非標準動作
ここからのセクションでは、C++ の Visual C++ 実装が C++ 規格に準拠しない部分をいくつか示します。 ここで示している節番号は C++ 11 規格 (ISO/IEC 14882:2011(E)) の節番号に対応しています。
C++ 規格で定義されているものとは異なるコンパイラの制限の一覧については、「コンパイラの制限」を参照してください。
共変の戻り値の型
仮想関数が可変個の引数を持つ場合、仮想既定クラスは共変の戻り値の型としてサポートされません。 このことは C++ ISO 仕様の 10.3 節 7 項に準拠していません。 次のサンプルはコンパイルされず、コンパイル エラー C2688 になります。
// CovariantReturn.cpp
class A
{
virtual A* f(int c, ...); // remove ...
};
class B : virtual A
{
B* f(int c, ...); // C2688 remove ...
};
テンプレートの非依存名のバインド
Visual C++ コンパイラでは現在、テンプレート初期解析時の非依存名のバインドはサポートされていません。 このことは、C++ ISO 仕様の 14.6.3 節に準拠していません。 そのため、テンプレートの定義後 (ただしインスタンス化前) にオーバーロードが宣言される場合があります。
#include <iostream>
using namespace std;
namespace N {
void f(int) { cout << "f(int)" << endl;}
}
template <class T> void g(T) {
N::f('a'); // calls f(char), should call f(int)
}
namespace N {
void f(char) { cout << "f(char)" << endl;}
}
int main() {
g('c');
}
// Output: f(char)
関数の例外指定子
throw() 以外の関数の例外の指定子は解析されますが、使用されません。 このことは、ISO C++ 仕様の 15.4 節に準拠していません。 たとえば、次のようにします。
void f() throw(int); // parsed but not used
void g() throw(); // parsed and used
例外の指定の詳細については、「例外の指定」を参照してください。
char_traits::eof()
C++ 規格によると、char_traits::eof は有効な char_type 値に対応する必要があります。 Visual C++ コンパイラは wchar_t 型ではなく、char 型にこの制約を適用します。 このことは、C++ ISO 規格の 12.1.1 節の表 62 に示された要件に準拠していません。 次に示しているのはその例です。
#include <iostream>
int main()
{
using namespace std;
char_traits<char>::int_type int2 = char_traits<char>::eof();
cout << "The eof marker for char_traits<char> is: " << int2 << endl;
char_traits<wchar_t>::int_type int3 = char_traits<wchar_t>::eof();
cout << "The eof marker for char_traits<wchar_t> is: " << int3 << endl;
}
オブジェクトの格納場所
C++ 規格の 1.8 節 6 項によると、完全な C++ オブジェクトには一意の格納場所が必要です。 ただし、Visual C++ では、データ メンバーのない型がオブジェクトの有効期間に他の型とデータの格納場所を共有する場合があります。