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リソース消費の制御とパフォーマンスの向上

ここでは、リソース消費を制御し、パフォーマンス メトリックに影響を与える Windows Communication Foundation (WCF) アーキテクチャのさまざまな領域の各種プロパティについて説明します。

WCF でのリソース消費を制約するプロパティ

Windows Communication Foundation (WCF) では、セキュリティまたはパフォーマンスを向上させる目的で、特定の種類のプロセスに制約が適用されます。 これらの制約には、クォータとスロットルという 2 つの主要な形式があります。 "クォータ" は、この値に達するか、または超えたときに、システムの特定の場所で即座に例外を発生させる制限です。 "スロットル" は、即座に例外がスローされない制限です。 スロットル制限に達すると、例外がスローされる代わりに、そのスロットル値によって設定された制限の範囲内で処理が続行されます。 この制限された処理によって他の場所で例外が発生する可能性がありますが、これはアプリケーションに依存します。

クォータとスロットルの違いに加え、シリアル化レベル、トランスポート レベル、およびアプリケーション レベルにも制約を加えるプロパティがあります。 たとえば、システム提供のすべてのトランスポート バインディング要素によって実装されるクォータである TransportBindingElement.MaxReceivedMessageSize は、既定で 65,536 バイトに設定されます。これは、悪意のあるクライアントがサービスに対して、大量のメモリを消費させるサービス拒否攻撃を実行することを防ぐための措置です (通常は、この値を下げることによってパフォーマンスを向上できます)。

シリアル化のクォータの例としては、DataContractSerializer.MaxItemsInObjectGraph プロパティがあります。このプロパティは、シリアライザーが ReadObject メソッドの 1 回の呼び出しでシリアル化または逆シリアル化するオブジェクトの最大数を指定します。 アプリケーション レベルのスロットルの例としては、ServiceThrottle.MaxConcurrentSessions プロパティがあります。このプロパティは、既定で、セッションフル チャネルの同時接続の最大数を 10 に制限します (クォータとは異なり、このスロットル値に達しても、アプリケーションは処理を続行しますが、新しいセッションフル チャネルは受け入れません。つまり、他のセッションフル チャネルのいずれかが終了するまで、新しいクライアントは接続できません)。

これらの制御は、特定の種類の攻撃に対してすぐに使用できる軽減策を提供し、メモリの占有領域や起動時間などのパフォーマンス メトリックを向上するように設計されています。 ただし、アプリケーションによっては、これらの制御によってサービス アプリケーションのパフォーマンスが低下したり、アプリケーションがまったく動作しなくなったりする可能性があります。 たとえば、ビデオ ストリーミング用に設計されたアプリケーションは、既定の TransportBindingElement.MaxReceivedMessageSize プロパティをすぐに超える可能性があります。 ここでは、WCF のすべてのレベルでアプリケーションに適用されるさまざまな制御の概要を示し、特定の設定がアプリケーションの実行を妨げているかどうかに関する詳細情報を取得するためのさまざまな方法について説明します。また、さまざまな問題を修正する方法についても説明します。 ほとんどのスロットルおよび一部のクォータは、基本プロパティがシリアル化またはトランスポートの制約である場合でも、アプリケーション レベルで利用できます。 たとえば、サービス クラスの DataContractSerializer.MaxItemsInObjectGraph を使用して、ServiceBehaviorAttribute.MaxItemsInObjectGraph プロパティを設定できます。

Note

特定の問題がある場合は、まず「WCF トラブルシューティング クイックスタート」に目を通し、発生している問題 (および解決方法) が記載されているかどうかを確認してください。

シリアル化プロセスを制限するプロパティの一覧は、「セキュリティに関するデータの考慮事項」にあります。 トランスポートに関連するリソースの消費を制限するプロパティの一覧は、「トランスポート クォータ」にあります。 アプリケーション層でリソースの消費を制限するプロパティは、ServiceThrottle クラスのメンバーです。

上記の値の既定値は、一般的なセキュリティの問題に対する基本的な保護を提供しながら、さまざまなアプリケーションで基本的なアプリケーション機能を使用できるように選択されたものです。 ただし、アプリケーション デザインによっては、1 つ以上のスロットル設定を超えてしまったためにアプリケーションがセキュリティで保護されなかったり、設計どおりに動作しなかったりする場合があります。 その場合は、超過したスロットル値とそのレベルを特定し、アプリケーションのスループットを向上するための適切な手順を決定する必要があります。

通常、アプリケーションを作成してデバッグする際には、構成ファイルまたはプログラムで ServiceDebugBehavior.IncludeExceptionDetailInFaults プロパティを true に設定します。 これによって、サービス例外のスタック トレースをクライアント アプリケーションに返して表示するように WCF に指示できます。 この機能により、ほとんどのアプリケーション レベルの例外が報告され、問題が発生している場合に、どのクォータ設定が関係しているかを表示できます。

実行時に発生する一部の例外はアプリケーション層から見えないため、このメカニズムでは返されません。このため、カスタムの System.ServiceModel.Dispatcher.IErrorHandler 実装で処理できないことがあります。 Microsoft Visual Studio などの開発環境で作業している場合は、これらの例外のほとんどは自動的に表示されます。 ただし、Visual Studio の [マイ コードのみ] など、開発環境設定によって一部の例外がマスクされる可能性があります。

開発環境の機能に関係なく、WCF のトレースとメッセージ ログの機能を使用すると、すべての例外のデバッグとアプリケーションのパフォーマンス調整を実行できます。 詳細については、「トレースを使用したアプリケーションのトラブルシューティング」を参照してください。

パフォーマンスの問題と XmlSerializer

XmlSerializer を使用してシリアル化できるデータ型を使用するサービスおよびクライアント アプリケーションは、実行時にこのようなデータ型のシリアル化コードを生成およびコンパイルします。このため、起動時のパフォーマンスが低下することがあります。

Note

生成済みシリアル化コードはクライアント アプリケーションでのみ使用できます。サービスでは使用できません。

ServiceModel メタデータ ユーティリティ ツール (Svcutil.exe) を使用すると、必要なシリアル化コードをアプリケーションのコンパイル済みアセンブリから生成することで、このようなアプリケーションの起動時のパフォーマンスを改善できます。 詳細については、「方法: XmlSerializer を使用する WCF クライアント アプリケーションの起動時間を短縮する」を参照してください。

ASP.NET で WCF サービスをホストする場合のパフォーマンスの問題

WCF サービスを IIS および ASP.NET でホストする場合、IIS と ASP.NET の構成設定が WCF サービスのスループットやメモリの占有領域に影響する場合があります。 ASP.NET のパフォーマンスの詳細については、ASP.NET パフォーマンスの向上に関するページを参照してください。 予想外の結果を引き起こす可能性のある設定の 1 つに、MinWorkerThreads があります。これは、ProcessModelSection のプロパティです。 アプリケーションのクライアントが固定数または少数である場合、MinWorkerThreads を 2 に設定すると、CPU の使用率が 100% に近いマルチプロセッサ コンピューターのスループットが向上する場合があります。 このパフォーマンスの向上にはコストが伴います。つまり、メモリの使用率も増加するため、スケーラビリティが低下する場合があります。

関連項目