WCF web HTTP サービスのキャッシュ サポート
.NET Framework 4.6.1 を使用すると、WCF Web HTTP サービスの ASP.NET で既に提供されている、宣言によるキャッシュ機構を使用できます。 このメカニズムにより、WCF Web HTTP サービス操作からの応答をキャッシュできます。 キャッシュ用に構成されているサービスに対してユーザーが HTTP GET
を送信すると、ASP.NET は、キャッシュされた応答を送り返し、サービス メソッドは呼び出されません。 キャッシュの有効期限が切れると、ユーザーが次回に HTTP GET
を送信したときに、サービス メソッドが呼び出され、応答が再度キャッシュされます。 ASP.NET キャッシュの詳細については、「ASP.NET のキャッシュの概要」を参照してください。
基本的な Web HTTP サービスのキャッシュ
WEB HTTP サービスのキャッシュを有効にするには、まず、AspNetCompatibilityRequirementsAttribute の RequirementsMode を Allowed または Required に設定してサービスに適用し、ASP.NET との互換性を有効にする必要があります。
.NET Framework 4 では、キャッシュ プロファイル名を指定できる AspNetCacheProfileAttribute という新しい属性が導入されています。 この属性は、サービス操作に適用されます。 次の例では、AspNetCompatibilityRequirementsAttribute をサービスに適用して ASP.NET との互換性を有効にし、GetCustomer
操作をキャッシュできるように構成しています。 AspNetCacheProfileAttribute 属性には、使用されるキャッシュ設定が含まれるキャッシュ プロファイルを指定します。
[ServiceContract]
[AspNetCompatibilityRequirements(RequirementsMode=AspNetCompatibilityRequirementsMode.Allowed)]
public class Service
{
[WebGet(UriTemplate = "{id}")]
[AspNetCacheProfile("CacheFor60Seconds")]
public Customer GetCustomer(string id)
{
// ...
}
}
また、ASP.NET 互換性モードを Web.config ファイルで有効にします。次にその例を示します。
<system.serviceModel>
<serviceHostingEnvironment aspNetCompatibilityEnabled="true" />
</system.serviceModel>
警告
ASP.NET 互換性モードが有効にされていない場合は、AspNetCacheProfileAttribute が使用されて、例外がスローされます。
AspNetCacheProfileAttribute によって指定されたキャッシュ プロファイル名によって、Web.config 構成ファイルに追加されるキャッシュ プロファイルが特定されます。 キャッシュ プロファイルは、<outputCacheSetting>
要素内に定義します。次にその構成例を示します。
<!-- ... -->
<system.web>
<caching>
<outputCacheSettings>
<outputCacheProfiles>
<add name="CacheFor60Seconds" duration="60" varyByParam="none" sqlDependency="MyTestDatabase:MyTable"/>
</outputCacheProfiles>
</outputCacheSettings>
</caching>
<!-- ... -->
</system.web>
これは、ASP.NET アプリケーションで使用できる構成要素と同じです。 ASP.NET キャッシュ プロファイルの詳細については、OutputCacheProfile に関するページを参照してください。 Web HTTP サービスの場合、キャッシュ プロファイルで最も重要な属性は cacheDuration
と varyByParam
です。 この 2 つの属性はどちらも必要です。 cacheDuration
は、応答がキャッシュに保持される時間 (秒数) を設定します。 varyByParam
では、応答のキャッシュに使用されるクエリ文字列パラメーターを指定できます。 異なるクエリ文字列パラメーターの値を使用する要求は、すべて個別にキャッシュされます。 たとえば、http://MyServer/MyHttpService/MyOperation?param=10
に最初の要求を送ると、同じ URI を使用して送られるすべての後続の要求には、キャッシュされている応答が返されます (キャッシュ期間が経過していない場合)。 クエリ文字列パラメーターの値が異なることを除いて同じである同様の要求に対する応答は、個別にキャッシュされます。 このような個別のキャッシングを行わない場合は、varyByParam
を "none" に設定します。
SQL キャッシュ依存関係
Web HTTP サービスの応答も、SQL キャッシュ依存関係と併せてキャッシュできます。 SQL データベースに格納されているデータに応じて WCF Web HTTP サービスが異なる場合は、サービスの応答をキャッシュして、キャッシュした応答を、SQL データベース テーブル内のデータの変更時に無効にすることもできます。 この動作は、すべて Web.config ファイル内で構成します。 まず、<connectionStrings>
要素に接続文字列を定義します。
<connectionStrings>
<add name="connectString"
connectionString="..."
providerName="System.Data.SqlClient" />
</connectionStrings>
次に、次の構成例に示すように、<system.web>
要素内の <caching>
要素内で SQL キャッシュの依存関係を有効にします。
<system.web>
<caching>
<sqlCacheDependency enabled="true" pollTime="1000">
<databases>
<add name="MyTestDatabase" connectionStringName="connectString" />
</databases>
</sqlCacheDependency>
<!-- ... -->
</caching>
<!-- ... -->
</system.web>
ここでは、SQL キャッシュ依存関係を有効にし、ポーリング タイムを 1000 ミリ秒に設定しています。 ポーリング タイムが経過するたびに、データベース テーブルで更新の有無が確認されます。 変更が検出されると、キャッシュの内容が削除され、次にサービス操作が呼び出されたときに、新しい応答がキャッシュされます。 <sqlCacheDependency>
要素内にデータベースを追加し、<databases>
要素内の接続文字列を参照します。次にその例を示します。
<system.web>
<caching>
<sqlCacheDependency enabled="true" pollTime="1000">
<databases>
<add name="MyTestDatabase" connectionStringName="connectString" />
</databases>
</sqlCacheDependency>
<!-- ... -->
</caching>
<!-- ... -->
</system.web>
次に、<caching>
要素内に出力キャッシュの設定を構成します。次にその構成例を示します。
<system.web>
<caching>
<!-- ... -->
<outputCacheSettings>
<outputCacheProfiles>
<add name="CacheFor60Seconds" duration="60" varyByParam="none" sqlDependency="MyTestDatabase:MyTable" />
</outputCacheProfiles>
</outputCacheSettings>
</caching>
<!-- ... -->
</system.web>
ここでは、キャッシュ期間が 60 秒に、varyByParam
が none に設定されており、sqlDependency
が、コロン区切りのデータベース名とテーブルのペアをセミコロンで区切ったリストに設定されています。 MyTable
のデータが変更されると、キャッシュされているサービス操作への応答が削除されます。この操作が呼び出されると、新しい応答が (サービス操作の呼び出しによって) 生成され、キャッシュされて、クライアントに返されます。
重要
ASP.NET から SQL データベースにアクセスするには、ASP.NET SQL Server 登録ツールを使用する必要があります。 また、適切なユーザー アカウントに、データベースおよびテーブルへのアクセスを許可する必要があります。 詳細については、「Web アプリケーションから SQL Server へのアクセス」を参照してください。
条件付きの HTTP GET ベースのキャッシュ
Web HTTP シナリオでは、条件付き HTTP GET がサービスで使用されて、「HTTP の仕様」で説明されているように、インテリジェントな HTTP キャッシュが実装されることがよくあります。 そのためには、サービスが ETag ヘッダーの値を HTTP 応答に設定する必要があります。 また、HTTP 要求の If-None-Match ヘッダーの値を確認して、指定されている ETag が現在の ETag と一致するかどうかを調べる必要もあります。
GET および HEAD 要求の場合、CheckConditionalRetrieve は ETag 値を取得し、この値と要求内の If-None-Match ヘッダーとを比較します。 ヘッダーが存在し、一致が見つかった場合は、HTTP ステータス コード 304 (変更なし) が設定された WebFaultException がスローされ、一致する ETag が設定されている応答に ETag ヘッダーが追加されます。
CheckConditionalRetrieve メソッドのオーバーロードの 1 つは、最終更新日を取得し、これを、要求の If-Modified-Since ヘッダーと比較します。 ヘッダーが存在し、リソースが変更されていない場合は、HTTP ステータス コード 304 (変更なし) が設定された WebFaultException がスローされます。
PUT、POST、および DELETE の各要求の場合、CheckConditionalUpdate は、リソースの現在の ETag 値を取得します。 現在の ETag 値が null の場合、メソッドは、If-None- Match ヘッダーの値が "*" であるかどうかを確認します。 現在の ETag 値が既定値ではない場合、メソッドは、現在の ETag 値と要求の If-None- Match ヘッダーを比較します。 どちらの場合も、求められるヘッダーが要求内に存在しない、またはヘッダーの値がチェック条件を満たしていないと、メソッドは、HTTP ステータス コード 412 (必須条件に失敗しました) が設定された WebFaultException をスローし、応答の ETag ヘッダーを現在の ETag 値に設定します。
CheckConditional
メソッドも SetETag メソッドも、応答ヘッダーに設定される ETag 値が、確実に HTTP 仕様に沿った有効な ETag になるようにします。 これには、ETag 値を囲む二重引用符がない場合に二重引用符を付ける処理や、二重引用符内の文字を適切にエスケープする処理が含まれます。 ETag の弱い比較はサポートされていません。
これらのメソッドを使用する方法の例を次に示します。
[WebGet(UriTemplate = "{id}"), Description("Returns the specified customer from customers collection. Returns NotFound if there is no such customer. Supports conditional GET.")]
public Customer GetCustomer(string id)
{
lock (writeLock)
{
// return NotFound if there is no item with the specified id.
object itemEtag = customerEtags[id];
if (itemEtag == null)
{
throw new WebFaultException(HttpStatusCode.NotFound);
}
// return NotModified if the client did a conditional GET and the customer item has not changed
// since when the client last retrieved it
WebOperationContext.Current.IncomingRequest.CheckConditionalRetrieve((long)itemEtag);
Customer result = this.customers[id] as Customer;
// set the customer etag before returning the result
WebOperationContext.Current.OutgoingResponse.SetETag((long)itemEtag);
return result;
}
}
セキュリティに関する考慮事項
承認が必要な要求の応答はキャッシュしないでください。応答がキャッシュから提供された場合は、承認が実行されません。 このような応答をキャッシュすると、重大なセキュリティの脆弱性が生じます。 通常、承認が必要な要求ではユーザー固有のデータが提供されるため、サーバー側でキャッシュしても利点はありません。 このような場合は、クライアント側でキャッシュするか、単にキャッシュをまったく行わない方が適切です。