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仮想化: 仮想化に備える

インフラストラクチャに仮想マシンを展開する準備を整えるには、下調べや歩き回っての情報収集がいくらか必要になりますが、やるだけの価値はあります。

Brian Marranzini

仮想化は、IT 投資を最大限に活用するのに役立つ有益なテクノロジです。費用対効果は、容易に算出して正当化することができます。また、仮想化は、バックアップ、復元、移植性、テスト、ロールバックなどの機能を提供することで、管理と可用性に関する課題を解決するのにも役立ちます。

変更を適用する前に仮想マシン (VM) のスナップショットを作成し、変更の適用後に問題が発生した場合は変更をロールバックできます。また、Hyper-V 対応のシステムで VM をエクスポートまたはインポートするだけで、異なるハードウェア間で VM をバックアップおよび復元できます。仮想化ホストをクラスター化することで、ハードウェアの冗長性を確保できます。

ただし、VM の展開には、個別の保守作業と適切なシステム評価が必要になります。適切なシステム評価を実施することは VM を展開するうえで最も重要な作業です。さらに、仮想化されたアプリケーションでは、物理世界では必要ない管理層と監視層が必要になります。

この記事では、仮想環境を展開するときに直面する上記の課題をはじめとする課題について説明します (詳細については、構築、アーキテクチャ、および展開に関するガイドを参照してください)。また、リスクを最小限に抑えながら、仮想化を最大限に活用するのに役立つ仮想化と Hyper-V を使用するための準備に関するベスト プラクティスも紹介します。

インスタント インフラストラクチャ

仮想化はパラダイム シフトを引き起こしました。以前、インフラストラクチャの構築 (注文、ラック配置、電源投入、ネットワーク接続、構成) には、数週間から数か月かかっていました。現在は、System Center Virtual Machine Manager (VMM) でコンピューターを右クリックし、[テンプレート]、[展開] の順にクリックするだけで、そのすべての作業が完了します。

この時点で、基本的な処理は実質的にすべて完了しています。VMM と共に SAN ベースのコピー テクノロジを使用している場合は、テンプレートを作成すると、特定の要件に基づいて VM が sysprep され、ドメインに参加し、30 分以内に実行の準備が整います。この構成では、容量が最も大きな仮想化ホストが判断され、そのホストに VM が配置されます。単純なように思われますが、仮想化は決して追加の設定なしですぐに使用できるお手軽なものではありません。

ハードウェアの説明に入る前に、質問があります。皆さんはライセンスをお持ちですか。ライセンスについて詳しく説明することは、この記事で扱う範囲を超えていますが、基本的な概要を説明します。ライセンスに関するマイクロソフトの正式な方針については、マイクロソフト製品使用権を参照してください。

Windows Server 2008 Standard Edition では、1 つのライセンスで 1 つの VM を実行できます。Enterprise Edition のライセンスでは、1 つのライセンスで最大 4 つの VM を実行できます。Datacenter Edition では、実行できる VM の数に制限はありません。また、Datacenter Edition のライセンスは (コア プロセッサではなく) 物理プロセッサ単位で販売されます。

ハードウェアと共に Windows Server のライセンスを購入し、OEM 版を入手した場合は、そのハードウェアから OS を移行することはできません。つまり、OS は、バンドルされたハードウェアと分離できません。ボリューム ライセンス販売代理店またはラージ アカウント リセラーから Windows Server のライセンスを購入した場合は、90 日に 1 回またはハードウェアで障害が発生したときにライセンスを移行できます。

つまり、90 日以内に VM をクラスター化したり、移行したりする場合は、90 日以内に実行する必要がある VM の最大数分だけ各ホストにライセンスを付与できます。また、Datacenter Edition を使用して、すべてのホストにライセンスを付与することもできます。

物理プロセッサ 1 基につき 3 ~ 4 個以上の VM を実行している場合は、Datacenter Edition を入手するのが Windows を購入する最も安価な方法です。また、Windows ソフトウェア アシュアランスの導入を前向きに検討することもお勧めします。次期バージョンの Windows がリリースされたときに、1 つのインスタンスをインストールし、そのコピーをクラスター内で移行する場合は、ホストごとにコピーが 1 つ必要です。

System Center の製品では、Enterprise バージョンと Datacenter Suite バージョンが提供されているので、無制限の数の VM で System Center 製品を使用する権利を確保できます。1 つのホストに存在する VM の数を、1 つの VM あたり必要な System Center Management Suite のライセンス数で乗算し、ホストにかかるコストと System Center Management Suite にかかるコストをそれぞれ加算した値を比較します。

スイートがライセンスを確保するための最も安価な方法になる境界線は、ツールまたは VM の数が 3 つ前後の場合です。ほとんどのアプリケーションには、ライセンス モビリティ権があり、最大 2 つのデータセンターを含むことができるファーム内での移行が許可されています。

仮想環境への変換

VMM を使用して物理コンピューターを VM に変換したり、新しい環境を構築している場合は、System Center Operations Manager または無償の Microsoft Assessment and Planning (MAP) Toolkit を使用してこのような変換に対処できます。これらのツールは、仮想化の候補となるコンピューターのパフォーマンス情報を取得して確認するのに役立ちます。

では、ハードウェアについて考えてみましょう。仮想化に使用するハードウェアでは、ピーク時に予想される累積ワークロードを処理できる必要があります。このため、ピーク時の 80% の平均使用率でデュアル コア 2 Ghz プロセッサを使用するワークロードと、ピーク時の 50% の平均使用率で同じプロセッサを使用するワークロードがある場合、少なくとも 150% の使用率に対応できるシステムを用意する必要があります。

また、デュアル コア 3 Ghz プロセッサを使用して、物理ホストを実行するためにいくらかのオーバーヘッド (この場合は、おおよそ 10%) を許容することもできます。ただし、ほとんどのワークロードは、CPU の平均使用率が非常に低い状態で実行されるので、通常、プロセッサが仮想化の制限要因になることはありません。

ワークロードを仮想化する際に障害となるのは、ディスク I/O、RAM、ネットワーク I/O、CPU です (問題の大きなものから順に挙げています)。CPU 速度の向上とコア数の増加は、今もなお、容量の増加というムーアの法則を満たしているか、上回っています。また、RAM は容量が増加しているため、依然として低価格化が進んでいます。

ただし、ディスク ボリュームは、長い時間をかけて非常に大きくなりました。ディスク I/O のコストは、相変わらず、かなり高くつきます。最大容量を確保しようとすると、スピンドルを失い、全体的な速度が低下するので、ワークロードのディスク I/O プロファイルを注意深く確認してください。

また、I/O の種類を把握して考慮し、ワークロードの記憶域を最適化する必要もあります。仮想デスクトップ インフラストラクチャ (VDI) で、VM を保存済みの状態で配置したり、ユーザーが接続していないときに無効にすることを計画している場合は、出勤時に次から次へとコンピューターが起動されることを考慮します。

一般に、物理スピンドルの数は多いほど良いとされています。クラスターに関しては、最適な書き込みのパフォーマンスが得られるように SAN ベースのディスクを最適化すること、専用の通信チャネル、および仮想化ワークロードのスピンドルに注目してください。また、マルチ パスの使用も役立つ可能性があります。それから、(パーティションではなく) 物理ディスクを切り離してセグメント化し、大量の I/O が発生するワークロードが、ほとんど I/O が発生しないワークロードに影響を及ぼさないようにします。

VM ハード ドライブの構成方法に関する問題もあります。ゲスト VM では、容量可変の拡張仮想ハード ドライブ (VHD)、容量固定の VHD、パススルー、またはネイティブ iSCSI を直接選択できます。これらの構成はすべてサポートされています。

基本の推奨事項は非常に単純で、SAN 固有の機能によるディスクへの直接アクセスがどうしても必要でない限り、VHD を使用するというものです。これには、SAN ベースのバックアップ、アプリケーション対応のバックアップ、iSCSI によるゲスト間クラスタリングなどが含まれます。

容量固定の VHD は、容量可変の拡張 VHD よりもパフォーマンスが優れています。実際、容量固定の VHD のパフォーマンスは、ネイティブのディスク パフォーマンスに引けを取りません。また、構成を組み合わせることもできます。繰り返しになりますが、最終的なソリューションはワークロードに基づいたものになります。詳細については、VHD のパフォーマンスに関するホワイト ペーパー (英語) を参照してください。

重要な点がもう 1 つあります。それは、容量可変の拡張 VHD をホストで定期的ではないにしても、それに近い形で最適化する必要があることです。最適化の頻度は、ドライブ上に存在するホスト数とホストが拡張される頻度によって異なります。

ディスクの記憶域に関する最後の検討事項は、スナップショットの記憶域要件について妥当な数値を見積もることです。スナップショットを使用する頻度と使用するスナップショットの数に応じて、おおよそ 20 ~ 30% の追加オーバーヘッドが発生することを計画します。

最大メモリ

必要な RAM の量を算出するのは、比較的簡単です。合算した全ワークロードの累積的な RAM の量を検討し、ホスト用に 1 GB、1 つのゲストにつき 20 ~ 30 MB を追加で加算します。

Hyper-V SP1 では、現在使用していないすべての RAM を VM からホストに返すことができる、動的メモリ割り当てが導入される予定です。SP1 がインストールされていなくても、ワークロードで使用する RAM の量を調査している場合は、最適化を行う余地は十分にあります。

また、仮想化を使用すると、実際のメモリ チップのサイズではなく、ニーズに基づいて、ワークロードで使用可能な RAM の量を調整できます。たとえば、600 MB の RAM を割り当てた VM を作成できます。通常、この作業は、物理 RAM チップのサイズと対になっているチャネルによって制限されます。唯一の制限事項は、RAM の量を偶数にする必要があることです。

System Center Operations Manager (SCOM) を使用すると、ゲスト VM のパフォーマンスの履歴情報を確認し、必要に応じて RAM の量を調整できます。Windows Server 2008 R2 SP1 の Hyper-V の容量可変の拡張メモリによって、このレベルの監視と管理を実行する必要性が減少します。それまでは、各 VM で、この容量可変メモリの情報を確認して、大幅な統合を実現できます。

ネットワーク I/O に関する最も大きな考慮事項は、ワークロードに必要なポートとスループットを確保することです。VM 内部のスイッチでは高いスループットがサポートされますが、それは、統合ネットワーク インターフェイス コントローラー (NIC) を使用して VM のハードウェア プロファイルを構成している場合に限られます。従来の NIC は 100 MB に制限されます。最初の展開で従来の NIC を使用した場合は、NIC を削除して再構成できます。ゲスト OS で統合 NIC がサポートされている場合は、統合 NIC を使用します。

iSCSI を使用してクラスター化されているホスト コンピューターの場合、負荷分散構成で Microsoft Multipath IO を使用して 2 つの NIC を iSCSI 専用にします。iSCSI の負荷を処理しているときに、同じ NIC をハートビート通信に使用できます。ホスト管理用にもう 1 つの NIC を追加すると、残りはすべて VM 用になります。

通常、マザーボードに 2 つの NIC が搭載されている場合は、少なくとも 4 ポートの NIC を追加すると役立ちます。OS の展開や使用率の高いファイル サーバーなど、ネットワークを集中的に使用する VM ワークロードを実行している場合は、より多くのポートがある NIC を追加することをお勧めします。NIC はすべて 10 GB である必要があります。

バックアップの向上

バックアップに関しては、System Center Data Protection Manager (DPM) に Hyper-V 対応の優れたバックアップ機能が備わっています。また、アプリケーション固有のバックアップ機能も用意されています。VM 全体のバックアップとアプリケーション対応のバックアップには、それぞれ利点と欠点があります。DPM 2010 には、VHD をマウントし、VM のバックアップから直接個々のファイルを回復する新機能があります。

アプリケーションのニーズを個別に評価します。SharePoint はこの好例です。たとえば、VM のバックアップのみを使用してドキュメント ライブラリからドキュメントを回復する場合、SQL Server、フロントエンドの Web サーバー、およびドメイン コントローラーをプライベート ネットワークに復元する必要があります。その後、ライブラリを参照して、ファイルを見つけます。SharePoint 対応のアプリケーションのバックアップがあれば、ドキュメント ライブラリを別のサイトに復元して、ファイルを取得できます。

SCOM がある場合は、パフォーマンスとリソースの最適化 (PRO) を実装することをお勧めします。PRO を使用すると、ホストと個々のアプリケーション層の両方のワークロードを SCOM で監視できます。また、一般的な問題を自動的に修正することもできます。たとえば、CPU のファンが十分な速度で回転していないときや、ワークロードの要件がホストの容量を上回る場合に、当該ホストから VM を移行して問題を自動的に修正できます。詳細については、SCOM および VMM の統合に関するガイドを参照してください。

ドメイン コントローラーを仮想化する際にも、いくつかの課題について考慮する必要があります。基本的に、ドメイン コントローラーのスナップショットやバックアップは復元することは望まないでしょう。ドメイン コントローラーの仮想化の詳細については、「仮想ホスト環境で Active Directory ドメイン コントローラをホストする場合の考慮事項」を参照してください。

仮想化と Hyper-V は、リソースを最大限に活用し、管理を簡素化して、IT への投資を節約できる強力なテクノロジです。仮想インフラストラクチャを展開する前に下調べをしてください。そうすると、将来直面する問題を回避できます。

Brian Marranzini

Brian Marranzini は、仮想化、Windows サーバー、Windows クライアント、インフラストラクチャ、およびセキュリティを専門としているコア インフラストラクチャ テクノロジ アーキテクトです。フリーランスのライターとしても活躍しており、技術雑誌に掲載される記事の執筆だけでなく、Web キャストの配信や、ハンズオン ラボで使用する社内および顧客向けのトレーニング資料も作成しています。また、製品発売の主要イベントで多くのセッションを担当し、説明を行った経験があります。

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