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DiffGrams (ADO.NET)

更新 : November 2007

DiffGram は、データ要素の現在のバージョンと元のバージョンを識別する XML 形式です。DataSet では、DataSet の内容を読み込んで永続化するため、およびネットワーク接続経由で転送する場合にこの内容をシリアル化するために、DiffGram 形式が使用されます。DiffGram として作成された DataSet は、スキーマを使用せずに DataSet の内容を正確に再作成するために必要なすべての情報を DiffGram に格納します。このような情報には、Original 行バージョンと Current 行バージョンの両方の列値、行エラー情報、行順序などが含まれています。

XML Web サービスから DataSet を送信または取得するときには、DiffGram 形式が暗黙的に使用されます。また、ReadXml メソッドを使用して XML から DataSet の内容を読み取るときや、WriteXml メソッドを使用して XML に DataSet の内容を書き込むときは、読み取りまたは書き込みの形式として DiffGram を指定できます。詳細については、「XML からの DataSet の読み込み (ADO.NET)」および「DataSet 内容の XML データとしての書き込み (ADO.NET)」を参照してください。

.NET Framework では、DiffGram 形式は主に DataSet の内容をシリアル化するときの形式として使用されますが、Microsoft SQL Server データベース内のテーブル データを変更するときにも DiffGrams を使用できます。

Diffgram は、すべてのテーブルの内容を <diffgram> 要素に書き込むことによって生成されます。

Diffgram を生成するには

  1. ルート テーブル (親を一切持たないテーブル) のリストを生成します。

  2. リストの各テーブルとその子孫について、すべての行の現在のバージョンを最初の Diffgram セクションに書き込みます。

  3. DataSet の各テーブルについて、すべての行の元のバージョン (存在する場合) を Diffgram の <before> セクションに書き込みます。

  4. エラーのある行については、そのエラーの内容を Diffgram の <errors> セクションに書き込みます。

Diffgram は XML ファイルの上から下に向かって処理されます。

Diffgram を処理するには

  1. Diffgram の最初のセクションを処理します。このセクションには、行の現在のバージョンが格納されています。

  2. 2 番目の <before> セクションを処理します。このセクションには、修正または削除された行の元のバージョンが格納されています。

    ms172088.alert_note(ja-jp,VS.90).gifメモ :

    行が削除済みとしてマークされていた場合、削除操作によってその行の子孫も削除される場合があります。この点は、現在の DataSet の Cascade プロパティに依存します。

  3. <errors> セクションを処理します。このセクションの各項目について、指定された行および列のエラー情報を設定します。

ms172088.alert_note(ja-jp,VS.90).gifメモ :

XmlWriteMode を Diffgram に設定した場合、ターゲット DataSet の内容が、元の DataSet の内容と異なる場合があります。

DiffGram 形式

DiffGram 形式は、現在のデータ、元のデータ (または前のデータ)、エラーの 3 つのセクションから構成されています。DiffGram の例を次に示します。

<?xml version="1.0"?>
<diffgr:diffgram 
         xmlns:msdata="urn:schemas-microsoft-com:xml-msdata"
         xmlns:diffgr="urn:schemas-microsoft-com:xml-diffgram-v1"
         xmlns:xsd="http://www.w3.org/2001/XMLSchema">

   <DataInstance>
   </DataInstance>

  <diffgr:before>
  </diffgr:before>

  <diffgr:errors>
  </diffgr:errors>
</diffgr:diffgram>

DiffGram 形式を構成するデータ ブロックについて次に説明します。

  • <DataInstance>
    このドキュメントでは、説明の目的でこの要素の名前である DataInstance を使用します。DataInstance 要素は、DataTable の行または DataSet を表します。実際には DataInstance の代わりに DataSet または DataTable の名前がこの要素に含まれます。DiffGram 形式のこのブロックには現在のデータが含まれています。現在のデータは、変更されている場合と未変更の場合があります。変更されている要素 (行) を識別するため、このような要素には diffgr:hasChanges 注釈が付きます。

  • <diffgr:before>
    DiffGram 形式のこのブロックには、行の元の内容が含まれています。このブロックの要素は、diffgr:id 注釈を使用して DataInstance ブロックの内容と対応しています。

  • <diffgr:errors>
    DiffGram 形式のこのブロックには、DataInstance ブロックの特定の行に関するエラー情報が含まれています。このブロックの要素は、diffgr:id 注釈を使用して DataInstance ブロックの内容と対応しています。

DiffGram 注釈

DiffGram では、DataSet の行バージョンやエラー情報を表すさまざまな DiffGram ブロックの要素を関連付けるため、いくつかの注釈が使用されます。

DiffGram 名前空間 urn:schemas-microsoft-com:xml-diffgram-v1 で定義されている DiffGram 注釈を次の表に示します。

注釈

説明

id

<diffgr:before> ブロックと <diffgr:errors> ブロックの要素を <DataInstance> ブロックの要素と対応させるために使用されます。diffgr:id 注釈の値は [TableName][RowIdentifier] という形式で指定されます。たとえば、<Customers diffgr:id="Customers1"> のようにします。

parentId

現在の要素の親要素である <DataInstance> ブロックの要素を識別します。diffgr:parentId 注釈の値は [TableName][RowIdentifier] という形式で指定されます。たとえば、<Orders diffgr:parentId="Customers1"> のようにします。

hasChanges

<DataInstance> ブロックの行を変更済みとして識別します。hasChanges 注釈には、次の 3 つのいずれかの値を指定できます。

inserted

Added 行を識別します。

modified

対応する <Original> 行バージョンが <diffgr:before> ブロックに含まれている Modified 行を識別します。Deleted 行の場合、対応する Original 行バージョンが <diffgr:before> ブロックには存在しますが、<DataInstance> ブロックには注釈付き要素が存在しません。

descent

親子のリレーションシップにある 1 つ以上の子要素が変更された親要素を識別します。

hasErrors

<DataInstance> ブロック内で RowError がある行を識別します。エラー要素は <diffgr:errors> ブロックに挿入されます。

Error

<diffgr:errors> ブロック内の特定の要素に関する RowError のテキストが含まれています。

DataSet の内容が DiffGram として読み取られる、または書き込まれるときには、上記以外の注釈も含まれます。名前空間 urn:schemas-microsoft-com:xml-msdata で定義されている追加の注釈を次の表に示します。

注釈

説明

RowOrder

元のデータの行順序を保持し、特定の DataTable の行のインデックスを識別します。

Hidden

特定の列を ColumnMapping プロパティが MappingType.Hidden に設定されている列として識別します。この属性は、msdata:hidden[ColumnName]="value" という形式で書き込まれます。たとえば、<Customers diffgr:id="Customers1" msdata:hiddenContactTitle="Owner"> のようにします。

データが格納されている隠し列だけが DiffGram 属性として書き込まれます。それ以外の場合は無視されます。

DiffGram のサンプル

DiffGram 形式の例を次に示します。この例では、変更のコミット前のテーブル内の行に対する更新結果が示されています。CustomerID の "ALFKI" である行は変更されていますが、更新されていません。このため、<DataInstance> ブロックに diffgr:id が "Customers1" の Current 行があり、<diffgr:before> ブロックに diffgr:id が "Customers1" の Original 行があります。CustomerID が "ANATR" である行には RowError が含まれているため、この行には diffgr:hasErrors="true" という注釈が付いています。<diffgr:errors> ブロックに、この行に関連する要素があります。

<diffgr:diffgram xmlns:msdata="urn:schemas-microsoft-com:xml-msdata" xmlns:diffgr="urn:schemas-microsoft-com:xml-diffgram-v1">
  <CustomerDataSet>
    <Customers diffgr:id="Customers1" msdata:rowOrder="0" diffgr:hasChanges="modified">
      <CustomerID>ALFKI</CustomerID>
      <CompanyName>New Company</CompanyName>
    </Customers>
    <Customers diffgr:id="Customers2" msdata:rowOrder="1" diffgram:hasErrors="true">
      <CustomerID>ANATR</CustomerID>
      <CompanyName>Ana Trujillo Emparedados y Helados</CompanyName>
    </Customers>
    <Customers diffgr:id="Customers3" msdata:rowOrder="2">
      <CustomerID>ANTON</CustomerID>
      <CompanyName>Antonio Moreno Taquera</CompanyName>
    </Customers>
    <Customers diffgr:id="Customers4" msdata:rowOrder="3">
      <CustomerID>AROUT</CustomerID>
      <CompanyName>Around the Horn</CompanyName>
    </Customers>
  </CustomerDataSet>
  <diffgr:before>
    <Customers diffgr:id="Customers1" msdata:rowOrder="0">
      <CustomerID>ALFKI</CustomerID>
      <CompanyName>Alfreds Futterkiste</CompanyName>
    </Customers>
  </diffgr:before>
  <diffgr:errors>
    <Customers diffgr:id="Customers2" diffgr:Error="An optimistic concurrency violation has occurred for this row."/>
  </diffgr:errors>
</diffgr:diffgram>

参照

概念

XML からの DataSet の読み込み (ADO.NET)

DataSet 内容の XML データとしての書き込み (ADO.NET)

その他の技術情報

DataSet での XML の使用 (ADO.NET)

DataSets、DataTables、および DataViews (ADO.NET)