次の方法で共有


Collaboration Data Objects の手引き

Mazhar Mohammed
Microsoft Corporation

February 2000

要約 : このドキュメントは、Microsoft(R) Exchange 2000 Server のタイムフレームにおいて、CDO API の開発者に対する手引きとなるものです。ここでは、Microsoft Windows(R) 2000 と Exchange 2000 Server の製品と共に出荷される 予定の CDO のバージョンを扱います。

目次

概要
CDO for Windows 2000
CDO for Exchange 2000
CDO ライブラリと各バージョンの要約
CDO の参考資料

概要

このドキュメントは、Microsoft Exchange 2000 Server のタイムフレームにおいて、Collaboration Data Objects (OCD) のアプリケーション プログラミング インターフェイス (API) の開発者に対する手引きとなるものです。ここに記載する情報は、Microsoft Windows 2000 および Exchange 2000 Server の製品に同梱される CDO のバージョンに基づいています。また、アーキテクチャが CDO の前のバージョンからどのように発展したかという点についても簡単に説明します。ここでは、実装担当者に対して CDO API の戦略上重要な目標を簡単に説明し、また開発者がアプリケーションのニーズに最適なバージョンを判断できるようにするためのものです。

開発者は、CDO ライブラリによって、インターネット メッセージを簡単に作成、操作、送信できるため、このライブラリは大いに開発者の好評を博しています。CDO の前のバージョンは、Microsoft Windows NT(R) 用の CDO を除き、データ アクセス形式とトランスポート形式として MAPI に大きく依存していました。これは、パワフルな共同作業用アプリケーションの開発を考慮に入れていたからであり、そのうちいくつかは現在も広く利用されています。さらに進んで、CDO の新しいバージョンでは重要な 2 点で改良が加えられます。その 2 点とは、インターネットの「標準」に基づくこと、そして標準化されたデータ アクセス形式、つまり OLE DB/ADO を利用することです。開発者は、新しい CDO ライブラリを利用することによって、Windows 2000 や Exchange 2000 Server で動作する、メッセージング、カレンダリング、および連絡先管理用の完全なアプリケーションを作成することができます。

CDO for Windows 2000

CDO for Windows 2000 は、CD0 2.0 または CDOSYS.DLL と呼ばれることもあります。この CDO for Windows 2000 の目的は、Windows 2000 でメッセージング アプリケーションを開発するためのオブジェクト モデルを提供することにあります。CDOSYS は、Simple Mail Transfer Protocol (SMTP) と Network News Transfer Protocol (NNTP) に基づいており、Microsoft Windows 2000 Server のインストールによりシステム コンポーネントとして利用することができます。これは、Windows 2000 Server での、メール配信用または Web を利用するメッセージング アプリケーションを作成するための標準 API です。

CDOSYS は、新しいオブジェクトや基本的なアーキテクチャに関して、CDO 1.2.1 のモデルを更新したものではありません。CDOSYS は、Windows NT 4.0 Option Pack 1 で利用できる現在の CDO for Windows NT Server (CDONTS) ライブラリの機能を強化したものと考えてください。CDOSYS の機能は CDONTS と同じですが (追加機能はいくつかあります)、両者のコードに互換性はありません。CDOSYS は、インターネットのコンテンツを直接操作するために最初から記述されたもので、CDO 1.1、1.2、および 1.2.1.など、MAPI に基づく CDO の以前のバージョンとコードの互換性はありません。

CDO のこの新しいバージョンの目的は、さまざまな開発者をサポートすることにあります。最も一般的な機能をわずかなコード行数でサポートすることができ、それでも高性能のインターネット用コンテンツの作成能力を備えています。ライブラリは、Multipart/Alternative や text/html など、Multipurpose Internet Mail Extensions (MIME) の複雑なメッセージの種類を作成する機能をサポートしています。このライブラリを利用すると、インターネットでサポートされているほとんどすべてのメッセージを作成、操作することができ、新しいインターネット標準が生まれると、開発者はそれに基づいてアプリケーションを作成することができます。

CDOSYS は、CDO の前のバージョンにない新しい重要な機能を 2 つ備えています。それは、プロトコル イベントの処理機能と NNTP のサポート機能です。プロトコル イベントを使用すると、開発者は受信メールや送信メールの処理が可能なアプリケーションを作成できます。各受信メールのウィルスの有無を調べるアプリケーションがその例です。NNTP のサポートにより、開発者は USENET のニュース メッセージを投稿したり処理することができます。

CDOSYS は、CDONTS 1.x に直接取って代わるものでもなければ、CDO 1.2.1 に取って代わるものでもないため、必要に応じて同じシステムで同時に使うことができます。したがって、プログラムまたはスクリプトで、SMTP と NNTP のプロトコルだけでなく、Windows 2000 Server で Exchange 5.5 を使ってメッセージング オブジェクトを扱わなければならないときは、CDO Library Version 1.2.1、CDO Rendering Library Version 1.2.1、CDO for Windows NT Server Library Version 1.2.1、および CDO for Windows 2000 のライブラリに同時にアクセスすることができます。そこで、CDO for Windows 2000 と CDO 1.2 for Windows NT Server のいずれでもサポート可能なアプリケーションを作成することができます。どちらのバージョン (CDO for Windows 2000 および CDO 1.2 for Windows NT Server) も Windows 2000 に同梱されています。

CDO for Windows 2000 の特徴

  • 複数の SMTP 設定の中からの選択をサポート : CDOSYS には、Windows 2000、および Internet Mail Connector (IMC) とメッセージを送信するためのローカルまたはリモートの SMTP サーバーが必要です。CDOSYS を設定することによって、SMTP サーバーをプログラムでポイントすることができます。その結果、開発者は、アプリケーションの設定に基づく SMTP サーバーの設定に柔軟性を持たせることができます。

  • トランスポート イベントをサポート : CDOSYS は、プロトコル イベントによって、受信メールと送信メールの処理もサポートしています。プロトコル イベントは、開発者がそのメッセージを操作できる受信メール、送信メール、ニュース アイテムに適用されます。

  • インターネット標準をサポート : CDOSYS はインターネット標準に基づいており、MIME または MHTML のデータの作成や操作を目的とした、豊富な機能を持つ API を用意しています。CDOSYS は、SMTP または NNTP プロトコルによって、メッセージの送信や投稿をサポートしています。

  • データ アクセスを標準化 : CDOSYS は、OLE DB/ADO の特徴を統合したアーキテクチャになっています。そのため、ストリームやプロパティのレベルでアイテムを作成したり、操作したりするときのデータ アクセスを標準化することができます。

  • 多様なプログラミング言語をサポート : CDOSYS は、デュアル インターフェイスのコンポーネント オブジェクト モデル (COM) のオブジェクト ライブラリで、Microsoft Visual C++(R)、Microsoft Visual Basic(R)、Visual Basic Scripting Edition、Microsoft JScript(R)、Microsoft Visual Basic for Applications (VBA) など複数のプログラミング言語をサポートしています。

  • オブジェクト モデルのアップグレード パス : CDOSYS は、Exchange 2000 Server と共に出荷される Collaboration Data Objects ライブラリの適切なサブセットになるよう設計されています。そのため、Exchange 2000 をセットアップすると、CDOSYS を使って作成するアプリケーションがすべて完全にサポートされます

CDO for Windows 2000 の用途

  • 一括メール トランスポート/ターゲットのメール プログラム : ほんのわずかな行数のコードで、対象となるメール受信者のグループに対して、インターネットを利用したスケーラブルなメッセージを作成します。

  • メールを利用したレプリケーション : データベースまたはディレクトリの情報を別のサーバーに複製するためのメッセージを作成します。Windows 2000 では、CDOSYS を使ってディレクトリの情報を複製し、メール メッセージを作成します。

  • メールやニュース アイテムのウィルス チェック : 受信メールやニュース メッセージは、予定受信者に配信する前にウィルスの有無を調べることができます。危険なコンテンツを含んでいる可能性のある受信メールは、記録、破棄、または修正することができます。

  • スパム メールの検出 : 迷惑メールのように、不要な電子メールは厄介なものになることがあります。受信メールで一定のキーワードの有無を調べ、迷惑な電子メールかどうか判断します。迷惑メールなら、メッセージを記録、破棄、または分類することができます。不要な受信者から送られた受信メールを自動的に削除することもできます。

  • Web ページの送信 : 画像やリンクが含まれている完全な Web ページをメールで送信します。Web ページを参照するユーザーは、完全な Web ページを、再検討のためほかの人にメールで送ることができます。ISV や Web サイトのホストも、完全な Web ページを購読者に電子メールで送ることができます。例えば、毎日のニュースを購読するユーザーは、毎日のニュースのタイトル ページを電子メールで受信することができます。電子メールのメッセージには、画像や、ほかのストアやページへのアクティブ リンクを含めることができます。

  • Web ページのフォームの処理 : CDO を使い、Web を利用するフォームで受信や送付のメッセージを作成することによって、トランザクションの正常終了を示すことができます。

  • 受信メッセージの自動転送 : 特定のメールボックス、電子メール アドレスなどに、メッセージを自動転送することができます。メッセージに含まれる情報に基づき、一定のキーワードを含むメッセージをすべて、特定のニュースグループに転送することができます。

  • サーバーの管理に関する警告 : CDO は、サーバーから管理者のメールボックスに警告メッセージを送り、サーバーまたはサービスの安定度を示すことができます。

  • 受信メッセージと送信メッセージに対する企業の免責条項に関するテキストの追加 : 一部の企業は、受信または送信のとき、企業のメールに免責条項を示すタグを付けるよう要求します。トランスポート イベント シンクで実行される CDO スクリプトなら、この仕事を簡単に実行することができます。

CDO for Exchange 2000

CDO for Exchange 2000 (CDOEX.DLL) は Exchange 2000 Server と共にセットアップされます。CDOEX は、CDOSYS コンポーネントの登録を CDO for Exchange 2000 にアップグレードします。CDOSYS には含まれていない、Web Store の開発を目的とする機能の多くは、CDOEX で利用することができます。CDOEX ライブラリは CDOSYS のスーパーセットであるため、CDOSYS アプリケーションのアプリケーションとしての互換性は維持されます。CDOEX は、実装に MAPI コードをいっさい使用せずに最初から作成されており、インターネット標準と OLE DB のデータ アクセスを利用して Exchange Web Store でデータのアクセスと操作を行います。ただし、現在の CDO 1.2 と MAPI のアプリケーションはすべて Exchange 2000 Server にシームレスに移植することができ、CDOEX ベースのアプリケーションと共に動作します。

また、CDOEX では、カレンダリングや連絡先管理のオブジェクトが含まれるよう CDOSYS のメッセージング ライブラリの機能が拡張されています。これにより、開発者は、Web Store プラットフォームを使って、Microsoft Outlook 型の優れた共同作業用アプリケーションを作成することができます。独自のオブジェクトの作成を希望する開発者は、現在の CDO オブジェクトを再使用するか、または CDO Item のベース オブジェクトを拡張して、独自の第 1 クラスのオブジェクトを作成できます。CDOEX を使う Web による共同作業用アプリケーションは、Exchange 2000 Server のパブリック ストアまたはプライベート ストアで直接作成する必要があります。CDO オブジェクトは、開発者が Web Store の動作をカスタマイズしたり拡張したりできるトランスポート イベント シンクやストア イベント シンクで利用することもできます。

CDO for Exchange 2000 の特徴

  • CDO for Windows 2000 のアプリケーション用のシームレスなアップグレード パス : CDOSYS アプリケーションのアプリケーションとしての互換性は維持されます。

  • カレンダリング : CDOEX には、個人やグループの予定表のアプリケーションを使えるようにするため、予定や会議出席依頼を作成するオブジェクトが含まれます。予定表のプロトコルは、iCalendar などのインターネット標準に基づいており、Outlook 98 と Outlook 2000 に完全な相互運用性を持たせます。

  • 連絡先の管理 : 連絡先の管理を行うアプリケーションは、Exchange Web Store または Active Directory の代りに、CDO の連絡先オブジェクトを利用することができます。

  • CDO および ActiveX(R) データ オブジェクト (ADO) : ADO をデータ移動モデルおよび CDO オブジェクトとして使用し、Web Store で各アイテムに連結します。

  • 拡張モデル : CDOEX は、CDO のカスタム オブジェクトを作成するため開発者が CDO の機能を統合したり拡張したりできる、CDO オブジェクト ベースの実装を用意しています。

CDOEX で用意されているベース オブジェクトのほかにも Exchange 2000 Server と共に出荷されるライブラリがあり、このライブラリは CDO のオブジェクト モデルのデザインを利用します。この中には CDO for Exchange Management (CDOEXM) のライブラリも含まれ、このライブラリで Exchange のメールボックスとサーバーを管理するためのオブジェクトとインターフェイスが提供されています。Exchange 2000 Server では CDO Workflow (CDOWF) オブジェクトも用意されています。これが、Exchange の組み込みのワークフロー エンジンを操作するための CDO オブジェクトのセットになります。

CDO ライブラリと各バージョンの要約

Active Messaging (OLEMSG32.DLL)

このライブラリは Exchange 5.0 に同梱されています。

ファイル名 : OLEMSG32.DLL

プログラム ID : MAPI

アプリケーション名 : Microsoft Active Messaging

バージョン : 1.1

Exchange 5.0 に同梱

CDO 1.2.1 (CDO.DLL)

このライブラリは、Exchange 5.5、Outlook 98、Outlook 2000、Exchange 2000 Server に同梱されています。

ファイル名 : CDO.DLL

プログラム ID : MAPI

アプリケーション名 : Microsoft CDO 1.2.1

バージョン : 1.2.1

Exchange 5.5、Outlook 98、Outlook 2000、Exchange 2000 Server に同梱

CDO 1.2 for Windows NT Server (CDONTS.DLL)

このライブラリは、Internet Information Server (IIS) 4.0 (Windows NT 4.0 Option Pack 1) および Windows 2000 Server に同梱されています。

ファイル名 : CDONTS.DLL

プログラム ID : CDONTS

アプリケーション名 : Microsoft CDO 1.2 for Windows NT Server

バージョン : 1.2

Exchange 5.5、IIS 4.0、Microsoft Commercial Internet System (MCIS)、および Windows 2000 Server に同梱

CDO for Windows 2000 (CDOSYS.DLL)

このライブラリは、Windows 2000 Server のセットアップ時に共にインストールされます (Windows 2000 Server の場合のみ)。

ファイル名 : CDOSYS.DLL

プログラム ID : CDO

アプリケーション名 : Microsoft CDO for Windows 2000

バージョン : 2.0

Windows 2000 Server に同梱

CDO for Exchange 2000 Server (CDOEX.DLL)

このライブラリは、Exchange 2000 Server のセットアップ時に共にインストールされます。

ファイル名 : CDOEX.DLL

プログラム ID : CDO

アプリケーション名 : Microsoft CDO for Exchange 2000 Server

バージョン : 3.0

Exchange 2000 Server に同梱

CDO for Exchange Management (CDOEXM.DLL)

このライブラリは、Exchange 2000 Server セットアップ時に共にインストールされ、Exchange 2000 Server のメールボックスとサーバーを管理するためのオブジェクト セットで構成されます。

ファイル名 : CDOEXM.DLL

プログラム ID : CDOEXM

アプリケーション名 : Microsoft CDO for Exchange Management Library

バージョン : 1.0

Exchange 2000 Server に同梱

CDO Workflow Objects for Microsoft Exchange (CDOWF.DLL)

このライブラリは Exchange 2000 Server にのみ同梱され、これがワークフロー アプリケーションを作成するためのオブジェクト セットになります。

ファイル名 : CDOWF.DLL

プログラム ID : CDOWF

アプリケーション名 : Microsoft CDO Workflow objects for Microsoft Exchange

バージョン : 1.0

Exchange 2000 Server に同梱

CDO の各バージョンの要約

  Exchange 5.0 Exchange 5.5 IIS 4.0 Windows 2000 Server Exchange 2000 Server
Active Messaging Yes N/A N/A N/A N/A
CDO 1.2 N/A Yes N/A N/A Yes *
CDO 1.2 for Windows NT Server N/A Yes Yes Yes * Yes *
CDO for Windows 2000 Server N/A N/A N/A Yes N/A
CDO for Exchange 2000 Server N/A N/A N/A N/A Yes
CDO for Exchange Management N/A N/A N/A N/A Yes
CDO Workflow Objects for Exchange N/A N/A N/A N/A Yes

* 現在のアプリケーションとの互換性の有無。
  (N/A) 本リリースでは利用できません。

CDO の参考資料

CDO のさまざまなバージョンの詳細については、Microsoft Knowledge Base (KB) Non-MSDN Online link にある次の記事 (英語) を参照してください。

  • 「Q176916:INFO: Active Messaging and Collaboration Data Objects (CDO)」

  • 「Q171440:INFO:Where to Acquire the Collaboration Data Objects Libraries」

  • 「Q177850:INFO:What is the Difference Between CDO 1.2 and CDONTS?」

CD-ROM や DVD-ROM の MSDN ライブラリにも Knowledge Base のトピックが含まれています。