次の方法で共有



February 2016

Volume 31 Number 2

新進気鋭 - 試される忠誠心

Krishnan Rangachari | February 2016

初めて仕事についたころ、人生が変わるほどの手術を受けました。当時の雇い主から十分すぎるほどの医療給付金が支払われたため、自腹を切らずに済みました。

「自分がこの職に就くのは運命だ」と思えるほど感謝しました。何年も会社に留まることで、雇い主に恩を返しました。退職することは裏切り行為も同然という考えです。時間が経つにつれ、生産性が下がり始め、ベストを尽くすのが難しくなり、仕事が嫌になってきました。自分自身の忠誠心に縛られている感覚です。

思い返すと、高い忠誠心を示す最善の方法は、最高のパフォーマンスを発揮できる限り会社に留まり、もはや最高の状態ではないと感じられるころに、会社や同僚の成功を祈りつつ、心から謝辞を表して退職することです。

義務感から仕事を続けても、自分の能力を発揮できません。悪くすれば、仕事が嫌いになり、忠義を尽くすはずの上司を、実際には裏切ることになります。

妥協か選択か

それほど関心のない女性とデートし、他に相手が見つからなさそうだという理由でその人と結婚することを想像してみてください。そんなことをすれば、将来相手の女性を本当に愛するであろう人とのすばらしい出会いを、その女性から奪うことになります。そして、自分が心から愛すべき人だとは思っていないので、自分自身にも嘘をつくことになります。

雇い主との関係も同じです。雇い主との関係がうまくいっていない場合にそこから離れることは、自分にとっても雇い主にとっても、そこに留まるのと同じくらい愛情や献身にあふれた行動です。

私はこれまでキャリアを重ねる中で、就職活動の技術やキャリア第一主義の科学をマスターしたため、職を得る技術はある程度持っています。退職し、別の職を見つけることは可能ですが、今の仕事を愛しているので、留まることを選択しています。これこそが、本当の忠誠心です。

防御手段: 感謝をこめて自由になる

現在は、会社から与えられてきた報酬、人間関係、健康、成長に感謝して、ありのままに自分の人生を生きています。

今は、「この職に就いたのは運命ではない」と理解しています。業務で百万ドルの報酬を得、同僚に命を救われたとしても、その職場に留まる運命とはなりません。今の自分に合った場所とは、当然、まさに自分がいるべき場所です。その場所に満足しなければ、変えるだけです。既に満足しているなら、続けるだけです。運命とは、まさに今生きている人生のことで、こう生きたいという未来の人生のことではありません。

キャリアの中でどのような過ちを犯してきたとしても、それこそが運命です。同じ過ちを繰り返さないようにする方法は、自分にできることを学び、自分の手に余るものはあきらめることです。これまでに犯した失敗は人生の一部だったと感謝して解き放つと、本来の力が引き出され、さらなる高みに到達できます。

忠誠心の負の面

過去には、長い労働時間を強いられ、性格の悪い同僚がいる職場に続けざまに出くわしたことがあります。最終的には、設備、同僚、ワークライフ バランスが自分に合ったすばらしい職場にたどり着くことができました。

しかし、その新たな夢のような職場でも、繰り返しストレスを感じることに気付きました。現実の仕事は困難に満ちていると考えるようになり、人生に意味を持たせることが難しくなります。行動の際に外からのプレッシャーを感じていなかったときは、競争があることを理解せず、理想を追い求める雇い主の役に立っていないと感じていました。

今にして思えば、理想の雇い主に対する自分の忠誠心が、自身を破滅へと向かわせていました。自尊心や達成感を犠牲にして、仕事に集中することで得られる興奮や前進を生きがいにしていました。壮大さや好戦的態度、支配、力へのあこがれが悲しみの種に変わっていったことは間違いありません。最後にはこれに気付き、それまでよりも落ち着いた仕事を求めるようになり、自分のことを愛し、それをそっと素直に示してくれる企業を探しました。

原因は、自身の先入観と独り相撲をしていたことです。就職活動の際、会社に批判的な思い (信用しすぎている、気軽すぎる、知性に欠けているなど) を感じていたのに、自身の直感に反して入社し、腕試しをしました。

結局は、面接官や同僚との調和、思いやり、寛容さ、尊敬を大事にしすぎて間違いが始まります。このような性格を弱みとして片付けるのではなく、その本来の姿である良識や愛情として見るようになりました。次第に、他人の中にあるその性格を尊重するようになると、それらを自身の人生に取り入れるようになります。


Krishnan Rangachari は、ハッカーのキャリア コーチを務めています。シリコン バレーの新興企業や、マイクロソフト (彼は 18 歳のときにここでフルタイムの仕事を始めました) のような大企業で上級エンジニアの役割を務めていました。radicalshifts.com (英語) にアクセスすると、彼が提供するキャリア成功キットを無償でダウンロードできます。