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Exchange Queue & A: Exchange Server 2010 SP1 に注目する

今年後半に、Exchange Server 2010 Service Pack 1 (SP1) のリリースが予定されています。ですが、現時点で、既に SP1 に関する多数の質問とコメントが寄せられています。

Henrik Walther

ポートの問題

Q. 今年後半に Exchange Server 2010 SP1 がリリースされたら Exchange Server 2010 の運用環境をアップグレードする予定で、サンドボックスで Exchange Server 2010 SP1 のベータ版をテストしています。CAS アレイには 4 台の Exchange Server 2010 クライアント アクセス サーバーがあります。サードパーティ ベンダーが提供しているハードウェア負荷分散デバイスを使用して、CAS サーバー間で Exchange Server のクライアント トラフィックの負荷を分散しています。RPC クライアント アクセス サービスと Exchange アドレス帳サービスに静的な RPC ポートを割り当てています。

Exchange Server 2010 SP1 の使用を開始してから、Outlook を使用してメールボックスに接続するときに、さまざまな問題が発生しています。また、Outlook からアドレス帳を開けないという問題も発生しました。OWA 使用時には、このような問題が発生することはないようです。このような問題をご存じないでしょうか。また、この問題の原因がわかりましたら、教えてください。

A. Exchange Server 2010 の RTM 版では、レジストリに "TCP/IP Port" という名前の DWORD キーを追加して、RPC クライアント アクセス サービスに静的な RPC ポートを割り当てていました。このキーは、HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Services\MSExchangeRpc\ParametersSystem にあります。また、Exchange アドレス帳サービスに静的な RPC ポートを割り当てるには、Exchange Server 2010 のインストール フォルダー配下の Bin フォルダーにある Microsoft.exchange.addressbook.service.exe.config ファイルを使用していました。

Exchange Server 2010 SP1 では、Exchange アドレス帳サービスに静的ポートを割り当てる方法が少し変更されます。Exchange Server のセットアップで Microsoft.exchange.addressbook.service.exe.config ファイルに登録されているカスタム値が上書きされないようにして、RPC クライアント アクセス サービスの静的な RPC ポートを割り当てる方法と一貫性を持たせるため、Exchange 製品グループでは、この構成オプションをレジストリに移動することにしました。

クライアント アクセス サーバーを Exchange Server 2010 SP1 にアップグレード後に、Microsoft.exchange.addressbook.service.exe.config ファイルを開くと、図 1 に示すとおり

<add key="RpcTcpPort" value="static_port" />

が存在しないことを確認できます。

Exchange Server 2010 SP1 では、MSExchangeAB の静的ポートの割り当てが構成ファイルで行われなくなりました

図 1 Exchange Server 2010 SP1 では、MSExchangeAB の静的ポートの割り当てが構成ファイルで行われなくなりました

Exchange Server 2010 SP1 では、Exchange アドレス帳サービスの静的な RPC ポートは、HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\services\MSExchangeAB をドリル ダウンして割り当てます。ここに、Parameters という名前の新しいキーを作成する必要があります (ParameterSystem という名前ではないことに注意してください)。このキーの下に RpcTcpPort という名前の新しい REG_SZ 文字列値を作成し、図 2 に示すようにサービスに割り当てる PRC ポート番号を指定します (DWORD 値ではないことに注意してください)。

Exchange Server 2010 SP1 では、MSExchangeAB の静的ポートの割り当てがレジストリで行われるようになりました

図 2 Exchange Server 2010 SP1 では、MSExchangeAB の静的ポートの割り当てがレジストリで行われるようになりました

Microsoft.exchange.addressbook.service.exe.config ファイルを使用して Exchange アドレス帳に割り当てた静的な RPC ポートの情報は自動的にレジストリに登録されないことに注意してください。この処理は、Exchange Server 2010 SP1 にアップグレード後、手動で行う必要があります。Outlook からメールボックスに接続する際に発生している原因は、ここにあるような気がします。

メールボックスのインポートとエクスポート

Q. Exchange Server 2007 SP1 では、PST ファイル間でデータをインポートまたはエクスポートするツールとして Import-Mailbox コマンドレットと Export-Mailbox コマンドレットが用意されていました。この 2 つのコマンドレットによって、古き良き ExMerge ツールが廃止されましたが、高まる要求水準に対応する必要がありました。

これらのコマンドレットを使用するには、専用のサーバーまたはワークステーションに 32 ビット バージョンの Exchange Server 2007 SP1 の管理ツールと Outlook 2003 SP2 以降をインストールする必要がありました。Exchange Server 2003 以前に同梱されていた MAPI プロバイダーは、Exchange Server 2007 で廃止されました。

私の知る限りでは、Exchange Server 2010 の RTM 版でも Import-Mailbox コマンドレットと Export-Mailbox コマンドレットが使用されています。Windows PowerShell のリモート サポートにより、Exchange Server 2010 の管理ツールをインストールしていないデスクトップやサーバーで、これらのコマンドレットを実行することが可能になり、操作性は多少向上しましたが、メールボックス サーバー自体には依然として 64 ビット バージョンの Outlook 2010 をインストールする必要があります。また、Exchange Server 2010 では、これらのコマンドレットでエラーが発生しやすくなったように思われます。

Exchange Server 2010 SP1 では、PST ファイル間でメールボックスのデータをインポートおよびエクスポートする方法は改善されていますか。

A. ご質問に対して手短にお答えすると「改善されています」ということになります。この分野に関しては、多くの変更が施されました。詳しく解説するとしても、答えは同じです。Exchange Server 2010 SP1 では、MailboxImportRequest および MailboxExportRequest という 2 つの新しいコマンドレットが、Import-Mailbox コマンドレットと Export-Mailbox コマンドレットの後継として導入されました。

また、Exchange 製品グループでは、Outlook 2010 の MAPI プロバイダーの要件を外すべきという決断も下しました。Exchange Server 2010 には独自の MAPI プロバイダーがありましたが、2 つの新しいコマンドレットでは、Exchange Mailbox Replication Service (MRS) を利用します。New-MoveRequest コマンドレットを使用してメールボックスを移動するときと同じように非同期のプロセスでデータをインポートまたはエクスポートできます (図 3 参照)。

PST ファイルを Exchange Server 2010 SP1 のメールボックスにインポートする場合のコマンドは、次のようになります。

New-MailboxImportRequest-Mailbox HEW -FilePath\\EX02\PSTFileShare\HEW.pst

PST ファイルから Exchange Server 2010 SP1 のメールボックスにデータをインポートする

図 3 PST ファイルから Exchange Server 2010 SP1 のメールボックスにデータをインポートする

コマンドレットを実行するサーバーのローカル フォルダーではなく、UNC をポイントしていることに注意してください。この変更には、いくつかのメリットがあります。

回答のアーカイブ

Q. Exchange Server 2010 の RTM 版では、PST ファイルを Exchange Server 2010 メールボックスのオンライン アーカイブに直接インポートできませんでした。まず、データをプライマリ メールボックスにインポートし、そこからコンテンツをオンライン アーカイブにドラッグ アンド ドロップする (または、アイテム保持ポリシーを使用する) 必要がありました。

この動作が Exchange Server 2010 SP1 で変更されるかどうかご存じですか。

A. 1 つ前のご質問への回答で説明したように、PST ファイル間でメールボックス データをインポートおよびエクスポートする処理については、多くの変更が施されています。オンライン アーカイブでのデータのインポートとエクスポートに関しても、同様に多くの変更が施されています。

同じコマンドレット (MailboxImportRequest と MailboxExportRequest) を使用して、オンライン アーカイブのデータをインポートおよびエクスポートすることができます (図 4 参照)。1 つ前の回答で紹介したコマンドの代わりに、次のようなコマンドを実行すると、オンライン アーカイブにデータを直接インポートできます。

New-MailboxImportRequest -Mailbox HEW –IsArchive-FilePath\\EX02\PSTFileShare\HEW.pst

PST ファイルのデータを Exchange Server 2010 SP1 オンライン アーカイブにインポートする

図 4 PST ファイルのデータを Exchange Server 2010 SP1 オンライン アーカイブにインポートする

強制的な再起動を回避する

Q. Exchange Server 2010 の RTM 版を使用すると、Exchange Server 2010 メールボックス データベース間または Exchange Server 2007 SP2 メールボックス データベースと Exchange Server 2010 RTM メールボックス データベース間でメールボックスを移動中でも、ユーザーはメールボックスを使用できます。図 5 に示すように、メールボックスを移動すると、移動完了時に、ユーザー側では、最近行われた変更を反映するために Outlook を終了して再起動することを求めるメッセージが表示されます。

Exchange Server 2010 から要求される Outlook の再起動

図 5 Exchange Server 2010 から要求される Outlook の再起動

Exchange Server 2010 SP1 で、この分野に対して変更が施されたかどうか、ご存じですか。図 5 のダイアログ ボックスは、エンド ユーザーにとっていささか迷惑なものなので、この手順をなくしていただけると、ありがたいと思っています。

A. 良い質問ですね。この分野に対しても変更は施されています。Exchange Server 2010 SP1 では、2 つの Exchange Server 2010 SP1 データベース間でメールボックスを移動しても、ユーザーに Outlook を再起動することを求めるメッセージが表示されることはありません。ただし、次の場合は例外となります。

  • 2 つのメールボックス データベースの RpcClientAccessServer プロパティが異なる場合 (CAS アレイを使用していない場合、このプロパティは異なります)
  • (CAS アレイが構成されている) Active Directory サイト 1 のメールボックス データベースから (サイト 1 とは別の CAS アレイが構成されている) Active Directory サイト 2 のメールボックス データベースにメールボックスを移動している場合
  • メールボックスの名前付きプロパティが、New-MoveRequest コマンドレットの実行中に DoNotPreserveMappingSignature パラメーターを使用してリセットされた場合

Exchange Server 2003 または Exchange Server 2007 と Exchange Server 2010 SP1 の間でメールボックスを移動した場合は、Outlook を再起動する必要があります。

コントロールを維持する

Q. Exchange Server 2003 から Exchange Server 2010 の RTM 版にアップグレードしたばかりです。今のところ、このバージョンの機能を気に入っています。特に、新しく導入された Exchange コントロール パネル (ECP) がお気に入りです。ただし、ECP で 1 つ問題が発生しています。通常のメールボックスが有効なアカウント以外に、IT 担当者は管理者アカウントを持っています。ですが、社内で実施している IT ポリシーでは、メールボックスが有効な管理者アカウントを使用することが許可されていません。テストを行ったところ、ECP にアクセスするには、メールボックスが有効なアカウントを使用してログインしなければならないことが判明しました。

この制限事項を回避する方法をご存じありませんか。多くの Exchange Server 2010 関連の管理タスクには、ECP を使用したいと考えています。

A. Exchange Server 2010 の開発初期段階で、開発チームは、ECP にアクセスするアカウントには Exchange Server 2010 のメールボックスが必要だという方針を固めました。その主な理由は、メールボックスが有効なアカウントと有効でないアカウントの両方が ECP にアクセスできるシナリオをサポートするためには膨大な開発労力が必要だったからです。このアクセスを可能にするには、異なるコード パスが必要になるため、開発が煩雑になり、テストの費用がかさむことになります。そこで、Exchange 製品グループは、この制限を設けて、GUI で提供する機能に集中することにしました。ですから、Exchange Server 2010 の RTM 版では、ECP にアクセスするユーザー アカウントと管理アカウントでは、アカウントの種類を問わず、メールボックスが有効になっている必要があります。

おそらくご存じだと思いますが、Exchange 製品グループでは、コミュニティとユーザーから寄せられるフィードバックを真摯に受け止めています。実際、多くの機能変更はフィードバックに基づいて行われています。Exchange Server 2010 RTM のリリース以降、Exchange 製品グループでは、多くの企業が同じような IT ポリシーを施行していることを学習しました。今年の後半に Exchange Server 2010 SP1 がリリースされたら、この要件が不要になることをお伝えできてうれしく思っています。

Exchange Server 2010 SP1 では、メールボックスが有効になっているかどうかに関係なく、任意の AD ユーザーアカウントを使用して ECP (https://mailcontoso.com/ecp) に直接ログオンできるようになります (図 6 参照)。

電子メールが有効になっている AD ユーザー アカウントと有効になっていない AD ユーザー アカウントを使用して ECP を開く

図 6 電子メールが有効になっている AD ユーザー アカウントと有効になっていない AD ユーザー アカウントを使用して ECP を開く

修復の韻と理由

Q. 私の組織では Exchange Server 2007 から Exchange Server 2010 にアップグレードしました。ときどき、メールボックス データベースでオフライン修復を実行する必要があります。以前のバージョンの Exchange Server と同様に、メールボックス データベースを修復した後に、ISInteg を実行する必要があるかどうかを知りたいと思っています。

ときどき、Exchange Server 2010 のメールボックス データベースのメールボックスの不整合を検出して修復する必要がある場合はどうしたら良いでしょうか。

A. Exchange Server 2010 では、Exchange 製品グループは ISInteg ツールを廃止することにしました。そのため、Exchange Server 2010 SP1 では、New-MailboxRepairRequest という名前の新しいコマンドレットが導入されました。このコマンドレットが ISInteg ツールの後継ツールになります。このコマンドレットは、メールボックスが配置されているデータベースがマウントされているときに非同期で 1 つ以上のメールボックスに対して実行できます。ただし、このコマンドレットを使用して修復するメールボックスでは、ユーザーによる操作が中断されることに注意してください。

フォルダー ビューの不整合を検出して修復するには、次のようなコマンドを使用します。

New-MailboxRepairRequest -Mailbox HEW -CorruptionTypeFolderView

メールボックスに対してメールボックスを修復する新しいコマンドを実行する

図 7 メールボックスに対してメールボックスを修復する新しいコマンドを実行する

このコマンドレットは、メールボックス データベースに対して実行することもできます。ただし、修復処理が完了するまで、そのデータベースにあるすべてのメールボックスへのアクセスは中断されます。

Email Henrik Walther

Henrik Walther は、マイクロソフト認定資格を持つ専門家です。IT ビジネスの分野で 15 年以上の経験がある、Exchange Server 2007 および Exchange Server MVP です。Timengo Consulting (デンマークを拠点とするマイクロソフト認定ゴールド パートナー) でテクノロジ アーキテクトを、Biblioso Corp. (ドキュメント管理とローカライズ サービスを専門とする米国の企業) でテクニカル ライターを務めています。連絡先は、v-henwal@microsoft.com (英語のみ) です。

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