SCOPE_IDENTITY (Transact-SQL)
適用対象: SQL Server Azure SQL Database Azure SQL Managed Instance
同じスコープ内の ID 列に挿入された最後の ID 値を返します。 スコープは、ストアド プロシージャ、トリガー、関数、バッチのいずれかのモジュールです。 したがって、2 つのステートメントが同じストアド プロシージャ、関数、またはバッチ内にある場合、これらのステートメントのスコープは同じになります。
構文
SCOPE_IDENTITY()
戻り値の型
numeric(38,0)
解説
SCOPE_IDENTITY、IDENT_CURRENT、および @@IDENTITY は、ID 列に挿入された値を返すという点で似ています。
IDENT_CURRENT はスコープとセッションには限定されませんが、特定のテーブルに限定されます。 IDENT_CURRENT では、任意のセッションとスコープ内の特定のテーブルに対して生成された値が返されます。 詳しくは、「IDENT_CURRENT (Transact-SQL)」をご覧ください。
SCOPE_IDENTITY と @@IDENTITY では、現在のセッション内の任意のテーブルで生成された最後の ID 値が返されます。 ただし、SCOPE_IDENTITY で返される値は、現在のスコープ内で挿入された値に限られます。@@IDENTITY の場合は、特定のスコープに限定されません。
たとえば、T1 と T2 の 2 つのテーブルがあるとし、INSERT トリガーが T1 で定義されているとします。 T1 に行が挿入されると、トリガーが起動し、T2 に行を挿入します。 このシナリオでは、T1 上での挿入と、トリガーの結果として得られる T2 上での挿入という、2 つのスコープがあります。
T1 と T2 の両方に ID 列がある場合、T1 上で INSERT ステートメントが終了すると、@@IDENTITY と SCOPE_IDENTITY によってそれぞれ異なる値が返されます。 @@IDENTITY では、現在のセッションの任意のスコープにおいて挿入された最後の ID 列の値が返されます。 これは、T2 で挿入された値です。 SCOPE_IDENTITY() では、T1 に挿入された IDENTITY 値が返されます。 これは、同じスコープ内で発生した最後の挿入です。 ID 列への INSERT ステートメントがスコープ内で発生する前に SCOPE_IDENTITY() 関数が呼び出された場合、この関数では NULL 値が返されます。
失敗したステートメントとトランザクションによって、テーブルに対する現在の ID が変更され、ID 列値に差異が生じる可能性があります。 ID 値がロールバックされることはありません。これは、テーブルに値を挿入するトランザクションがコミットされない場合でも同じです。 たとえば、INSERT ステートメントが IGNORE_DUP_KEY 違反のために失敗しても、テーブルの現在の ID 値は増分されます。
例
A. @@IDENTITY および SCOPE_IDENTITY をトリガーで使用する
次の例では、TZ
と TY
の 2 つのテーブルを作成し、TZ
に INSERT トリガーを作成します。 テーブル TZ
に行が挿入されると、トリガー (Ztrig
) が起動し、TY
に行が挿入されます。
USE tempdb;
GO
CREATE TABLE TZ (
Z_id INT IDENTITY(1,1)PRIMARY KEY,
Z_name VARCHAR(20) NOT NULL);
INSERT TZ
VALUES ('Lisa'),('Mike'),('Carla');
SELECT * FROM TZ;
結果セット: 次に示すのはテーブル TZ の内容です。
Z_id Z_name
-------------
1 Lisa
2 Mike
3 Carla
CREATE TABLE TY (
Y_id INT IDENTITY(100,5)PRIMARY KEY,
Y_name VARCHAR(20) NULL);
INSERT TY (Y_name)
VALUES ('boathouse'), ('rocks'), ('elevator');
SELECT * FROM TY;
結果セット: 次に示すのは TY の内容です。
Y_id Y_name
---------------
100 boathouse
105 rocks
110 elevator
行がテーブル TZ に挿入されるとテーブル TY に行を挿入するトリガーを作成します。
CREATE TRIGGER Ztrig
ON TZ
FOR INSERT AS
BEGIN
INSERT TY VALUES ('')
END;
トリガーを起動し、@@IDENTITY および SCOPE_IDENTITY 関数で取得した ID 値を確認します。
INSERT TZ VALUES ('Rosalie');
SELECT SCOPE_IDENTITY() AS [SCOPE_IDENTITY];
GO
SELECT @@IDENTITY AS [@@IDENTITY];
GO
結果セットは次のとおりです。
/*SCOPE_IDENTITY returns the last identity value in the same scope. This was the insert on table TZ.*/`
SCOPE_IDENTITY
4
/*@@IDENTITY returns the last identity value inserted to TY by the trigger.
This fired because of an earlier insert on TZ.*/
@@IDENTITY
115
B. @@IDENTITY および SCOPE_IDENTITY() をレプリケーションで使用する
次の例は、マージ レプリケーション用にパブリッシュされたデータベースへの挿入で、@@IDENTITY
および SCOPE_IDENTITY()
を使用する方法を示しています。 例のテーブルは両方とも AdventureWorks2022
サンプル データベースにあります。Person.ContactType
はパブリッシュされておらず、Sales.Customer
はパブリッシュされています。 マージ レプリケーションでは、パブリッシュされたテーブルにトリガーを追加します。 このため、@@IDENTITY
では、値をユーザー テーブルに挿入する代わりにレプリケーション システム テーブルに挿入して返すことができます。
Person.ContactType
テーブルの ID の最大値は 20 です。 このテーブルに行を挿入する場合、@@IDENTITY
と SCOPE_IDENTITY()
は同じ値を返します。
USE AdventureWorks2022;
GO
INSERT INTO Person.ContactType ([Name]) VALUES ('Assistant to the Manager');
GO
SELECT SCOPE_IDENTITY() AS [SCOPE_IDENTITY];
GO
SELECT @@IDENTITY AS [@@IDENTITY];
GO
結果セットは次のとおりです。
SCOPE_IDENTITY
21
@@IDENTITY
21
Sales.Customer
テーブルの ID の最大値は 29483 です。 このテーブルに行を挿入する場合、@@IDENTITY
と SCOPE_IDENTITY()
は異なる値を返します。 SCOPE_IDENTITY()
は値をユーザー テーブルに挿入して返すのに対し、@@IDENTITY
は値をレプリケーション システム テーブルに挿入して返します。 挿入した ID 値にアクセスする必要があるアプリケーションには、SCOPE_IDENTITY()
を使用してください。
INSERT INTO Sales.Customer ([TerritoryID],[PersonID]) VALUES (8,NULL);
GO
SELECT SCOPE_IDENTITY() AS [SCOPE_IDENTITY];
GO
SELECT @@IDENTITY AS [@@IDENTITY];
GO
結果セットは次のとおりです。
SCOPE_IDENTITY
29484
@@IDENTITY
89