Microsoft SharePoint 2010: コラボレーション ステーション
Microsoft SharePoint のあらゆる機能は、コラボレーションの向上を目的として設計および構築されています。ユーザーが効果的に SharePoint を活用できるようにしましょう。
Brien M. Posey
Microsoft SharePoint 2010 はコラボレーション環境の構築に役立ちます。複数のチーム サイトを作成したり、ユーザーが柔軟に作業できるようにするだけでなく、コラボレーションに役立つ数多くの機能があります。
多くの場合、チーム サイトを作成することがコラボレーション環境を充実させるための第一歩であることは確かですが、SharePoint には、ユーザーの生産性向上を目的に設計されたさまざまな機能が用意されています。ユーザーが SharePoint の機能を使えるようになるかどうかは、ある程度 IT 担当者のかじ取り次第です。プラットフォームとプロセスに関する知識が、効果的なコラボレーション エクスペリエンスの鍵となります。
ソーシャル タグ
ソーシャル タグは SharePoint 2010 で導入された機能です。"お気に入り" ボタンや他のソーシャル タグ機能は、マイクロソフトがソーシャル ネットワーキングの流行に乗って導入したものだと考えられがちですが、これらの機能は、実際に、ドキュメント ベースのコラボレーションで真価を発揮します。
SharePoint 2010 の最も基本的なソーシャル タグ機能は、お気に入りボタンです。Facebook で、一般的に友人のコメントや写真を褒めるときに使う "いいね!" ボタンとは異なり、SharePoint 2010 のお気に入りボタンを使用すると、お気に入りリストを作成できます。
お気に入りボタンを使うと、ユーザーは後でもう一度参照する必要がある SharePoint コンテンツを簡単に探せるようになります。ユーザーは、SharePoint サイトを見ているときに、[お気に入り] ボタンをクリックしてコンテンツにタグを付けることができます。たとえば、SharePoint ドキュメント ライブラリで、将来参考にするために手元に置いておきたいドキュメントを見つけた場合は、一覧表示されているドキュメントの隣のチェック ボックスをオンにしてから [お気に入り] ボタンをクリックします (図 1 参照)。ユーザーは自分の個人用サイトにあるコンテンツだけでなく、チーム サイトや仕事仲間の個人用サイトなど、他のサイトに保存されているコンテンツも同様にお気に入りに追加できます。
図 1 チェック ボックスをオンにし、[お気に入り] ボタンをクリックしてフラグを設定する
コンテンツにタグを付けることで、お気に入りに追加したすべてのコンテンツに 1 か所からアクセスできるようになります。お気に入りのコンテンツにアクセスするには、個人用ページにアクセスし、[個人用プロファイル]、[タグとメモ] タブ、[お気に入り] の順にクリックします (図 2 参照)。この操作を実行すると、お気に入りに追加したすべてのコンテンツが表示されます。
図 2 [お気に入り] をクリックすると、お気に入りに追加したすべてのコンテンツを確認できる
いくつかのドキュメントをお気に入りに追加してお気に入りリストを作成すると、比較的便利に活用できますが、難点もあります。起こりうる問題としては、たくさんのドキュメントをお気に入りに追加して、お気に入りリストが長くなりすぎてしまうことが挙げられます。そのようなときには、"タグとメモ" が役に立ちます。タグとメモを使用すると、コンテンツの場所を簡単に特定できるようになります。
ドキュメントにタグを付ける手順は、ドキュメントをお気に入りに追加する手順と同じです。タグを付けるドキュメントの隣のチェック ボックスをオンにし、[タグとメモ] をクリックします。ダイアログ ボックスが表示されたら、そのドキュメントに関連する 1 つ以上のタグを設定します (図 3 参照)。
図 3 ドキュメントに 1 つ以上のタグを設定できる
タグ付けの過程にはいくつか興味深い点があります。ユーザーがタグを入力し始めると、他のドキュメントで既に使用されている似たようなタグの一覧が自動的に表示されます。ユーザーは、この一覧を 2 とおりの方法で活用できます。1 つは、タグ入力の短縮に利用する方法です。入力しているタグが、既存のタグ一覧にあれば、タグ名を最後まで手動で入力する必要はなく、一覧にあるタグをクリックできます。
もう 1 つは、タグの一貫性を保つために利用する方法です。たとえば、ユーザーが自由にタグを付けられる場合、意図するものは同じでも、複数の異なるタグを作成する可能性があります。"Technical Documentation" というタグを作成する場合について考えてみましょう。ユーザーは、タグを作成するときに、「Technical Documentation」と入力したり、「Technical Documents」と入力したり、時にはスペルミスをすることもあります。既存のタグの一覧があれば、類似したタグをいくつも作成することなく、ドキュメントに一貫性のあるタグを付けることができます。
コンテンツにタグを付けると、より簡単にコンテンツを探せるようになります。特定のタグが付けられたドキュメントにアクセスするには、自分の個人用サイトにアクセスし、[個人用プロファイル]、[タグとメモ] タブの順にクリックする必要があります。このページには、タグ クラウドが表示されており (図 4 参照)、"Technical Documentation" という言葉が太字で表示されています。"Technical Documentation" タグのすぐ左には "Reports" という言葉が表示されています。"Reports" もタグですが、"Technical Documentation" と比べると随分小さく表示されていますが、使用頻度の高いタグほど大きく表示されるようになっています。
図 4 [タグとメモ] タブにはタグが一覧表示される
SharePoint では、タグ クラウドをアルファベット順またはサイズ順に並べ替えてタグを使いやすくすることができます。どのように並べ替えても、ユーザーは興味のあるタグをクリックするだけでタグ付けされたコンテンツにアクセスできます。
タグのソーシャル面
タグは他のユーザーにとっても便利です。あるユーザーが自分のニュースフィード設定の [興味] ボックスに「Technical Documentation」というフレーズを入力するとします。ユーザーがタグを入力し始めると、"Technical Documentation" がキーワードの候補として表示されます (図 5 参照)。これは、他のユーザーが 1 つ以上のコンテンツに "Technical Documentation" というタグを付けていることを示しています。仕事仲間がドキュメントに "Technical Documentation" というタグを付けると、このユーザーのニュースフィードに、そのドキュメントが表示されます。
図 5 [ニュースフィードの設定] で [興味] を指定するときにキーワードを利用する
図 2 でタグ付けをした際、ダイアログ ボックスに "非公開にする" という名前のチェック ボックスがあることに気付いた方がいるかもしれません。このチェック ボックスをオンにすると、非公開にしたタグは仕事仲間に表示されることなく、ユーザー独自の用途のタグ付けが可能になります。
非公開タグは、組織でタグの用法に関する厳しい規則が定められている場合に便利です。非公開タグを使用すると、独自に作成したタグが他のユーザーに表示されることなく、便利なタグを独自に使用して、公式なタグを強化できます。非公開タグを使用している場合は、[個人用サイト] にアクセスし、[個人用プロファイル]、[タグとメモ] タブ、[プライベート] の順にクリックして、非公開タグを確認できます。
メモを使う
ソーシャル タグの使い方についてあと 1 つ、 IT 担当者がユーザーに伝える必要があるのは、メモについてです。ユーザーはメモ機能を使って、ファイルや他の種類のコンテンツにコメントを追加できます。また、仕事仲間にメッセージを送ることもできます。
図 6 は仕事仲間の個人用サイトの例です。[概要] ページには [メモ掲示板] があります。この仕事仲間にメッセージを送るには、[メモ掲示板] にメッセージを入力し、[投稿] をクリックします。入力したメッセージは、この仕事仲間のニュースフィードに表示されます。
図 6 仕事仲間のメモ掲示板にメッセージを書き込むことができる
ユーザーは、ドキュメント ライブラリのファイルにメモを追加することもできます。メモを追加するには、メモを追加するファイルの隣のチェック ボックスをオンにし、[タグとメモ] をクリックします。ダイアログ ボックスが表示されたら、[メモ掲示板] タブをクリックし、メモを入力して、[投稿] をクリックします。
ニュースフィードを設定する
SharePoint 2010 のニュースフィードと Facebook のウォールを比べてみるとよいでしょう。ニュースフィードには、ユーザーが表示するように設定した情報以外に、仕事仲間のアクティビティが表示されます。
ユーザーがニュースフィードについて戸惑いがちなのは、発生しているアクティビティの量に関係なく、既定では、ニュースフィードに何も表示されないことです。Facebook のウォールとは異なり、通常、ニュースフィードには、アクティビティがリアル タイムで配信されません。ニュースフィードにアクティビティが表示されるまで 1 時間以上かかることがありますが、更新頻度を調整すると、リアル タイムに近い状態でアクティビティが表示されるようになります。
ニュースフィードはタイマー ジョブに属しているので、ユーザーのニュースフィード更新頻度を調整するには、SharePoint の全体管理コンソールを開き、[監視]、[タイマー ジョブ] セクションの [ジョブ定義の確認]、[User Profile Service アプリケーション - アクテビティ フィードのジョブ] の順にクリックします。タイマー ジョブのリンクをクリックし、スケジュールを設定します (図 7 参照)。ジョブをすぐに実行する場合は、[今すぐ実行] をクリックします。調整が終わったら、[OK] をクリックして設定を完了します。
図 7 ニュースフィードの更新頻度を設定できる
チーム ディスカッション
最後に 1 つ、ユーザーに説明する必要があるコラボレーション機能は、チーム ディスカッションです。チーム ディスカッションは、チーム サイトに備えられたディスカッション フォーラムの機能です。ユーザーは、チーム サイトのようこそ画面で [チーム ディスカッション] をクリックして、チーム ディスカッションにアクセスできます。
ニュース フィードと同様、既定では、チーム ディスカッションには何も表示されません。チーム ディスカッションを使用し始めるには、チーム ディスカッション ページの [新しいディスカッションの追加] をクリックします。これをクリックすると、ディスカッションの件名と本文を入力する画面が表示されます。件名の上部にあるリボンを使用すると、ディスカッション アイテムにファイルを添付したり、スペルチェックを実行したりすることができます (図 8 参照)。
図 8 ユーザーは新しいチーム ディスカッションを作成できる
チーム ディスカッション ページにアクセスしたユーザーは、新しいディスカッションを作成したり、既にやり取りされているディスカッションを読んでコメントを追加したりすることができます (図 9 参照)。
図 9 ユーザーは進行中のディスカッションを読んでコメントを追加できる
SharePoint 2010 には、数多くのコラボレーション機能があります。ユーザーが快適なコラボレーション エクスペリエンスを享受するには、ユーザー コミュニティが SharePoint の機能を理解していることが重要です。ユーザーがコラボレーション機能を正しく使えるようになれば、コラボレーションのレベルは、確実により効果的、広範的、かつ洗練されたものになります。
Brien M. Posey は、MVP であり、数千件の記事と数十冊の書籍を執筆した実績のあるフリーランスのテクニカル ライターです。Posey の Web サイトのアドレスは brienposey.com (英語) です。