ASP.NET Core Blazor データ バインディング

この記事では、Blazor アプリの Razor コンポーネントとドキュメント オブジェクト モデル (DOM) 要素のデータ バインディング機能について説明します。

バインディング機能

Razor コンポーネントには、フィールド、プロパティ、または Razor 式の値が含まれる @bindRazor ディレクティブ属性を使用したデータ バインディング機能が用意されています。

以下の例で行われているバインドは次のとおりです。

• <input> 要素の値を C# inputValue フィールドに。
• 2 番目の <input> 要素の値を C# InputValue プロパティに。

<input> 要素がフォーカスを失うと、そのバインドされたフィールドまたはプロパティが更新されます。

Bind.razor:

@page "/bind"

<PageTitle>Bind</PageTitle>

<h1>Bind Example</h1>

<p>
    <label>
        inputValue: 
        <input @bind="inputValue" />
    </label>
</p>

<p>
    <label>
        InputValue: 
        <input @bind="InputValue" />
    </label>
</p>

<ul>
    <li><code>inputValue</code>: @inputValue</li>
    <li><code>InputValue</code>: @InputValue</li>
</ul>

@code {
    private string? inputValue;

    private string? InputValue { get; set; }
}

テキスト ボックスは、フィールドまたはプロパティの値の変更に対する応答としてではなく、コンポーネントがレンダリングされたときにのみ UI が更新されます。 コンポーネントはイベント ハンドラーのコードが実行された後に自身をレンダリングするため、通常は、イベント ハンドラーがトリガーされた直後に、フィールドとプロパティの更新が UI に反映されます。

次の例では、データ バインディングが HTML でどのように構成されるかを示すために、InputValue プロパティを 2 番目の <input> 要素の value および onchange 属性 (change) にバインドします。 次の例の 2 番目の <input> 要素は概念実証であって、Razor コンポーネントでデータをバインドする方法を提案するものではありません。

BindTheory.razor:

@page "/bind-theory"

<PageTitle>Bind Theory</PageTitle>

<h1>Bind Theory Example</h1>

<p>
    <label>
        Normal Blazor binding: 
        <input @bind="InputValue" />
    </label>
</p>

<p>
    <label>
        Demonstration of equivalent HTML binding: 
        <input value="@InputValue" @onchange="@((ChangeEventArgs __e) =>
            InputValue = __e?.Value?.ToString())" />
    </label>
</p>

<p>
    <code>InputValue</code>: @InputValue
</p>

@code {
    private string? InputValue { get; set; }
}

BindTheory コンポーネントがレンダリングされると、HTML 実証の <input> 要素の value は InputValue プロパティから取得されます。 ユーザーがテキスト ボックスに値を入力し、要素のフォーカスを変更すると、onchange イベントが発生し、InputValue プロパティは変更された値に設定されます。 実際には、@bind で扱われるのは、型変換が行われるケースであるため、コード生成はより複雑になります。 一般に、@bind は式の現在の値と <input> の value 属性を関連付け、登録されたハンドラーを使って変更を処理します。

{EVENT} プレースホルダーに DOM イベントを使用した @bind:event="{EVENT}" 属性を含めることにより、他の DOM イベントのプロパティまたはフィールドをバインドします。 次の例では、<input> 要素の oninput イベント (input) がトリガーされたときに、その要素の値に InputValue プロパティをバインドします。 要素がフォーカスを失ったときに発生する onchange イベント (change) とは異なり、テキスト ボックスの値が変更されたときに oninput (input) が発生します。

Page/BindEvent.razor:

@page "/bind-event"

<PageTitle>Bind Event</PageTitle>

<h1>Bind Event Example</h1>

<p>
    <label>
        InputValue: 
        <input @bind="InputValue" @bind:event="oninput" />
    </label>
    
</p>

<p>
    <code>InputValue</code>: @InputValue
</p>

@code {
    private string? InputValue { get; set; }
}

バインド後に非同期ロジックを実行するには、{EVENT} プレースホルダーの DOM イベントと共に @bind:after="{EVENT}" を使用します。 割り当てられた C# メソッドは、バインドされた値が同期的に割り当てられるまで実行されません。

イベント コールバック パラメーター (EventCallback/EventCallback<T>) を @bind:after で使用することはサポートされていません。 代わりに、Action または Task を返すメソッドを @bind:after に渡します。

次に例を示します。

• 各 <input> 要素の value は、searchText フィールドに同期的にバインドされます。
• メソッドは PerformSearch 非同期的に実行されます。
  • 値が変更された後、最初のボックスがフォーカス (onchange イベント) を失った場合。
  • 2 番目のボックスの各キーストローク (oninput イベント) の後。
• PerformSearch では、非同期メソッド (FetchAsync) を使用してサービスを呼び出し、検索結果を返します。

@inject ISearchService SearchService

<input @bind="searchText" @bind:after="PerformSearch" />
<input @bind="searchText" @bind:event="oninput" @bind:after="PerformSearch" />

@code {
    private string? searchText;
    private string[]? searchResult;

    private async Task PerformSearch() => 
        searchResult = await SearchService.FetchAsync(searchText);
}

追加の例

BindAfter.razor:

@page "/bind-after"
@using Microsoft.AspNetCore.Components.Forms

<h1>Bind After Examples</h1>

<h2>Elements</h2>

<input type="text" @bind="text" @bind:after="() => { }" />

<input type="text" @bind="text" @bind:after="After" />

<input type="text" @bind="text" @bind:after="AfterAsync" />

<h2>Components</h2>

<InputText @bind-Value="text" @bind-Value:after="() => { }" />

<InputText @bind-Value="text" @bind-Value:after="After" />

<InputText @bind-Value="text" @bind-Value:after="AfterAsync" />

@code {
    private string text = "";

    private void After() {}
    private Task AfterAsync() { return Task.CompletedTask; }
}

InputText コンポーネントについて詳しくは、「ASP.NET Core Blazor の入力コンポーネント」を参照してください。

コンポーネントでは、パラメーターのペアを定義することで、双方向のデータ バインディングがサポートされます。

• @bind:get: バインドする値を指定します。
• @bind:set: 値が変更されたときのコールバックを指定します。

@bind:get 修飾子と @bind:set 修飾子は常に一緒に使用されます。

例

BindGetSet.razor:

@page "/bind-get-set"
@using Microsoft.AspNetCore.Components.Forms

<h1>Bind Get Set Examples</h1>

<h2>Elements</h2>

<input type="text" @bind:get="text" @bind:set="(value) => { text = value; }" />
<input type="text" @bind:get="text" @bind:set="Set" />
<input type="text" @bind:get="text" @bind:set="SetAsync" />

<h2>Components</h2>

<InputText @bind-Value:get="text" @bind-Value:set="(value) => { text = value; }" />
<InputText @bind-Value:get="text" @bind-Value:set="Set" />
<InputText @bind-Value:get="text" @bind-Value:set="SetAsync" />

@code {
    private string text = "";

    private void Set(string value)
    {
        text = value;
    }

    private Task SetAsync(string value)
    {
        text = value;
        return Task.CompletedTask;
    }
}

InputText コンポーネントについて詳しくは、「ASP.NET Core Blazor の入力コンポーネント」を参照してください。

@bind:get と @bind:set の別の使用例については、この記事の後半の「3 つ以上のコンポーネント間でバインドする」セクションを参照してください。

Razor 属性バインディングでは大文字と小文字が区別されます。

• @bind、@bind:event、@bind:after が有効です。
• @Bind/@bind:Event/@bind:aftEr (大文字) または @BIND/@BIND:EVENT/@BIND:AFTER (すべてが大文字) は使用できません。

@bind:get/@bind:set 修飾子を使用し、双方向データ バインディングのイベント ハンドラーを回避する

双方向データ バインディングをイベント ハンドラーで実装することはできません。 双方向データ バインディングには @bind:get/@bind:set 修飾子を使用します。

❌ イベント ハンドラーを使用する双方向データ バインディングでは、次の "機能不全のアプローチ" を検討してください。

<p>
    <input value="@inputValue" @oninput="OnInput" />
</p>

<p>
    <code>inputValue</code>: @inputValue
</p>

@code {
    private string? inputValue;

    private void OnInput(ChangeEventArgs args)
    {
        var newValue = args.Value?.ToString() ?? string.Empty;

        inputValue = newValue.Length > 4 ? "Long!" : newValue;
    }
}

OnInput イベント ハンドラーは、4 番目の文字が指定された後に inputValue の値を Long! に更新します。 ただし、ユーザーは UI の要素値に文字を追加し続けることができます。 inputValue の値は、キーストロークごとに要素の値にバインドされません。 上記の例では、一方向のデータ バインディングのみが可能です。

この動作の理由は、コードがイベント ハンドラーの inputValue の値を変更しようとしていることを Blazor が認識していないためです。 DOM 要素の値と .NET 変数の値が @bind 構文でバインドされていない限り、Blazor はそれらを強制的に一致させようとはしません。 以前のバージョンの Blazor では、要素をプロパティにバインドし、セッターを使用してプロパティの値を制御することで、双方向データ バインディングが実装されています。 .NET 7 以降の ASP.NET Core では、次の例で示すように、@bind:get/@bind:set 修飾子構文を使用して双方向データ バインディングを実装します。

✔️ 双方向データ バインディングに @bind:get/@bind:set を使用する次の "正しいアプローチ" を検討してください。

<p>
    <input @bind:event="oninput" @bind:get="inputValue" @bind:set="OnInput" />
</p>

<p>
    <code>inputValue</code>: @inputValue
</p>

@code {
    private string? inputValue;

    private void OnInput(string value)
    {
        var newValue = value ?? string.Empty;

        inputValue = newValue.Length > 4 ? "Long!" : newValue;
    }
}

@bind:get/@bind:set 修飾子を使用すると、@bind:set を介した inputValue の基になる値の制御と、@bind:get を介した inputValue の値の要素の値へのバインドの両方が行われます。 前の例は、双方向データ バインディングを実装するための正しい方法を示しています。

C# の get および set アクセサーを使用したプロパティへのバインド

次の DecimalBinding コンポーネントで示すように、C# の get および set アクセサーを使用して、カスタム バインディング形式の動作を作成できます。 このコンポーネントでは、string プロパティ (DecimalValue) によって、最大 3 桁の小数点以下を含む正または負の 10 進数を <input> 要素にバインドします。

DecimalBinding.razor:

@page "/decimal-binding"
@using System.Globalization

<PageTitle>Decimal Binding</PageTitle>

<h1>Decimal Binding Example</h1>

<p>
    <label>
        Decimal value (±0.000 format):
        <input @bind="DecimalValue" />
    </label>
</p>

<p>
    <code>decimalValue</code>: @decimalValue
</p>

@code {
    private decimal decimalValue = 1.1M;
    private NumberStyles style = 
        NumberStyles.AllowDecimalPoint | NumberStyles.AllowLeadingSign;
    private CultureInfo culture = CultureInfo.CreateSpecificCulture("en-US");

    private string DecimalValue
    {
        get => decimalValue.ToString("0.000", culture);
        set
        {
            if (Decimal.TryParse(value, style, culture, out var number))
            {
                decimalValue = Math.Round(number, 3);
            }
        }
    }
}

Note

get/set アクセサーによるプロパティへの両方向のバインドでは、EventCallback.InvokeAsync によって返された Task を破棄する必要があります。 双方向データ バインディングでは、@bind:get/@bind:set 修飾子を使うことをお勧めします。 詳しくは、この記事で前述した @bind:get/@bind:set のガイダンスを参照してください。

<select> 要素を使用した複数のオプションの選択

バインドでは、<select> 要素を使用した multiple オプションの選択がサポートされます。 @onchange イベントでは、イベント引数 (ChangeEventArgs) を介して選択した要素の配列が提供されます。 その値は配列型にバインドする必要があります。

BindMultipleInput.razor:

@page "/bind-multiple-input"

<h1>Bind Multiple <code>input</code>Example</h1>

<p>
    <label>
        Select one or more cars: 
        <select @onchange="SelectedCarsChanged" multiple>
            <option value="audi">Audi</option>
            <option value="jeep">Jeep</option>
            <option value="opel">Opel</option>
            <option value="saab">Saab</option>
            <option value="volvo">Volvo</option>
        </select>
    </label>
</p>

<p>
    Selected Cars: @string.Join(", ", SelectedCars)
</p>

<p>
    <label>
        Select one or more cities: 
        <select @bind="SelectedCities" multiple>
            <option value="bal">Baltimore</option>
            <option value="la">Los Angeles</option>
            <option value="pdx">Portland</option>
            <option value="sf">San Francisco</option>
            <option value="sea">Seattle</option>
        </select>
    </label>
</p>

<span>
    Selected Cities: @string.Join(", ", SelectedCities)
</span>

@code {
    public string[] SelectedCars { get; set; } = new string[] { };
    public string[] SelectedCities { get; set; } = new[] { "bal", "sea" };

    private void SelectedCarsChanged(ChangeEventArgs e)
    {
        if (e.Value is not null)
        {
            SelectedCars = (string[])e.Value;
        }
    }
}

空の文字列と null 値がデータ バインディングでどのように処理されるかについては、「C# オブジェクトの null 値への <select> 要素オプションのバインド」セクションを参照してください。

C# オブジェクトの null 値への <select> 要素オプションのバインド

次の理由により、<select> 要素のオプション値を C# オブジェクトの null 値として表すよい方法はありません。

• HTML 属性には null 値を設定できません。 HTML で null に最も近いのは、<option> 要素から HTML の value 属性を除去することです。
• value 属性のない <option> を選択すると、ブラウザーではその <option> の要素の "テキスト コンテンツ" として値が扱われます。

Blazor フレームワークでは、次の処理が必要になるため、既定の動作の抑制は試みられません。

• フレームワークでの特殊なケースの回避策のチェーンの作成。
• 現在のフレームワークの動作に対する破壊的変更。

HTML で null に最も近いと思われるものは、"空の文字列" の value です。 Blazor フレームワークでは、<select> の値への双方向バインドに対する空の文字列変換として null が処理されます。

解析不可能値

ユーザーがデータ バインド要素に解析不可能な値を指定すると、バインド イベントがトリガーされると、解析不可能な値は自動的に以前の値に戻されます。

次のコンポーネントについて考えてみます。ここで、<input> 要素は、初期値が 123 である int 型にバインドされています。

UnparsableValues.razor:

@page "/unparsable-values"

<PageTitle>Unparsable Values</PageTitle>

<h1>Unparsable Values Example</h1>

<p>
    <label>
        inputValue: 
        <input @bind="inputValue" />
    </label>
    
</p>

<p>
    <code>inputValue</code>: @inputValue
</p>

@code {
    private int inputValue = 123;
}

バインドは要素の onchange イベントに適用されます。 ユーザーがテキスト ボックスのエントリの値を 123.45 に更新してフォーカスを変更した場合、onchangeが呼び出されると、要素の値は 123 に戻ります。 値 123.45 が拒否されて元の値 123 が設定された場合、ユーザーはその値が受け入れられなかったことを認識します。

oninput イベント (@bind:event="oninput") の場合、解析できない値が入力されたキーストロークの後に、値は元に戻されます。 int にバインドされた型の oninput イベントを対象とする場合、ユーザーがドット (.) 文字を入力することはできません。 ドット (.) 文字はすぐに削除されるので、ユーザーは整数のみが許可されるというフィードバックをすぐに受け取ることができます。 oninput イベントで値を元に戻すのが理想的ではないシナリオもあります。たとえば、ユーザーが解析できない <input> 値をクリアできる必要がある場合などです。 代替手段は次のとおりです。

• oninput イベントは使用しません。 既定の onchange イベントを使用します。この場合、要素がフォーカスを失うまで無効な値は元に戻されません。
• int? や string などの null 許容型にバインドし、@bind:get/@bind:set 修飾子 (この記事で前述) を使用するか、無効なエントリを処理するカスタムの get および set アクセサー ロジックを使用してプロパティにバインドします。
• InputNumber<TValue> や InputDate<TValue> などの入力コンポーネントを、フォーム検証と共に使います。 入力コンポーネントとフォーム検証コンポーネントには、無効な入力を管理するためのサポートが組み込まれています。
  • ユーザーの無効な入力を許可し、関連付けられた EditContext で検証エラーを受信します。
  • ユーザーが追加の Web フォーム データを入力することを妨げることなく、UI に検証エラーを表示します。

書式指定文字列

データ バインディングでは、@bind:format="{FORMAT STRING}" を使用して単一の DateTime 書式指定文字列を処理できます。ここで、{FORMAT STRING} プレースホルダーは書式指定文字列です。 通貨や数値の形式など、その他の書式指定式は現時点では使用できませんが、今後のリリースで追加される可能性があります。

DateBinding.razor:

@page "/date-binding"

<PageTitle>Date Binding</PageTitle>

<h1>Date Binding Example</h1>

<p>
    <label>
        <code>yyyy-MM-dd</code> format:
        <input @bind="startDate" @bind:format="yyyy-MM-dd" />
    </label>
</p>

<p>
    <code>startDate</code>: @startDate
</p>

@code {
    private DateTime startDate = new(2020, 1, 1);
}

上のコードでは、<input> 要素のフィールドの種類 (type 属性) は既定で text に設定されています。

サポートされるのは、Null 許容の System.DateTime および System.DateTimeOffset だけです。

private DateTime? date;
private DateTimeOffset? dateOffset;

Blazor には日付の書式を設定するためのサポートが組み込まれているため、date フィールド型の形式を指定することは推奨されません。 この推奨事項には反しますが、date フィールド型で形式を指定する場合は、yyyy-MM-dd 日付形式を使用してバインドしたのみ正しく機能します。

<input type="date" @bind="startDate" @bind:format="yyyy-MM-dd">

コンポーネント パラメーターによるバインディング

一般的なシナリオは、子コンポーネントのプロパティをその親コンポーネントのプロパティにバインドすることです。 このシナリオは、複数のレベルのバインドが同時に発生するため、チェーン バインドと呼ばれます。

子コンポーネントには、@bind 構文を使用してチェーン バインドは実装することはできません。 子コンポーネントから親のプロパティを更新するには、イベント ハンドラーと値を別々に指定する必要があります。 子コンポーネントによるデータ バインディングを設定するため、親コンポーネントによって引き続き @bind 構文が活用されます。

次の ChildBind コンポーネントには、Year コンポーネント パラメーターと EventCallback<TValue> があります。 慣例により、パラメーターの EventCallback<TValue> には、コンポーネント パラメーター名としてサフィックス "Changed" を使用して名前を付ける必要があります。 名前付け構文は {PARAMETER NAME}Changed です。ここで、{PARAMETER NAME} プレースホルダーはパラメーター名です。 次の例では、EventCallback<TValue> に YearChanged という名前が付けられています。

EventCallback.InvokeAsync によって、バインディングに関連付けられているデリゲートが指定の引数で呼び出され、変更されたプロパティのイベント通知が送信されます。

ChildBind.razor:

<div class="card bg-light mt-3" style="width:18rem ">
    <div class="card-body">
        <h3 class="card-title">ChildBind Component</h3>
        <p class="card-text">
            Child <code>Year</code>: @Year
        </p>
        <button @onclick="UpdateYearFromChild">Update Year from Child</button>
    </div>
</div>

@code {
    [Parameter]
    public int Year { get; set; }

    [Parameter]
    public EventCallback<int> YearChanged { get; set; }

    private async Task UpdateYearFromChild() => 
        await YearChanged.InvokeAsync(Random.Shared.Next(1950, 2021));
}

イベントと EventCallback<TValue> について詳しくは、記事「ASP.NET Core Blazor のイベント処理」の「EventCallback」セクションを参照してください。

次の Parent1 コンポーネントでは、year フィールドが子コンポーネントの Year パラメーターにバインドされています。 Year パラメーターには、Year パラメーターの型と一致するコンパニオン YearChanged イベントがあるため、バインド可能です。

Parent1.razor:

@page "/parent-1"

<PageTitle>Parent 1</PageTitle>

<h1>Parent Example 1</h1>

<p>Parent <code>year</code>: @year</p>

<button @onclick="UpdateYear">Update Parent <code>year</code></button>

<ChildBind @bind-Year="year" />

@code {
    private int year = 1979;

    private void UpdateYear() => year = Random.Shared.Next(1950, 2021);
}

コンポーネント パラメーター バインドは、@bind:after イベントをトリガーすることもできます。 次の例では、Year コンポーネント パラメーターをバインドした後、YearUpdated メソッドが非同期的に実行されます。

<ChildBind @bind-Year="year" @bind-Year:after="YearUpdated" />

@code {
    ...

    private async Task YearUpdated()
    {
        ... = await ...;
    }
}

慣例により、ハンドラーに割り当てられた @bind-{PROPERTY}:event 属性を含めることで、プロパティを対応するイベント ハンドラーにバインドできます。ここで、{PROPERTY} プレースホルダーはプロパティです。 <ChildBind @bind-Year="year" /> は次のように書く場合と同じです。

<ChildBind @bind-Year="year" @bind-Year:event="YearChanged" />

もっと洗練された実世界の例では、次の PasswordEntry コンポーネントにより、次のことが行われます。

• password フィールドに <input> 要素の値を設定します。
• 子の password フィールドの現在の値を引数として渡す EventCallback を使用して、Password プロパティの変更を親コンポーネントに公開します。
• onclick イベントを使用して、ToggleShowPassword メソッドをトリガーします。 詳細については、「ASP.NET Core Blazor のイベント処理」を参照してください。

PasswordEntry.razor:

<div class="card bg-light mt-3" style="width:22rem ">
    <div class="card-body">
        <h3 class="card-title">Password Component</h3>
        <p class="card-text">
            <label>
                Password:
                <input @oninput="OnPasswordChanged"
                       required
                       type="@(showPassword ? "text" : "password")"
                       value="@password" />
            </label>
        </p>
        <button class="btn btn-primary" @onclick="ToggleShowPassword">
            Show password
        </button>
    </div>
</div>

@code {
    private bool showPassword;
    private string? password;

    [Parameter]
    public string? Password { get; set; }

    [Parameter]
    public EventCallback<string> PasswordChanged { get; set; }

    private async Task OnPasswordChanged(ChangeEventArgs e)
    {
        password = e?.Value?.ToString();

        await PasswordChanged.InvokeAsync(password);
    }

    private void ToggleShowPassword() => showPassword = !showPassword;
}

PasswordEntry コンポーネントは、次の PasswordBinding コンポーネントの例のように、別のコンポーネントで使用されます。

PasswordBinding.razor:

@page "/password-binding"

<PageTitle>Password Binding</PageTitle>

<h1>Password Binding Example</h1>

<PasswordEntry @bind-Password="password" />

<p>
    <code>password</code>: @password
</p>

@code {
    private string password = "Not set";
}

PasswordBinding コンポーネントが最初にレンダリングされると、Not set の password 値が UI に表示されます。 初期レンダリングの後、password の値により、PasswordEntry コンポーネントの Password コンポーネント パラメーター値に加えられた変更が反映されます。

Note

前の例では、子 PasswordEntry コンポーネントから親 PasswordBinding コンポーネントにパスワードを一方向にバインドします。 このシナリオでは、パスワードを親に渡すだけのアプリで再利用するための共有パスワード入力コンポーネントをアプリに含めることが目標である場合、双方向バインディングは要件ではありません。 子コンポーネントのパラメーターに直接書き込むことなく双方向のバインディングを許可する方法については、 この記事の「3 つ以上のコンポーネント間でバインドする」セクションの NestedChild コンポーネントの例を参照してください。

ハンドラーでチェックを実行するか、エラーをトラップします。 次の改訂された PasswordEntry コンポーネントでは、パスワードの値にスペースが使用されている場合、すぐにユーザーにフィードバックが返されます。

PasswordEntry.razor:

<div class="card bg-light mt-3" style="width:22rem ">
    <div class="card-body">
        <h3 class="card-title">Password Component</h3>
        <p class="card-text">
            <label>
                Password:
                <input @oninput="OnPasswordChanged"
                       required
                       type="@(showPassword ? "text" : "password")"
                       value="@password" />
            </label>
            <span class="text-danger">@validationMessage</span>
        </p>
        <button class="btn btn-primary" @onclick="ToggleShowPassword">
            Show password
        </button>
    </div>
</div>

@code {
    private bool showPassword;
    private string? password;
    private string? validationMessage;

    [Parameter]
    public string? Password { get; set; }

    [Parameter]
    public EventCallback<string> PasswordChanged { get; set; }

    private Task OnPasswordChanged(ChangeEventArgs e)
    {
        password = e?.Value?.ToString();

        if (password != null && password.Contains(' '))
        {
            validationMessage = "Spaces not allowed!";

            return Task.CompletedTask;
        }
        else
        {
            validationMessage = string.Empty;

            return PasswordChanged.InvokeAsync(password);
        }
    }

    private void ToggleShowPassword() => showPassword = !showPassword;
}

3 つ以上のコンポーネント間でバインドする

入れ子になった任意の数のコンポーネントを介してパラメーターをバインドできますが、次のような一方向のデータ フローを考慮する必要があります。

• 変更通知は "階層をフローアップ" します。
• 新しいパラメーター値は "階層をフローダウン" します。

次の例に示すように、一般的な推奨される方法は、基になるデータを親コンポーネントに格納のみすることであり、これにより、更新する必要がある状態に関する混乱を避けることができます。

Parent2.razor:

@page "/parent-2"

<PageTitle>Parent 2</PageTitle>

<h1>Parent Example 2</h1>

<p>Parent Message: <b>@parentMessage</b></p>

<p>
    <button @onclick="ChangeValue">Change from Parent</button>
</p>

<NestedChild @bind-ChildMessage="parentMessage" />

@code {
    private string parentMessage = "Initial value set in Parent";

    private void ChangeValue() => parentMessage = $"Set in Parent {DateTime.Now}";
}

次の NestedChild コンポーネントでは、NestedGrandchild コンポーネントは:

• ChildMessage の値を @bind:get 構文で GrandchildMessage に割り当てます。
• ChildMessageChanged が @bind:set 構文を使用して実行された場合に GrandchildMessage を更新します。

NestedChild.razor:

<div class="border rounded m-1 p-1">
    <h2>Child Component</h2>

    <p>Child Message: <b>@ChildMessage</b></p>

    <p>
        <button @onclick="ChangeValue">Change from Child</button>
    </p>

    <NestedGrandchild @bind-GrandchildMessage:get="ChildMessage" 
        @bind-GrandchildMessage:set="ChildMessageChanged" />
</div>

@code {
    [Parameter]
    public string? ChildMessage { get; set; }

    [Parameter]
    public EventCallback<string?> ChildMessageChanged { get; set; }

    private async Task ChangeValue() => 
        await ChildMessageChanged.InvokeAsync($"Set in Child {DateTime.Now}");
}

NestedGrandchild.razor:

<div class="border rounded m-1 p-1">
    <h3>Grandchild Component</h3>

    <p>Grandchild Message: <b>@GrandchildMessage</b></p>

    <p>
        <button @onclick="ChangeValue">Change from Grandchild</button>
    </p>
</div>

@code {
    [Parameter]
    public string? GrandchildMessage { get; set; }

    [Parameter]
    public EventCallback<string> GrandchildMessageChanged { get; set; }

    private async Task ChangeValue() => 
        await GrandchildMessageChanged.InvokeAsync(
            $"Set in Grandchild {DateTime.Now}");
}

メモリ内で、および必ずしも入れ子にはなっていないコンポーネント間でデータを共有するのに適した別の方法については、「ASP.NET Core Blazor の状態管理」を参照してください。

バインドされたフィールドまたはプロパティの式ツリー

バインドとのより深い対話を容易にするために、Blazor では、バインドされたフィールドまたはプロパティの式ツリーをキャプチャできます。 これを行うには、フィールド名またはプロパティ名に Expression というサフィックスを付けたプロパティを定義します。 {FIELD OR PROPERTY NAME} という名前のフィールドまたはプロパティの場合、対応する式ツリーのプロパティ名は {FIELD OR PROPERTY NAME}Expression です。

次の ChildParameterExpression コンポーネントは、Year 式のモデルとフィールド名を識別します。 モデルとフィールド名を取得するために使用される FieldIdentifier は、編集できる 1 つのフィールドを一意に識別します。 これは、モデル オブジェクトのプロパティに対応したものにすることも、他の任意の名前付きの値にすることもできます。 パラメーターの式の使用は、カスタム検証コンポーネントを作成する場合に便利です。これは、Microsoft Blazor のドキュメントでは説明されていませんが、多数のサード パーティのリソースに記載されています。

ChildParameterExpression.razor:

@using System.Linq.Expressions

<ul>
    <li>Year model: @yearField.Model</li>
    <li>Year field name: @yearField.FieldName</li>
</ul>

@code {
    private FieldIdentifier yearField;

    [Parameter]
    public int Year { get; set; }

    [Parameter]
    public EventCallback<int> YearChanged { get; set; }

    [Parameter]
    public Expression<Func<int>> YearExpression { get; set; } = default!;

    protected override void OnInitialized() => 
        yearField = FieldIdentifier.Create(YearExpression);
}

Parent3.razor:

@page "/parent-3"

<PageTitle>Parent 3</PageTitle>

<h1>Parent Example 3</h1>

<p>Parent <code>year</code>: @year</p>

<ChildParameterExpression @bind-Year="year" />

@code {
    private int year = 1979;
}

その他のリソース

• パラメーター変更の検出と Razor コンポーネントのレンダリングに関する追加のガイダンス
• ASP.NET Core Blazor フォームの概要
• フォーム内のラジオ ボタンへのバインド
• InputSelect オプションを C# オブジェクトの null 値にバインドする
• ASP.NET Core Blazor のイベント処理: EventCallback セクション
• Blazor サンプル GitHub リポジトリ (dotnet/blazor-samples) (ダウンロード方法)