際に辿り着く可能性の高い場所です。

ある意味では、「ユーザーが探す場所に機能を配置する」という Windows 95 で得た教訓をあらためて学んだとも言えます。

Raymond Chen は、自分の Web サイト「The Old New Thing (古くて新しいもの、英語)」および同じタイトルの著書 (Addison-Wesley、2007 年) で、Windows の歴史、Win32 プログラミング、そして電子レンジでポップコーンを作る方法について触れています。

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