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サーバーレス コンピューティングでのモデル トレーニング

適用対象:Azure CLI ml extension v2 (現行)Python SDK azure-ai-ml v2 (現行)

スケーラブルな方法でモデルをトレーニングするためにコンピューティングを作成して管理する必要はなくなりました。 代わりに、サーバーレス コンピューティングと呼ばれる新しいコンピューティング ターゲットの種類にジョブを送信できます。 サーバーレス コンピューティングは、Azure Machine Learning でトレーニング ジョブを実行する最も簡単な方法です。 サーバーレス コンピューティングは、フル マネージドのオンデマンド コンピューティングです。 Azure Machine Learning では、コンピューティングの作成、スケーリング、管理が行われます。 サーバーレス コンピューティングによるモデル トレーニングを通じて、機械学習の専門家は機械学習モデルの構築に関する専門知識に集中でき、コンピューティング インフラストラクチャやその設定について学ぶ必要がありません。

機械学習の専門家は、ジョブに必要なリソースを指定できます。 Azure Machine Learning でコンピューティング インフラストラクチャが管理され、マネージド ネットワーク分離により負担が軽減されます。

また、各ジョブに最適なリソースを指定することで、企業はコストを削減できます。 IT 管理者は引き続き、サブスクリプションおおびワークスペース レベルでコア クォータを指定することで制御を適用し、Azure ポリシーを適用できます。

サーバーレス コンピューティングを使用すると、LLAMA 2 などのモデル カタログ内のモデルを微調整できます。 サーバーレス コンピューティングは、Azure Machine Learning スタジオ、SDK、CLI からすべての種類のジョブを実行するために使用できます。 サーバーレス コンピューティングは、環境イメージの構築や責任ある AI ダッシュボードのシナリオにも使用できます。 サーバーレス ジョブは、Azure Machine Learning コンピューティング クォータと同じクォータを使います。 標準 (専用) レベルまたはスポット (低優先度) VM を選択できます。 マネージド ID とユーザー ID は、サーバーレス ジョブでサポートされています。 課金モデルは、Azure Machine Learning コンピューティングと同じです。

サーバーレス コンピューティングの利点

  • Azure Machine Learning は、コンピューティング インフラストラクチャの作成、設定、スケーリング、削除、修正プログラムの適用を管理し、管理オーバーヘッドを削減します
  • コンピューティング、さまざまなコンピューティングの種類、関連プロパティについて学ぶ必要はありません。
  • 必要な VM サイズごとにクラスターを作成し、同じ設定を使い、ワークスペースごとにレプリケーションを繰り返し行う必要がありません。
  • インスタンスの種類 (VM サイズ) とインスタンス数の観点から、各ジョブが必要とするリソースを実行時に正確に指定することで、コストを最適化できます。 ジョブの使用率メトリックを監視して、ジョブに必要なリソースを最適化できます。
  • ジョブの実行に関連するステップの削減
  • ジョブの送信をさらに簡略化するために、リソースを完全にスキップできます。 Azure Machine Learning では、インスタンス数が既定値で設定され、クォータ、コスト、パフォーマンス、ディスク サイズなどの要因に基づいてインスタンスの種類 (VM サイズ) が選択されます。
  • 場合によっては、ジョブの実行が開始されるまでの待機時間が短くなります。
  • ジョブの送信では、ユーザー ID とワークスペース ユーザー割り当てマネージド ID がサポートされています。
  • マネージド ネットワーク分離を使用すると、ネットワーク分離構成を合理化および自動化できます。 お客様の仮想ネットワークもサポートされています
  • クォータと Azure ポリシーを使用した管理制御

サーバーレス コンピューティングの使用方法

  • 以下に示すようにノートブックを使用して、LLAMA 2 などの基盤モデルを微調整できます。

  • 独自のコンピューティング クラスターを作成する場合、compute="cpu-cluster" のように、コマンド ジョブでその名前を使います。 サーバーレスでは、コンピューティング クラスターの作成をスキップし、compute パラメーターを省略することで、代わりにサーバーレス コンピューティングを使用できます。 ジョブに compute が指定されていない場合、ジョブはサーバーレス コンピューティングで実行されます。 CLI または SDK のジョブでコンピューティング名を省略すると、次のジョブの種類でサーバーレス コンピューティングが使われ、必要に応じてジョブが必要とするリソースをインスタンス数およびインスタンスの種類で指定できます。

    • 対話型ジョブや分散トレーニングを含むコマンド ジョブ
    • AutoML ジョブ
    • スイープ ジョブ
    • 並列ジョブ
  • CLI を介したパイプライン ジョブの場合、パイプライン レベルの既定のコンピューティングには default_compute: azureml:serverless を使います。 SDK を介したパイプライン ジョブの場合は default_compute="serverless" を使います。 例については、「パイプライン ジョブ」を参照してください。

  • スタジオ (プレビュー) でトレーニング ジョブを送信する場合、コンピューティングの種類として [サーバーレス] を選びます。

  • Azure Machine Learning デザイナーを使う場合、既定のコンピューティングとして [サーバーレス] を選びます。

  • 責任ある AI ダッシュボードにサーバーレス コンピューティングを使用できます

パフォーマンスに関する考慮事項

サーバーレス コンピューティングを使うと、次のようにトレーニングの高速化に役立ちます。

クォータの不足: 独自のコンピューティング クラスターを作成する場合、作成する VM サイズとノード数を把握する必要があります。 ジョブの実行時に、クラスターのクォータが十分でない場合、ジョブは失敗します。 サーバーレス コンピューティングでは、クォータに関する情報を使って、既定で適切な VM サイズを選びます。

スケールダウンの最適化: コンピューティング クラスターがスケールダウンしている場合、新しいジョブはスケールダウンが起こるのを待ち、ジョブを実行する前にスケールアップする必要があります。 サーバーレス コンピューティングでは、スケールダウンを待つ必要がなく、ジョブは別のクラスター/ノードで実行を開始できます (クォータがある場合)。

クラスター ビジーの最適化: コンピューティング クラスターでジョブを実行中に別のジョブが送信されると、ジョブは現在実行中のジョブの後ろにキューイングされます。 サーバーレス コンピューティングでは、別のノードや別のクラスターでジョブの実行を開始できます (クォータがある場合)。

Quota

ジョブを送信する場合でも、続行するのに十分な Azure Machine Learning コンピューティング クォータ (ワークスペースとサブスクリプション レベルのクォータの両方) が必要です。 サーバーレス ジョブの既定の VM サイズは、このクォータに基づいて選ばれます。 独自の VM サイズ/ファミリを指定する場合:

  • VM サイズ/ファミリのクォータはあるが、インスタンス数に対するクォータが十分でない場合、エラーが表示されます。 このエラーでは、インスタンス数をクォータ制限に基づいて有効な数に減らすか、この VM ファミリのクォータの引き上げを要求するか、VM サイズを変更することをお勧めします。
  • 指定した VM サイズのクォータがない場合は、エラーが表示されます。 このエラーでは、クォータが不足しない別の VM サイズを選ぶか、この VM ファミリのクォータを要求することをお勧めします。
  • サーバーレス ジョブを実行するのに十分な VM ファミリのクォータがあるが、他のジョブでそのクォータが使われている場合、クォータが使用可能になるまでジョブはキューで待機する必要があるというメッセージが表示されます。

Azure portal で使用量とクォータを表示すると、"サーバーレス" という名前が表示され、サーバーレス ジョブで使ったすべてのクォータが表示されます。

ID のサポートと資格情報のパススルー

  • ユーザー資格情報のパススルー: サーバーレス コンピューティングは、ユーザー資格情報のパススルーを完全にサポートしています。 ジョブを送信するユーザーのユーザー トークンは、ストレージ アクセスに使われます。 これらの資格情報は、Microsoft Entra ID から取得されます。

    from azure.ai.ml import command
    from azure.ai.ml import MLClient     # Handle to the workspace
    from azure.identity import DefaultAzureCredential     # Authentication package
    from azure.ai.ml.entities import ResourceConfiguration
    from azure.ai.ml.entities import UserIdentityConfiguration 
    
    credential = DefaultAzureCredential()
    # Get a handle to the workspace. You can find the info on the workspace tab on ml.azure.com
    ml_client = MLClient(
        credential=credential,
        subscription_id="<Azure subscription id>", 
        resource_group_name="<Azure resource group>",
        workspace_name="<Azure Machine Learning Workspace>",
    )
    job = command(
        command="echo 'hello world'",
        environment="azureml://registries/azureml/environments/sklearn-1.5/labels/latest",
            identity=UserIdentityConfiguration(),
    )
    # submit the command job
    ml_client.create_or_update(job)
    
  • ユーザー割り当てマネージド ID: ユーザー割り当てマネージド ID でワークスペースを構成している場合、その ID をサーバーレス ジョブで使って、ストレージ アクセスに使用できます。 シークレットにアクセスするには、「Azure Machine Learning ジョブで認証資格情報シークレットを使用する」を参照してください。

    from azure.ai.ml import command
    from azure.ai.ml import MLClient     # Handle to the workspace
    from azure.identity import DefaultAzureCredential    # Authentication package
    from azure.ai.ml.entities import ResourceConfiguration
    from azure.ai.ml.entities import ManagedIdentityConfiguration
    
    credential = DefaultAzureCredential()
    # Get a handle to the workspace. You can find the info on the workspace tab on ml.azure.com
    ml_client = MLClient(
        credential=credential,
        subscription_id="<Azure subscription id>", 
        resource_group_name="<Azure resource group>",
        workspace_name="<Azure Machine Learning Workspace>",
    )
    job = command(
        command="echo 'hello world'",
        environment="azureml://registries/azureml/environments/sklearn-1.5/labels/latest",
            identity= ManagedIdentityConfiguration(),
    )
    # submit the command job
    ml_client.create_or_update(job)
    
    

ユーザー割り当てマネージド ID のアタッチの詳細については、「ユーザー割り当てマネージド ID をアタッチする」を参照してください。

コマンド ジョブのプロパティを構成する

コマンド、スイープ、AutoML の各ジョブでコンピューティング先が指定されていない場合、コンピューティングの既定値はサーバーレス コンピューティングになります。 たとえば、このコマンド ジョブの場合:

from azure.ai.ml import command
from azure.ai.ml import command 
from azure.ai.ml import MLClient # Handle to the workspace
from azure.identity import DefaultAzureCredential # Authentication package

credential = DefaultAzureCredential()
# Get a handle to the workspace. You can find the info on the workspace tab on ml.azure.com
ml_client = MLClient(
    credential=credential,
    subscription_id="<Azure subscription id>", 
    resource_group_name="<Azure resource group>",
    workspace_name="<Azure Machine Learning Workspace>",
)
job = command(
    command="echo 'hello world'",
    environment="azureml://registries/azureml/environments/sklearn-1.5/labels/latest",
)
# submit the command job
ml_client.create_or_update(job)

コンピューティングの既定値は、次のサーバーレス コンピューティングです。

  • このジョブの単一ノード。 既定のノード数は、ジョブの種類に基づきます。 他のジョブの種類については、次のセクションを参照してください。
  • CPU 仮想マシン。クォータ、パフォーマンス、コスト、ディスク サイズに基づいて決定されます。
  • 専用仮想マシン
  • ワークスペースの場所

これらの既定値はオーバーライドできます。 サーバーレス コンピューティングの VM 型やノード数を指定する場合は、ジョブに resources を追加します。

  • instance_type で特定の VM を選びます。 特定の CPU/GPU の VM サイズが必要な場合は、このパラメーターを使います

  • ノード数を指定するには instance_count を使います。

    from azure.ai.ml import command 
    from azure.ai.ml import MLClient # Handle to the workspace
    from azure.identity import DefaultAzureCredential # Authentication package
    from azure.ai.ml.entities import JobResourceConfiguration 
    
    credential = DefaultAzureCredential()
    # Get a handle to the workspace. You can find the info on the workspace tab on ml.azure.com
    ml_client = MLClient(
        credential=credential,
        subscription_id="<Azure subscription id>", 
        resource_group_name="<Azure resource group>",
        workspace_name="<Azure Machine Learning Workspace>",
    )
    job = command(
        command="echo 'hello world'",
        environment="azureml://registries/azureml/environments/sklearn-1.5/labels/latest",
        resources = JobResourceConfiguration(instance_type="Standard_NC24", instance_count=4)
    )
    # submit the command job
    ml_client.create_or_update(job)
    
  • ジョブ レベルを変更するには、queue_settings で専用 VM (job_tier: Standard) と低優先度 (jobtier: Spot) のどちらかを選びます。

    from azure.ai.ml import command
    from azure.ai.ml import MLClient    # Handle to the workspace
    from azure.identity import DefaultAzureCredential    # Authentication package
    credential = DefaultAzureCredential()
    # Get a handle to the workspace. You can find the info on the workspace tab on ml.azure.com
    ml_client = MLClient(
        credential=credential,
        subscription_id="<Azure subscription id>", 
        resource_group_name="<Azure resource group>",
        workspace_name="<Azure Machine Learning Workspace>",
    )
    job = command(
        command="echo 'hello world'",
        environment="azureml://registries/azureml/environments/sklearn-1.5/labels/latest",
        queue_settings={
          "job_tier": "spot"  
        }
    )
    # submit the command job
    ml_client.create_or_update(job)
    

コマンド ジョブですべてのフィールドを指定した場合の例

ID などのジョブが使用する必要があるすべてのフィールドを指定した例をこちらに示します。 ワークスペース レベルのマネージド ネットワーク分離が自動的に使われるため、仮想ネットワーク設定を指定する必要はありません。

from azure.ai.ml import command
from azure.ai.ml import MLClient      # Handle to the workspace
from azure.identity import DefaultAzureCredential     # Authentication package
from azure.ai.ml.entities import ResourceConfiguration
from azure.ai.ml.entities import UserIdentityConfiguration 

credential = DefaultAzureCredential()
# Get a handle to the workspace. You can find the info on the workspace tab on ml.azure.com
ml_client = MLClient(
    credential=credential,
    subscription_id="<Azure subscription id>", 
    resource_group_name="<Azure resource group>",
    workspace_name="<Azure Machine Learning Workspace>",
)
job = command(
    command="echo 'hello world'",
    environment="azureml://registries/azureml/environments/sklearn-1.5/labels/latest",
         identity=UserIdentityConfiguration(),
    queue_settings={
      "job_tier": "Standard"  
    }
)
job.resources = ResourceConfiguration(instance_type="Standard_E4s_v3", instance_count=1)
# submit the command job
ml_client.create_or_update(job)

サーバーレス コンピューティングでのトレーニングの例については、- を参照してください

AutoML ジョブ

AutoML ジョブの場合、コンピューティングを指定する必要はありません。 リソースは必要に応じて指定できます。 インスタンス数が指定されていない場合は、max_concurrent_trials と max_nodes パラメーターに基づき既定値で設定されます。 インスタンスの種類を指定せずに AutoML の画像分類または NLP タスクを送信した場合、GPU VM のサイズが自動的に選ばれます。 AutoML のジョブは CLI、SDK、スタジオから送信することができます。 Studio でサーバーレス コンピューティングを使用して AutoML ジョブを送信するには、まずプレビュー パネルで [Studio でトレーニング ジョブを送信する (プレビュー)] を有効にします。

種類やインスタンス数を指定する場合は、ResourceConfiguration クラスを使います。

# Create the AutoML classification job with the related factory-function.
from azure.ai.ml.entities import ResourceConfiguration 

classification_job = automl.classification(
    experiment_name=exp_name,
    training_data=my_training_data_input,
    target_column_name="y",
    primary_metric="accuracy",
    n_cross_validations=5,
    enable_model_explainability=True,
    tags={"my_custom_tag": "My custom value"},
)

# Limits are all optional
classification_job.set_limits(
    timeout_minutes=600,
    trial_timeout_minutes=20,
    max_trials=max_trials,
    # max_concurrent_trials = 4,
    # max_cores_per_trial: -1,
    enable_early_termination=True,
)

# Training properties are optional
classification_job.set_training(
    blocked_training_algorithms=[ClassificationModels.LOGISTIC_REGRESSION],
    enable_onnx_compatible_models=True,
)

# Serverless compute resources used to run the job
classification_job.resources = 
ResourceConfiguration(instance_type="Standard_E4s_v3", instance_count=6)

パイプライン ジョブ

パイプライン ジョブの場合、既定のコンピューティングの種類に "serverless" を指定すると、サーバーレス コンピューティングが使われます。

# Construct pipeline
@pipeline()
def pipeline_with_components_from_yaml(
    training_input,
    test_input,
    training_max_epochs=20,
    training_learning_rate=1.8,
    learning_rate_schedule="time-based",
):
    """E2E dummy train-score-eval pipeline with components defined via yaml."""
    # Call component obj as function: apply given inputs & parameters to create a node in pipeline
    train_with_sample_data = train_model(
        training_data=training_input,
        max_epochs=training_max_epochs,
        learning_rate=training_learning_rate,
        learning_rate_schedule=learning_rate_schedule,
    )

    score_with_sample_data = score_data(
        model_input=train_with_sample_data.outputs.model_output, test_data=test_input
    )
    score_with_sample_data.outputs.score_output.mode = "upload"

    eval_with_sample_data = eval_model(
        scoring_result=score_with_sample_data.outputs.score_output
    )

    # Return: pipeline outputs
    return {
        "trained_model": train_with_sample_data.outputs.model_output,
        "scored_data": score_with_sample_data.outputs.score_output,
        "evaluation_report": eval_with_sample_data.outputs.eval_output,
    }


pipeline_job = pipeline_with_components_from_yaml(
    training_input=Input(type="uri_folder", path=parent_dir + "/data/"),
    test_input=Input(type="uri_folder", path=parent_dir + "/data/"),
    training_max_epochs=20,
    training_learning_rate=1.8,
    learning_rate_schedule="time-based",
)

# set pipeline to use serverless compute
pipeline_job.settings.default_compute = "serverless"

デザイナーで、サーバーレス コンピューティングを既定のコンピューティングとして設定することもできます。

次の手順

サーバーレス コンピューティングでのトレーニングの例については、- を参照してください