Power Apps アプリの設計

完了

アプリ開発者として、Power Apps ソリューションの構築を開始する前に、設計プロセスについて確認することをお勧めします。 Power Apps ソリューションを設計する際には、次のようなさまざまな要素を考慮する必要があります。

  • ビジネス要件
  • データ モデル
  • ユーザー エクスペリエンス (UX)
  • ユーザー インターフェイス (UI)
  • ビジネス ロジック
  • 出力

シンプルな設計プロセスを実行することで、アプリが実稼働環境に移行した後で大きな問題が発生する前に、小さな問題を洗い出すことができます。 また、この設計プロセスはキャンバス アプリに対するものであることを理解しておくことも重要です。

では、次に示すような単純な空のキャンバス アプリから始めます。

Power Apps Studio の空のキャンバス アプリのスクリーンショット。

キャンバス アプリ ソリューションを完全にカスタマイズするには?

Power Apps Studio の機能しているキャンバス アプリのスクリーンショット。

ユーザーのニーズを理解する

キャンバス アプリの作成において最も強力でありながら、難易度が高い作業は、空白の画面から開始することです。 この作業を行うと思い通りに構築することができますが、そのためには自分が何を望んでいるかを知る必要があります。

多くの場合、ビジネス ソリューションを解決または合理化するソフトウェアを購入したときに、ソフトウェアによってサポートされているガイドラインの範囲内に含まれていないビジネス プロセスが多数存在します。 この問題が発生した場合、通常はソフトウェア要件を満たすために、サポートされていないプロセスを更新/変更する方法を決定するべく、社内ディスカッションとミーティングが開催されます。 こういったビジネス プロセスの更新にはコストや時間がかかるため、ほとんどの組織にとって、これは最適な解決ではありません。 しかし、Power Apps を使用してソリューションを構築することで、サポートされていないビジネス ソリューションについての懸念事項をなくすことができます。 どうしてそんなことができるのでしょう。 Power Apps を使用すると、ビジネス要件に合わせて調整されたカスタム ソリューションを作成できるからです。

多くの場合、アプリを作成するときに、紙または従来のソフトウェア駆動プロセスを正確に再現することを求めがちです。 それは可能ですが、理想的なソリューションではありません。 既存のプロセスに挑戦し、紙や古いソフトウェアで何ができるかではなく、ビジネスで何をする必要があるかを自問自答することで、より優れた、また、より効率的なプロセスの可能性が開かれます。 たとえば、紙のプロセスでは、自分が見たものについてのメモを入力する必要がありました。 代わりにただ写真を撮る方がよくないでしょうか。 このような考え方をすれば、より良いアプリとより良い結果につながります。

ビジネス要件

開発するアプリごとに、ソリューションに基づくビジネス要件が異なります。 すべての要件について時間をかけて考えることが、本番環境のアプリを成功させるための鍵です。

ソリューションまたは会社のポリシーに応じて、セキュリティ、プライバシー、またはコンプライアンスに関する特定の要件を満たすことが必要な場合があります。 たとえば、アプリで安全な個人情報を収集しているとします。 この情報が安全に保管され、誰にも見えないようにする必要があります。

このプロセスでは、政府規制や認証/承認の要件 (該当する場合) も特定する必要があります。 この段階では、質問に対するすべての答えを持っている必要はありません。すべての要件を知りたいだけです。

データ モデル

「Power Apps 関連テクノロジ」モジュールでは、アプリを構築するための一般的なデータ ソースをいくつか説明しました。これらすべての選択肢の中から、ソリューションに使用するデータ ソースを実際にどのように決定しますか。 たぶん、SharePoint のように、ユーザーが日常的に使用するデータ ソースがすでに実装されているでしょう。 これをデータ ソースとして使用してアプリを構築することはできますか。 複数のデータ ソースに接続する必要がありますか。 これらのことを自問してみることをお勧めします。また、次のような他の要素を考慮する必要があります。

  • ビジネス要件 – データ ソースとサポートされている機能は各々少しずつ異なります。 したがって、アプリの要件に応じ、そのニーズを満たすデータ ソースを選択するか、または、選択したデータ ソースでサポートされている機能に準拠するようにビジネス要件を変更する必要があります。
  • ライセンス/費用 – Microsoft Dataverse や SQL のような特定のデータ ソースは、「プレミアム データ ソース」と見なされます。 プレミアム データ ソースでは、アプリを使用する各ユーザーがアプリごとの Power Apps プランまたはユーザーごとの Power Apps のプランを所有する必要があります。 ライセンスについては、Power Apps の価格 を参照してください。

ユーザー エクスペリエンス (UX)

Power Apps キャンバス アプリでソリューションを設計することにより、エンドユーザーのエクスペリエンスを完全に制御できます。 これにより、アプリのほぼすべての側面を完全にカスタマイズできます。 ただし、できるからといって、必ずしもその必要はありません。 Power Apps ソリューションを設計する際には、ソリューションをシンプルにする必要があります。 エンド ユーザーがアプリケーションを開いて使用し始めたときに、クリックする内容や移動先について混乱が生じない必要があります。 アプリの使用方法を理解するためにユーザー向けの広範なトレーニング プログラムが必要な場合は、アプリを再検討することをお勧めします。

考慮する必要がある基本的なデザイン要素には、次のようなものがあります。

  • カスタム ブランド (ロゴとカラー)
  • ポップアップ
  • ユーザーのアクセスとアクセス許可に基づいたボタンの非表示/表示

トレーニング クラスのポップアップ アンケート アプリのスクリーンショット。

アプリケーションに実装できる、最も一般的なユーザー エクスペリエンス拡張機能の 1 つはポップアップです。 ポップアップを実装することで、ユーザーがクリックした内容を確認するためのシンプルでありながら便利なビジュアルをユーザーに提供できます。または、バックエンドのロジックが処理されるときにポップアップがロード画面として機能する場合があります。 たとえば、次のスクリーンショットで示されているように、ユーザーが [送信] をクリックしたときに送信が成功したことを知らせる簡単なポップアップ表示があります。

このサンプル アプリでは、ユーザーは、参加したばかりのトレーニング クラスに対するアンケートを完了します。

トレーニング クラスのアンケート アプリのスクリーンショット。

すべての情報がデータ ソースに正常に書き込まれると、送信が成功したことを確認するポップアップが生成されます。

アンケート アプリの正常終了メッセージのスクリーンショット。

確認が表示されなければ、ユーザーは正しく送信されたかどうかが分からないかもしれません。 分からないのでボタンを再度クリックしようとすると、誤ったデータ、または一貫性のないデータがデータソースに書き込まれてしまいます。

アプリに対して行うことができるカスタマイズはこういったものだけではなく、あくまで一般的なものの一部にすぎません。 さまざまな設計機能を追加する際に留意すべきもう 1 つの点は、アプリのカスタマイズに追加するロジックが増えるほど、アプリケーションで処理する必要のあるコードが増えることです。 たとえば、ボタンを非表示にしたり、特定の画面にポップアップを表示したりするために複数の異なる関数を追加すると、コードの各部分が実行されるときにアプリケーションのパフォーマンスが低下する可能性があります。

最後に、ユーザー エクスペリエンスを改善することにも挑戦してみましょう。 今日、ユーザーはボックスをクリックし、デバイスのキーボードを文字から数字に変更してから「70」と入力して、室温を記録するとしましょう。 より良いオプションは、規定値が 70 で、範囲が 65 〜 75 の Slider コントロールに置き換えることです。 この場合、指でスワイプするだけで、気温を記録できます。 このような小さな変更により、アプリ ユーザーの満足度と生産性が向上します。

ユーザー インターフェイス (UI)

ユーザー インターフェイスまたは UI を完全に視覚化するには、アプリケーションのモックアップを作成することをお勧めします。 アプリケーションのモックアップを作成するための一般的な方法として、次の 2 つがあります。

  • Visio を使用してワイヤーフレーム図を作成します。 ワイヤーフレームは、アプリケーションのユーザー インタフェースを視覚的に表現したものです。 まず、さまざまな Web サイトやモバイル ワイヤーフレーム テンプレートを使用できます。また、空のテンプレートから作業を開始することもできます。 この図では、アプリの機能を簡単に表示して、設計に対するチームの合意を高めることができます。

次の例は、在庫アプリケーションの購買品目画面の単純な Visio ワイヤーフレームを示しています。

単純な Visio ワイヤーフレームの例のスクリーンショット。

  • アプリケーションのモックアップを作成するために Power Apps を使用します。 ほとんどのコントロール、グラフィック、フォーム、およびその他の品目をアプリ画面に追加し、アプリを実際に構築する場合と同じように、各要素のレイアウトとサイズを試してみることができます。 UI をデザインするときには、画面に配置したさまざまな要素に論理的根拠は必要はありません。 ここでの目標は、アプリの外観と機能に焦点を当てることです。 これは、Visio ワイヤフレームを使用してできることと似ていますが、この方法を取る最大のメリットの 1 つは、Power Apps での作業経験を積み、プロセスで使用できるさまざまな UI 要素についての詳細な知識が得られるということです。 Power Apps でアプリのモックアップを作成することで得られるすべての経験と知識は、後で本番アプリを開始するときになって初めて活かすことができます。 モックアップに Power Apps を使用するもう 1 つの大きなメリットは、モックアップをチームに提示して好ましい反応を得た場合、このアプリの作成を続行することもできますし、新しいアプリを作成する場合も保持したい要素をそのアプリケーションにコピーすることができます。 UI 全体をやり直す必要がなく、一部だけをやり直せばいいので、作業時間を節約できる可能性があります。

次の例は、新しい発注書画面の簡単なモックアップを示しています。

新しい発注書のアプリのモックアップのスクリーンショット。

最終的には、モックアップの作成に使用するソフトウェアについての好みと快適さが重要となります。 この決定を行う場合は、ライセンスとコストについても考慮する必要があります。 Visio では、ワイヤーフレーム図の作成に必要な機能をすべて利用するために別のライセンスが必要です。 対する Power Apps では、どのライセンスを所有しているかは関係ありません。 Power Apps があれば (環境に十分なアクセス許可がある限り)、アプリとモックアップのアプリを作成することができます。

ユーザー インターフェイスを設計する際に考慮すべき他の点として、アクセシビリティとローカリゼーションがあります。 すべてのユーザーが問題なくアプリケーションを操作できるように、アプリのインターフェースがアクセシビリティのガイドラインに従っているか確認することが重要です。 これらのガイドラインと他のアクセシビリティ プロパティについては、Power Apps でアクセシビリティ対応のキャンバス アプリを作成するを参照してください。

ローカライズも、アプリケーションの開発時に考慮する必要があるものです。 アプリがどこで使用されるかに応じて、異なる句読点を使用する必要があります。 たとえば、世界の一部の地域では、 (ドットまたはピリオド) を小数点記号として使用し、それ以外の場合は , (コンマ) を使用します。 グローバルにサポートされているアプリケーションの構築の詳細については、キャンバス アプリにグローバル サポートを組み込むを参照してください。

詳細については、 Planning a Power Apps project を参照してください。