～大規模移行～
Point 3: ローカル データ、システム環境、ユーザー プロファイルの移行
更新日: 2011 年 10 月 19 日
イメージの展開によって、Windows 7 OS や基本的なアプリケーション環境などの展開ができたら、次は現在の Windows XP 環境から、各ユーザーのローカル データやシステム環境 (これらのデータは「ユーザー状態データ」と呼ばれます) などを、新しい Windows 7 環境に転送する必要があります。Windows 7 には、「Windows 転送ツール」と呼ばれる対話形式のアプリケーションがあり、これを利用してデータの移行が可能です。ただしこのツールは各ユーザーが手作業でデータ移行することを前提としており、自動化できませんので、エンタープライズ環境での組織的な処理には適していません。
複数のクライアント PC のデータを組織的に移行したければ、Windows AIK の一部として提供される「ユーザー状態移行ツール (User State Migration Tool 4.0: USMT) 」を利用します。USMT はユーザー状態データを、あるコンピュータから別のコンピュータに移行したり、ある OS から別の OS に移行したりするのをサポートするコマンド ライン ツールとスクリプトのセットです。USMT を利用することで、移行する情報 (ファイル) と移行しない情報 (ファイル) の選択などが可能になります。
USMT による移行の手順としては、まず ScanState コマンドで、現在の Windows XP 環境から移行するユーザー状態データを展開用サーバーにコピーし、次にこのデータを LoadState コマンドで新しい Windows 7 環境に転送します。新規の PC に Windows 7 を展開するのではなく、既存の Windows XP がインストールされた PC に Windows 7 をリフレッシュ インストールする場合も、この方法でユーザー状態データを移行できます。また 32 ビットの Windows XP 環境から、64 ビットの Windows 7 環境に移行することも可能です。
【USMT を利用したユーザー状態データの移行】
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USMT スクリプトの一部をカスタマイズすることもできます。Active Directory 環境なら、システム管理者がカスタマイズした USMT スクリプトをグループ ポリシー等で実行し、強制的にユーザー環境のバックアップおよび復元を実施することも可能です。このように USMT では柔軟なカスタマイズが可能で、スクリプトのコーディングを自在に行える管理者にとっては非常に強力なツールですが、使いこなすには専門的な知識が必要になります。ソフトウェアによるサポートを期待するなら、後述する System Center Configuration Manager (SCCM) と USMT を組み合わせて利用する方法が有効です。
USMT で移行できるユーザー状態データとしては、各ユーザーのプロファイル フォルダー (マイ ドキュメント、デスクトップ ファイル、スタート メニュー、お気に入り、など)、Windows XP の All Users プロファイル (共有ドキュメント、共有デスクトップ ファイル、共有スタート メニュー、公開しているお気に入り、など)、フォルダー オプションや Internet Explorer の設定、Windows Rights Management などの OS コンポーネント、Microsoft Word や Excel、PowerPoint の拡張子を持つファイルなどがあります。
USMT 4.0 を利用すれば、指定したファイルやフォルダーのアクセス制御リスト (ACL: Access Control List) を Windows XP 環境から Windows 7 環境に移行することも可能です。ローカル コンピュータのファイルやフォルダーに対して、なんらかのアクセス制御を設定して運用している場合には、これにより従来のアクセス制御を新しい Windows 7 環境に移行できます。
System Center Configuration Manager 2007 R3 による ユーザー状態データの移行
システム管理ソフトウェアの System Center Configuration Manager 2007 R3 (SCCM 2007 R3) を利用すれば、OS イメージの展開ばかりでなく、ユーザー状態データを自動的に Windows XP 環境から Windows 7 環境に移行できます。SCCM 2007 R3 では、移行元の Windows XP 環境と、移行先の Windows 7 環境の双方で USMT を実行するための配布パッケージをあらかじめ用意しておき、OS の展開とともにユーザー状態データを移行できるようにします。
具体的に、どのユーザー状態データを移動元である Windows XP 環境から、移動先の Windows 7 環境に移動するかは、SCCM 2007 R3 のタスク シーケンスで指定します。タスク シーケンスは、ユーザーの操作なしに、PC 上で複数の手順やタスクを自動的に実行可能にする SCCM 2007 R3 向けの手順書のようなものです。SCCM 2007 R3 では、ウィザードを使った対話形式でタスク シーケンスを作成するので、高度な専門知識がなくても手順作成が可能です。ウィザードで作成したタスク シーケンスを、タスク シーケンス エディタで後からカスタマイズすることもできます。
こうして作成されたタスク シーケンスは、移行対象となる Windows XP と Windows 7 の PC に送付されます。その後、設定されたスケジュールに従って各 PC 上でシーケンスの処理が開始されます。タスク シーケンスの処理が完了すると、ユーザー状態データが Windows XP 環境から Windows 7 環境に移行されます。新しい Windows 7 にログオンすると、従来の Windows XP で利用していたユーザー状態データが移行された状態で PC を使えます。
グループ ポリシーの移行
これまでの説明は、Windows XP に保存されている設定情報をどうやって新しい Windows 7 に移行するかに注目していました。これらとは別に、Active Directory 環境などで、グループ ポリシーを各 Windows XP クライアント PC に適用している場合、これが Windows 7 にアップグレードされたときに、同じようにグループ ポリシーを適用できるのかという問題もあります。
すべてではありませんが、Windows XP で適用しているグループ ポリシーは、同様のものを Windows 7 でも適用できる可能性があります。「可能性」と書いているのは、グループ ポリシーの各設定項目は、「Windows XP 用」「Windows 7 用」などとバージョンが管理されており、Windows XP で使用していた設定項目が Windows 7 用に独自に用意されている可能性があるからです。このようなポリシーについては、設定さえ正しく行えば Windows 7 でも引き続き適用ができます。グループ ポリシーの管理エディタではバージョン情報も参照できるので、システム管理者は移行前に設定項目のリストを作成してチェックする必要があるでしょう。
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