C++ デスクトップ (Win32) アプリで標準 WinRT XAML コントロールをホストする
重要
このトピックでは、CommunityToolkit/Microsoft.Toolkit.Win32 GitHub リポジトリの型について使用または言及します。 XAML Islands のサポートに関する重要な情報については、そのリポジトリの XAML Islands に関する通知を参照してください。
この記事では、WinRT XAML ホスティング API を使用して、新しい C++ デスクトップ アプリで標準の WinRT XAML コントロール (つまり、Windows SDK によって提供されるコントロール) をホストする方法について説明します。 コードは単純な XAML Islands のサンプルに基づいています。このセクションでは、コードの最も重要ないくつかの部分について説明します。 C++ デスクトップ アプリ プロジェクトが既にある場合は、以下の手順とコード例をプロジェクトに合わせて調整できます。
注意
この記事で説明するシナリオでは、アプリでホストされている WinRT XAML コントロールの XAML マークアップを直接編集することはサポートされていません。 このシナリオは、ホストされているコントロールの外観と動作をコードで変更することに限定されています。 WinRT XAML コントロールをホストするときに XAML マークアップを直接編集できるようにする手順については、C++ デスクトップ アプリでのカスタム WinRT XAML コントロールのホストに関する記事を参照してください。
デスクトップ アプリケーション プロジェクトを作成する
Windows 10 バージョン 1903 SDK (ビルド 10.0.18362) またはそれ以降のリリースがインストールされている Visual Studio 2019 で、新しい Windows デスクトップ アプリケーション プロジェクトを作成し、MyDesktopWin32App という名前を付けます。 このプロジェクトの種類は、C++、Windows、およびデスクトップのプロジェクト フィルターで使用できます。
ソリューション エクスプローラーでソリューション ノードを右クリックして、 [ソリューションの再ターゲット] をクリックし、10.0.18362.0 以降の SDK リリースを選択してから、 [OK] をクリックします。
Microsoft.Windows.CppWinRT NuGet パッケージをインストールして、プロジェクトでの C++/WinRT のサポートを有効にします。
- ソリューション エクスプローラーでプロジェクトを右クリックし、[NuGet パッケージの管理] を選択します。
- [参照] タブを選択し、Microsoft.Windows.CppWinRT パッケージを探して、このパッケージの最新バージョンをインストールします。
注意
新しいプロジェクトの場合は、C++/WinRT Visual Studio 拡張機能 (VSIX) をインストールし、その拡張機能に含まれているいずれかの C++/WinRT プロジェクト テンプレートを使用できます。 詳しくは、「C++/WinRT の Visual Studio サポートと VSIX」をご覧ください。
[NuGet パッケージ マネージャー] ウィンドウの [参照] タブで Microsoft.Toolkit.Win32.UI.SDK NuGet パッケージを見つけて、このパッケージの最新の安定バージョンをインストールします。 このパッケージでは、XAML Islands がアプリで動作できるようにする、いくつかのビルド資産と実行時資産が提供されています。
アプリケーション マニフェスト内に
maxversiontested
値を設定して、アプリケーションが Windows 10 バージョン 1903 と互換性があることを指定します。プロジェクトにアプリケーション マニフェストがまだない場合は、新しい XML ファイルをプロジェクトに追加し、app.manifest という名前を付けます。
次の例に示すように、compatibility 要素と子要素をアプリケーション マニフェストに含めます。 maxversiontested 要素の Id 属性を、ターゲットとしている Windows のバージョン番号に置き換えます (これは 10.0.18362.0 以降のリリースである必要があります)。 値を大きい値に設定すると、Windows の古いバージョンでアプリが正しく実行されなくなることに注意してください。これは、どの Windows リリースにおいても、それより前のバージョンしか把握されないためです。 Windows 10 バージョン 1903 (ビルド 10.0.18362) でアプリを実行する場合は、10.0.18362.0 の値をそのままにするか、アプリでサポートするさまざまな値に対応できるよう、複数の maxversiontested 要素を追加するようにしてください。
<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?> <assembly xmlns="urn:schemas-microsoft-com:asm.v1" manifestVersion="1.0"> <compatibility xmlns="urn:schemas-microsoft-com:compatibility.v1"> <application> <!-- Windows 10 --> <maxversiontested Id="10.0.18362.0"/> <supportedOS Id="{8e0f7a12-bfb3-4fe8-b9a5-48fd50a15a9a}" /> </application> </compatibility> </assembly>
Windows ランタイム メタデータへの参照を追加します。
- ソリューション エクスプローラーで、プロジェクトの [参照設定] ノードを右クリックし、 [参照の追加] を選択します。
- ページの下部にある [参照] ボタンをクリックし、SDK インストール パスの UnionMetadata フォルダーに移動します。 既定では、SDK は
C:\Program Files (x86)\Windows Kits\10\UnionMetadata
にインストールされます。 - 次に、ターゲットとする Windows バージョン (例: 10.0.18362.0) が名前に含まれるフォルダーを選択して、そのフォルダー内で
Windows.winmd
ファイルを選びます。 - [OK] をクリックし、 [参照の追加] ダイアログを閉じます。
XAML ホスティング API を使用して WinRT XAML コントロールをホストする
XAML ホスティング API を使用して WinRT XAML コントロールをホストする基本的なプロセスでは、次の一般的な手順に従います。
アプリで、現在のスレッド用に WinRT XAML フレームワークを初期化してから、それによってホストされる Windows.UI.Xaml.UIElement オブジェクトを作成します。 これを行うには、コントロールをホストする DesktopWindowXamlSource オブジェクトをいつ作成する予定かによって、複数の方法があります。
アプリケーションで DesktopWindowXamlSource オブジェクトを作成し、その後に、そのオブジェクトによってホストされるいずれかの Windows.UI.Xaml.UIElement オブジェクトを作成する場合は、DesktopWindowXamlSource オブジェクトをインスタンス化するときに、このフレームワークが初期化されます。 このシナリオでは、フレームワークを初期化するためにご自身のコードを追加する必要はありません。
ただし、アプリケーションで Windows.UI.Xaml.UIElement オブジェクトを先に作成し、それらのオブジェクトをホストする DesktopWindowXamlSource オブジェクトをその後に作成する場合は、アプリケーションで静的な WindowsXamlManager.InitializeForCurrentThread メソッドを呼び出して、Windows.UI.Xaml.UIElement オブジェクトがインスタンス化される前に WinRT XAML フレームワークを明示的に初期化する必要があります。 アプリケーションでは一般的に、DesktopWindowXamlSource をホストする親 UI 要素がインスタンス化されるときに、このメソッドを呼び出す必要があります。
注意
このメソッドからは、WinRT XAML フレームワークへの参照を含む WindowsXamlManager オブジェクトが返されます。 任意の 1 つのスレッドで WindowsXamlManager オブジェクトを必要な数だけ作成できます。 ただし、各オブジェクトが WinRT XAML フレームワークへの参照を保持しているため、オブジェクトを破棄して、最終的に XAML リソースが確実に解放されるようにする必要があります。
DesktopWindowXamlSource オブジェクトを作成し、アプリケーション内のウィンドウ ハンドルに関連付けられている親 UI 要素にアタッチします。
これを行うには、次の手順に従う必要があります。
DesktopWindowXamlSource オブジェクトを作成し、それを IDesktopWindowXamlSourceNative または IDesktopWindowXamlSourceNative2 COM インターフェイスにキャストします。
IDesktopWindowXamlSourceNative または IDesktopWindowXamlSourceNative2 インターフェイスの AttachToWindow メソッドを呼び出し、アプリケーション内の親 UI 要素のウィンドウ ハンドルを渡します。
重要
AttachToWindow メソッドが、DesktopWindowXamlSource オブジェクトごとに 1 回のみ呼び出されるようにしてください。 1 つの DesktopWindowXamlSource オブジェクトに対してこのメソッドを複数回呼び出すと、メモリ リークが発生する可能性があります。
DesktopWindowXamlSource に含まれる内部の子ウィンドウの初期サイズを設定します。 既定では、この内部の子ウィンドウは、幅と高さが 0 に設定されています。 ウィンドウのサイズを設定しない場合、DesktopWindowXamlSource に追加した WinRT XAML コントロールは表示されません。 DesktopWindowXamlSource の内部の子ウィンドウにアクセスするには、IDesktopWindowXamlSourceNative または IDesktopWindowXamlSourceNative2 インターフェイスの WindowHandle プロパティを使用します。
最後に、ホストする対象の Windows.UI.Xaml.UIElement を DesktopWindowXamlSource オブジェクトの Content プロパティに割り当てます。
次の手順とコード例は、上記のプロセスを実装する方法を示しています。
プロジェクトの "ソース ファイル" フォルダーで、既定の MyDesktopWin32App ファイルを開きます。 ファイルの内容全体を削除し、次の
include
およびusing
ステートメントを追加します。 C++ および UWP の標準のヘッダーと名前空間に加えて、これらのステートメントによって XAML Islands 固有のいくつかの項目がインクルードされます。#include <windows.h> #include <stdlib.h> #include <string.h> #include <winrt/Windows.Foundation.Collections.h> #include <winrt/Windows.system.h> #include <winrt/windows.ui.xaml.hosting.h> #include <windows.ui.xaml.hosting.desktopwindowxamlsource.h> #include <winrt/windows.ui.xaml.controls.h> #include <winrt/Windows.ui.xaml.media.h> using namespace winrt; using namespace Windows::UI; using namespace Windows::UI::Composition; using namespace Windows::UI::Xaml::Hosting; using namespace Windows::Foundation::Numerics;
前のセクションの後に次のコードをコピーします。 このコードでは、アプリの WinMain 関数を定義します。 この関数によって基本的なウィンドウを初期化し、XAML ホスティング API を使用して、ウィンドウ内の単純な UWP TextBlock コントロールをホストします。
LRESULT CALLBACK WindowProc(HWND, UINT, WPARAM, LPARAM); HWND _hWnd; HWND _childhWnd; HINSTANCE _hInstance; int CALLBACK WinMain(_In_ HINSTANCE hInstance, _In_opt_ HINSTANCE hPrevInstance, _In_ LPSTR lpCmdLine, _In_ int nCmdShow) { _hInstance = hInstance; // The main window class name. const wchar_t szWindowClass[] = L"Win32DesktopApp"; WNDCLASSEX windowClass = { }; windowClass.cbSize = sizeof(WNDCLASSEX); windowClass.lpfnWndProc = WindowProc; windowClass.hInstance = hInstance; windowClass.lpszClassName = szWindowClass; windowClass.hbrBackground = (HBRUSH)(COLOR_WINDOW + 1); windowClass.hIconSm = LoadIcon(windowClass.hInstance, IDI_APPLICATION); if (RegisterClassEx(&windowClass) == NULL) { MessageBox(NULL, L"Windows registration failed!", L"Error", NULL); return 0; } _hWnd = CreateWindow( szWindowClass, L"Windows c++ Win32 Desktop App", WS_OVERLAPPEDWINDOW | WS_VISIBLE, CW_USEDEFAULT, CW_USEDEFAULT, CW_USEDEFAULT, CW_USEDEFAULT, NULL, NULL, hInstance, NULL ); if (_hWnd == NULL) { MessageBox(NULL, L"Call to CreateWindow failed!", L"Error", NULL); return 0; } // Begin XAML Island section. // The call to winrt::init_apartment initializes COM; by default, in a multithreaded apartment. winrt::init_apartment(apartment_type::single_threaded); // Initialize the XAML framework's core window for the current thread. WindowsXamlManager winxamlmanager = WindowsXamlManager::InitializeForCurrentThread(); // This DesktopWindowXamlSource is the object that enables a non-UWP desktop application // to host WinRT XAML controls in any UI element that is associated with a window handle (HWND). DesktopWindowXamlSource desktopSource; // Get handle to the core window. auto interop = desktopSource.as<IDesktopWindowXamlSourceNative>(); // Parent the DesktopWindowXamlSource object to the current window. check_hresult(interop->AttachToWindow(_hWnd)); // This HWND will be the window handler for the XAML Island: A child window that contains XAML. HWND hWndXamlIsland = nullptr; // Get the new child window's HWND. interop->get_WindowHandle(&hWndXamlIsland); // Update the XAML Island window size because initially it is 0,0. SetWindowPos(hWndXamlIsland, 0, 200, 100, 800, 200, SWP_SHOWWINDOW); // Create the XAML content. Windows::UI::Xaml::Controls::StackPanel xamlContainer; xamlContainer.Background(Windows::UI::Xaml::Media::SolidColorBrush{ Windows::UI::Colors::LightGray() }); Windows::UI::Xaml::Controls::TextBlock tb; tb.Text(L"Hello World from Xaml Islands!"); tb.VerticalAlignment(Windows::UI::Xaml::VerticalAlignment::Center); tb.HorizontalAlignment(Windows::UI::Xaml::HorizontalAlignment::Center); tb.FontSize(48); xamlContainer.Children().Append(tb); xamlContainer.UpdateLayout(); desktopSource.Content(xamlContainer); // End XAML Island section. ShowWindow(_hWnd, nCmdShow); UpdateWindow(_hWnd); //Message loop: MSG msg = { }; while (GetMessage(&msg, NULL, 0, 0)) { TranslateMessage(&msg); DispatchMessage(&msg); } return 0; }
前のセクションの後に次のコードをコピーします。 このコードでは、ウィンドウのウィンドウ プロシージャを定義します。
LRESULT CALLBACK WindowProc(HWND hWnd, UINT messageCode, WPARAM wParam, LPARAM lParam) { PAINTSTRUCT ps; HDC hdc; wchar_t greeting[] = L"Hello World in Win32!"; RECT rcClient; switch (messageCode) { case WM_PAINT: if (hWnd == _hWnd) { hdc = BeginPaint(hWnd, &ps); TextOut(hdc, 300, 5, greeting, wcslen(greeting)); EndPaint(hWnd, &ps); } break; case WM_DESTROY: PostQuitMessage(0); break; // Create main window case WM_CREATE: _childhWnd = CreateWindowEx(0, L"ChildWClass", NULL, WS_CHILD | WS_BORDER, 0, 0, 0, 0, hWnd, NULL, _hInstance, NULL); return 0; // Main window changed size case WM_SIZE: // Get the dimensions of the main window's client // area, and enumerate the child windows. Pass the // dimensions to the child windows during enumeration. GetClientRect(hWnd, &rcClient); MoveWindow(_childhWnd, 200, 200, 400, 500, TRUE); ShowWindow(_childhWnd, SW_SHOW); return 0; // Process other messages. default: return DefWindowProc(hWnd, messageCode, wParam, lParam); break; } return 0; }
コード ファイルを保存し、アプリをビルドして実行します。 アプリ ウィンドウに UWP TextBlock コントロールが表示されることを確認します。
注意
warning C4002: too many arguments for function-like macro invocation 'GetCurrentTime'
やmanifest authoring warning 81010002: Unrecognized Element "maxversiontested" in namespace "urn:schemas-microsoft-com:compatibility.v1"
など、いくつかのビルド警告が表示される場合があります。 これらの警告は、現在のツールと NuGet パッケージに関する既知の問題であり、無視してかまいません。
XAML ホスティング API を使用して WinRT XAML コントロールをホストする方法を示す完全な例については、次のコード ファイルをご覧ください。
- C++ デスクトップ (Win32): XAML Islands コード サンプル リポジトリの XamlBridge.cpp ファイルを参照してください。
- WPF: Windows Community Toolkit の WindowsXamlHostBase.cs ファイルと WindowsXamlHost.cs ファイルをご覧ください。
- Windows フォーム: Windows Community Toolkit の WindowsXamlHostBase.cs ファイルと WindowsXamlHost.cs ファイルをご覧ください。
アプリをパッケージ化する
必要に応じて、配置用にアプリを MSIX パッケージにパッケージ化することもできます。 MSIX は、Windows 向けの最新のアプリ パッケージ化テクノロジであり、MSI、.appx、App-V、ClickOnce インストールの各テクノロジの組み合わせが基になっています。
次の手順では、Visual Studio 2019 で Windows アプリケーション パッケージ プロジェクトを使用して、ソリューションのすべてのコンポーネントを MSIX パッケージにパッケージ化する方法について説明します。 これらの手順は、アプリを MSIX パッケージにパッケージ化する場合にのみ必要です。
注意
展開用にアプリケーションを MSIX パッケージにパッケージ化しない場合は、アプリを実行するコンピューターに Visual C++ ランタイムがインストールされている必要があります。
ソリューションに新しい Windows アプリケーション パッケージ プロジェクトを追加します。 プロジェクトを作成するときに、[ターゲット バージョン] と [最小バージョン] の両方に対して、Windows 10 バージョン 1903 (10.0、ビルド 18362) を選択します。
パッケージ プロジェクトで、 [アプリケーション] ノードを右クリックして [参照の追加] を選択します。 プロジェクトの一覧でソリューション内の C++ デスクトップ アプリケーション プロジェクトを選択し、[OK] をクリックします。
パッケージ プロジェクトをビルドして実行します。 アプリが実行されて WinRT XAML コントロールが想定どおりに表示されることを確認します。
パッケージの配布/展開の詳細については、「MSIX の展開を管理する」を参照してください。
次のステップ
この記事のコード例では、C++ デスクトップ アプリで標準の WinRT XAML コントロールをホストする基本的なシナリオについて説明しています。 以下のセクションでは、アプリケーションでサポートすることが必要になる可能性のある追加のシナリオを紹介します。
カスタム WinRT XAML コントロールのホスト
多くのシナリオでは、連携して動作する複数のコントロールを含むカスタム WinRT XAML コントロールをホストすることが必要になる場合があります。 C++ デスクトップ アプリでカスタム コントロール (自身で定義したコントロール、またはサードパーティによって提供されるコントロール) をホストするプロセスは、標準コントロールをホストするよりも複雑であり、追加のコードが必要です。
詳細なチュートリアルについては、XAML ホスティング API を使用した C++ デスクトップ アプリでのカスタム WinRT XAML コントロールのホストに関する記事を参照してください。
高度なシナリオ
XAML Islands をホストする多くのデスクトップ アプリケーションでは、スムーズなユーザー エクスペリエンスを提供するために処理する必要があるシナリオが他にもあります。 たとえば、デスクトップ アプリケーションでは、XAML Islands でのキーボード入力、XAML Islands と他の UI 要素の間でのフォーカス ナビゲーション、およびレイアウトの変更を処理することが、必要になる場合があります。
これらのシナリオの処理に関する詳細、および関連するコード サンプルへのリンクについては、C++ デスクトップ アプリでの XAML Islands の高度なシナリオに関する記事を参照してください。
関連トピック
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