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ビジネス インテリジェンス: 組み込みの BI

ビジネス インテリジェンスのツールは、ビジネスで適切な判断を下すうえで役立ちますが、普段使っているアプリケーションにも多くの BI 機能が備わっています。

Brien Posey

ビジネス インテリジェンス (BI) は、ビジネス シーンで使われる流行語になっていますが、この言葉が意味することは人によって異なります。情報に基づいてビジネス上の判断を下すのに役立つように既存のデータを整理して分析するプロセスというのは、わかりやすい BI の定義の 1 つです。

これを念頭に置くと、長い間、真の BI は、非現実的な考えでした。最近まで、一般ユーザーが、複数のソースからデータを取得して、意味のある形でデータを分析するのは、ほぼ不可能でした。と言うのも、従来、真の BI を実現するには、精巧なダッシュボード ビューでデータを表示するために複雑なクエリを使用する高価なアプリケーションが必要だったからです。

ただし、この数年間、マイクロソフトは、BI をメインストリームに押し上げるために取り組んできました。実際、最新バージョンの SQL Server、SharePoint、および Microsoft Office には、多数の BI 機能が組み込まれています。Microsoft Excel は、ほぼすべてのユーザーのデスクトップで使用されており、簡単にデータを分析できる主要ツールの 1 つになっています。

1 つの信頼できるバージョン

BI がデータ分析にほかならないなら、BI ソフトウェアで提供される情報の信頼性は、分析したデータの信頼性と同等であるのは当然です。残念ながら、多くの組織は、一貫性のないデータという問題を抱えています。また、この問題を把握していないこともあります。

多くの企業では、複数のデータベースを使用し、各データベースに顧客の連絡先情報を個別に格納しています。また、各データベースに格納されている情報には無効なものが含まれていることもあります。冗長なデータが複数の (複製されていない) スタンドアロンの場所に存在する場合、最終的に、データ間で不整合が生じる可能性は高いでしょう。このような不整合は、特定のデータベースに限られるわけではなく、組織のデータ ソースの至るところに整合性のないデータが散在するおそれがあります。

では、この問題をどのように管理したら良いでしょうか。組織が BI を信頼して使えるようになるには、データの正確さを確保する必要があります。最適な方法は、"1 つの信頼できるバージョン" を用意することです。つまり、すべての BI 分析には、信頼できる特定のデータ ソースを使用するのが一番です。

これを実現する方法の 1 つは、SQL Server 2008 R2 の Master Data Services です。このサービスを使用すると、特定のデータをマスター データとして指定できます。通常、マスター データは、複数のデータ ソースに格納されていた比較的静的なデータで構成されます。同じデータのコピーを複数のデータベースで維持するのではなく、データベースを使用するアプリケーションで、1 つのマスター ソースからデータを取得するようにします。たとえば、顧客の連絡先情報を使用するアプリケーションがある場合、各データベースに顧客の連絡先情報を個別に格納するのではなく、信頼できるマスター ソースから顧客の連絡先情報を取得するようにアプリケーションを構成します。

Excel による BI

多くのビジネス ユーザーは、既に Excel をデータ分析の主要ツールとして使用しています。最初は、Excel を使用するとデータの整合性を確保する流れに逆行するように思うかもしれません。組織のデータが何百もの Excel ブックに散在している場合、データの不整合が発生している可能性が高いでしょう。

ですが、Excel のデータを SQL Server のデータベースにインポートするメカニズムがあります。このとき、必要に応じて、Excel に格納されていたデータをマスター データとして扱えるようにすることが可能です。また、SQL Server のデータを Excel にインポートすることも可能です。このように、ユーザーは、特定の信頼できるソースに格納されている最新データを分析することができます。

以前は、Excel ブックを SQL Server のデータベースに接続するのは、たいへんな作業でした。このためには、データベースを開いて、必要なデータを SQL Server から取得して、Excel ブックにデータを設定する Visual Basic アプリケーションの開発が必要でした。マイクロソフトのサポート技術情報には、このようなアプリケーションのサンプルがいくつか用意されています。現在では、コードを記述することなく SQL Server のデータを Excel にインポートすることができます。Excel 2010 には、 SQL Server データベースに接続するメカニズムが組み込みで用意されています (図 1 参照)。


図 1 Excel 2010 には SQL Server のデータをインポートする機能が組み込まれている

SQL Server のデータを Excel 2010 にインポートするために必要な情報は、SQL Server の名前、SQL Server インスタンスに接続するためのユーザー名とパスワード (必要な場合のみ) です。また、SQL Server への適切な接続を確立するには、必要なデータを含むデータベースの名前とデータが格納されているテーブルの名前も必要になります。また、Excel ブックのデータに SQL Server の最新データが自動的に反映されるようにするためのチェック ボックスがあります。このチェック ボックスを使用して、Excel ブックのデータが静的なコピーになることを回避できます。

ただし、ビジネス ユーザーが、Excel と SQL Server の接続を自分で設定できないという問題が発生します。ビジネス ユーザーには SQL Server のデータに直接接続する Excel ブックを作成する知識やセキュリティ資格情報がないかもしれませんが、最終目標は BI の提供であることを忘れないでください。ビジネス ユーザーは、この接続が必要なので、最善の対策は、ユーザーが長期のデータ分析に使用できる Excel ブックやテンプレートを作成することです。

当然、Excel には BI としての限界があります。Excel のデータには 100 万行という制限がありますが、データベースには、それよりも多くのデータが格納されていることがあります。さいわい、マイクロソフトでは、Excel の BI 機能を拡張する無料のアドオンを提供しています。また、PowerPivot を使用すると、多数の異なるデータ ソースに格納されている何億行ものデータを Excel で分析できます。

Excel の BI ツール

データの整合性を確保する準備は整ったと思うので、データを分析して、真の BI を提供するいくつかの Excel ツールについて見てみましょう。

スパークライン

Excel の BI 機能で有名なのは、スパークラインです。これは、1 つのセルに収まるグラフです。スパークラインは、多くの重要な情報を小さな領域で伝達できるので便利です (図 2 参照)。

図 2 は、さまざまな地域の現在の売上高を示す Excel ブックです。この状態では、売上高からは、あまり情報が伝達されません。ですが、売上高の右隣にあるスパークリングを参照してください。スパークラインには、現在の売上傾向が反映されるので、今月の売上高と先月の売上高の比較結果が一目でわかります。


図 2 スパークラインは 1 つのセルに収まるグラフです

スパークラインは、セルをクリックして作成できます。[挿入] タブで作成するスパークラインの種類 (折れ線、縦棒、勝敗) をクリックします。その後、使用するデータの範囲を選択すると、スパークラインが自動的に作成されます。

スライサー

ピボットテーブルは、Excel データの分析で常に主要なメカニズムとして使用されてきました。ピボットテーブルは便利な機能ですが、その概念を理解するのが難しいと感じているユーザーが存在していたのも事実です。ありがたいことに、マイクロソフトでは、ピボットテーブルのデータを追跡しやすくすることを目的に設計したスライサーという新しい BI ツールを導入しました。基本的に、スライサーは、ピボットテーブルをポイントしてクリックするインターフェイスです。

Tailspin Toys にだれが何を販売しているかを特定する方法はいくつかありますが、スライサーほど簡単で有益なものはありません (図 3 参照)。売上データに基づいた 1 つのピボットテーブルと 2 つのスライサーがあります。スライサーは、ピボットテーブルを選択して、[挿入] タブで [スライサー] オプションを選択して作成しました。1 つのスライサーは Customer データに基づいたもので、もう 1 つのスライサーは Sold By データに基づいています。


図 3 スライサーを使用するとビジネス データが分析しやすくなる

Customer スライサーで Tailspin Toys をクリックすると、Jane Doe と John Doe が Tailspin Toys に対して売上を上げていることが一目でわかります。売上を上げていない人 (この場合は Bob Smith) は、灰色で表示されます。ピボットテーブルには Jane Doe の売上が表示されていますが、Jane Doe と John Doe を選択すると、両者の売上の合計を確認できます。

また、Bob の名前を選択し、すべての顧客の名前を選択すると、Bob の売上の合計を確認することもできます (図 4 参照)。この場合、Bob は、Tailspin Toys に対して売上を上げていないので Tailspin Toys は灰色で表示されます。


図 4 スライサーでは、いくつもの条件に基づいてデータを並べ替えられる

ご覧のとおり、スライサーは、重要なビジネス情報を一目で提供する強力な並べ替えツールです。一番のお勧めポイントは、図 3図 4 のようなスライサーを設定するのに 10 秒程度しかかからないにもかかわらず、ビジネス データを有意義な方法で操作する方法が提供されることです。

正確で整合性の取れたデータを維持して、そのデータを適切に分析することは、効果的な BI を実現するうえで不可欠です。ですが、皆さんにとって最も便利な BI 分析ツールは、既に使用されているものかもしれません。

Brien Posey

Brien Posey は、MVP であり、数千件の記事と数十冊の書籍を執筆した実績のあるフリーランスのテクニカル ライターです。Posey の Web サイトのアドレスは brienposey.com (英語) です。

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