Microsoft Lync Server 2010 の展開ガイド
マイクロソフトの統合コミュニケーション プラットフォームを使用すると、インフォメーション ワーカーは、同じビルにいるユーザーだけでなく世界中のユーザーといつでも連絡を取れるようになります。
Joshua Hoffman
コミュニケーションは、大きく変化しました。ビジネスが機敏性と応答性を高めるために再編したことにより、インフォメーション ワーカーは、同僚、顧客、およびパートナーといつでも連絡が取れる新しい方法が必要になりました。電話による通信や単純な電子メールのような従来のコミュニケーション ツールは、現在のインフォメーション ワーカーが、迅速かつシームレスに連絡を取るには不十分です。
Microsoft Lync Server 2010 は、コミュニケーションについて、より現代的なアプローチを推進しています。Lync を使用すると、場所やデバイスを問わず、さまざまな方法で連絡を取ることができます。Lync では、1 つのインターフェイスから、さまざまなコミュニケーション方法を利用できるにもかかわらず、統合プラットフォームとして展開し、1 つの管理インフラストラクチャで管理することができます。
統合されているという Lync の性質は、コストを削減して、迅速な導入を促進するのに役立ちます。Lync は、広範囲において相互運用性があるので、組織の既存の IT インフラストラクチャに適合して、簡単に展開および移行できます。この記事では、Lync の展開を計画するプロセスについて説明し、計画に着手するのに役立つツールとニーズに最適な展開アプローチを採用する方法を紹介します (Microsoft Lync Server 2010 の詳細については、「Microsoft Lync Server 2010 製品ガイド」を参照してください)。
展開プロセスを計画する
Lync Server を基盤として統合コミュニケーション (UC) の展開を計画するときには、考慮しなければならない要素が多数あります。展開する機能および Lync が既存のインフラストラクチャやトポロジとどのように統合されるのかを考慮する必要があります。さいわい、Lync Server 2010 には、Microsoft Lync Server 2010 計画ツールおよびトポロジ ビルダーという計画プロセスの簡略化に役立つ 2 つの便利なツールが用意されています。
計画ツールは、組織、有効にする Lync Server の機能、処理能力の計画のニーズに関する質問に答えるウィザードです。計画ツールでは、回答に基づいてお勧めの展開トポロジが提示されます。また、計画とインストールに役立つ複数の形式の出力が提供されます。
トポロジ ビルダーは、Lync Server 2010 のインストール コンポーネントです (図 1 参照)。このツールを使用すると、計画したトポロジを作成、調整、および公開できます。また、実際にサーバーのインストールを開始する前にトポロジを評価します。各サーバーに Lync Server をインストールするときには、インストール プロセスの一環として、サーバーでは公開されているトポロジを読み取ります。その後、インストール プログラムでは、トポロジで指示されているとおりにサーバーを展開します。
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図 1 Lync Server 2010 のセットアップにはトポロジ ビルダーのインストールが含まれる
Lync Server 2010 計画ツール
Lync Server 2010 計画ツールでは、Lync Server のガイドラインとベスト プラクティスに加えて、インフラストラクチャ、必要な機能、処理能力の計画に関する質問の回答に基づいて、トポロジを生成します。このツールでは、回答に基づいて、いくつかの代替展開ビューを提供します。また、すべてのサイトのグローバル ビュー (中央サイトとブランチ サイト) と詳細ビュー (各サイトで実行されているサーバーとコンポーネントが表示されます) の両方が表示されます。
計画ツールを実行すると、特定の展開計画がコミットされたり、何か処理が開始されたりすることはありません。実際、計画ツールは、計画が確定する前に実行しても、計画プロセスで考慮する必要のある質問の種類を理解することができるので便利です。
計画ツールは、複数回実行し、異なる回答を選択または入力して、結果を比較できます。設計には、ほぼ問題ないが、何か変更を加える必要があるかもしれないという場合には、再度、計画ツールを使用して、設計を読み込み、変更を加えることができます。計画ツールを 1 回実行するのにかかる時間は約 15 分です。設計が問題ない状態になったら、[Export to Topology Builder] (トポロジ ビルダーにエクスポート) オプションを使用できます。このオプションを使用すると、計画したトポロジを XML ファイルにエクスポートし、この XML ファイルをトポロジ ビルダーに読み込むことができます。
Lync Server 2010 トポロジ ビルダー
トポロジ ビルダーでは、計画ツールで生成した XML ファイルを読み込んで、トポロジを表示します。その後、トポロジ ビルダーを使用して、IP アドレスや完全修飾ドメイン名など、最終調整を行えます。
調整が終わったら、トポロジ ビルダーを使用してトポロジを評価します。有効と評価されたら、トポロジを公開できます。トポロジを公開すると、Lync Server によって、トポロジは中央管理ストアに配置されます。中央管理ストアが作成されていない場合、有効なトポロジが公開されると、Lync によって自動的に中央管理ストアが作成されます。環境のすべてのサーバーに Lync Server をインストールするときには、各サーバーは、中央管理ストアにあるトポロジを読み取って、展開における役割に合わせてインストールを実行します。
また、Lync Server になじみがあって、規範的なガイドが必要ない場合、計画ツールは使用しなくてかまいません。展開の初期設計、評価、および公開には、トポロジ ビルダーのウィザードを使用します。
トポロジの計画と公開には、トポロジ ビルダーを使用する必要があります。トポロジ ビルダーを使用することなく、個々のサーバーに Lync Server をインストールすることはできません。各サーバーは、中央管理ストアにある公開された有効なトポロジからトポロジを読み取る必要があります。
初めての展開
初めて Lync Server を展開する (つまり、Lync Server や前身の Microsoft Office Communications Server (OCS) を展開したことがない) 場合は、まず、Lync Server をサポートするように既存のインフラストラクチャの準備をします。これには、次のような作業が必要になります。
- Active Directory の準備をする: Lync Server 2010 を展開して運用するには Active Directory ドメイン サービスの準備をする必要があります。スキーマを拡張して、構成オブジェクトを作成する必要があります。スキーマ拡張により、Lync Server 2010 で必要な Active Directory のクラスや属性が追加されます。
- 必要なハードウェアを設置する: トポロジ ビルダーで作成したトポロジ設計に含まれる各コンポーネントのハードウェアを設置します。これには、必要なすべてのコンピューター (Lync Server 2010 を実行するサーバー、データベース サーバー、IIS を実行するサーバー、リバース プロキシ サーバー)、ネットワーク アダプター、ロード バランサー機器、ストレージ デバイス (ファイル サーバー) が含まれます。
- IIS を構成する: Lync Server 2010 で必要な Web サービスをサポートするのに適切なコンポーネントをインストールします。IIS のインストールに関する詳細については、「特集 : Windows Server 2008: IIS 7.0 の概要」を参照してください。
- SQL Server を構成する: Lync Server 2010 Enterprise Edition を展開する場合は、SQL Server (または、SQL Server Cluster) に中央管理データベースを格納できるようにする必要があります。このデータベースでは、プール内のエンタープライズ サーバーに関する構成情報を保持します。Standard Edition を展開する場合は、Standard Edition サーバーで SQL Server Express を使用して中央管理ストアをインストールします。
- DNS レコードを構成する: Lync Server 2010 では、ドメイン名と IP アドレスを適切に解決するために、DNS を使用してレコードを登録および管理しています。展開前に必要な DNS レコードを構成する必要があります。DNS 構成の詳細なガイドについては、「フロントエンド プールの DNS レコードを構成する (英語)」(Enterprise Edition の場合) または「Standard Edition サーバーの DNS レコードを構成する (英語)」を参照してください。
これらの準備が完了したら、再度、トポロジ ビルダーを使用して、トポロジを完成させて公開します。トポロジ ビルダーでは、トポロジの設計が自動的に検証されます。検証プロセスでは、エラーが検出されます。検出されたエラーは、トポロジを公開する前に修正する必要があります。検証プロセスが完了したら、トポロジを公開できます (図 2 参照)。
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図 2 トポロジ ビルダーでトポロジを公開する
インフラストラクチャの準備が完了し、トポロジを公開したら、フロントエンド サーバーとサーバーの役割をインストールして、AV 電話会議、エンタープライズ ボイス、監視、アーカイブなどの機能を有効にできます。各サーバーの準備に取り掛かるには、まず、展開ウィザード (図 3 参照) を実行しますが、各サーバーの役割には、それぞれ独自のインストール要件と構成要件があります。詳細については、TechNet ライブラリの記事「Lync Server 2010 Standard Edition を展開する (英語)」を参照してください。
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図 3 Lync Server 展開ウィザード
OCS との共存と移行
OCS 2007 または OCS 2007 R2 が既にインストールされている場合は、Lync Server 2010 をインフラストラクチャに導入して、両方のプラットフォームを共存させることができます。OCS から Lync Server に移行するお勧めの方法は、サイドバイサイドの移行です。ただし、Lync Server は、OCS 2007 または OCS 2007 R2 のいずれか 1 つのバージョンとのみ共存することが可能で 2 つのバージョンとは共存させられないことに注意してください。
既存の OCS インフラストラクチャに Lync Server を導入する前には、OCS Best Practices Analyzer を実行することをお勧めします。このツールを実行すると、既存の構成とトポロジを検証して、Lync Server をインストールする前に解決しなければならない問題を特定できます。
すべての潜在的な問題を解決したら、Lync Server を導入し、Lync Server ベースのプールを作成して共存環境を作成することをお勧めします。この環境で、パイロット プログラムを確立して、既存の OCS プールからパイロット ユーザーを移行します。
詳細については、Microsoft ダウンロード センターの「Office Communications Server 2007 R2 から Lync Server 2010 に移行する (英語)」を参照してください。このドキュメントでは、OCS 2007 または OCS 2007 R2 から Lync Server 2010 に移行する詳細な手順を紹介しています。
Microsoft Lync Server 2010 は、現代の UC のための包括的なソリューションを提供しています。インスタント メッセージング、プレゼンス機能、強力なボイスオーバー IP 電話、音声会議、ビデオ会議、Web 会議、モバイル通信などの機能を提供して、機敏なインフォメーション ワーカーがいつでも互いに連絡を取れる状態を保つことができます。
Lync Server 2010 の展開に役立つ追加のガイドとリソースについては、TechNet ライブラリの Lync Server TechCenter を参照してください。また、最近の Tech·Ed カンファレンスで実施された UC のプレゼンテーションをご覧になりたい場合は、まず「Microsoft Lync Server 2010 の展開、アップグレード、および共存のシナリオ (英語)」をご覧になることをお勧めします。
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Joshua Hoffman は、TechNet マガジンの前の編集長です。現在は、フリーランスで執筆活動とコンサルティングを行っており、クライアントにテクノロジとそれぞれのクライアントに合ったマーケティング手法に関するアドバイスをしています。また、市場調査の分野の成長と強化に注力している ResearchAccess.com (英語) で編集長を務めています。現在、ニューヨーク市に住んでいます。